第57話 格闘戦
あらすじ:
悪魔と契約し、新たな力を手に入れたシルバーはレンガ・ウーマンを撃破し、百賭をついに追い詰める!
しかしそこに最後の四天刃エメラルド・スペードの凶弾が迫る!!
<現状解説!!!>
シルバー 「現在ビルの2Fで百賭と交戦中!百賭を倒して【D・D・F】を手に入れる!」
百賭 「現在ビルの2Fでシルバーと交戦中!
シルバーを倒して【D・D・F】を手に入れれば
記録の再生によって全ての【D・D・F】を揃え願いを叶える事が出来る!」
睦月とエクサタ「シルバーのいるビルの中に潜伏し、ロルと通話しながら
シルバーをサポート中!」
ロル 「どこか遠くにいる。睦月の位置から150m内の状況を
無線でシルバーたちに知らせているぜ!」
エメラルド 「シルバー達がいるビルの300m先にいる。建物の屋上から
銃弾の軌道を制御できるスナイパーライフルで
シルバー達を狙撃するぜ!位置もわかる!」
ゴールド 「どこかに潜伏中。」
<2発の銃声>
俺の名はエメラルド・スペード。ゴールド様の為だけに生きる【四天刃】の一人。
とはいっても、そんなに窮屈な人生は歩んでいなかった。
親父の資産がかなりあったので比較的自由な生活が出来たし、武器、メシ、バイオリン、仲間、欲しいものは何でも手に入った。
だが、一つだけ手に入らなかったものがある。
そいつは、『女』だ。アイツは、青天の下に咲く桃色の桜の花びらのように可憐で、オオルリの鳴き声のように俺の心を躍らせる。
<2発の銃声>
だが、この恋は認められない。
性別と言う概念を汚らわしいとしている新アトランティス人の掟では恋なんていう下等な行為は許されない。
それが『宿敵』であったらならなおさらだ。
それに今、これ以上の栄誉があるか。
俺の活躍によって、ゴールド様は今、5つの【D・D・F】全てを手に入れる直前まで来ている。
<銃声>
だから、この銃弾が俺の気持ちだ。
<銃声>
この銃弾が花束だ。
<銃声>
この銃弾が愛だ。
――――……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
自在の機動をする銃弾のスナイプ。
その前に血まみれのシルバーと百賭。
互いに片腕が千切れ落ちている。
満身創痍と言ったところだ。
シルバーは百賭のいる部屋から一歩出て、壁にもたれかけ、携帯端末を耳に当てている。
「ハァッ……!!ハァ……ッ!!
睦月―――このスナイパーの敵は今どこにいるの!?
ロルのサーチ範囲内?」
『う、うん、"ロル"によればこのビルの屋上からライフルを撃ってるみたい…』
「このビルの屋上だと…?」
『うん、だから、今私とエクサタ君はそこに向かってるの。
私たち二人でそいつをを撃破する!』
シルバーの背後を『二発の銃弾』が通り抜ける。
弾丸の軌道が曲がり、二弾とも百賭に向かって飛んでいく。
百賭はそれを【ホワイト・キネシス】で弾き飛ばす。
二人とも集中すれば、スナイパーライフルの弾如き叩き落すのはたやすい。
だが、シルバーと百賭は互いに敵。
わずかでも隙を見せれば、命の危機がある。
攻めに攻めれぬ状況。
シルバーが血を吐きながら睦月にアドバイスをする。
「ゲホッ……
気を付けて―――スナイパーは恐らく、エクサタやニーズエルを襲った、『四天刃』とやらの一人―――いや二人かも…」
『ふ…二人?』
「『弾丸の軌道を自由に制御できる能力』…
だけどその弾丸の軌道…私達のいる部屋にたどり着くまでは
正確な動きをしているんだけど、動いている物体には確実には『命中しない』。
高確率で動く前の位置に命中する。おそらく、弾丸自体には『目』が無いの。
