第5話 怪盗と探偵のとある日常・前編 怪盗試験と呪いの力
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睦月の怪盗試験が始まる!
試験の内容は――――6つ。
1.誰にも見つからず、マンションの屋上まで上るスニーキングテスト。(失敗は死)
2.怪盗学力テスト。(失敗は死)
3.見えない殺人レーザーを6分間全て回避するテスト。(失敗は死)
4.トラップだらけのダンジョンから脱出するテスト。(失敗は死)
5.面接。(失敗は死)
6.後で明かそう。
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まず
1.誰にも見つからず、マンションの屋上まで上るスニーキングテスト。
2.怪盗学力テスト。
…これを睦月はなんなくクリア。
20年間の努力を積み重ねた睦月にとってこの程度はお遊び同然だった。
次は3.見えない殺人レーザーを6分間全て回避するテスト。一発のダメージが命がかかわるテストなので、睦月はかなりビビっていた。
「キャッ……!!」
睦月の右手小指がレーザーに切断される
「うっ……怖い…怖い…!!!パパ…!!」
「睦月!!レーザーの焼ける匂いと温度、そして気配を感じ取ればこの程度貴方にとっては楽勝の試験の筈よ!!がんばりなさいよ!!」
「ハッ!!!!!う―――――――――――うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
そして6分の修羅場を潜り抜け、睦月はこれを無事にクリアした。
「応急手当て終わり、切断された指は氷で冷やして保管しておくわ。試験が終わったら、無免許医に頼んでくっつけようね。」
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4.トラップだらけのダンジョンから脱出するテスト。
これは難なくクリア。
5.面接。
ただの面接では無い。
他の会社の面接会場にいる就活生と入れ替わり、最後まで面接官にバレずに面接を受ける試験。
所謂――――変装の試験だ。(失敗すれば死。)
「変装は完璧…問題点は…この切れた指だな――――」
「次の方どうぞ―」
「ハイ!!!」
ドンゴン!!!睦月が扉を蹴って面接会場に入る。
「頼もう!!!!!!!!!うっ――――これは!!!!!この雰囲気は―――――!!!!」
圧迫面接!!!!!!!!!!!!!!
「絶対にバレる…!!どうすればいい…!!どうすれば…!!」
「あっ、君マナー違反だから不採用ね。もう帰っていいよ。」
「あっはい(危ない危ない…どうやらドアを蹴って入ったのがプラスに動いたようだ。)」
5.面接合格!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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そして、6つ目の試験が始まる…
「最後の試験だ…いったい何をさせられるんだろう…」
「ついにここまで来たね…」
「シ、シルバー!?まさか…最後の試験って…」
「この砂時計の砂がすべて下に落ちるまで(3分間まで)に…
…この私と素手で戦って一撃でも私にダメージを与えれば合格…そういう試験よ。失敗は死だわ。いい?」
(―――シルバーは…私より身長が低く小柄だ…いける!)
「じゃあスタートね。」
ビュオン!!!!!!!!睦月の視界からシルバーの姿が消える。
「消えた!!!!」
「『縮地』…これが怪盗の力だ。そしてアッパーを一発かまさせてもらおうわよ。」
ドンゴン!!!!
「どわあああああああああああ!!!!!!!」
睦月の下方から突然現れたシルバーのアッパーが睦月の顎を砕く!!!!
「ぐ…めまいがする…それにしても…ボクシングの技術に縮地を取り入れたとでもいうのか…!!あの『マイク・タイソン』のように…」
「遅い!!!」
「うっ…!!!!」
ドンゴン!!!!シルバーの回し蹴りが脇腹に炸裂し、睦月はダウンする!!!
そしてドス!!ドス!!!そしてシルバーが倒れた睦月を蹴り続る!!!
「どうした!!!!!!!!!!!!!その程度では怪盗にはなれんわよ!!!!!!!!!!!」
「………私は怪盗に……なる!!!」
「むっ…この動き…!!!」
スウウウウウ
睦月がシルバーのトンファーキックを受け流す!
スウウウウウ
「『合気道』…かしら。」
「シルバー…次の一撃で決めるよ」
「来なさい!!!」
「うぬおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
睦月はシルバーの攻撃を合気道で受け流し…そして!!!そして!!!!!
「死ねえええええええええええ!!!!これで終わりだあああああああああああ!!!!!!」
グギャッッ!!!睦月の飛び蹴りがシルバーの顔面に直撃!!!!
