第46話 金の天帝エンペラー・ゴールド
ルビー・ハートの後ろに落ちてきたのは、【D・D・F】だった。
事前にルビー・ハートが廊下の天井を消すと予想していたエクサタが天井に突っ込んでいたのだ……。
これをここに落とすことが…エクサタの【最後の策】。
「ディ―――――ディープ・デッド――――――――――――!!!なぜ天井に……!?しかし、よかった、私の能力で消滅しなくて……」
「ええ、本当です~~~~」
「えっ―――――――――――――――――」
2m30㎝の巨影がルビーの眼前に立ちはだかり、【D・D・F】を拾い上げる。
そいつは『三羅偵』の怪物。
『絶望の具現』『最強の能力者』『鏖殺鬼』。
【ルーク・オブ・ヘルシャドウ】で『消滅』したはずの―――レンガ・ウーマン。
「ク………黒霧四揮!!!なんでいきてるんですの!!!!」
「四揮?あの娘は私が殺しちゃったわ、私はレンガ・ウーマン――――――…………さぁ、レンガはいかが?」
ルビー・ハートとレンガ・ウーマンが対峙る………
「………フフフ………何も変わりませんわ…復活しようと何をしようと、貴方が私の能力で『消滅』するというのはすでに実証済み………
わざわざ私の前に出てこなければ、二度目の敗北を味わう事は無かったというのに………
アーーーーハッハッハ!!!!サノバビッチですわ!!!!あなたとってもサノバビッチですわ!!!!!!」
ルビー・ハートが両腕を大きく広げる。
レンガ・ウーマンがレンガを構える。
「【イリーゼ・フィアー】……」
「【ルーク・オブ・ヘルシャドウ】!!!」
両者同時能力発動!
先手を取ったのはトップクラスの攻撃速度を持つ【ルーク・オブ・ヘルシャドウ】!
ルビー・ハートの真紅の影が、レンガ・ウーマンの真下を通過した――――!!
しかし………
「な、なんで消滅しないんですの……なんで体の原型が残ってるんですの……!!!!!!!!」
そう、レンガ・ウーマンは成長する……
二度も同じ攻撃は食らわない……
一部は削られているものの、完全には消滅できなかった……
「あらあら………」
ガシッ!!!
レンガ・ウーマンが左手でルビー・ハートの首を掴み持ち上げる……
そしてレンガを振り上げる――――
「ど―――――――どうしてこの私が!?!?!?!?!?!?
い、いや…………いやですわあああああああああああああああああああ!!!
離しなさいクズ!!離して!待って!!おやめ下さいませ!!
許してくださいませ!!な、なんでもしますわあああああああああああ!!」
「レンガをどうぞ………」
ドンゴン!!!!
ルビー・ハートの頭が爆散する!!!
しかし体が機械の為、それでも死ななかった………
ドンゴン!!!!
何度もレンガを振り下ろされそのボディまで徹底的に破壊される。
新アトランティス帝国『四天刃』
削将ルビー・ハート―――――――――――――死亡。
「あと4つ………」
そして【D・D・F】を手に入れたレンガ・ウーマンがその場を立ち去る……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――AM12:50 岐阜県岐阜市:弯曲十字周辺、どこかのビル内。1F
ニーズエルとエクサタは、レンガ・ウーマンの攻撃から逃れるため、近くの部屋に隠れていた。
ニーズエルは…ほとんど死んでいた。
損傷個所・両腕・右目・右足・両翼と尻尾。
足と目の応急処置を済ませていたが、エクサタに寄り添いながらも、目がうつろになっている……
だが、肉体以上に心が死んでいた。
様々な代償を払ったのにもかかわらず【D・D・F】を奪われた。
その人らしいはかない無念が、そこにはあった。
だがああするしかなかった。
【D・D・F】が無ければ、ルビー・ハートに殺されていた。
【D・D・F】でルビー・ハートの脚を止めなければ、我々までレンガの餌食になっていた。
寄り添う二人には、絶望だけがあった。
「エクサタ君さ………私さ―――これからどうなるのかな……」
「ニーズ……」
「両腕だけならよかった………まだ戦えたから……でも目も足もやられてロクにも歩けないような状態で私は―――どうすればいいの……?」
「――――」
エクサタが4秒間目を閉じて……眉間にしわを寄せ、目を開けた。
「脱出。この岐阜から脱出する。こんな状態ではもう逃げるしかない…」
エクサタが涙を流す。
「ここより出たら、一緒にいよう。怪盗もやめ、争いのない静かな所で、二人一緒に最後まで幸せに暮らそう。
そして君の寿命が終わったなら、その時は…俺も一緒に死のう……」
「――――うん、それも………いいかもね。」
「…………」
「エクサタ君……あの……」
「何……だ……?」
「―――私さ、エクサタ君の事………大好きだよ。」
「嗚呼、俺も初めて会った時から貴方の事が………ずっと大好きだった……」
二人が愛を告白しキスをする……
絶望の中に希望を見出すために………
絶望の中で互いの傷を舐めあうように………
「――脱出するならさせめてけじめとして、シルバーに連絡しなきゃね……
気を遣わせるわけにはいかないです。
エクサタ君、ポケットにある携帯端末取ってくれる……?」
「シルバー殿か……そういえば彼女、どうなったのだろうか……
自分がヘリを落とした【カース・アーツ】使いというサインを我々に送っておきながら、その後一向に姿を見せないし、弯曲十字の使い手の仲間は二人共我々を襲ってきた……」
「―――――!!ま、まさか……やられた―――とか……」
「ッ………」
「あ、安否を確かめなきゃ、エクサタ、私の左ポッケから、携帯取り出して―――!!」
しかしその瞬間――――――――――コンコン!!!
