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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第六章 ストーン・トラベルは終わりを告げる
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第63話 恋と運命のレーダー


『ところで』


 携帯端末の先から、睦月の鋭い声。


「―――――なんだ。」

『一つ、聞きたい事が。』


『なんで、さっき、通話を斬ったんですか?なんでその後、何度も電話したのに応答できなかったんですか?』


 ――――まさか、バレたか?

 クレームが入る。

 瓦礫の山の上でゴールド様の近くで姿晒していたあの時、アリに見られていたのを察知して咄嗟に通話を切断してしまったが、それが裏目に出たようだな。

 だが、言い訳はもう考えている――――


「探偵に妨害された―――奴ら、今回の作戦にやたらとお熱でな。

 シルバーのサポートをしてる俺の位置の特定捜査を進めやがったんだ。

 さっきは本当に危なかったんだぜ。」


『そう、ですか――――』


 銃を構える――――時間が無い。

 ゴールド様は、時間が無いとおっしゃられていた。


『わかりました、すみません、変な質問をして――――』


 アリを退かせたな、これでお前が俺を視界に入れる事は無くなった。

 照準を再度定め―――――――


『仮にも、シルバーが一番信頼してる人なのに……』

「一番――――?」


 引き金を…引く……


『――――え?』

「シルバーは、俺の事を一番信頼してると言っていたのか?」

 

 引き金を…


『……今はそんな事―――』

「時間はある、聞かせて呉れ。」


 引き……金を―――


『言ってました。貴方の事を一番信頼していると―――』

「そうか、ヘヘッ……一番か……そうか……」

『んん……?なんか、嬉しそうですね―――でも、今はそんな―――』


 さっきシルバーに言われた言葉を思い出す。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ここまで心を侮辱されたのは初めてだ――――

 御前は……御前だけは……必ず―――この手で………」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 言われた事なかったんだ―――アイツに、そんな事は……


「大丈夫、まだ、時間はある。」

『………時間って―――』


 気が付けば、銃を下ろしていた。


『シルバーは、』

「――――…」(もう取り返しはつかないんだ。少しだけ、いいよな…)


 しかし…

 ド…トドン…ガシャッ!!ガッカ!!ドンゴ!!ギャアアアム!!!(破壊の音)

 瞬時――――彼と睦月を阻んでいた壁が大音量を上げる!!


「な…は…?うっ!?」


 肩を誰かに押され、横に、二、三歩と歩いてしまう。睦月に身を晒してしまう。


「洗脳…兵…?」


 俺を押したのは…洗脳兵……!?

 ゴ、ゴールド様…なぜ!?

 嘘だろ!

 睦月が、俺に向けて双銃を構える!

 やべえ!睦月を殺さねえと!!


 直後、顔面に強烈な痛みが走る。

 そう、構える前に俺が睦月に撃たれたのだ。


「ぎゃああああああああああああ!!!」


 視界が上に向いていくさなか、俺は『空を飛ぶ鴉』を見て、ゴールド様の考えていることがわかった。

 ああ、そうか、これが、俺に与えられた運命だったのか。

 ここで死ぬためだけに、ここで『囮』になるためだけに、俺の人生は…


――――――――――――――

(睦月SIDE)


 ド…トドン…ガシャッ!!ガッカ!!ドンゴ!!ギャアアアム!!!

 突然、ロルさんが言っていた方向の真逆から音が聞こえる!!


 振り向くとそこにはあのゴールドの側に立っていたスナイパーらしき男が立っていた!


 すかさず銃を構える!!必ず殺して見せる!!


「――」


 両手の銃のトリガーを引き、スナイパーらしき男の顔めがけて三発の弾丸を放つ!!


 ドスドスドス!全弾命中!!


「ぎゃああああああああああああ!!!」


 三発ちゃんと命中した!左の目玉が飛び出してる!!

 やった!!死ん…


「だ…?」


 違和感がある。奴は死んだ、それは間違いない――でも何か違和感があるんだ。嫌な予感も…


「そう、軽くなってるんだ…」


 気が付けば、傘の上部分がごっそり削れていた。

 千切れとられたように削りとられていた。


 ガッー!!背中に、何か鋭い槍のような何かが複数刺さる。


「が…!しまった……スナイパーは捨て駒……!!!」


 カラスだ…!洗脳されたカラスの嘴…!

 睦月が反り身になり、背中に刺さったカラスをアリで食らいつくすッ!


 しかし、今度は前方から三体のカラス!!


「ぐっ…!がっ…!」



 死、死ぬ…こんな、こんなところで…!?




 ピィィィィ―――――――――――――ンッッッ!!!!

 バサッ………バサッ…………

 カラスたちの体が、地に落ちる。


「え。」


「【ストーン・トラベル】………そのカラス共の目の粘膜を石化した。」


「あ―――」


挿絵(By みてみん)

 そこには、銀髪の少女が立っていた。


『カァァァァァァァァァァ!!!!!!!!』


 シュバババババババババ!!!!

 カラスたちの体が銀髪の少女の首から出た黒い気に切断される。


「シ………シ………」


「ゴメン、待たせた。」


「シルバァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


シーフ・シルバー復活!!!!!シーフ・シルバー復活!!!!!!


「ちょっと時間はかかったけど、手首から出た血をのこぎり状に『石化』すれば、

 私の体を縛る針金を切断するのはわけがなかった――――

 それにしても、あのスナイパーを倒すなんて………よく頑張ったね、睦月。」


「ま………待ってくれ!」


 服の中を確認する。

 無い。

 胸に隠しておいたはずの【D・D・F】が………!!

 

「す、すまないシルバー……【D・D・F】を奪われてしまった!

