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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第六章 ストーン・トラベルは終わりを告げる
60/75

第59話 策謀張り巡らす者たち

  1


 公園に時計台が立っている。

 時計の短針は2時の方向。

 いつもなら、人がにぎわうこの岐阜県岐阜市だが、全ての人間が洗脳されている為か今日はしずかであった。

 ビルの瓦礫の中の柱に、怪盗シルバーが十字に張り付けられている。

 半目のまま、地面の方をずっと見据えている。

 死んではいないようだが、何か、無気味だ。

 磔の4m前には瓦礫の玉座に脚を組んで座るエンペラー・ゴールド。

 そしてエメラルド・スペード。


「ゴールド様、位置が少しズレてしまってる。

 そのまま奴隷たちを八時の方向に進ませないと。(エメ)」

「……(ゴ)」


 指示を聞くとゴールドは、瞬きの一瞬だけエメラルドの足元を見て、目を狐のように細めながら頬杖を突きはじめる。

 何を考えているのかは、誰にもわからない。

 暫くすると、彼女(彼?)の表情に変化が生まれる。

 2度の息を吐いた後であった。目は大きく見開かれ、口角が若干上がりはじめる。

 そして頬杖をつくために握っていた拳を緩やかに開き、胸の前に付きだし、勢いよく振り上げる。


 すると、目の前の瓦礫が崩れ、人の群れが飛び出してくる。全員血まみれで、目の焦点はあっていない。


「ぬあああああああああああ!!!」


 一番先頭の人間の右手には、虹髪の女の首が握られていた。

 絶望と恐怖の表情をしている。


「フ…これでこの街にいるマレフィカルムの生き残りは全て始末した。

 フフ、やっぱり役に立つねェ――君のその、特定位置から100数m内のあらゆる物質の位置を完全に把握できるそのサーチ系能力………」

「フフ…これ以上ない褒め言葉ですよ。で、どうします?

 俺の能力、【ビショップ・オブ・ヘルレーダー】は、既に最後の【D・D・F】を捉えてますぜ。」

「急ぐこともない、どうせ奴らに逃げ場所は無い。」


 ゴールドが左腕を掲げ、親指の先を背後の柱に縛りつけられたシルバーに向ける。


「だから必ずやってくる。」



 同時刻。

 とある一軒家のコンクリートガレージの中に、二人の男女が立っていた。

 シャッターは閉ざされている。


 女は俯きになりながらガレージの壁に手を添え、男は腕を組みながらその横の壁にもたれている。

 睦月とエクサタだ。

 二人とも、ビルの倒壊から逃れる事が出来たのだ。


 睦月が左手に持った【D・D・F】をぎゅうっと握り締める。

 そして右手でガレージの壁に触れる。

 エクサタが耐性を低くして睦月の顔を覗く。

 睦月は体を小刻みに震わせ汗をかいていた。口を強く閉じ、目を細めていた。


「シルバー………。」


 睦月が顔を上げ、左手を前に突き出す。

 すると、【ダーク・ウォーカー】の能力が発動し、石床の手の影がかかっている面に無数の『蟻』が出現する。

 左手の中指をガレージ内の車の前に突き出すと同時に、『蟻』たちはその方向に走っていった。


「……」

「【ダーク・ウォーカー】の目を通して状況を見ていたが、状況はさらに悪化。

 奴らはついに4つ目の【D・D・F】を見つけてしまった……シルバーも人質にとられてる…」


 『蟻』が車の中から折り畳み傘を持ち出し、睦月の服のベルトに挟み込む。


「エクサタ君、状況は最悪だ。」


 聞くとエクサタが携帯端末を取り出し、ポチポチとボタンを押し始め、画面を睦月に見せつける。


<―――……睦月殿、一つ疑問がある。>


「………何?」


<何故…シルバー殿を助けようとしているのだ?

 彼女は何れ死ぬ。【D・D・F】で誰かが願いを叶えた時点で、その命は燃え尽き果てる。>


 ぱちくりと目を開け、自分の頭を撫でる睦月。


「なら、どうしろと。」


<【D・D・F】を集める事、それが我々が何より優先すべき事だ。>


「……私は、シルバーをあのまま死なせておく事なんて出来ない……

 死は単純じゃない…死にも『格差』がある…

 『絶望の中一人ぼっちで死ぬ』のと、『暖かい腕の中で看取られ笑いながら逝ける』のとではどうしようもない程の差が…」

「――――!」


 睦月から視線を反らす。

 ニーズエルの事を思い出したのだ。


「?」


<―――いい案がある。

 【D・D・F】はどんな望みでも叶えられるなら……その伝説が真実なら、

 何より優先すべき事は………【D・D・F】の全回収……

 そして、肝心なのは、その願い……>

「?????????????????????????????

