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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第五章 ロスト・マイ・ハート&キャッチ・マイ・ドリーム
44/75

第43話 Deep Dead Filler<深い死の記録>


最期の日―――AM12:20  ビル街・弯曲十字周辺


 ニーズエルとエクサタが、【D・D・F】を持つ者を追いかけたどり着いたのは、先ほど戦闘ヘリたちが市民を虐殺していた場所。

 しかしそこにはもうヘリは飛んでいない…―――地には大量の洗脳兵が徘徊してる……


「戦いは終わったの?――――――………」

「――――」


 エクサタが上を指さす。そこには………


ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ


 フロントガラスが割れた、1機のアパッチが…

 高度20mを高速移動している。


「1機だけ――――なんであんな高い所に……

 それに、なんかぎこちない動きをしてるね……」

「――――」


 ドドドドドドドド!!!!

 アパッチが下に向かって銃を乱射する――――しかしその瞬間。


 ゾォォンッ!!!

 アパッチの前部分が、『一瞬』にして綺麗に『消滅』する。


「なっ――――」

「!?」


 ヘリの後ろ部分が、地上に墜落し洗脳兵を巻き込んで爆発する。


「………な、何が起こったんです!?ウソでしょ―――――」

「――――!!!―――!!」


 エクサタがニーズエルの肩を叩き、下を差す――――そこには、別のヘリが墜落していた。

 フロント部分がグチャグチャになり、肉塊が飛び散っているという光景があった。

 それは今までにない破壊の痕跡。レンガ・ウーマンや、ほかのカース・アーツ使いのものではない。


「さ、さっきのヘリとはまた違う壊れ方をしてますね――――

 しかも、あの破壊形状はレンガウーマンのものでも操られたカラスに破壊されたものじゃあない!!な、何者の仕業です!?」


「………我々の味方の可能性は低い。弯曲十字の仲間と言う考えるのが自然か。」


「――――………ならここは、敵の居城ですか……!!

 お、思ったより悪い展開だよ――!!敵の親玉を叩こうと【D・D・F】を持ってる奴を泳がせてたのは不味かったか……」


 ニーズエルが頭を痛める。


「いつもこうですよ、私は運が悪い……とりあえず……

 十字の奴の仲間が来る前に【D・D・F】を手に入れないと…

 幸か不幸か、操られた人間達はヘリにほとんど殺されたようです。

 目に見えるだけでも、生きてるのは50人ほど……」


 ニーズエルが飛び立とうとする。しかし………

 エクサタが左手で抱いてそれを制止する――――


「えっ……」


ニーズエルが顔を赤く染める。


「―――ニーズ……浅はかだ…」

「も、もっと考えろっての!?もう時間なんかないです…時が進むにつれ自体は悪化してるんだから――

 レンガ・ウーマンもきっと近づいてきてるし……」

「――――……」


しかしエクサタは抱きつくのを止めない……

ニーズエルは腕が無いからそれを振りほどけない……


「う、嬉しいですけど…こんなことしてる場合じゃあ……」

「ニーズ…貴方の命は、俺の命でもあることを忘れるな――」

「……エクサタ君―――」


 そう…エクサタには悲しい過去がある。

 それは、その身が不死身体質になった経緯。


「交通事故で親が死に、引き取り先のどこかの実験場で不死身の人体改造をされてたあの地獄のような日々――――

 あの日々から俺を救いだしてくれたのはキミだった……

 人間じゃなくても、貴方は俺にとっての太陽だったんだ……

 だから、最悪、【D・D・F】を諦める形になっても、貴方には生きていてほしい……

 貴方が死ねば、俺も死ぬ…」


 エクサタがさらに抱きしめる力を強める。

 だけどニーズはその身に震えを増す。


「エクサタ君――――そうじゃ、無いんです……」

「……?」

「エクサタ君もさっきこのあたりの景色をビルの上から見てたでしょ?