とはいっても、なんとか急所へのダメージは避けられるぐらいで余裕はないけどね……」
『なるほど、二人の位置を探ってるのは別の【カース・アーツ】と…
ロルさんの【ザ・レーダー】のような…』
再度シルバーの背後を3発の銃弾が通り抜ける。
弾丸の軌道が曲がり、3弾とも百賭に向かって飛んでいくが、【ホワイト・キネシス】で全て弾き落とされる。
「『銃弾の軌道を操る能力』と『サーチ能力』のコンボ。
この可能性が高い。
なんにせよ――慎重に行かなくては…。」
『―――成程。シルバーの方は、大丈夫なのか。』
「今のところはね。
『スナイパー』の狙いは、どうやら私では無く、百賭の方らしい。
百賭の様子が変わった…取りあえず、電話切るわよ。」
シルバーが、百賭の方を向き、気づく。
百賭は既に、銃弾の動きの対応に慣れ始めている。
もはやスナイパーは百賭の敵ではない。
「だけどあいつは銃弾防御のため…【ホワイト・キネシス】を動かすエネルギーに100%のパワーを使っている。
つまり、今奴は時を再生する能力を発動できない。」
瞬間、シルバーが殺気を感じる。
シルバーが一歩退く、すると……
ドンゴンッ!!!!
二人の間を遮る壁が爆発ッ!!!砕けた壁の散弾がシルバーに襲い掛かるッ!!
来た!!
ついに百賭が攻勢に周ってきた!!!
ガキンッ!!
シルバーが【デモニック・スカーフ】で散弾をすべて叩き落とすッ!!
「クッ……」
ガッ!!!!
【デモニック・スカーフ】と【ホワイト・キネシス】がぶつかり、互いに押し合う!!
シルバーと百賭が最後の対峙をする――――!!!
押されているのはシルバーだ!!
「押し込めない!バカな、パワーは私の方が、いや…!」
「お前の【デモニック・スカーフ】のいなし方、分かってきたぜ?
パワーは貴様の方が上だろうが…やはり経験。
長い戦場での経験で得た精密さとコントロールがあれば貴様のスカーフにも十分対応できる。
もうその悪魔の刃はこれ以上押しこめん……」
「…!だけど、アンタの白槍もこれ以上押し込めないようね…」
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!!!!!!
4つの槍と剣がぶつかり合う火花ので、血まみれの光と影が距離を狭める。
「超常の力は同一だぞ――――
これでは【カース・アーツ】も悪魔の力も役に立たない……
ならば、ここで勝敗を決するのは―――」
「肉体の力―――」
百賭が自分の上着に手をかけ、引きちぎって無理やり脱いだ。
内側から黒い無地の長袖のシャツが露出する。
「いや、意志の力だ!!!」
ドンゴン!!!!
槍と刃が弾きあう中、互いにパンチを繰り出す!!!
互いの拳は交差し入った!!二人の顔面に重き一発が!!!!
「ぐおおおおッ!(マズい、体のパワーは百賭の方が高い!)」
「皮肉だなシルバー!こうして【カース・アーツ】の頂点を極めた能力者同士の最期の対決が、ガキのケンカだとはな!!」
シルバーの全身が前後に揺れている…
そしてしばらくすると前に倒れて百賭の服の襟をつかみ―――
「フーッ!フーッ!おおおおおおっ!」
肩を殴るッ!!!
「シルバー!!俺の名を教えてやろう!!!
俺は百賭に作り出されし新人格・エンゲル<天使>!!!
天使に人間が勝てるか!?」
「生涯の宿敵・夜調牙百賭!!!私が会いたいのはアイツなのに
お前はそれを邪魔しやがる!!!ならば殺すしかないわ!!!」
「いいぞその目その顔その気迫!!
だがアトランティスの体は所詮3500年前の旧産物!!
この百賭が一歩リードしておるわ!!!」
アトランティスの体、いい筋肉をしている。
しかし百賭の体は人工的に生み出されたバイオロイド!
