第40話 第三勢力
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―――AM11:53 岐阜市宝石博物館。
-―――――――――――ピ!!
『探偵協会』の情報伝達はウーバーイーツよりは早く、グレトジャンニが死んだことはもう百賭の耳に入っていた。
「グレトジャンニめ、やられたか………これで俺が二つ、貴様が三つと言う事……」
『何回もの【渡り】をさせ、強化しまくったこのカースアーツ………ただのカースアーツ使いでは手も足もデナイヨ。』
その言葉は、セクンダーの【カース・アーツ】がレンガ・ウーマンの【イリーゼ・フィアー】のように何代にもわたって形が残り続けてきたことを意味する。恐るべき、漆黒の怨念を持つ、最高クラスの【カース・アーツ】。
その【カース・アーツ】に操られ、セクンダーの奴隷たちが百賭に向かって走ってくる!!
中世時代!キリストの十字の下には他人を殺す事、あらゆる虐殺、無実の人間を狩る事は正当化されていた!絶対的な正義とされていた!
この【弯曲十字の聖歌隊】が司るのはそれだ。セクンダー自身を、私の命令を磔刑されたイエス・キリスト、キリスト教の象徴である十字架を盲信させ、あらゆる命令を正義と思い込ませ、自由自在に操る事!!!
『さぁ!!この岐阜市にはどれほどの人間が生きている……!?
5桁か!?6桁か!?すべて操ってやる……!!
この僕の使い捨ての手駒として……奴隷として……!!!さぁ!!襲い掛かれ我が手駒共!!!』
博物館内にセクンダーの操る人間の声が響く!!
そしてセクンダー<依頼人>の洗脳された奴隷たちが百賭に襲い掛かる!!!
しかし―――――――――その瞬間、百賭の姿が消滅する!!
『!?』
「【ディテクティブ・マスター<探偵マスター>】…『時の再生を中断』した……」
『ッ………――――!!!』
その声の方向、博物館の三階右側の通路横の手すりに、百賭が立っていた。
彼女の『能力』による『現象』。
「フハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハ!!」
百賭のそばに浮く円盤、これが能力の発動を―――
(貴様らが今見ていたのは――――【ディテクティブ・マスター】で再生していたこの私の動きの記録。そして………)
パチン!!!百賭けが指を鳴らすと、博物館一階・二階が炎上する!!!
火事の記録を再生したのだ!セクンダーが操っていた奴隷たちが次々と焼死する!!!
これが百賭の【カース・アーツ】、時間を記録し、再生する【ディテクティブ・マスター】の力。
『アハハ……流石は探偵王。一筋縄ではいかないね――――でもォ―――――』
「やめておけ。まだわからんのか、何故このオレがこんな辺境まで【D・D・F】を持ち出したのか……その意義が………」
地面が割れ、5人ほどの人間が百賭の下から這い上がってくる!!
『下からの攻撃は対策出来てるかなーーーー』
「岐阜県の人間の探偵協会支持率が低い、探偵協会にとって重要人物が住んでいないということから、どれだけ殺してもかまわない………と言う理由もあるが
いちばんの理由はここ、岐阜県が東京よりも遥かに人口密度が少ない都道府県だからだ――――人口が少ない為に貴様の能力の本領を発揮できないからだ……
そう、貴様の能力はすでに……『対策済み』だ。」
瞬時――――地面から登ってくる人間が突然爆死するッ!!!!
これは【ディテクティブ・マスター】の能力ではない!!