 洗脳されて奴隷のように扱われる罪のない人々とそれをゴミのように殺していくヘリコプター―――

 あの光景さ、私にとって……すごい、ショックだったんだ……

 たった5つの宝石を手に入れるという目的の為だけに、何の関係も無い人間たちが利用され、踏みつけられる―――

 それが、絶望したくなるぐらいに残酷極まりない光景だと、はっきりと思ったの…………許せないと―――思った……」


 ニーズエルは元とはいえ探偵志望だった。正義の心はそれなりに強い。


「どいつもこいつも身勝手が過ぎる…

 私だって願いで人間にはなりたいと思ってるよ…でも、そこまでして得たい願いなの!?

 願いを叶えれば【D・D・F】は再度世界に散らばり、また関係のない人たちを巻き込んだ争いが始まる。

 百賭が動いたことによって【D・D・F】の伝説の信ぴょう性が上がるから、次はもっと大きな戦いになる―――………より多くの人が犠牲となる……」


 それは、【D・D・F】の伝説が始まって以来、幾度となく繰り返されてきた血で血を争う戦い。

 【D・D・F】とは「Deep Dead Filler<深い死の記録>」の略称。

 ニーズエルはここにきてその石につけられた名の意味を心より理解している。

 強すぎる力は、世界に死を呼ぶのだ。


「シルバーの、アトランティスの一族がなぜ【D・D・F】を封印しようとしているか…その異常な執着心が、奴らの残虐を見て…身に染みたような気がする。」


「……だが、それならば全てをシルバー殿に任せればよかったのでは。ここまで来たということは、あなたがまだ願いを諦めきれていないという証だ。」


「そうだよ…!だって……!自己強化特化型【カース・アーツ】に呪われた人間は長くて30しか生きられないんだよ……私はまだ22だけど……もうあと1、2年の寿命……!!

 ココで願いを叶えないと―――私、すぐ死んじゃうんだよ…ここで退いても私に未来はないんだ……!!

 シルバーの願いに賛同するにしてもどっちにしても、あの【D・D・F】は絶対に手に入れないといけない……!!!

 それをわかってくださいよ…!」


 混雑した感情に涙を抑えきれず、翼を広げ、エクサタを押しのける―――


「ニーズ!!」


 そして飛び立とうとするが、制止。その視界には、ある人物が映っていた。


「えっ―――――」

「ニーズ…?」


「エ、エクサタ君、あれを見て、あの人を――――――」

「ッ-―――!あ、あれは――――!!」


 ニーズエル達が正面方向にあるビルの4fあたりの窓に張り付いてる人影を凝視する――――

 そいつは、銀の髪に銀の瞳……褐色の肌を持つ怪盗……アトランティス――――シーフ・シルバー!!!!


「シ、シルバーだ!!!シルバーが既にここに来ていたんだ!!!」


「なぜ…?シルバー殿達は先ほど睦月殿が隠した【カース・アーツ】の位置へ向かった…

 我々とは真反対の方向へ――――まさか、もう仕事を終えたという事か……」

「流石はシルバーだよ……睦月ちゃんの姿は見えないですね、どこか隠れているのかな?」


 二人がビルに張り付くシルバーを見ていると、

 シルバーも二人の存在に気付いたようでこちらに合図を送る。


「シルバーが私たちに気付いた……」


 シルバーが右手をDDFの形にし(△)

 左手で、例の、【D・D・F】をズボンの後ろポケットに入れた洗脳奴隷の方を指さす。

 そしてグッドマークをしながらエクサタ達の方を指さす。


「私たちに【D・D・F】の入手を任せたって意味?」


 その後シルバーが左手で前半分が消滅したヘリと、右手でフロント部分がぐちゃぐちゃになったヘリの方を指差す。

 その後、自分の方を指さしながらエクサタ達にグッドマークを送る。


 彼女は、ヘリを破壊した敵を自分自身が倒すと言っている。

 シルバー自身がヘリを襲った【カース・アーツ使い】を引きつけ、その隙にニーズエル達が【D・D・F】を持つ洗脳兵から、それを奪い取れと。


「シルバー……」


 シルバーがニヤッと笑うと、ジャンプして、地上まで落下する。


「な――――――ちょっと待って!!もう始める気なんです!!」


「……シルバー殿がいればなんとかなりそうな気はするが―――」


 シルバーの指令通り、二人がジャンプして地上に降り、【D・D・F】を持った男を目指して走る!!!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


