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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第六章 ストーン・トラベルは終わりを告げる
66/75

第65話 湾曲十字の聖歌隊④-奥の手と奥の手

(現代)

 エクサタと黒い百賭の会話。


「キミも知っているよね?

 【カース・アーツ】の能力戦に於いて最も重要な要素は――【IQ】―――

 【頭の回転が早いものが勝つ】。

 事前に計算された策や相性よりも状況を打開する脳が勝敗を決める。」


「………貴様のIQが、奴よりも高かったと?」


「夜調牙百賭の推定IQ270。対し、ゴールドのIQ210。

 本来なら頭脳戦でゴールドが百賭に勝つことは決して無い――――

 しかしこの数値は所詮―――

 万全…ベストコンディション状態での数値でしかないんだよ……?」


「なるほど――――あの時の百賭は……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(過去)

 

 時によってIQは変異<メタモルフェーゼ>する。

 疲労状態や睡眠不足、絶頂によってその者のIQは大きく変化する。


 ギュン!!!!!!ギュン!!!!!!!!!

 宙に浮いた小石が妖な動きをして百賭に襲い掛かる!!!


 しかし百賭は大量出血によりIQが大幅に低下しており、

 小石の動きに頭の考える速度が追いつけていなかった。


「ゲホッ……グッ……やはり……"このまま"では駄目か―――!!!」


 百賭がそういう。


 不敗―――それは一見素晴らしい事のように思えるが、そうではない。

 全ての事柄は表裏一体。メリットがあればデメリットもある。

 敗北の経験の無い百賭は、初めてのIQデバフ状態の中で戦う術を知らなかった!


 百賭が血を吐いて倒れたと同時にゴールドが指を天に向ける。

 すると、辺りの岩とナイフが一斉に上方向に飛んでいく。

 

「死んじゃえ~【クイーン・ヘル・スナイパー】!!」


 ゴールドが指を振り下ろしたと同時に、無数の小石の弾丸が百賭に向かって飛んでいく!!!

 しかし――――――

 笑っていた、あの女、百賭は、怪しく笑っていた――――――

 まるで自分の勝ちを確信したかのように………


「………フフ……フフフ!!!ゴールド……残念だったな…」

「――負け惜しみかい?」

「この世に――――【アイツ】より強い人間はいない……」

「アイツ……だと……シルバーの事か?」


 ズドドドドドドドン!!!!!!!!!!

 小石の雨が百賭の立つ瓦礫の山に降り注ぐ!!!!!!!!!


 まるで―――回転式機関砲<ガトリング>から放たれる弾幕のように!!

 回転式機関砲<ガトリング>から放たれる……弾幕のように………


 砂埃が辺りに舞い、何も見えなくなる。


「もう終わり?あっけな~い!あはは!残りはカスどもと東結だけかな………」


 1体のゴールドと2人のゴールドの影武者が瓦礫の山に背を見せ、身を隠そうとする。


「ちょっとお………きたないホコリ♪

 こんな所に王であるボクがいる必要はないよね?

 しもべども、百賭の死体付近から4つの【D・D・F】の拾って来なさ~い…。」


 5体の洗脳兵が、砂ぼこりの中に入る。


「このゴールドのあしもとまで…♪」


 勝利を確信するゴールド。

 だが瞬時、洗脳兵の視界から、砂埃が消える。


「え―――」


Vaaaaaaaaaaaaaaaaaa………


赤と白がまじりあった無気味な影が、立っている。


影は片手に円盤を持ち、大きく振りかぶっている。


「な、なぁに…?。」


 VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA………


 3人のゴールドが後ろを振り向く。


 同時に、影の持つ円盤の天辺から、何か、光柱のようなエフェクトが現れた。

 夜調牙…百賭?


「【探偵マスター<デティクティブ・マスター>】。」

「くたばりぞこな~――――」


 影が――――光柱を放つ円盤を3人のゴールドに向かってブーメランのように回転させながら投擲!!!!

 同時に円盤から放たれた光柱も、グルグルと薙ぎ払われる!!!光柱に触れた物体は、辺りの物体全てを切り裂く!!!


「ちょっと――?きゃああああああああ!!!!!!!!!」


 3人のゴールドが円盤を避けようとジャンプする!!!