『な――――――――』
その中の死体のうちの一人が、百賭に話しかける。
『今の能力………さっきとは違うね―――時を操る能力では無い……なるほど百賭、君は【二重能力者<デュアル>】だ。能力を――――『二つ』持っているね、フフフ。
あの怪盗大裁判のよーに―――!!』
【二重能力者<デュアル>】、二重人格ゆえに【カース・アーツ】との複数契約を可能とすること。
だが怪盗大裁判は【ディスソンアンス】と【バジリスク】、二つの【カース・アーツ】を持っていたが、百賭は格が違う。
探偵王ほどの実力者がそれを二つ所持することは、まさしく無敵としか良い様がない。
だがセクンダーは。
『でもそれではこのボクに敵わない。なぜならお前には操っている本体であるボクの位置を特定することは出来ないから…』
「言った筈だ、対策済みとな……そして、自分……本体のいる場所の周りを見てみるといい――――」
『ッ………!これは………』
そう、湾曲十字は見えても、セクンダー契約者本体はどこにいるのかはわからない。
だが…これは【カース・アーツ使い】の頂点に立つ者たちが殺しあう頂上決戦である。
何が起ころうとおかしくはない。
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同時刻、弯曲十字架の真下……戦闘ヘリが複数機飛んでいる。
マレフィカルムの戦闘ヘリだ。
中にいる探偵たちが、下にいる洗脳された人間たちに向かって叫ぶ。
「我らは絶対正義の代理人!!!探偵王・百賭の元において、セクンダーッ!!!貴様の洗脳尖兵共を一網打尽にしてくれるッッ!!!!」
5機のヘリが機銃を地上に向け、乱射する!!!!!!!!!
そして死ぬ!!!セクンダーに操られた一般人たちが――――死ぬ死ぬ死ぬ!!!!!!!
そこに慈悲は無い、ただ勝利のための暴力しかない!
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それを見ていたセクンダーは当然驚く。だが、笑いながらだ。
『馬鹿な――――探偵王!!貴様なかなかやるじゃないか!!!』
「お前があの弯曲十字を自分の真上から上に向かって放つのは知っている―――
そしてあの弯曲十字が出現したのは11:39分今より数分前だ…だからお前はまだ、弯曲十字を放った位置から対して移動出来ていないはず。
フハハハハ!だから俺は考えた、あの弯曲十字から半径数㎞以内の人間を『皆殺し』にすれば……貴様を殺す事が出来るッッ!!!!」
『そうか―――考えたね……ならこれはどうかな!?心があるなら殺せないよねぇぇーーーー!?』
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「え、これは――――なんだ!?この死体はッ!?」
セクンダーが合図をすると、一部の一般人の洗脳を解かれる。そして彼らは上空に飛ぶ戦闘ヘリを見て怯える。
そして、ヘリの中の探偵たちがそれを見る。
普通の人間なら、それを殺すことなどできないが…
「フン!!!脳がとけたからと言って我々が攻撃を止めるでも思っているのか!?」
探偵がマイクを取り、大音量のスピーチをする!!!!
「ゴミクズ共!!!!今から現行犯裁判を開始するッ!!!!被告岐阜県民!!!!!罪状、マレフィカルムに対する支持率が低い!!!よって死刑!!!!!!!!!現行犯天罰だ!!!!!!!!死と言う名の百賭様の裁きを受けるといい!!!!!!!!!」
ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ(銃弾の音!!!!)
「うわああああああああああああああああ!!!」
「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!」
「やめろ!!!やめてくれーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「ええええええんおがあざあああああああああああん゛」
「死ね死ね死ね死ね反逆者のゴミども!!!田舎のカスども!!!これが都会に出なかった罰!!!これがマレフィカルムに逆らったゴミどもの末路だッ!!!!!死ね!!!田舎人なら死んで草を耕せ!!!!!!」
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『なんて、奴らだね―――洗脳された人間をも撃ち殺すなんて…』
「成長するに置いて大切な事は『始める事』―――――最初の一歩を踏み出す事という精神論を並べる奴がいるが……俺はまた、別の考えを持っている。」
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「ぐわあああああああああああああああああああああ!!!」
「むんやああああああああああああああああああああ!!!!」
ミサイルドンゴン!!!!!!!!!
血の海だ!!!血の海!!!血の海―――――血の海!!!!!
