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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第四章 死と絶望が躍る約束の地・岐阜県
39/75

第39話 黒マントの依頼人の正体

 トコン……トコン……

 ガチャッ……


 シルバー達が階段を上り、鉄の扉を開く……


 ―――AM11:50 近くのビルの屋上


 空に悪雲が広がっているが、雨は降ってはいない。


「明日―――そう、明日の天気は雨。この私、【ストーン・トラベル】の『能力』を最高に引き出す事の出来る環境になる筈だった……

 だがあの百賭は、それを事前に予測し、直前であるこの日に三羅偵による攻撃を仕掛けてきたわ。

 そして―――【あれ】を見なさい、みんな。」


 ほかの3人がシルバーの刺した方向…空を仰ぐ。

 全員の肌に汗が沸く。最初に思わず声を出したのは、ニーズエルだったか。

「な、何ですか――――あれ………」


 4人が空を見上げると、街の上空には100mほどの大きな弯曲した【光の十字(紫色)】があった。


「この波長、【カース・アーツ】よ、何者かが【カース・アーツ】を発動させたのよ。」


「レンガウーマンの位置を探るために屋上まで来たのに、今度は何です!?あんな巨大で禍々しい【カース・アーツ】は見たことが―――まさか、あれが百賭の!?」


「いや、それは違う。エクスによれば百賭の能力は、時の記録と再生を行う道具召喚型【カース・アーツ】………

 しかしこれはどう見ても―――ちょっと、言葉には表しづらいな。この私の常識をも超えている――――

 ただ、あの規模、恐らく…レンガウーマンに勝るとも劣らない強大なエネルギーを秘めている可能性は少なからずありそうだ……」

 レンガ・ウーマンもそうだったが、100mを越える実像を持つ【カース・アーツ】もまた、実例が無い。

 しかしこれを見て下の一般人たちが騒ぐ気配もない。

 一体この【湾曲十字】は何を意味しているのだろうか…


「クッ………百賭!レンガウーマン!グレトジャンニ!!そしてこの弯曲十字の【カース・アーツ】を操る奴!少なくとも強敵はあと四体いる!!奴らも相当気合入ってますね――――