最期の日―――AM12:23  岐阜県岐阜市:位置不明


 洗脳されたオウムが、辺りを飛び交う。

 不気味な口調で演説をしながら。


『世界に存在する【カース・ミラー】は――――8つ。

 そのうち"5つ"が『探偵協会』の各先進国支部に……

 "1つ"が『怪盗コミュニティ・ウィザーズ』に……

 "1つ"が『第二次世界大戦の亡霊』たちに行きわたった……

 そして、残り最後の"1つ"―――その最後の一つの【カース・ミラー】は、この新アトランティスの王『ゴッフォーン一族』に―――

 ボクも、ボクの愛しい『四天刃』たちもこのボクの持つ【カース・ミラー】で【カース・アーツ】と契約している……』


 二人の男女がそれぞれ細い鉄柱の上に立っている。

 その二人の近くに洗脳オウムが近づいてくる。


『ククク……こんな時の為にオウムをちゃんと飼っておいてよかった!

 来たぞ、怪盗の仲間二人が茶番を終えついにこの僕たちの城に乗り込んできた!!馬鹿な奴ら―――――!!』


「ジュア!!!ジュアジュアジュアジジジュア」

「ジジジュアジュアジュアジュアジュアジュア」


『新アトランティス語じゃなくて日本の言葉で話すんだ………』


「仰せの通りに…」


『フフ-――――――行け!『四天刃』【ルビー・ハート】ッ!!!行け!そして【アクアマリン・クラブ】ッ!!!

 君たちの凶悪すぎる能力を持って奴ら邪魔者を新アトランティス建国の為の生贄としろ!!!』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

同時刻  ビル街・弯曲十字周辺


「よしっ!追いついた!!!」


 ニーズエルが【D・D・F】の所持者のいる位置まで滑空!!

 そして――――――進行方向に炎のブレスを吐いて、炎の壁を作る。

 これ以上先へと進ませないために!!


「フゥ……これでこの先には行けないはず……エクサタ君、今だよ!!!」


 【センチビート】発動。

 『衝撃』を保存した複数のエネルギーの塊が、地を這いながら【D・D・F】を持つ男の近くまで移動する。


 しかしそれを見た男はポケットから【D・D・F】を取りだしニーズエルの作った炎の壁の中に身を投げ出す!!


「ば、バカな、骨まで燃え尽きますよ!!!」


 そして炎の中で男は右手に持った【D・D・F】を頭の上に掲げ、胸を大きく張って、大きく振りかぶりブン投げる!!

 炎の中の男が足元から崩れ出す。男は焼かれて死んだが【D・D・F】は投げられた!


「く…なんてことを!!」


 投げられた【D・D・F】をニーズエルが跳んで追いかける!!


 だがドッゴ!!!!

 ニーズエルを追いかける不穏な爆裂音!

 爆裂音が近づく!耳を澄ました方に首を傾ければ洗脳兵が次々と『爆裂』し、肉片となっていた!

 そして右前方にいる洗脳された人間が、爆発したとき、ニーズエルは『爆裂』の正体を理解した!!!


 右前方に飛び散る肉片の中から高速で何か深青い"何か"がニーズエル目掛け回転しながら飛びだしてきた!!!!

 カジキ型の【カース・アーツ】だ!!遠隔操作の【使役獣召還型】!


「新手の【カース・アーツ使い】か―――!!!でも………!!避け……!」


 回避行動をとるが、無駄!その【カース・アーツ】のスピードはニーズエルには見えない!

 グサッ!!!カジキの槍のような上あごの先っぽ数センチがニーズエルの体に突き刺さるッ!!!


「な、なんてスピード…でも、この【ドラゴニック・エンゲージ】の鉄壁の鱗…そんな魚如きに貫かれるか!」


 ニーズエルは致命傷ではなかったのでカジキが刺さったままなのにまだ余裕をこいている。

 しかしギュルルルルル!!!!!!!魚が再度横に回転しグリグリとニーズエルの体内に侵入しようとしてくる…!!


 ニーズエルが脚でそれを制止しようとするが、

 あまりの回転スピードに弾かれてしまうッ!!!!


「つ、掴むことが出来ない!!まるでライフルから放たれる回転する弾のように!!

 まずい、体に侵入してくる!!!」

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