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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第三章 動かぬ探偵と心の崩れ逝く先
28/75

第28話 アタシの体温はマイナス一億度①

あらすじ:

三羅偵・東結金次郎がシルバーたちの前に立ちふさがったが、ニーズエルの手によって撃退される。

だが東結金次郎の追跡は止まない。彼は化粧をして女になった。

[岐阜県――ホテル『SaveAndPeace』ROOM223]

        ――――「睦月とシルバーの部屋」・部屋には睦月一人だけ。


 洗面所にて、私は服を脱ぐ。フード付きの黒いパーカーとズボン、下着を脱いで、透き通るような白い肌を露わにしていく。水を浴びて、少し精神を落ち着かせたいのだ。


 シャワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!


 シャワーを浴びる睦月。


 【呪増酒】の副作用を早期に抑えるために必要な対策は主に3つ。

 1つ、それは呪いによって狂いゆく精神の制御。

 2つ、それは増大する呪いのエネルギーの操作。

 3つ、精神を安定させる経絡破孔<ツボ>に対し定期的に刺激を与える事。

 そう、この3つの対処法を的確に施せば施すほどに、呪増酒の副作用は早期に収まっていくらしい。

 

 【呪増酒】を飲んだときからずっと、頭に黒い霧がかかっているような感覚に陥っている。例えるなら、一睡もせず二日続けて勉学に励んでいるような状態だな。何も頭に入らず、気が付くと何度も記憶が飛んでいる…だが、エクスさんの指導のお蔭かこの状態もそろそろ慣れてきた。


「シルバー……」


 バスルームを出て、メインルームで髪を乾かすついでにテレビを見る。ニュースが流れていた、なにやらこの岐阜県で【レンガを持った女性】が子供を一人殺害して逃走中らしい。

 子供の死体は頭部が粉々になっている上、身分を証明できるものを所持していなかっので、身元の特定が難しいとか。


「五歳の子供か…可哀想だな…。なんで犯人はこんな事をしたんだ…?」


-――――――――――――――――――――――――――――――――――――

[―――AM6:22時・岐阜県―――道路]


 車内には…金次郎を避けた怪盗エクス・クロスと怪盗シーフ・シルバー。ボンネットの上には、『ヘリのプロペラ』を持った、怪盗ニーズエル・E・G・アルカンステル。

 

 エクスとシルバーが会話している。

「『三羅偵・東結金次郎』か、それとも【D・D・F】のある『博物館』か、我々の行くべき先は、どっちだと思うか。」

「もちろん東結。奴は必ず私達を始末しに来るわ。だが向かう先は奴がさっきいた場所では無い。『水場』よ。そこの通路を右に曲がりなさい。数km先、湖がある」

「なるほど…ニーズエル!聞こえるか?急カーブするぞ!」


 キュイイイイイイイイイイイン!!!ドリフトしたことによりボンネットの上に乗っていたニーズエルがバランスを崩す。


「キャッ…あぶなっ!!おい・・・・エクスさんおい!!!!カーブするならするって言ってください!!!」

「言ったろ!」


 車走る…


「―――エクス、一ついいか?」

「なんだ?」

「私はニーズエルの『能力』は知っているが―――あいにく怪盗エクス、あなたの『能力』は欠片一つ知らないわ。全部はばらさなくては良いけど―――何が出来るか、何が出来ないか…ざっと教えてくれるかしら?」

「……フッ、シルバー、ようやくこの私との信頼を築く気になったか。」

「築かざるをえないでしょ、敵は『三羅偵』。」

「フッ」


 ハンドルから『左手』を離したエクスは、頭にかぶっていたシルクハットを右手の薬指と中指の間に挟んで固定する。そして力を込め、左手になにかを出しやがる!!!爪だ!!

「その『爪』が【カース・アーツ】…【装備型】!」


 エクスが【カース・アーツ】の爪の甲をシルバーに見せる。

「これが私の【カース・アーツ】…【PNG<ピー・エヌ・ジー>】ッ!!能力は…」


 エクスが【PNG】の平でシルクハットをなでる。すると――――シルクハットが紙のように『薄くなる』。


「『触れた物質』を『二次元的薄さ』にする事!!!シルバー、側面を触らないように、このシルクハットをつまんでみたまえ。」

 シルバーうすシルクハットをつまむ…

 

「これは―――なるほど、まるで紙のよう―――いや、それ以上の薄さ。そして『堅い』…『形が一切崩れていない』、硬度をそのままにして薄くできるのね……しかしエクス―――『能力』を全部私に見せて良かったの?」

「私はお前さんを信用している。そして、これからお前さんに信用してもらわないといけないと思っている。『能力』を教える事が信頼につながってくれると、うれしいんだがね!」

