第35話 最強の能力者②
「レンガ!!!!」
右腕を失ったニーズエルをレンガウーマンが踏みつけ、そしてレンガを振り下ろす!!!!
だがその前にニーズエルは失った腕の断面をレンガウーマンに向け、断面から出る血液で、レンガウーマンの視界を妨害する!
そして彼女はシルバーに目で合図を送った!
レンガウーマンの顔面には今『液体』がかかったのだ!
「目が…」
「こんな痛み……!!たかが腕を失った程度だッッ……!エクサタ君はいつも、私の為に腕をのこぎりで切断してくれるッ!!だからッ……これしきの事で……これしきの事でええええええ!!!シルバー……ッ!!!準備は良いな!!!!」
「ああッ!!」
「「【石の旅<ストーン・トラベル>!!!】」」
ニーズエルの『血液』が『石化』し、レンガウーマンが、体勢を崩す!
そしてそのタイミングでレンガウーマンの腹を突き刺したのは【ドラゴニック・エンゲージ】によって鋭く尖った彼女の右手!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
人間の能力を超えたパワーで右手は腹から脊髄まで貫通する!
「ニ、ニーズ!それはマズイ、またレンガを撃ちこまれるぞ!!」
「奴がレンガを撃ちこむ前に殺せば終わりだアアアアアアアアアアア!!!!!」
腸破裂!肺破壊!腎臓破壊!!
「私はレンガウーマン。レンガが人の上に立つというのならば私はそのレンガの味方に付こう。レンガで人間の後頭部を破壊しましょう。すべての人間を恐怖に陥れてあげましょう。」
そして心臓破壊!
「勝ったああああああああああああああああ!!レンガウーマンを倒しましたよおおおおおおおおおおお!!!!」
だがレンガウーマンが左手で握っているレンガが、『赤いイナズマ』を帯びる。
「えっー―――――は――――――!!!!!!」
避けようとする!だがその振り下ろされるその音を切るスピードは先ほどの【2倍】!ついに左手だけならず右手までもが切断される!!!
「ニィィィ――――ズッッ!!!」
この世にレンガより強いものはいない。その言葉通りになってしまった。
たとえ最強のドラゴンといえど、レンガウーマンの前では無力!雑魚!赤子同然!
「うああああ…!?あああああ!!!」
龍の王とて、その紅いレンガの前にはのたうち回るしかない!!
「こいつ…戦いの中で成長しているの…!?」
その光景を見たシルバーがそうつぶやいた。そうとしか思えない現象が起こっていたからだ。
だが、もしそうだとしたら無限に強くなる敵…そんなものを倒せるものはいるのか?
そもそもこの女…心臓を破壊されて動いている…どうすれば死ぬの!?
ただただシルバーの背筋には絶望感という寒気があった。
「私…すべての人間をレンガで殺すわ。
男をレンガで殺す。女をレンガで殺す。老人もレンガで殺す。
子供もレンガで殺す。赤子もレンガで殺す。
ついでに人に似た猿もレンガで殺す。
天才も無能も英雄も一般人も資本主義者も共産主義者も!
全員恐怖しろ!恐怖せよ!恐怖したわね!
死ね死ね死ね死ね!!!!
煉瓦<レンガ>!煉瓦<レンガ>!煉瓦<レンガ>!」
あ―――ハッハッハ!笑う!
レンガウーマンが慢心をし、肩を震わせる!!
だがニーズエルはそのすきを見逃さなかった!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!死ねええええええええええええええええええ!!!!!!!」
残った両足に【カース・アーツ】の全エネルギーを込め、全力の蹴りを連打!レンガウーマンをバラバラにする!
頭部もちぎれ!四肢も吹き飛ぶ!これで死なないのなら、本当の化け物だ!