 何を考えている――――エクサタ君。」


PLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL!!!!!!!


「あっ、ロ、ロルさんから!!」


 睦月が携帯端末をポケットから取り出し、耳に当てる。

 それがあのエメラルド・スペードの正体とは知らずに。


「ご、御免なさい、通話、切れちゃってたみたいで……」


『いや、こちらから会話は聞き取っていた。

 そういえば睦月の嬢ちゃん、シルバーはクラーケって【悪魔】に取りつかれていたと

 そう言っていたな。』

「うん、レンガ・ウーマンは確かにそう言っていた。」

『なるほど、それなら…』

「ん?」

『後睦月、お前達の潜んでるガレージだが…そこに潜むのは

 マズイかもしれん。』

「…何かあったのですか。」

『耳を澄まして辺りの音をよく聞き取れ…車が突っ込んでくる…』

「!!!」


 ンキュップィイィィィ―――――ッッン!!!!

 ドンゴン!!!


 ガレージのシャッターがひしゃげた!!!!!


「――――く、車も操れるのか!?いや、人間を操作できるのなら、

 人間の乗り物は何でも操れるのか!!」

「…」


 ひしゃげシャッターと地面の間に20cmほどの隙間が出来、間から洗脳された人間たちが強引に入ってくる。

 二人が静かに後ずさりながらガレージの裏口に近づく。


「裏口はガレージの上の家に繋がっている。ロルさん、状況は?」


『家の中には洗脳された人間が30人。待ち伏せているぜ。全員武器持ちだ。』


「外に出れば弾丸の動きを操る『スナイパー』の狙いうちにされる…どうする…?」



 場面は再びゴールドたちの方に移る。


「タイミングもぴったりですぜ。例の東結がついに感づいたようだ。」

「作戦通りだな。フフ、この逢う瀬を待っていたヨ…

 これで睦月たちと東結は逢う瀬する…」

「…そしてそれこそが、我々の目的。我々の勝利への第一歩!!」

「フフ、我々新アトランティスの民はゴッフォーン様の意思の道具だが……

 彼等はまさに道具の道具だよ。」



 キュイイー――――――ン!!!!!

 睦月たちの目の前、シャッターの下にいる洗脳兵を氷のツタが包み込む!!!