 さて、グレトジャンニとレンガウーマン……奴らの位置を探し出さないと―――」


シルバーが他の三人を視界に入れる為、3歩程後ろに下がり、

少々うつむく………


「シルバー?」


「ニーズエル、それに睦月とエクサタ。貴方達、これからどうするつもり?」


「どうするって、そりゃアイツらを探し出して【D・D・F】を…」


 ニーズエルがそういう。

 睦月、エクサタもそれに同調した。


「単刀直入に言おう。引き返すのは今からでも遅くは無いわよ。」


「ッ!」


シルバーが屋上の入り口に背をかける。


「私は、在日アトランティスの運命、【D・D・F】を破壊するという神の意思に従わなければ生きていけない――――そういった『宿命』を持つ人間よ。

 だから、運命がこの戦いから逃がしてくれないし、奴らと何が何でも戦わなければいけない。

 でも、あなたたちは別よ。あなたたちには、逃げる事由がある。この全く勝ち目のない負け戦からね…」


「―――1人で戦えると思っているの…?」


「戦えなくてもだ。勝てなくてもだ。この私は行かなくてはならない。なぜならそれがアトランティス最後の生き残りであるこの私の唯一の生きる道だから…

 ―――正直言って手は借りたいわ。その方が、勝てる確率は上がるからね…

 でも、ここまで巻き込んで偉そうなことを言う用だけど、手を貸してほしいと強制はしない。こんなゴミのような私の目的の為に、」


 ニーズエルが、横を向く。


「シルバー、それは愚問ですよ。私もまた…【D・D・F】からは逃げられないのです。」

「……」


 シルバーが虚ろな目で自分の尾を見る。そして翼も…

 それは、ニーズエルが怪物の象徴となった証。


「私は…エクスさんとは違う。

 【D・D・F】で、自分の【カース・アーツ】を消して…人間にしてもらえるよう…あなたを出し抜くつもりだった。」


 衝撃の告白である。ニーズエルの目的は、【D・D・F】で願いを叶え、人間となる事だった。

 だがそれは【D・D・F】を封印しようとするシルバーの意に反する。

 しかしシルバーは。


「やっぱりね。」


 そういった。彼女は既に悟っていたのだ。

 ニーズエルが自分とは違う意思を持っていることを。

 しかし責めるつもりはなかった。

 彼女の気持ちも痛いほどに理解できなくはないからだ。


「さっきエクスさんが言っていたように――――私達も何もやらずに後悔なんてしたくは無い。

 私は、みんなと違って自分の願いを叶える度にこの【D・D・F】争奪戦に参加してきた―――。」

「半分敵対関係ってやつね…」

「そうですね…。」


「死ぬぞ―――願いの為に…」


 ニーズエルがシルバーの肩を翼でPONとたたく。


「それに、ちっとは貴方のことも心配してますし、エクスさんへの義理もある。何を言っても私は逃げませんよ」


「………そう。」


 シルバーとニーズエルがエクサタと睦月の方を見る。するとエクサタもそそくさと歩きだし、ニーズエルの側に駆け寄る。


「エクサタは私に付いてくるってさ。」

「……」


 残るは睦月……


「睦月、貴方はどうする。貴方はこの中で一番闇の世界へ足を踏み入れた期間が浅い。そして、貴方だけが、義理だけでこの戦いに参加している。」

「……言うまでもないよシルバー、私も、既に引けないところまで来ているのさ。」


「引けないところ?そういう言えば睦月お前、百賭は絶対に、【D・D・F】を5つ集めることは出来ない…

 そう言ってたよな―――あれ、どういう意味なんだ?」


「………――――それは……私が、今さっき、博物館に『蟻』を派遣して【D・D・F】を一つくすねてきたから………」


「――――馬鹿な!大丈夫だったのか!?」


「警報も何も鳴らなかった………恐らく、バレてはいないと思う。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――AM11:50 岐阜市宝石博物館。


 Voooooooooooo…


 2Fにつながる階段の先に、探偵王・夜調牙百賭が立っている。

 

 【D・D・F】は彼女の手元に1つ。そして、背後の硬化テクタイト製ガラスケースの中に、もう1つ………


(あと5分。あと5分でグレトジャンニがシルバー達から奪った【D・D・F】をここに届けに来てくれる………)


 PLLLLLLLLLL!!!!百賭の携帯端末が音を上げる!!!!


 -―――――――ピ!


『百賭様!!ついに奴が……あの【依頼人】が弯曲十字の能力を発動させました!!』


「クックック!なるほど――――ついに尻尾を現したか!規模は?」


『弯曲十字の高さ―――詳しくは分かりませんが………およそ100m程!!』


「100mなら、『攻撃範囲』は……………この街―――いや、岐阜市全域までに及ぶか。」


 トコン…トコン………誰かが階段を誰かが駆け上ってくる。


「―――早速【依頼人】が【使者】を寄こしたようだぜ。切るぞ。」

『ア!』


 ピ!


 トコン…トコン……

 階段を一歩一歩踏みしめる――――その姿……

 黒いマント――――黒い短髪で、顔は吸血鬼のように白い。


 VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO―――――――――


 そいつは、黒マントの男。依頼者さんID2855285。新潟博物館館長を殺した【D・D・F】捜索の【依頼人】。


「【D・D・F】集めは順調のようだな。ク―――――クックク――――――――」


 男が口をむき出しにする、その顔面――――まさしく鬼!!!!!


 ゴミを見るような目線で睨みながら百賭が口を開く。

「………そうだな、このオレがこの博物館に罠として配置した二つの【D・D・F】、

 そしてグレトジャンニがシルバーから奪った【D・D・F】、そして、貴様の持つ残り二つの【D・D・F】ピース………

 これで5つ全ての【D・D・F】が集まり、願いを叶える事が可能になるぜ、依頼人よ。」


 対し【依頼人】もゴキブリを見るような目で口を開く。

「そうだな、それでこの我が一族の願い――――

 『3500年前に怨敵【オルゴーラ・グラン】によって討たれた最強の魔術師―――【クロイツェン・ママゴンネード】の復活』

 そして、【新アトランティス帝国】の夢も目前と言ったところか。クーーーククク!!!面白い!!!面白すぎる!!!笑い死ぬ!!!!」


 パチパチパチ

 百賭が拍手をする――――

 だが、歪んだ笑いをしながらだ。


 なぜなら百賭の…彼女の目的は……

 【D・D・F】で『すべての人間が、この私を絶対正義と崇めるようにしろ』と願い、

 自らを究極なる絶対正義になる事なのだから………

 依頼人の願い叶える気ナッシング!!!!裏切る気アリッシング!!!!