「や、やったわよね!!ニーズ!!立てる!!」
「アハハ……両腕は失っちゃったけど……ちょっと……血を失いすぎて……頭が――――」
『全ての人間をレンガで殺すまで、レンガ最強説を証明するまで、私は死なない……』
しかし、レンガウーマンのバラバラ死体が一か所に集まって合体しようとしつつあった。
「ふ…ふざけんじゃ…ないわよ……!!」
「どきなさいシルバー!!!」
「なっ……ニーズ!!」
「再生するというのなら……細胞の一片も残さず―――蒸発させるしかッッ!!!」
ドラゴン・ブレス。竜化による火炎放射。
それを以て周辺ごとあたりの肉片を焼き尽くし、再生を許さない算段。
だが、しかし再生するスピードはあまりにも速く、既にレンガウーマンの合体肉片は人型のシルエットにまでなっている!
『アハハハハハハ!!!!!!』
「うあ………!!」
絶望のさなか一瞬だけ炎の放射が途切れる。
だが、背後に立っていた声がそれを許さない。
「いや、諦めるなニーズ…そのまま炎のブレスを吐き続けるのよ……」
「えっ…」
「奴はまだ再生を完全には終えてはいない……」
ガッ!!ガッ!!かたい者同士がぶつかり合う音が、死のデパートに響き渡る。
「何よ…コレ……体のちぎれた断面が……『石化』して……」
「【ストーン・トラベル】……ニーズがバラバラにしたアンタの体の断面を『石化』した…今だニーズ!!焼き尽くせ!!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーッッ!!!」
「ぬぐああああああ!!!溶ける!!私の体が!!いや―――それどころか、蒸発する!!!!まるで霧のように!!!まるで水蒸気のように!!!!しかし――――!!しかしアー――――――――――――ッ!!!!」
マッレウス・マレフィカルム日本支部『三羅偵』
探偵レンガ・ウーマン(黒霧 四揮)―――――――――――――完全消滅。
「ハァ……ハァ……終わった…わよね…」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[最期の日―――AM11:15 廃デパート2Fショッピングルーム跡地。]
睦月にとってその光景は地獄絵図――――そうとしか言いようが無かった。
エクサタは、腹を抉られた。再生するという特殊体質の為…死んではいないが、意識が朦朧としている。
エクスは左手を破壊され、モノを持てなくなった。シルバーは脇腹をえぐされ、未だに痛むようだ……
そしてニーズエル…両腕を完全に失ってしまった彼女は一番ダメージが大きい。
後方に控えていた自分だけが無傷……その事実が睦月の心を痛めつけた。
「わ、私はその………」
「睦月……別に気に病むな。無傷の者がいただけでも、我々にとっては幸運だ。」
「でもシルバー…」
「私達を哀れに思うのなら、蟻を出して、周囲をしっかりと見張れ。それがお前の今の最良の道……」
「わかった……」
暫くすると―――両腕を失ったニーズエルが立ち上がり、意識朦朧としているエクサタが落ち着くよう、そっと身を寄せた……
「これじゃホントの化物だ……ドラゴンじゃなくてワイバーンだよ…エクサタ……君の意識が戻ったら、驚くかな……」
「…………」
その光景を見たエクスが言葉を発する。
「ニーズくん。君は止血及び【ドラゴニック・エンゲージ】による生命力強化で一旦死ぬことはなくなった。
だがその両腕は自然治癒しないだろうことは明白だ。
しかし両腕もなしで生活を起こるなどきついだろう。
戻ったら即刻『医者』を手配しよう。高額の金を払い、その腕を『サイボーグ』化すれば以前までの生活は取り戻せるだろう。」
「エクスさぁぁあん…」
「しかし……奴を直ぐに倒せたのは……我々にとって幸運だったな…奴は戦いの中で成長していた、あれ以上強くなっていたら……私達にはどうする事も出来なかっただろう。」
もっとも、エクスも左手を完全に破壊され、これもまた重症である。だが彼は失血を抑えて、普通に立っている。
完全に無事なのは、睦月とシルバーだけなのだ。
「なぁシルバー……私達、これからどうするんだ……」
「エクサタの意識が戻ったらここを出て、別の場所へ移動するわ。この場所はもうあの煉瓦女経由でマレフィカルムの連中にバレているだろうからな。」
「そうか……」
「問題は、どこに移動するかだけど。」
バリィィィ――――――――――――ン!!!何かが割れる音!!
