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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第五章 ロスト・マイ・ハート&キャッチ・マイ・ドリーム
54/75

第53話 黒百合の詩に漆黒の太陽を重ねて⑤

 レンガ・ウーマンが失った右腕を再生しようとするが、シルバーはすかさず【ストーン・トラベル】を発動。

 傷口に血を石化し、それを妨害する。


「…………」

「【ストーン・トラベル】で再生妨害をするのは、これが最後よ。

 2度目だから、まだ若干効いているけど、あなたの成長スピードなら…3度目の妨害は出来ない。」


「アアア……妨害は……うざったい……

 怨念があふれる………!!!極まる………!!!」


 だがそのことがかえってこの女の恨みを強くし、そして極めさせていくのだ!

 レンガ・ウーマンの腹から、指が生えた!!

 何かが……何かが生まれ始めている!

 その瞬間、全員に悪寒が走った!!

 この岐阜にいる全員に、凶悪な殺意が伝わった!!


「なるほど……【イリーゼ・フィアー】の終着点が見えてきた。」


 ふと、シルバーが汗を流しながらそう言う。

 睦月はただ倒れながら息をのんでいる。


「奴の中の魂が……『増幅』しているのを感じるの。

 レンガ・ウーマンは今、その強すぎる怨念を分散させようとしている。

 そしてそれは奴が増殖し続けていることを意味する!」

「増殖って……レンガ・ウーマンが…2体にも3体にも増えるってことか…!?」

「そんなもんですむもんですか…ひょっとしたら、10体にも100体にも…

 いや、1000万だってありえる…奴の恨みの深さを考えると……」


 ∞の殺意。

 それがレンガ・ウーマンの力。

 それを本体として、全ての人間を殺し尽くすまで分身する。

 無限に、無限大に。

 そしてその悪夢が今、始まりつつあるのだ。

 あと1分で、2人目のレンガ・ウーマンが誕生する。


 睦月も、シルバーは恐怖を見せる。


 突如ゴールドの配下の洗脳兵が道の向こうより200人ほど出現する!!

 この状況に危機を憶えているのだ、新アトランティスの帝王も!!

 だがレンガ・ウーマンは無言でレンガを投擲!

 【イリーゼ・フィアー・ブリック・オブ・ゴッデス】で200人を一撃で皆殺しにする!


 シルバーは、その状況を冷静に見据えていた。澄んだ目で。


「今、私の頭の中には、使命以上の感情が渦巻いているわ。

 何だこの感情は怒り?憎しみ…そんなもの足枷にしかならないと思ってたのに…今は、それが武器のように、思える。」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 レンガ・ウーマンの体が恨みでさらに大きくなる。2m30㎝から3mまで成長。


「レンガ・ウーマン………終わりにしよう。お前の狂想を。お前の生きる意志を!!」

「ヌワギャアア!!!」

 最終決戦!!

 シルバー!!!!!VSレンガ・ウーーーーーーーーーーマァァァンッッッ!!!!


 レンガで折られた【デモニック・スカーフ】の刃が復活する!!!

 だがレンガ・ウーマンの右腕も復活!!!

 両者再び万全の体制に戻り仕切り直し!


 先手は、シルバー!!【PNGトランプカッター】を投擲してレンガ・ウーマンの体をバラバラにする!!!

 シルバー!!!!シルバー!!!!シルバー!!!!


 しかしレンガ・ウーマン凄まじいスピードで再生する!!!

 レンガ!!!レンガ!!!レンガ!!!


 シルバーが睦月のいる場所まで下がる!!

「今は片腕!!トランプを持っていれば、レンガを振るえない。レンガを持っていれば、トランプを投げられない!……睦月…立てる!?」


「あ、ああ…!!」


「お前がトランプを持って、奴の足止めをしてくれ――――」


 おおおおおおおおおおおおおおおおおーーー!!!

 レンガ・ウーマンが時速150㎞で走ってくる!!!!

 ダークネスパワー!!レンガパゥワァァァァアァァァー!!


 シルバー、睦月にトランプを渡す!!


「残り2枚か―――――――――柄は、ジョーカー。」


「―――――行くぞ。チャンスを見切れ。」


 レンガ・ウーマンの両腕が復活するッ!!

 睦月すかさずトランプを投げその両腕を切断するッ!!


 そして、その隙を見計らって、

 シルバーはウーマンに近づきレンガを振り上げる!!!