「して、黒マントの【依頼人】よ。なぜ【カース・アーツ】を発動させた?この岐阜県ネオ岐阜市の上空に輝く【弯曲十字】の光……」


「ならなんでお前は、わざわざこの戦いにこれほどまでの探偵を持ち出した?もしやあの怪盗共と戦うために用意したわけではあるまい?」


 挑発的な口調に変わる二人。それは互いが一切としての信用を持っていない証。


「百賭…お前の目的は――――この私……いや、ボク………【アトランティス最後の生き残り】………

 【ゴッフォーン・グラン】の子孫であるこの【セクンダー・グラン】様を始 末 す る た め ダ ロ ォ ?」


 百賭がハンドガン『M1911カスタム』を構え、黒マントの男の頭を撃ちぬく。男は階段から転げ落ち、脳汁を吹き出し死んだ。


 【依頼人】―――――――――――――――――死亡。


 しかし同時に天井から複数の声が放たれる!!!

 男!女!子供!老人!全ての声が混じったハーモニー!!


「ク―――――――――――クククク!!!!!!!!!!!それはボクの【操り人形】だ………そして、

 括目せよ!!!我が一族最強の能力―――――

 【弯曲十字の聖歌隊<バッドコントロール・クルセイド>】を!」


 ガッシャアアアーン!!!

 声が発されると同時に、天井のガラスが割れ、博物館内に大量の人間が流れ込んでくるッ!!!

 50人ぐらいか!?正面玄関を潜り抜け、階段の先にいる百賭を目指す!!!!


 対する百賭は冷静に敵の『能力』を分析する。

「弯曲十字を打ち上げ、それを見た【カース・アーツ使い】以外のあらゆる生物を―――『自由自在に操る能力』……」


『クックック………操るのではない……信じさせ―――正義と思わせるんだよ……』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 岐阜県岐阜市――――上空

 マレフィカルム所有戦闘ヘリ――――AH-64 アパッチ。


「グレトジャンニ様…もうすぐですね……もうすぐ、百賭様の長年の悲願が達成される――――」


「あと3分で博物館に到着ですな!はっは―――――――――」


 ドンゴン!!!!!!!!!!!!

 グレトジャンニ驚く!!!

「何ごと!?!?!?!?!?!?!?!?操縦士<パイロット>、何が起こっている――――――――!?これは―――――!!!」

 カラスだ!!!大量のカラスが、アパッチの周りを囲み、

 視界を阻んでいた!!!

 【依頼人】セクンダー・グランの能力…【弯曲十字の聖歌隊<バッドコントロール・クルセイド>】で洗脳された野生の動物!


「―――――――――――ま、まさか―!!!これがあの依頼人の!?」

「だ、駄目です、カラスが死に物狂いで内部に――――うわああああああああ!!!」


 ヘリの操作が狂い、ビルにぶつかってしまう!!!!!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 ドドンゴ!!!!!!!!!!

 ヘリが墜落し、炎上する――――そして、その中からグレトジャンニだけが現れる。


「――――クッ……小賢しい真似を……パイロットと一緒に乗っていた探偵は全員死んだか…」


 グレトジャンニ【D・D・F】を持って走り出す―――――!!!しかし!!!


「う――――」


 周りから、無数の人間が走って追いかけてくる!!!!!!!!

 鎌や!!!!鉄パイプを持って!!!!!!!


 これが!!【弯曲十字の聖歌隊<バッドコントロール・クルセイド>】の能力!!!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!【マイティ・ウォール】うううううううう!!!!」


 しかし無意味………

 【マイティ・ウォール】が防げるのは、一方向からの攻撃のみ。

 360度から襲い掛かる洗脳された住民たちの恐竜のような攻撃を防ぐことは出来ない。(RexBox360)


 グレトシャンニが殴られる!!!刺される!!!焼かれる!!!!


「うがあああああああああああああああああああああ百賭様ああああああああああああああああああああああああ」


マッレウス・マレフィカルム日本支部 ID.001

グレトジャンニ――――――――――――――――――――死亡。




 ザっ……ザっ……


 岐阜市の街内にいるほとんどの人間が、セクンダーの能力で操られている。

 目は白目をむいている!!口を常に開けている!!


 歩道と車道の区別もつかないまま、

 ある目的地に向かってゾンビのように歩いている!!!

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