「窓が割れる音……!?睦月!!」
侵入者の顔を『蟻』が確認する!!
「ああ、今2Fの窓から誰かが侵入してきた!!あの顔――――まさか!!!『マッレウス・マレフィカルム日本支部』 ID.001グレトジャンニだ!!!!まずい!!こっちにまっすぐ向かってくるぞ!!!」
「グレトジャンニだと……『三羅偵』の次点の実力者で…探偵王百賭の側近じゃない!!ちょっと―――アンタの【ダークウォーカー】でなんとかできないかしら!!!」
「い、いや、それがダメなんだ……アイツ………宙を飛んで移動している!!!!」
「何ィィィーーーーーーー!!!」
レンガウーマンを倒したのにもかかわらず、時を待たず現れる第二の刺客。
シュバッッッ!!!!グレトジャンニが空中で等速直線運動をしたのち、シルバーたちの前に立ちはだかる!!!
「ほほほ………いますなぁいますなぁ。」
シルバー銃をグレトジャンニに向かって撃つ!!しかし銃弾はグレトジャンニの正面で制止する!!!
「【マイティ・ウォール】―――」
グレトジャンニが、シルバーたちに指を刺している。そして人差し指につけた『骸骨の指輪』が光っている………
「この指輪をはめた指が刺した方向に壁を創り出し、向かってくるあらゆるのエネルギーを『ゼロ』にする『能力』。その気になれば重力や音、光であろうと『ゼロ』に出来る。フフフ………お前たちは私の方向に向かう事は決してできない!!」
「貴様……何のつもりで……」
「―――クックック!お前に会いたいというお方がいる。」
「何……?」
VOOOOOOOOOOOOOOOO――――――――
足音。
「クックック………お前が怪盗シルバー、生で見るのは初めてだ……」
「お、お前は……」
そのシルエット……その声………シルバーの心臓が高鳴る……
VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO――――――――
それも当然だ……なぜならそいつは………その美しいシルエット……
銀髪に赤色の瞳。身長は162㎝ほどか。純白のメイド服をサイバー系のデザインにしたような恰好をしており、全身からは並々ならぬ帝王の闘気を放っている。
俺達はこいつを知っている!!!!この王を知っている!!!!!
「【乱世探偵冥王】・夜調牙――――百賭アア――――――――ッッ!!!」
「シ……シルバーッ!?」
-―――運命の逢うの瀬――――
シルバーが百賭に向かって突っ込む!!!しかしそれはグレトジャンニの【マイティ・ウォール】によって制止される!!!