 HEY!HEY!HEY!


 しかし―――――――――――――――


 瞬時、レンガ・ウーマンの体が消えるッ!!!!!


「―――――――――!!!」


「あーーーーーーーーーーーーはっはっはっはっはっは!!!!!!

 さぁ、レンガはいかが?」


 瞬間移動したのだッ!!エクスの戦いの時に見せた瞬間移動能力ッ!!

 レンガ・ウーマンシルバーの5m上に瞬間移動し、腕を再生させて

 レンガを振り上げるッ!!!


「レンガをどうぞ――――――――――」


 しかし―――――――――瞬時、金色に輝く衝撃波が、

 振りかぶったレンガを吹き飛ばし、攻撃が、逸れる!!!


「何ッ!?」


「フッ………随分と、遅かったじゃないか。」


 エクサタ。シルバー達の背後に、エクサタが現れた!?


「…………」

(俺とニーズエル殿の初めての出会いは、夜行電車の中だった。ニーズエル殿は、絶望した表情で、座席の上で横になっていた……

 -――――俺も、家族を失い絶望していた。あの人の意思は―――俺の意思だ――――もう二度と、失う訳にはいかない。

 そして、【D・D・F】を手に入れて――――全てを――――)


 レンガ・ウーマンが空中から左手に持ったレンガを振り下ろす!!!

 しかしシルバーそれを防御するッ!!!

 手に持っているそれは―――――――――【D・D・F】!!!


「【D・D・F】は――――――如何なる方法をもってしても砕け散らない

 呪いの宝石――――お前との戦いで、こうやって防御に使おうと思っていた。

 まぁ壊れて呉れたらそれはそれで有難かったんだけど。」


 レンガ・ウーマンが、地に落ちる。


 シルバーが、レンガ・ウーマンの体を【デモニック・スカーフ】で押さえ、

 レンガを振りかぶる。


「そして能力のコピーと同じく、あの瞬間移動も、そう何度も乱発できるような

 ものではないらしいな。」


「あ―――――――アアア―――――――――!!!!

 あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 レンガ・ウーマンが恐怖する―――――――――

 そして、思い返す―――――――あの夜を、全てを失ったあの夜を――――


 何も悪い事をしていないのに―――――――――殺された、理不尽な夜を。


 身長2m以上の"あいつ"と、シルバーの姿が重なる!!


------------------------------------------------------------------------

         本当に 理不尽であっただろうか


      本当に 何も悪い事はしていなかったのだろうか


        "あいつ"の顔は暗くてよく見えなかったが


         "あいつ"は お前の知る人物だったぞ


         お前が"報復"で殺した 友人の親戚


           お前は悪だから死んだんだ


          お前は恨まれたから死んだんだ

------------------------------------------------------------------------

 だが、そんな事をレンガ・ウーマンは知る由も無い。

 この後もずっとずっと、何も知らずに被害者ぶって、全ての人間が死ぬまで殺し続けるのだろう。


「脳髄を―――――――――――ブチまけろ。」


 そして―――――――恨まれ続けるのだろう。


「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」



 シルバーのレンガが、イリーゼの脳を打ち砕く。

 イリーゼの体が爆裂するッ!!!!!!!!!!!

 炎で燃え上がるッ!!!!!!!!!!!!!


「ば――――――――――馬鹿なッ!!!

 この私がッ!!!!この無敵のカース・アーツを持つ私がッ!!!

 こんな事はあってはならない、私は――――――世界なのにッ!!!!


 フ――――――――フフフ―――――――――――

 だが私はいつでも復活する………この世にカースミラーがある限り―――

 この世に私の恨みを認めてくれるシステムがある限り―――――――」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!


「                    ■       ■   

 ■■■■   ■     ■■    ■■      ■■   

■   ■■  ■     ■■    ■■      ■■   

■       ■     ■■   ■■ ■    ■■ ■  

■■■     ■     ■■   ■  ■    ■  ■  

  ■■■   ■■■■■■■■   ■  ■■   ■  ■■ 

    ■■  ■     ■■  ■■■■■■  ■■■■■■ 

     ■  ■     ■■  ■    ■  ■    ■ 

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 ■■■■   ■     ■■ ■      ■■      ■


    ■       ■       ■       ■   

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  ■  ■    ■  ■    ■  ■    ■  ■  

  ■  ■■   ■  ■■   ■  ■■   ■  ■■ 

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 ■    ■  ■    ■  ■    ■  ■    ■ 