シルバーの一歩上を行く、最強のファイターの肉体!
バキュン!!!バキュン!!!
エメラルド・スペードの撃った凶弾―――
狙いは百賭だが、百賭は押し合いの中、わざとシルバーの体勢を崩させ、凶弾の対象をずらす。
向かうシルバーがそれを【デモニック・スカーフ】で凶弾を叩き落す!!!
ダンッ!だがそこに隙を見た!!
百賭が大きく床を脚で叩き、【ホワイト・キネシス】をシルバーに叩き込もうとするが――
かわす!!
「これもよける?これも?これも?…じゃあこれは………」
「………」
「ヌアアアア―ッッッ!!!」
百賭がナイフを取り出し、シルバーの頭に向ける。
それを確認したシルバーを手の甲を百賭けの方に向ける。
動脈を刃で切られないように構えたのだ。
「ハァッ!!!!」
力の限りを尽くしてシルバーに向かってナイフを突きこむ!!!!
しかしシルバーはそれを腕で受け流してかわす!!!
ナイフはシルバーの背後にあった壁に刺さり砕け散る!!!
そして―――二人は互いの服の襟をつかみ、互いに強烈な頭突きをかます!!!
「……ッッッ!!!」
脳震盪を起こしたのは、シルバーだ。
「次はどうしようか」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「馬鹿な――――外れたッ……」
―――岐阜県、シルバー達のいる場所から300m離れたビルの屋上。
この戦いで焦っていたのは、意外にもスナイパーの方であった。
「ま、まただ………防御された………」
汗をかいて焦るエメラルド・スペード。
自分の銃弾が当たらない。
位置も完璧、スナイプも完璧。
なのに当たらない。
「ふーっ……ふーっ……落ち着け……」
エメラルドが自分の胸に手を当て深呼吸をする。
「――――片や、仲間のサポートがあったとはいえロンカロンカとレンガ・ウーマンを知略で倒した銀の怪盗。
片や、探偵協会最強クラスの【カースアーツ使い】。
『俺達』のスナイプ如きを見切るのは当然のこと……。
だが、落ち着け……まだ打つ手はある………」
空を飛ぶオウムが、エメラルド・スペードに語りかける。
『ねぇ、どうなってるの。なかなか、決着がつかないようだケド?』
目を大きく開き、エメラルド・スペードが息を吐きながら、汗をハンカチでふき取る。
「奴ら想像よりかなりやるみたいですぜ。ですが大丈夫です御大将、既に――奴らを倒す策はある。」
『ふぅん。』
エメラルドの肩にオウムがとまる。
『まさか奴らのどちらかが倒れるまで粘った所で銃弾を命中させて『漁夫の利』を得ようとする作戦ではないよねェ?』
「まさか、もう銃弾は通用しませんよ。
この能力は長距離攻撃は出来るが攻撃パターンが限られている。既に動きは読まれているでしょう。」
『それがわかっているならまあイイ。そんな事より―――ボクもそろそろ動く事にする。』
キュイーン!
Z戦士が他作品のキャラとまぐわっているクロスオーバーエロ画像を初めて見た時のような驚きショックがエメラルドの心を襲った。
瞼を大きく開き、正面を見据える右目の向きをそのままにしながら、左目で肩に止まったオウムを注視する。
『なんですって……王<キング>―――ゴールド様が直接動くのですか?」
「二人がくたばった後、近くにいる怪盗の仲間二人は【D・D・F】を回収するために必ず先手をうってくる。
そうなると厄介だ。
指導者を失ったネズミは何をしでかすかわからんからね。』
「成程、追い詰められたネズミは猫をも噛む…
ですがそれならゴールド様直々に向かう事もないでしょうよ、
洗脳兵を送りこめば…。」
『いや、奴らでは力不足だ。
人間の限界を無視した動きが出来るとはいえ
【バフボトル(増呪酒)】を飲んだあいつらに比べると足も遅い。それに―――――』
「それに…?」
『例の…『東結金次郎』が、この決戦の地に向かってきている。』
「な………」
Vooooooo…!
