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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第一章 黒い宝石と怪盗の日常
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第4話 怪盗見習いの女・睦月

「こーしてみると、ほんとただの黒い石よねぇ。」


 【D・D・F】を手に入れた怪盗シルバーは、拠点である鳥取の実家に帰還していた。


「なーんか反応見せてくれたらいいのになぁ、願いを叶える石ってのは、やっぱ嘘っぱちかな。」


 怪盗はヒトに明かせる職業では無い。(職ですらない。)

 この世界には5000人ほどの怪盗がいると言われているが、その殆どが、プライベートでは普通の一般人と変わらない暮らしをしているし、身分を偽っていたりしている。

 正体がバレれば、警察や探偵に命を狙われる危険性があるからだ。


 無論、銀の怪盗シーフ・シルバーも勿論、プライベートでは怪盗であることを隠して生活している。

 現在の彼女の戸籍上の名前は『プレイマー・グラン』。

 プライベートでの彼女は、安っぽいTシャツに、安っぽい黒コート、短パンに黒ニーソックス―――――――――

 という、そこらのセンスのない男子中学生そのもののような服装をしている。

 褐色肌、銀のショートヘア、銀の瞳等の特異な身体的特徴のお蔭で最低限の神聖さは保たれてはいるが…



(もう少し考えよう、何かある筈だ―――パスワード、合言葉、それともどこか特別な場所に配置するとか―――)


 うつ伏せになったシルバーは足をバタバタさせながら、床に置いたDDFをツンツンと突ついたり、横方向にゴロゴロ転がったりしながらDDFの謎を解く方法を精一杯考えた。


(うーむ…わからないな――――――【知人】の力を借りるべきか…)


「よおッ-――【プレム】!!カステラあるけど食うか!?糖分は疲れを解消するらしい…!つまりカステラは疲労回復に抜群ンンンンーーーッッッ!!」


 ドンゴン!!!!急にシルバー部屋の扉が開かれ、銀髪の老人がシルバーの部屋に乱入する。

 ちなみにプレムとは―――プレイマーの名前をもじった愛称。プライベートでの彼女の知人は彼女の事をこう呼ぶ。


「ウワアアアアア!!!ノックぐらいしろ【ジジイ】!!!」

 急いでDDFを隠すシルバー。

「悪いな…ところでいま何か隠したか?」

「怪盗やってる時に盗んできたとあるアイテムだよ。詳細は教えない。アンタも怪盗だろ?知りたかったら盗んでみろよ。『プロメテウス』じじい。」

「クックック!孫よ。相変わらず怪盗事業は盛況のようだな。大安心じゃ。」


 【プロメテウス・グラン】

 またの名を老獪の銀探偵―――『アルギュロス。』

 シルバーの実祖父にして、怪盗歴70年のベテラン天才怪盗。

 シルバーとプロメテウスの一族は、全員が怪盗だったらしい。

 父も祖祖母のババアさえも…


「例え身内でさえ、怪盗としての正体は決して明かさない、それが私達のルール。」

「そうじゃな…ところでプレムちゃんや、【D・D・F】という黒い宝石を知っているか?」

「知らん」

「??????????????????????????」


―――――――――――――――――――――――――――――――


 怪盗の生き様は、自由。風の赴くままに盗み、火の粉のように儚く消える。

 しかしそんな自由な彼らにも掟やコミュニティは存在する。


 その代表例が世界最大の怪盗組織【ウィザーズ】――――――――――

 ユーラシア大陸で結成されたおよそ400人程の怪盗が所属している秘密の巨大組織で、シルバーやその祖父『アルギュロス』、『無線のロル』もこの組織のメンバーである。


―――――――――――――――――――――――――――――――

[島根県JRネオ松江駅――――正面入り口付近]


 シルバーがタバコを吸いながら携帯端末を操作する。

「まだか~」

 本日の彼女にはウィザーズのメンバーと、とある用事を済ませるという用事があった…

 

「…!来たか!」


 タバコを吸うシルバーの前に二人の人影が立ちはだかる。

 一人は、黒スーツ黒いシルクハットを身に着ける長身の男、もう一人は身長160㎝程の目つきの悪い女性。フードを身にまとい、髪は青髪シロング。しかもむちむちボディ、ふとももも太い。

挿絵(By みてみん)


「2年ぶりだな、シルバー。」

「ど、どうも…私は…1年ぶりか?」

「アンタたちは島根を根城とする凄腕怪盗、『島風』のおやっさんとその娘『睦月』だな!」

「フッ、銀の怪盗よ、相変わらずあんまり成長してないな。私の娘より身長が低いじゃないか。」

「弄るなや…ケッコー気にしてんだぞ…」


 だがそんな事はどうでもよかった…


「で?私に『何の用』があるの?」

「公共の場で話すのはヤバすぎるしCARで話そう――――――執事、リムジン用意!!!!!!!!!!」


 ンキュップィイィィィ―――――ッッン!!!!ドンゴン!!!


 黒い車が意味も無く12連続のドリフトをかましシルバーたちの前に止まる。

 そして12秒と言う時をかけて3人はリムジンに乗車する。


「―――――――――――私の娘だが、もう20歳なるんだ。」

「20歳、そういや睦月は私と同じ年だったわね。」


「うむ、20歳なのだ…もういい年だと思うんでそろそろ彼女には我々の【コミュニティ<ウィザーズ>】の一員になってもらおうと思う。」

「島風のおやっさん――――睦月に…『試験』を受けさせるつもりね?」

「いかにも…」


 車内が凄くシリアスな雰囲気になる。


「キミには、コイツの『試験官』となってもらいたい。身内の者…私では出来ないらしいからな。」

「いいの?死ぬかもしれないわよ。」

「睦月は生まれた時から怪盗になるためだけに育ててきた。いずれ私の後を継がせるためにな。だからこそ、私は怪盗以外の彼女に存在価値は無いと思っている。

 怪盗になれないと判断したとき…睦月はお前の手で殺せ!!!」

「………わかったわよ。」

「ボスは島根に来ている。試験会場は『ウィザーズ島根支部』だ。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

[ウィザーズ島根支部]



 島風はリムジンに残り、睦月とシルバーは試験会場へと向かう。


「………」

「睦月、大丈夫?顔色が悪いようだけれど…」

「怖いんだ…」

「命を落とす事が?」

「違う…私が怖いのは、期待を裏切ること…」


「期待か…」


「私は今まで…この20年間ずっとパパに怪盗として育てられてきた…そう、"20年"…とても長い時間だ…

 私がここで失敗したら…パパのその20年間は無駄になってしまう…それがとてもいやなんだ…私、失敗したらどうすればいい?」


 シルバーが睦月の腕をぎゅっと握る。


「んあっ……!?」

「睦月。そんな事は考えないで。怪盗ならポジティブ思想よ♪」


 シルバーが睦月を慰め始める。


「私はこの試験を『10歳』の時に合格し、怪盗シルバーとなった。当時はとても辛い試練だったし、死ぬかとも思った。恐怖だったわ。」

「…」

「それでも試験合格出来たのは、きっと…前に進もうとする…

 『闇を切り開こうする強い意志』をずっと持っていたからさ。

 睦月、後ろを見るな―――ネガティブな心は、100%を0%に変える。」


 顔を上げる睦月。


「私、試験を合格して…いい怪盗になれるかな?」

「少なくとも、あのオッサン(島風)はそう思っているわよ。」

「そうだよね、パパは期待して私をここに送り込んだんだから…」


 二人は――――支部の門をくぐる。

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