「想像通りだな、この私の姿を見たら必ず突っ込む、そう思っていたぜ。だが、今の俺は日本天才族最強の者達が生み出した科学力によって映し出された3Dヴィジョンだ、まぬけめ!―――ここにいるが、ここにはいない。」
しかし、百賭に大きく反応するのはシルバーだけではない。
エクス・クロスもまた、彼女の知り合いであるがゆえに唖然とした顔をしていた。
「百賭―――君は……」
「フン!怪盗エクス・クロスか―――どうしたその眼は……死人を見たような目になっているぞ…?」
「どうして狂った!!昔の―――昔のお前はこんなとんでもないことをする人間では無かった!!!」
「クックック……ここは俺以外アホしかいない空間のようだな。狂った…?違うな―――正義が極まったのだよ。」
-――――――――ハハハと百賭が笑う。
「極まっただと―――それがお前が目指す…『絶対正義』というモノなのか!?!?調べ上げたぞ―――!お前さんはその地位を手に入れるまで、様々なマッチポンプや不正、違法行為を無数に行ってきたことをな!!!」
「フン…笑わせるわね…何が絶対正義よ。正義であるならば、ロンカロンカやレンガウーマンのような怪物を生かしておくはずがない!!」
正論である。探偵協会はブラックすぎるし、ロンカロンカとレンガウーマンは一般人を巻き込みすぎる。
探偵は怪盗より悪。それは確定。
「今の言葉で私を論破したような気でいるようだが、実は論破できていないぞ。クックック…そう正義…それは文字通り正しさ。そして、絶対正義とは…すべての霊長族に認められし正義………何物もこの私を正しいと疑わず、私が悪と断じればそれを悪と断じ、私が死ねと言えば死ぬ。
クックック…私が不正を行ってきただと?それが如何した?まぁ広めても構わんさ―――社会のゴミである怪盗が何を言おうと…誰も信じない!」
-――――――――ハハハと百賭が笑う。
世間体を味方にした彼女にとって正論など効かない。世間体は正論より強いのだから…
「―――クッ…」
「それとレンガ・ウーマンを殺したと言っていたな?どのように殺した?」
「炎で完全消滅させてやったよ、文字通り……"跡形"もなくな―――」
「跡形も無く完全消滅させた―――?クックック…その程度か?」
百賭けとグレトジャンニがにやりと笑う。笑顔が絶えない。
勝利を確信した笑顔だ。
まさか、レンガ・ウーマンを殺せていない?
まさか。まさか。
それだけはある筈がない。
「何を―――」
「シルバー!!!みんな!!!大変だッッ!!!」
「なんだ睦月!!!!!」
「『黒百合』―――!!お前たちがレンガウーマンを蒸発させたあの場所に『黒百合』が咲き始めて―――人の形に―――!!!」
「な………なんだとおおおおおおおおおお!!!!」
蟻でデパート全体を監視していた睦月による絶望の言葉。
予感は的中しつつある。
誰もが危惧していた予感。
-――――――――ハハハと百賭が笑う。
「完全消滅?ハハハハ!!!笑わせるな!!!
あの女を普通の探偵と一緒にするんじゃあない!
それに完全消滅程度で死ぬのであれば、我々は40年間、全財産の1/5をつぎ込んで彼女を封印したりはしないッ!
教えてやろう!!奴こそマレフィカルム最強―――!
『最強』の探偵にして『最強』のカース・アーツ使い――――
最も恐れられた切り札の三羅偵!!!」
「黒百合が―――あの女の形にッッッ!!!!!」
復活する―――――――――――――
-―――――――――――
<おうさつき>
「鏖殺鬼―――レンガ・ウーマン!」
<ジェノサイダー>
――――――――――――
完全消滅したレンガウーマンは、今完全復活した。
ここにきて百賭とグレトジャンニは完全なる勝利を確信した。
「な―――な――――――!!」
「さて、奴が蘇るとするなら我々に残された時間も少ないな……グレトジャンニ……仕事を済ませろ!!!」
「百賭!!!!」
グレトジャンニが走ってきて、【マイティ・ウォール】の壁にシルバーが押される!!
「【D・D・F】だけがこの【マイティ・ウォール】を通り抜ける事を許可するッ!!!」
シルバーのポケットの中から【D・D・F】が出てくる
トコン…!トコン…!!来る…グレトシャンニ来る……
ノハヽヾ
│〇-○川
│ 皿 川 『私は貴方に』
│ ω 川
`\_/
三三三三三三三
/::/ ---- 川
/::/ <----> 川
│::│..== ミ /== ミ 川
ハ│、●ノ── 、, ノ 川
│ │ ││ 川 『近づきます…』
V /││\ 川
ハ イ ゝ-' _ //
\  ̄ ̄=ァ /
ヽ イ
[挿AA]
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「シルバーなんとかするんだ!!!!」
「駄目だッッ【D・D・F】が奴の能力の壁の向こうに!!!」
レンガウーマンが復活してしまった!!
だが【D・D・F】が奪われてしまう!!
かつてない絶望の危機!!!