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  ■  ■    ■  ■        ■      ■

  ■  ■■   ■  ■■       ■      ■

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 ■    ■  ■    ■                     

■■    ■■■■    ■■      ■      ■

■      ■■      ■      ■      ■   」







マッレウス・マレフィカルム日本支部『三羅偵』

黒百合探偵レンガ・ウーマン(イリーゼ・ライシャワー)/黒霧四揮

―――――――――――――――――――――――――――死亡。








 空が晴れた。

 白い太陽が、顔を見せる。



「う…………うう……シルバー、シルバァァァァ………」


 睦月が――――泣く。泣き崩れる………


「どうして、どうして、こんなことに――――――

 キミは何も悪くないのに……………」


「言える言葉は、無いわ…これが私だったの…」


 レンガ・ウーマンが持っていた【D・D・F】をシルバーが拾い上げる。


「嗚呼――――見える、天国が見える。散って行った、皆が、見える。」


 シルバーが太陽に向かって歩き出す。


「睦月―――――私はお前の事を…最後まで理解してやれなかったな。

 でも、ありがとう――――死ぬ前に、本当の心に、気づけたよ。

 有難う―――――――本当に本当に有難う。」


「シルバー…………」


 エクサタは、状況を察しシルバーから目をそらす。


「……………―――――――――!?」



しかし、その目線の先には……


「シルバー殿!!睦月殿!!警戒を!!あの女性は――――あの女性の姿はまさか――――――!!!」


「えっ――――」



 シルバーがエクサタの目線の先を追う。その先には。


 Vaaaaaaa―――――――――――――――――――――


 目は鷹のように鋭く、瞳は黒紫。深紫色のコートを腕を通さないように羽織っており、内には紫色の胸空きタートルネックに黒いズボン、そして、金髪のツインテール。

 此方に向かってまっすぐ歩いてくる。


「えっ――――あれって…………!!!」

「な――――――――――――――」


そう、その人型は、まさしくあの宿敵ロンカロンカそのものだった―――――


「………そうだ、アレは間違いなくアイツだ、

 だが、何か違和感がある――――アイツそのものでありながら、

 アイツでは無い。アイツは――――あんな行動はしない。ならば――――――」


 シルバーがゆっくりと後ろを振り返る。


Vaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa


 銀髪に、赤い瞳。


VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


 身長160㎝、メイド服をサイバー系にしたような服を着こなしているその王の姿。


VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


「【探偵マスター<ディテクティブ・マスター>】」


 その姿が、シルバーに飛び蹴りをかまそうとしている―――――――


「百――――――――賭――――――――――――――!!」


 

 時が、制止する。

 あまりの出来事に時が制止し、シルバーは防御と言う行動を取れなかった。






 ドンゴン!!!!!!

 シルバー顔面を蹴られ5mほど吹き飛ばされる。


 嗚呼――――狂いそうだよ。


 お前はあの女と同じだ。


 あの女と同じく、自分の人生を総べて奪った、因縁の相手――――――――



 百賭が、ジャンプして、標識の上に着地する。


 シルバー立ち上がり、

 【デモニック・スカーフ】の触手を使って百賭の近くまでジャンプする!!!!


「さっきのロンカロンカは――――幻影だなッ!!!お前が作りだした、過去のロンカロンカだ!!!」


「ほう、エクスが伝えたか。時を掌握するこの能力を。」


 百賭後ろにバックステップしてコンビニの上に着地するッ!!!

 シルバーもそれを追い、着地するッ!!!


「予定通りだと―――――?」


「レンガ・ウーマンもゴールドも――――全ては俺という因果律の輪の中にいたのだ。

 ただ、御前達がここまで生き残れるのは予想外だったが…。」


「…………これ以上、好き勝手にはさせないわ。夢は終りだ、百賭。」


 シルバーが【デモニック・スカーフ】を構える。


「俺を殺すだと?無理だ。親を思い出せ。

 真なる『絶対正義』を到達点するならば犠牲はその過程―――――!

 そう、俺はお前の両親のお蔭で成長できた――――」


「ッ――――!!」


「彼らを殺したのは過程のひとつ…今思えば、彼らの人生とはこの俺の成長の為だけに……」


「ふざけるな――――」


「クク………そして、お前と言う存在は、その返り血のようなものッ!」


「認めないッ――――絶対に認めないッ!!!」



「シルバーー―――――!!!」

 睦月がシルバーに向かって叫ぶ!!