「ブッ………!!!」
シルバーが鼻血を出し膝をつく。
「はぁ――――はぁ――――シルバー…今のは?」
「――――――い、いってぇ………認めてやるよ。合格だ。」
「や、やったーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!あっ――――」
「!」
疲労しきった睦月があおむけに倒れる。そして涙を流す…
「うっうう…」
「だ、大丈夫!?」
「…うん…私本当に…怪盗になれるんだね…」
「ああ、合格おめでとう。睦月。」
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[ウィザーズ島根支部、真・光の間]
「ハッ……」
シルバーにおんぶされていた睦月を眼を覚ます。
「ここは…」
「【真・光の間】よ。【ボス】が貴方をコミュニティの一員として認めるための場所……」
「【ボス】…………」
「合格おめでとう睦月君。」
カーテン越しに男の声が聞こえる。
「この声…【ボス】!?」
「はい。」
「【ボス】ウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥーーーーーーー!!!」
「さて、私がここに来たのは、君をコミュニティの一員として認めるためだけではない…『あるもの』を授ける為に………」
「あるもの………?」
「君の右手側に【黒い鏡】がある筈だ。」
確かにあった…黒い…ドス黒い鏡が―――――――――
鏡は確かに私達の姿を映しているのだが鏡に映ったその姿は…なんというか…色素反転―――
ネガポジになっててとても不気味だ。
「こ、これは…?」
「【カース・ミラー<呪いの鏡>】だ。睦月君。とりあえずその鑑の面に手を突っ込んでみたまえ。」
「あっ………手が…中に入る!!!なんんで!?」
「手を握り、掴んだものを引き上げたまえ…【力】が……手に入る筈だ。」
睦月は強く手を握り締めると…なんかヌメヌメした棒のようなもの掴んでしまう。そのままボスの命令通りそのヌメヌメしたものを引き抜くのだが…
「えっ……あれ…ないぞ!」
「いや、手に入れたようだ。」
「うっ――――――――」
睦月がたぎっている!!!黒くたぎっている!!!なにかヒトならざる力を手に入れたような感覚がそこにあった!!!
そのまま睦月は本能がままに自らの両腕を目の前に差出し、
力を込める……すると……自分の影から『紫色のアリ』がわらわら沸いてくる…
「こ、これはまさか―――!!」
「それがプレゼントだよ。【カース・アーツ<呪いの技術>】と呼ばれる『外付けの超能力』だ。
コミュニティに入った者には、必ずその『能力』を身につけて貰うようにしている。」
「これが…私のカースアーツ…あ、ありがとうございます!!【ボス】!」
「ではさらばだ。君の今後の検討を祈っている。」
パチン!!
「あ、あれ…【ボス】…消えた!?それにあの鏡も…」
「あれが【ボス】の能力だよ。詳しい能力の詳細は私も知らないけど。」
「それにしても…陰から紫のアリかぁ。もっと炎を出すとかそういうシンプルな能力が良かったけど――――
まっシルバーの石化よりは使いやすそうだからいいか。あれは水中戦特化の能力だからね。」
「フッ、面白い事言うね。じゃ、なんならここで私と戦ってみる?」
「いいね。丁度能力のテストがしたかったところだ。いけ!!!アリ共!!!!」
アリが超スピードでシルバーに接近する!!!!!
「はい瞳の粘膜石化」
「ぎゃあああああああああああああ何も見えないいいいいいい!!!!!!」
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時は夜になり……シルバー、睦月、島風の3人は島風と睦月の家に来た。
外観は和風だし、中身も和風の広い家と言ったところだ。そして…
天ぷら!!!!!!ラーメン!!!!!!寿司ィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!
睦月の合格祝いに、3人が一つのテーブルで豪華料理を食べまくるッ!!!!
「フ…娘の合格祝いだ…!!!食いまくれ!!!!腹が妊婦みたいになるまで………!!!!!!」
「セクハラで訴えるわよおっさん」
「怪盗がセクハラで捕まるわけがなだろう!」
「アハハハハハ」
―――――――――――――――ギュン!!!!!
「『殺気』………!?」
ドン…ドン…
「何だおまえッ!!………ぐうう!!!!!!」
執事の悲鳴が聞こえる。執事たぶん死んだ。ドン…ドン…
「まさか…」
「1年3ヶ月…日数にして400日を越える『推理』……そしてようやく答えにたどり着いたぞ………いたな、島根県を根城とする怪盗島風とその娘。」
「貴様!!!!【探偵】か!!!!!」
「如何にも。私は島根県で一番の探偵―――『凶良 たけし』……。島風!貴様を殺せば依頼主から『1000億ドル』の報酬を支払ってもらう事になっている!ココで死んでもらうぞ!!!」
凶良 たけし……180㎝の大男、サングラスでスーツ姿のガラの悪い探偵だ。