 まずい…ほかの鴉はどこに逃げた!?

 私たちの負傷で空を飛ぶ相手に追いつけるのか!?」


 しかしシルバーは依然優しい顔である。


「――――大丈夫――――

 睦月はこっちを向いていてわからなかっただろうけど、

 あいつが追いかけてくれたわ……」


「え……」


 シルバーが刺した方向には、ひしゃげた地面の穴があった。

 この破壊の痕は【センチビート】…!?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――PM2:24 血まみれの歩道の脇にある一軒家内。(エメラルド・スペードSIDE)


 顔に弾丸を撃たれ、今にも死にかけのエメラルド・スペードが―――倒れている。

 『携帯端末』を…右手に持って。


『大事な事……とは?敵の情報か?』


 睦月との通話は、まだ終わっていない。

 そして、シルバーに電話を替わってもらった。

 俺が最後にやるべきことは…


「いや―――もう敵の情報は言えない。

 睦月の持っているレーダーの半径150m以内に敵はいない。」


 苦しい―――苦しいが―――今は、喘ぎ声の一つさえあげてはいけない…

 仰向けに倒れながら顔の傷を右手で押さえる…体の震えを出来るだけ抑えろ…


「恐らく、この電話が、俺とお前の最後の通話になると思う。」

『……!』

「フッ……睦月から聞かされてなかったか?

 探偵協会の奴らに追われていてよ――――しくじっちまった。」

『――――嘘だ。』

「本当さ、俺はエメラルド・スペードじゃない。」


 脳内に言葉が流れてくる。

 それは我らが偉大な祖先『ゴッフォーン・グラン』。

 彼は俺の心に『その電話でシルバーを騙せ』と何度も念じてくる。

 俺は心を強く保つ。


「俺は嬢ちゃんの相棒、無線サポート怪盗、ロルさ。」

『――…ふざけるな。』


 嬢ちゃんの震えた声が聞こえる。

 確かに嬢ちゃんにとっては、ある意味最悪の気分だろう。

 精神の深奥をかきまぜられたような気分だろう。

 だが俺はオレが言いたい事を総べてぶちまけるまで―――この電話を終わらせない。


『―――7年間、お前の事は、本当に相棒と思っていたし。

 さっきまでも、一番信頼できる奴だと思っていたわ。』

「俺も、お前の事はかなり気に入ってたし、今でも信頼できるパートナーだと思っている。」

『もしお前がゴールドの手先じゃなければ、どれだけ良かった事か……』

「ヘヘッ……まだ俺の事を信用してくれないんだな。」


 ………――――しかし、あんまり時間は無いようだな。

 全ては言えそうにないな。

 心残りはあるが本当に大切な事だけ…話すか。


「シルバー、この戦いが終わった後、行く宛はあるのか?

 三羅偵を倒したことが世に知られれば、お前は今まで以上に追われる身になるだろう。」

『行く宛?そんなものはないわよ……』

「―――そうか、ならば暫く北海道にある俺の別荘の一つに暫くは身を隠すといい。

 住所はさっきメールで送信した。

 あの別荘はいいぞ、いい景色が見れる。」

『この馬鹿ッ!!私がこの戦いで生き延びても悪魔の契約で魂が奪われることは知ってるでしょ!!』

「フッ、生き残れる可能性だってあるだろ。

 悪魔にだって失敗はある……」

『………』


 片目を開けて空を仰ぐ―――弯曲十字に照らされた赤い雲が覆っている。

 まぁ悪党が最後に見る景色なんてこんなものか……


「すまねえ、もう時間がねえよ。」

『え―――』

「これで本当のお別れだ。嬢ちゃんと出会てよかった。

 ありがとよ。

 色々と楽しかった―――」

『……』

「大丈夫だ、アンタなら俺がいなくてもやっていける。

 俺の死すら、力に変えてな……」

『……』

「なぁ、嬢ちゃん……」

『私も………楽しかった…』

「――――!ヘヘ、そうか、それはよかった。

 じゃ、じゃあ、元気……で―――――」


 息が止まる、限界が来たようだ。


『ロ…ロル?』


 フン、別れの言葉を最後まで言えないなんで、今まで悪さしてきたツケがまわってきたか。

 もう、ピクリとも動かない――心臓が止まって肉体が冷たくなっていく―――


 フフッ、俺は、新アトランティス人…四天刃・隠将、エメラルド・スペード。

 ゴッフォーン様から与えられた、偉大なる使命…

 『最強の魔女クロイツェン・ママゴンネードの復活』

 それを達成する事が、この俺の最大の目標。俺の、最大の幸福。





 だと、思っていた―――――――――――――――――――…………






新アトランティス帝国『四天刃』

隠将エメラルド・スペード/無線サポート怪盗ロル―――――――――――死亡。

◆その他人物名鑑◆ #4

エメラルド・グラン(エメラルド・ハート)


人種――――――アトランティス人

二つ名―――――隠将

年齢――――――25歳

身長――――――155cm

所属――――――新アトランティス帝国


新アトランティス帝国四天刃の1人。

無線のロルの正体で、7年間シルバーを監視していた。

四天刃とゴールドは全員が一つの母体より生み出された兄弟であり、

  長男 エメラルド・グラン。26歳。

  長女 ルビー・グラン。25歳。

  次男 アクアマリン・グラン。24歳。

  三男 トパーズ・グラン。23歳。

  次女 セクンダー・グラン。21歳。

ということになっている。

(ゴールドが王に選ばれたのは、この中で一番王に適した性格をしていたから。)


【カース・アーツ】は【装備型】の【ビショップ・オブ・ヘルレーダー】

 宝石型で契約者は半径150m以内の情報を正確に取得できる。

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