何者かがドアをノックする……
「えっ?」
「ニーズエル、エクサタ、いるんだろ?入るぞ。」
ドアが開かれる、そして部屋に入ってくるその姿……銀髪銀目、褐色、血まみれのその姿――――
「シ、シルバー!!」
シルバーが来たのだ。シーフ・シルバーが二人を助けに来た!
「その傷……二人共、ずいぶんと酷い目にあったんだな……」
しかしエクサタはここで考え込む……
(シルバー殿は重傷だが生きていた…………だがそうであるなら彼女は、何処で何をしていた……?
誰に重傷を負わされた?)
シルバーが二人に近づく。
「シルバー殿、申しにくいのだが、今まで一体どこで何をしていたのだ?早急に詳しい説明が欲しいのだが……」
「――――そうだね、二人共……
もうちょっと近くよってもらっていいかな?
大声では話せない、話題だからさ……」
「………」
二人がシルバーに近づく。
「じゃあいうよ……突然だけど二人はさ――――こういう言葉って知ってる?」
シルバーが息を吸う。
「『常識とは、プライドを殺す剣<つるぎ>だよ』。」
瞬間――――――――――――――ッ!!!!
「えっ―――――――――――――――」
ドボァァァァァァァ!!!!!
シルバーの右手の手刀でニーズエルの腹が貫かれる………
「ニー………うっ!?」
ドグチャァアアアアアアッッッ!!!!
シルバーの左手の手刀でエクサタの腹が貫かれる………
二人があおむけになって倒れる。
「つまり………こういう事さ……どうやら【D・D・F】は持っていないようだね。『ボク』に取りついた『邪神』も全く反応していない。となると、持っていったのは……あの『三羅偵』かぁ。」
それは、シルバーとは変わった一人称。口調。その女はシルバーではなかった。
「何者…だ……」
偽シルバーが自分の頭を掴み、銀髪のカツラを外す。
中からは、神聖な金髪のショートヘアが展開される。
「金色……!」
「あの怪物ロンカロンカがシルバーを殺した時に撮った写真は、画像データとして【依頼人】であるこのボクに対しても転送された。
故に新アトランティス人の僕が彼女、シルバーの変装をすることはとてもとてもたやすい事であったよ。」
偽シルバーが自分の目に両手を添え、コンタクトレンズを外す。
中からは、神聖な金色の瞳が姿を見せる。
「アッ………あああ!!!」
「まぁ何の因縁か知らないけど……彼女とボクは顔が良く似てたからね。手を込んだ変装をする必要もあまり無かったかもね。
まるで伝説のアトランティス人の双子、ゴッフォーン様とオルゴーラのように私とシルバーは似ている………
でも僕の方が彼女より圧倒的に上さ。外見以外は比較にもならない。」
偽シルバーが二人に背を見せ、ドアに手を掛ける。
「奴隷どもを使ってこのビルに大量の時限爆弾を仕掛けさせてもらったよ。あと3分でここは崩れて君たちは死ぬと思う。
だからさ教えてあげるよ。
僕は新アトランティスの天帝にしてママゴンネード様復活を目論み【D・D・F】を集めている――セクンダー・グラン。
またの名を……【エンペラー・ゴールド】――あはっ♪」
ニッコリ
ゴールドが部屋から脱出する………
そして部屋には腹を貫かれて地べたに這いつくばる、ニーズエルとエクサタだけが残された………
「う―――あああああぁぁぁぁぁ…………
あああああああああああぁぁぁあああああああああああああああああ………
ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――つづく。
―――――――――――――岐阜市での【D・D・F】争奪戦
探偵協会 【D・D・F】所持数―――――1
レンガ・ウーマン 【D・D・F】所持数―――――1
ゴールド 【D・D・F】所持数―――――2
シルバー&睦月チーム 【D・D・F】所持数―――――1
ニーズエル&エクサタチーム 【D・D・F】所持数―――――0
◆その他人物名鑑◆ #3
ルビー・グラン(ルビー・ハート)
人種――――――アトランティス人
二つ名―――――消将
年齢――――――25歳
身長――――――155cm
所属――――――新アトランティス帝国
新アトランティス帝国四天刃の1人。
元々はまともな感性を持っており、新アトランティスにも内心反発的な少女だった。
だが、16歳の頃に外の世界の普通の男子と交際し妊娠し、駆け落ちしようとしていたところを父に見つかる。
父によって目の前で交際相手をバラバラにされ、自身も流産させられ胎児の頭部を踏みつぶされた
彼女は、精神崩壊を起こし、動かぬ敵の死体を自分の赤子のようにかわいがるようになった。
四天刃の中でも最も狂人であり、過去に2000人の人間を殺している。
【カース・アーツ】は【使役獣召喚型】の【ルーク・オブ・ヘルシャドウ】
最大召喚数は"1"。
火刑に晒されたジャンヌ・ダルクが死に際に見た
『影の上に立つものが消えていく錯覚光景』と
彼女自身の強大な絶望のエネルギーを媒体にした凶悪なカース・アーツ。
自由自在なタイミングで自らの影と同化した影の悪魔を召喚する事ができる。
五感共有は不可能で、操作方法は一方向に向かって最大150mまで伸ばす、影の方向を変化させるの二つだけ。
影の上に存在する物体は全て消滅する。