 しかし回避できたのは身体能力がアトランティス人相当の本体だけで、影武者二人はジャンプ力が足らず円盤から放たれてた光の柱に触れ上半身が切断された。


「なっ―――投げた!?【デティクティブ・マスター】の円盤を投げて攻撃したの!?」

「何を驚いてるの?完璧な絶望はここからよ。」

「!?」


 ゴールドが百賭?の姿を確認すると飛び上がるように、肩をすくめ、3歩たじろいた。


「え…なに?―――その姿………何―――?やだ……」


 何故ならその姿には、先ほどの小石の散弾で受けたダメージが全くなかったから……そして―――


「その目……」


 今の百賭の目つきは、先ほどまでのようにゴミを見下すような鋭く冷たいナイフのような目つきではなかった。

 それはまるで、憎悪と殺意の塊。

 ゴールドは直感的に死を察知した!!


「こ、殺されちゃう……!!【クイーン・ヘル・スナイパー】!!」


 ゴールドの周りに浮かぶ無数の小石の弾丸が百賭に向かって吹っ飛ぶ!!!しかし――――――――


 ゴキャ―――ギキッ……ググギギギ……………!!!!!

 まるで獣と錯覚するほどおぞましく体を震わせる百賭。

 全身の関節を異常な方向に曲げ、全ての弾丸をその身でかわす。

 そして―――ホワイト・キネシスを4本出現させる。

 後ろから自分の頭の上まで勢いよく爆風を纏わせながら貫く瞬間、【デティクティブ・マスター】を発動し、槍の先に時の円盤を出現させる。


「がっ……!!!」


 円盤が槍の放つ爆風で吹き飛び、先にあったゴールドの胴を破壊する!!!


「わああ……!!やだ、た、たすけてえッッ!!!」


「……」


 百賭の姿が変形する。右腕が3本に分離。

 両足もそれぞれ二本。首も伸びる。

 分離した四肢にはそれぞれナイフ・刀・マシンガンなどの武器が仕込まれている。

 不快な機械音を鳴らしながら動くその姿。


 そう、百賭はバイオロイドにしてサイボーグなのだ…

 天野水晶のような…


 コツッコツッ


(か、勝てない!バカな!彼女のIQは下がったんじゃないの!?)


 百賭が時速90㎞で走ってくる。

 体に装着した武器で瓦礫を破壊しながら…

 アメジスト・イーグルの全ての攻撃を無傷で跳ね返しながら。

 今の百賭はすべてを粉砕する兵器だ!


「……お、奥の手を……!!」

『皇帝、それは……!!』


 アメジスト・イーグルが恐怖を押し殺した震え声でゴールドに語り掛ける。

 ゴールドは闇の力を纏っていた……

 【湾曲十字の聖歌隊】とは別の…闇の力を…!!!


「【Alternative Reincarnation-オルタネイティヴ・リンカネーション-】!!!【ビフロンス】!!来い!!」


 ゴールドが【悪魔】を出現させる。

 ビフロンスは26の軍団を率いる序列46番の地獄の伯爵。双頭獣。

 これがゴールドの切り札。

 ゴールドもまた、シルバーと同じ。

 過去の祖先の運命に操られ、運命に自身の命を捧げる存在。

 彼女も皮肉にもシルバーと同じ、【悪魔】と契約するという手段を得て、この最終決戦に挑んだのだ。

 すべての戦いが終わった後、【D・D・F】で目的を果たした後、彼女は死ぬ。


 だが、それが彼女の全てだった…


「ボクには……運命以外何もない!運命が自分の全て!百賭あああああああ!!!!」


 ゴールドが自身の急所を主塔で貫く。

 すると、ビフロンスが光の速さでエネルギーを放つ。

 百賭と、ゴールドに。


 すると二人の中から、魂が抜け出る。

 そしてそれは交差し…入れ替わるのだ。


「ボクは…ゴッフォーン様のために…すべてを捧げる……

 こいつの【能力】は……互いの体を入れ替えること……!!!」

「ゴールド……!!!」


 まばゆい光が、辺りを包んだ。


「これがボクの…覚悟だァァァァあああああ=------ッッッ!!!!」

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