「…それは、私じゃなくあのジジイへの信頼なんじゃあないか?」


「それも半分だな。」


 BLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL!!!!1


「――――『湖』が見えてきた、だーが、なんだあれは。」


 湖まで―――あと250m、車の先に黒髪の女の人が立っている。


「美女か!いい女だ、こんな危機じゃあなければ、ナンパして舌を入れていた!」

「待って、アイツ…こっちに気付いてるのに車をよけようとしないわよ!馬鹿……まさか『探偵』?だったら潰さないと…」

「―――まだ判断は早い、『美女』だし、東結金次郎ではなさそうだが……」


 シルバーが窓から顔を出す。


「ニーズエル!100m先にいるアイツをどうにかできなーい?」

「――――。わかりました~」


 ニーズエルが手に持っていたヘリのプロペラのローターを大きく振りかぶって…


「ちょ、ちょっと!まだ探偵と決まったわけじゃあ!」

「シルバー?私はさ……探偵を『恨んでいるんです』。」

「なに?なんでっすって!?」

「シルバーはさあ~不殺派?それとも確殺派?私は確殺派。悪いけど、怪しいやつは確実に殺るから♪」

「あ!おい!!」


「死ね!探偵!!!」

「おおおおおおおおおおおおい!!!!」

 ニーズエルがプロペラを女に向かって投げる!!

 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!(回転)プロペラが女に向かって回転し飛んでいく!!!


 ガッ!!!!!!プロペラが女に当たった!!!!!そしてプロペラは女の眼前で、制止する…


「やった!!!!」

「やったじゃねーわよ!!!!!!!プロペラ前に投げたら私たちの車にもあたるでしょうがああああああああ!!」

「――――ああああああああああああああ!あっ!」

「まったく……は!―――ま、待って、なんでプロペラが彼女の体を貫通しないの…?」


プロペラが――――女の眼前で…地に落ちる。


「人間じゃない―――新手の探偵!!!そして、よく見ると、変装よ、女ですらなかったようだね…あの身長―――あの目―――姿はかなり違うが、恐らくさっきの東結金次郎!我々は先回りされていた!!うそでしょ!?なんでこの局面で女装してんの!?!?」


 女は東結金次郎だった!!女装した東結金次郎!!東結が頭上で腕をクロスさせ、こう呟いた。


「『アタシの体温はマイナス一億度<アイアム・ワースト・オーバー>』」


 瞬時、東結の背後から巨大な氷のツタが大量に現れ、

 エクスの運転していた車を掴む!!!時速100㎞で走っていた車の運動量がゼロになった為、車内に大きな衝撃が走った。


「ぐわあああああああああああ!!!こ、この衝撃!!!」


 車内の二人はダメージを受けたが。ニーズエルは翼で飛んで氷を回避する事により、間一髪、東結の攻撃をまのがれた。


「ふ……ふたりは……!?」


 車内の二人は……


「エ……エクス……敵だったわ!!女は探偵・金次郎だった!!」

「あ…ああ……くっそ~!!オカマとは!!」

「あれが美女に見えたって?エクスあんたどうかしてるわ、口入れてキスするんだって。」

「冗談よせやーい!!」


「怪盗エクス!!貴方私ちゃんのことをさっき美女と思ったわねー!?癒してあげちゃう☆この……」

「え………?」


 むちっ……❤たぷっ……❤たぷんっ……❤

 東結金次郎が、自身の偽乳を持ち上げて、誘惑するように揺らす。


「AMAZONで買った7000円のシリコンおっぱいでね!!!!!!!!!!!!!!」


 ドンゴン!!!!!!!!!!!!!!!!!


「オ、オーーーーーーーーーーーマイガーーーーーーーーーーー!!??!?!??!?!?!?!」

「ちょ、ちょっと待って!!!こ、こいつが、こんなやつが『三羅偵』ですって!?ロンカロンカに比べてふざけすぎでしょうがあああああああ!!!!!!」


 三羅偵・動かぬ探偵・東結金次郎❤

 戦・闘・開・始!!!!!!!!

◆怪盗名鑑◆ #4

エクス・クロス

本名――――不明

人種――――オーストラリア人

年齢――――30~40

アルギュロスが近いうちに訪れるDDF争奪戦に供えて、海外から呼び出した4人の怪盗のうちの1人。

アルギュロスの死を確認した後は、同じくアルギュロスに呼ばれたエクサタ、ニーズエルと共にシルバーを追い、彼女のDDFを追う旅に同行する事となる。

女好きな性格で、世界各地に複数の彼女を作っているが、結婚はしていない。本人も年齢的にそれを気にしている。


【カース・アーツ】の『能力』は傷をつけた物質の『薄さ』を自在に操ることが可能な鉤爪を具現化する事。【装備型】。

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