「エクサタ、睦月は頼む――――――私はこの宿命の相手と――――

 決着をつけるッッッ!!!!」


「【探偵王】とは、【三羅偵】より格上の階級!!其れを貴様は思い知るだろう!フハハハハー!!!」



 血まみれの太陽の下で全てを掛けた最終決戦が、始まる。



――――――――――――――――――――――――――――――――つづく。

―――――――――――――岐阜市での【D・D・F】争奪戦



探偵協会           【D・D・F】所持数―――――1

シルバー/睦月/エクサタ   【D・D・F】所持数―――――2

セクンダー・グラン      【D・D・F】所持数―――――2


◆探偵名鑑◆ #8

レンガ・ウーマン


本名―――イリーゼ・ライシャワー

異名―――鏖殺鬼/黒百合探偵

人種―――イギリス人

年齢―――300歳以上

身長―――230cm

目的―――全ての人間に『レンガを後頭部に叩きつけられて死ぬ恐怖』を植え付ける事


黒霧 四揮がカースアーツ『イリーゼ・フィアー』を使用し、呼び覚ました存在で、グレトジャンニや夜調牙 百賭すらも認める最強のカース・アーツ使い。


その正体はカース・アーツ『イリーゼ・フィアー』の媒体とされた精神にして、1666年にスコットランドで生まれた少女『イリーゼ・ライシャワー』。

彼女は非常に恨み深い性格で、14歳の頃にレンガで後頭部を殴られ殺されたことをきっかけに、全ての人間を恨むようになり、全ての人間をレンガで殺す為に現世に再臨した。


精神の怪物の最高傑作と形容される程のどす黒く執念深い精神は、カースアーツの媒体としては史上最高のものであり、彼女を媒体とした『イリーゼ・フィアー』、それを扱うレンガ・ウーマンもまた、最強のスペックを誇っている。



『能力』は【イリーゼの恐怖<イリーゼ・フィアー>】

【自己強化型カース・アーツ】。

――①レンガを両手に出現させる。


――②死因がレンガによる頭部殴打でない時、蘇生出来る。

   この能力は、自分以外にも使用する事が出来る。


――③レンガ・ウーマンに変身する

   身長が230㎝まで延び、凄まじい身体能力を手に入れる。

   これを使った時点で精神をイリーゼ・ライシャワーに

   乗っ取られて自分の自我は永久に消滅する。

   レンガ・ウーマンに変身しない限り、永久に精神を蝕まれ続ける。


――④自分より強い相手と遭遇した時、戦いの中で成長する。

   レンガで砕けないものでもいずれ砕けるようになり、

   スピードで追いつけない相手にもいずれ追いつけるようになり

   同じ攻撃を二度受ける事は無い。

   成長の果てには増殖もある。

   レンガ・ウーマンを放置すれば2人、3人のみならずやがては6桁や7桁……無限に増え続けるだろう。


――⑤自分の体を自力で完全分解、再生して短距離の疑似瞬間移動を

   行う。(数十秒に一度)


――⑥敵が自分を殺した時、その敵のカースアーツをコピーできる。

   (使用は数十秒に一度)


――⑦死の黒百合

   レンガで殺した人間を媒体に無数の黒百合を生やす技。

   花の先にはレンガが生えており、殴ることが可能。)


――⑧不老。



 [応用技]

 ◆『イリーゼ・フィアー・ブリック・オブ・ゴッデス<女神の煉瓦>』

  イリーゼ・フィアーの能力強化で自分の腕力が一定値に達している場合

  使用できる、対象に向かって本気でレンガを投げる必殺技。

  投擲したレンガの破片に当たらないよう、通常は空中で使用する。


 ◆『イリーゼ・フィアー・ブリック・オブ・ゴッデス・セカンド<第二射>』

  『ブリック・オブ・ゴッデス<女神の煉瓦>』が失敗した時、

  イリーゼ・フィアーの力で更に自身の身体能力を強化し、

  対象に向かって本気でレンガを投げる必殺技。


 ◆『イリーゼ・フィアー・ブリック・オブ・ゴッデス・サード<第三射>』

  『イリーゼ・フィアー・ブリック・オブ・ゴッデス・セカンド<第二射>』が失敗した時、

  イリーゼ・フィアーの力で更に自身の身体能力を強化し、

  対象に向かって本気でレンガを投げる必殺技。


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