「……!?」


 別の氷のツタが、シャッターを持ち上げる。すると、一人の男の姿があった。

 その男、外見は40代ぐらいのファッションセンスがゴミのオッサンだった…

 睦月が咄嗟に【D・D・F】をそいつに見えないように隠す。


「だれっ……いや、貴方は……『東結金次郎』!!!!」


「――――俺を知ってるのか?」


「テレビで見たことがある……」


「成程ね~。」


 東結が、ライターを取りだし、タバコに火をつける。

 睦月たちが、一歩下がる。


 本物の東結金次郎。彼は確か…シルバーたちを虐奈の手から庇ったはずだが…

 どうやら命からがら生きていたらしい。


「その間合いの取り方、アンタら【カース・アーツ使い】だな。

 しかしマレフィカルムの探偵じゃない。

 顔を見たことが無いからな。

 そっちのイケメンなんかは一度顔を見たら絶対に忘れるこたぁねぇ。

 シルバー達の仲間か。」


 東結が睦月に向かって指を指す。


「……!!」

「そいえばそっちのアンタ、俺がここに入る時咄嗟に何かを隠したな。

 黒っぽい何かだ。俺も見覚えがある何か……

 【D・D・F】だな。」


 トコン…………

 東結が一歩歩く。ガレージの影の中だ。


「それ以上近づくなッ!!」


 睦月が壁に手を当てる。エクサタが足を構える。


「………」


 東結が、睦月たちに背後を見せ、ガレージの外に出る。

 そして右腕を伸ばし向かって右側の方に指をピンと刺した。


「こっち側だ。

 この場所から逃げるなら。こっち側がいい。

 洗脳兵は、あらかた俺の氷で封じてある。アンタらの能力なら、

 なんとかこの悪魔の街から逃れる事が出来るだろう。」

「どういう意味だ…【D・D・F】はいらないの?私達を殺さないの?」

「殺すならとっくにやってるさ。それに、俺は願いが如何とか、

 そんなものには興味はねェよ。」


 東結が左側に歩き出し、姿を消す。


「じゃあな。おっちゃんは健闘を祈ってるぜ。」


「なっ―――そっちは、ゴールドのいる方向……」


――――――――………


「な、何なんだアイツは……何がしたいんだ?」


<睦月殿……>


 メッセージが送られる。

 睦月がエクサタの顔を見る。


「エクサタ君?」


<エクス殿は……あの廃デパート内で、東結と戦った時の事を、

 俺やニーズに話していてくれていた。

 エクス殿は、彼の事を、一般人の限界と知恵、倫理観、正義を持つ、

 普通の探偵とは違う人間だと言っていた。

 そして助けられたとも…>


「…………も、文字打つの…早いね。でも、なるほど…」


 睦月たちはガレージの外に行き、東結の姿を確認する。

 彼は洗脳兵達に囲まれていた。

 しかし彼はそんな洗脳兵達を一切傷つける事なく、氷の能力で一人残らず拘束していた。


「―――こ、殺していないのか……?」

『ああ、さっきからアイツ、一人も殺さずにここまで来てたんだぜ。

 ホントおかしな奴だ。三羅偵なのに、他の奴らとはまるで違う。

 行ってやったらどうだ、睦月。エクサタ。』

「――――!!」


 ロルの声が挟まる。

 睦月通話中だったのを忘れていて驚く。


「…奴に気があれば私達はガレージ内で簡単にやられていた筈だ…

 それにもう時間がない、私達はなりふりかまってはいられない。」


 睦月とエクサタが東結を追いかける。


「待って!」


「フ!着いてくるのか!ここから先は地獄だぜ!」


「何処に行ってももう地獄だよ!

 そんな事より―――なんだ、お前は!何が目的なんだ!」


 東結が氷で捕まえた洗脳兵の肩を掴む。


「そんな事言うまでも無いだろ!俺の目的は誰もが思う事さ!

 こいつらを操ってる奴をぶん殴ってこいつらを助けてやる!

 それ以外には無ぇ!」


「―――!!」


「………アンタはこの先に何の用があるんだ?【D・D・F】を集める為か?」


「………親友が囚われている。助けに行きたい。」


「フ……そうか、やっぱり、おめぇら、悪い奴じゃないな。

 あのガレージの中でも洗脳兵達とも、

 なるべく戦わないように立ち振る舞っていた。」


「……」


「来るなら好きにしろ。敵は強大にして邪悪だ、俺も仲間が欲しい。」


「どうやら、本当に私達と戦う気は無いんだな。」


「俺は穏健派だ。

 そもそも俺がてめえらを襲ったのは百賭様に四揮を解放させない為であってな…」


 東結の横に、エクサタと睦月が並び立つ。

 東結が、エクサタの顔を下から覗きこむ、すると……彼の顔が真っ赤になった。


「あら!!!!!まぁ!!!!!!!」

「(睦月)!?…東結……どうした?何をしているんだ?」


 東結がエクサタ首の後ろに腕を回し肩を組む。


「????????」

「な、何を!!エクサタ君に何をするつもり……」


 東結が女モードになる。


「いい顔よ―――アンタ、エクサタというのね…なんて私好みの顔なの……

 可愛がりてェ……ねぇ、エクサタ、女装に興味は無い?

 良い男ほど、心の中に女がある…

 だから、イケメンほど女装をするべきなの…わかるわね?」


「(????????????????????????????)」


(シルバーは、東結金次郎がオカマだったと言っていた。

 つまり、こいつは―――多分、いや、間違いなく、そっちの気がある…!!

 このままではアレが始まってしまうのでは……!?!?)


 がばっ!!

 赤面した睦月がエクサタを東結から引きはがす。


「お、おいおい…良い所だったのに!」

「あ…怪しい動きはするな!私達はまだお前を完全に信頼しているわけではない!」

「………」


「ところで探偵、一つ気になる事が…」

「なんだい?」

「何故走らないんだ?何か理由でも…」


「先のシルバー達との戦いで足を負傷した」


 東結がズボンをめくる。


「なっーー!」


 そこには、半透明の義足があった。


 睦月とエクサタは、この目の前にいる男が只者で無いと再認識する。

 東結が苦い笑いをする。氷の義足と肉足の境界は醜く赤く染まっている。


「…」


 一方で近くのビルの屋上には、腕を組んでそれを眺める女探偵の影。


「Aaaaryyyyyyyyy………【奴】の命令があったから…生かしてやったが…

 本当に、あの死体同然の男に利用価値なんてあるのかな?」


 携帯端末を片手に持つ、ロンカロンカの妹・乱渦院 虐奈。


「あはは!この場にいる…全員が死ね…Aaaryy………」



――――――――――――――――――――――――――――つづく。

―――――――――――――岐阜市での【D・D・F】争奪戦


睦月/エクサタ        【D・D・F】所持数―――――1

セクンダー・グラン     【D・D・F】所持数―――――4

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