「馬鹿なッ!!あの男は味方の探偵の虐奈にやられて!!」
『ああ見えてもアイツは三羅偵だ。何かしたのだろう。
取りあえず東結は今、ボクの洗脳兵を氷で束縛しながらこのバトルフィールドに一歩一歩近づいてくる。
まだ君の"サーチ範囲外"ではあるが……』
スゥッ……っとエメラルドが息を吸う。
『奴の能力の弱点はわからない。
奴と怪盗共の戦いはボクが十字を発動させる前に終わったからね。
ここにきて本当に予想外だよ。99%当たる宝くじでスカを引いた気分だ。
ハッキリ言って今は百賭やシルバーより警戒すべき相手だ。』
「どうします、【クイーン・オブ・ヘルスナイパー】を持っていきますかい?」
エメラルドが両手に持った銃についている紫色の装飾を手で掴む。
『頭を使え。それが無ければ君は狙撃が出来ない。』
「しかしゴールド様…」
『大丈夫さ、先祖様達の事を考えると、体に熱いパワーが沸いてくるんだ。
弯曲十字とこの体だけでも十分やれる。
いざとなればシルバーのような奥の手を使えばいい。』
「……わかりました、御大将の意のままに……。(しかし、東結か……!!本来ならオレが戦うはずだったが……)」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どうだ?どうだ?どうだ?
どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?
どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?
どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?どうだ?
上段蹴りの構えから、フェイントで下段蹴り。
口から仕込み針を吹き、避けたところにかかと落とし。
チョップをあえて防御させ、指に仕込んだナイフで切りつける。
そうではないぞ?
こっちからくるぞ?
百賭の多彩な格闘術。その前に、シルバーが倒れる。
生身での戦いでは百賭に分がある。
「………『まさか』、という思いは、戦場において最も恐ろしい………」
「――――――」
VOOOOOOOOOOOOOOOOooooooooooooooooooooooo
「首を千切るぞ?シルバー!!!」
「――――――――
(あの女は、絶対に折れなかった。誰よりも強い精神を持っていた。)」
百賭が倒れたシルバーの顔面目掛け殴りかかる!!!
しかしシルバーは直撃する寸前に手を掴んでそれをガードする!!!
「何……?」
「第二………ラウンドだ――――」
鷹のように、悪魔のように、
そして鋭くとがった目で――――銀の怪盗は敵の瞳の奥を見据える。
「馬鹿な、お前にはもう、そんなパワーは残っていないはず――
それにその『絶望を知らぬ鷹のような目』―――まさか」
「――――――」
シルバーが手を離し、百賭けに向かって歩き出す………
「――――!!!これは!!!」
「――――――――――――
(あの化物は、誰よりも強い殺意を持っていた―――!!!)」
シルバーが血が出るほどに拳を握りしめ、百賭にアッパーをかます!!!
「この憎しみと殺意が込められた攻撃動作――――――!!!」
「おおおおおおおおおおおおお――――ッ!!」
命中した!!百賭吹き飛ぶ!!!
「『乱渦院論夏』と『イリーゼ・ライシャワー』ッッ!!!!」
(………ならアイツらを心の底から心底憎む私も
――勝たなければならない―――!!!)
百賭がふわっっと着地し、シルバーの顔を見る。
「……!」
―――ロンカロンカのように鋭くとがった目がある。
シルバーが吹き飛んだ百賭に回し蹴りを横腹にかまし、取り出した石のブーメランを百賭の右肩に突き刺す!!!!
「経緯の力か…宿敵にも捧げられる経緯…
だが、次はだれに敬意を払う?」
百賭がナイフを取りだし、シルバーの腹を突き刺す!!
シルバーは瞬時に刺された部分を石化し、ナイフを固定するッ!!
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ」」