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「俺は『終わらせる』事こそが、成長に置いて最も大切な事だと思っている。
『新しい事をしよう』と思う事ももちろん大切だ……
だが終わらせる意思がなければ、次第に心に迷いが生じ、何ごとも長続きしなくなる。
終わらせようとする意志、目標に辿りつこうとする意志さえあれば、人はやがて、納得できる一つの終着点にたどり着く事が出来る。
もし辿りつけなくても、自分に何が足りなかったか――見つめ直す事が出来る。
逆に『終わらせたくない』という意思は……堕落を招く――――何も終わらせることのできない自分自身を自己嫌悪し、心が腐っていく。」
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血の海!血の海!血の海!血の海血の海血の海血の海血の海血の海血の海血の海
内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓内臓脳脳脳脳脳脳脳脳脳脳脳脳脳脳肉片肉片肉片悲鳴悲鳴
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「だからオレはお前を『終わらせる』。貴様を地獄に送るという作業を――――『終わらせてやる』。」
『奴隷のゴミどもがいくら死のうと構わないけど………このままではマズいね…』
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―――AM11:58 近くのビルの屋上
シルバーたちは機関銃音に反応し、地上で洗脳兵が戦闘ヘリに殺されている場面を見た。
「な、何をやってるの――――あいつらは――――!?」
「これではまるで戦争です………!?しかし、倫理観は…!」
ニーズエル達が戦闘ヘリと操られた人間達が戦っている惨状を見て―――
唖然とする。そこには正義も平和もない。
ただ願いを叶えるという目的のための択ばない漆黒の手段しか無かった。
「あの十字架を見た途端操られたように歩く人間達………――――恐らく、あの十字架の能力は、自分を見た者を洗脳する能力なのよ。」
「でも、私達には、何の影響もないですよ――――」
「恐らく、【カース・アーツ使い】に対しては効力が無いのだろう。
そして、マレフィカルムの戦闘ヘリが、あの十字架に操られた人間を
操っているという事は………
この【カース・アーツ】の使い手は、『コミュニティ』にも『探偵協会』にも属さない、【D・D・F】を狙う新たなる第三勢力。」
「くっ……頭がこんがらがって来たぞ、【D・D・F】を奪い去ったグレトジャンニ、あたりに徘徊するレンガ・ウーマン、人を洗脳し【D・D・F】を突け狙う第三勢力の人間、私が博物館から【D・D・F】をくすねて隠した場所――――どこに向かえばいい――――どこに……」
「………」
ニーズエルが少し考え、話す。
「二手に分かれる――――というのはどうかな?」
「――――!ニーズエル!!」
「シルバーと睦月のチームが【D・D・F】をくすねて隠した場所にまで行って、【D・D・F】を回収する。
私とエクサタのチームが、グレトジャンニのいる方向に向かい、奴から【D・D・F】を回収する。
これで【D・D・F】が二つ回収できることになるよ。」
効率的な策である。しかしそれには問題があった。
「―――――エクスの情報によればグレトジャンニのいる方にはレンガ・ウーマンがいる確率が非常に高い。
両腕が無いのに――――戦える?」
「――――心配無用さ、パワーが落ちているわけじゃ、無いですから。」
「――――――わかった、でもニーズエル………一つだけ言っておくことが、ある。」
シルバーが、二人の方を見る。
「死ぬなよ。必ず生きて帰ってこい。」
シルバー、そして睦月が二人に向かってサムズアップをする。
「――――アハハ、そっちこそ♪」
「………」
それを見たエクサタもまた、サムズアップを返す。
ニーズエルは腕がなかったのでウインクを返した。
さぁ、【D・D・F】争奪戦の――――始まりだ。
――――――――――――――――――――――――――――つづく。
―――――――――――――岐阜市での【D・D・F】争奪戦
探偵協会 【D・D・F】所持数―――――1
レンガ・ウーマン 【D・D・F】所持数―――――0
セクンダー・グラン 【D・D・F】所持数―――――3
シルバー&睦月チーム 【D・D・F】所持数―――――0(1)
ニーズエル&エクサタチーム 【D・D・F】所持数―――――0




