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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第三章 動かぬ探偵と心の崩れ逝く先
26/75

第26話 シルバーVSニーズエル

あらすじ:

大阪の地下天国にてシルバーと睦月は、死んだ怪盗アルギュロスの3人の配下である『エクス・クロス』『ニーズエル』『エクサタ』と出会い、彼らに同行することになる。

 1日が経過した!


 睦月とシルバーは、怪盗エクス・クロスに【呪増瓶<バフボトル>】の副作用を抑える方法を学んでいる!!


「呪に対抗するは強靭な精神のエネルギー!!勇気のエネルギー!!」

「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「プレム!睦月!精神を集中させ、瞑想せよ!!そして、増強する闇のエネルギーを自らの手足の如く操作するのだ!!」

「わ……わからない……」

「今から瞑想中のお主らにナイフを投げる。これを、『座った体制のまま瞑想しながらかわしてみろ』!!『精神エネルギー』は、死の一歩手前』にて覚醒する!!!」

「な―――――!!」

「いくぞプレム!!パオ!!!」

「ウオオオオオオオオ!!!」

 プレムが座った姿勢のままジャンプを行い、ナイフを回避する!!!


「なんと!」(男座りの状態で2mの跳躍!なんたる習得速度!信じられん!流石怪盗シルバー、10歳でコミュニティのメンバーになっただけの事はある。とてつもない才能と力を秘めているのかもしれん……この少女なら、【D・D・F】を滅ぼし、世界を救う事も可能かもしれん!)

 そして呪増酒の副作用を克服する修行は続いた…


―――――――――――――――――――――――――――――――――

 そして3日目――――岐阜のホテルの屋上………


 シルバーと、ニーズエルが対峙っていた…


「フフフっ……」

「……」


「最終試験だ。プレム、お主は【カース・アーツ】を用いずに、このニーズエルの『頭』に一撃を与えてみせよ。」


「……舐められたものですね。増呪酒を飲んだとはいえ【カース・アーツ】を使わない、しかも生身の人間なんかが、私に一撃与えられるとは思えないですよ?」


 【カース・アーツ】を使わずにこの人外のように白い肌を持つ【カース・アーツ使い】に一撃を与える。苦難の試練である。

 余裕の表情をしているシルバー、そこに睦月が小声で話しかける。


「シルバー、ちょっといいか。」

「何、睦月?」

「あいつ……あのニーズエルと言う女なんだけど、少し警戒したほうがいい。この3日間、アイツの事をずっと警戒していたが……アイツの目は常に、私達を信用していない、仲間として見ていない眼差しだった。そして……」

「へえ?」

「一度、アイツの部屋に間違って入った事があるんだけど、そこでアイツ……あるものを食べてたんだ……知ってるか?」

「……いや、知らないけど…」

「『人間の腕』さ。アイツ、『カニバリズム』だ。ニーズは、人間じゃないかもしれない。」

「………なるほど?」


「睦月ちゃーん、いつまで待たせるつもりです~?」


 しびれを切らしたニーズエルがあくびをしながら、二人の会話を制止する。

 睦月がシルバーから離れ、エクスが合図をかける。


「さて、そろそろ始めようか。距離は、『5m』でいいだろう。では―――3、2、1…イッツショオオオオオオオオオオオタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイイムッ!!!!!」


 更に対峙る……そして、ゴン!合図とともに戦闘が始まる!同時に、シルバーが後方に向かって走る!逃げの姿勢だ!!


「な――――逃げるんですか!?ま、待てッ!!」


 ニーズエルがシルバーを走って追いかける。しかしそこでシルバーは5mほどの跳躍を行い、ニーズエルの頭上を通り越し、背後を取る!


「なるほど、これはいい、軽い!」


 これぞ【呪増瓶<バフボトル>】の効能!身体能力の強化!!

 そしてさらに跳躍!ニーズエルの後頭部に向かって飛び蹴りをかます!しかし――――――――標的が視界から消えた!!


「なっ、消えた………」

「こっちですよ~!」


 シルバーの背後からニーズエルの声が響いた……危険を察知したシルバーはさらに跳躍し、ニーズエルとの距離を取る。

 そしてシルバーと睦月がニーズエルの姿を見て驚く!


挿絵(By みてみん)


「こいつ……ニーズエル、お前その姿……やはりね!!!」

「ば……化け物!」


 頭部からは二本の鋭い角、尻から太く長い尻尾、背中から大きな翼が生え、

 体中に鱗が生成され、目の白黒が反転している。腕は爪が鋭く狂人に太くなり、脚が逆関節に代わっていく……!!

 その姿、まさに竜人<ドラゴニュート>!!


「やはり、人間じゃあ……!!」

「いや、【カース・アーツ】!!【自己強化特化型】の【カース・アーツ】!!!」

「【自己強化特化型】!?」


 睦月が聞きなれない単語に驚く。

 【カース・アーツ】はその種類に区分がある。

 【エンプレス・プリズン】や田村の【ネイキッド・ジャッジメント】のように武器を出現させる――――【装備型】。

 【ストーン・トラベル】や怪盗大裁判の【ディスソンアンス】のように条件で攻撃を起こす――――【条件攻撃型】。

 睦月の【ダーク・ウォーカー】のように、自身の意思で操作できる生物を召喚する能力――――【使役獣召喚型】


 そしてニーズエルのように怪物に変化し、身体能力を強化する事……

 【自己強化特化型】!!!


「こいつは珍しい。北欧で怪物退治のアルバイトをやっていた時には吸血鬼<ノスフェラトゥ>や人狼<ウェアウルフ>みたいな化物と逢瀬したが、竜人<ドラゴニュート>と出会ったのは初めてだよ!」


「これが私の【カース・アーツ】。【魔龍の契約<ドラゴニック・エンゲージ>】です……しかしその間合いの取り方、アタシの能力を知ってたんです…?」

「お前のその普段の『人外じみた風貌』と『カニバリズム』という特性を考えれば、お前のカースアーツが【自己強化特化型】の能力と特定するのはたやすい事よ…」

「それも知ってたんですね…私が人の肉を食べているという事も。」


 【カース・アーツ使い】にはその使う【カース・アーツ】の区分によって、外見やしぐさに特徴がある。

 10年のベテラン怪盗であるシルバーはそれを見切ったのだ。


「【カース・アーツ】は、『死んだ人間の憎しみ』や『怨念』などの負の精神エネルギー【呪いの力】を具現化した武装超能力。すなわち『死人を武器化した力』。

 【自己強化特化型】の【カース・アーツ】は、その憎しみや怨念の『パワー』を直接自らの全身に見に纏わないといけない為、使用者の肉体と精神が『激しく変異』するという副作用があるわ。

 そう、使用し続けていれば、いずれその身は『人外』になる…アンタのその『人外じみた風貌』と、その『人食欲求』も自らの意思では無く、その【カース・アーツ】によって仕方なく得てしまったものなんでしょ?」

 

「正解。シルバー、さすがに伝説ですね。ふふ……その褐色肌を見つめてると、欲求が抑えられなくなってきたな…食べたい、その身体を引きちぎってやりたい……フ……あはあははははッ…!!!―――――キャハハ!!!」


 ニーズエルが地面を強く蹴り、シルバーに向かってジャンプする!!


「ッ……想像以上のスピードだ…!!」

「【ドラゴニック・エンゲージ】は最高のスピードとパワーはドラゴンのステータス!その動きは人間ごときに見切る事は出来ないねッ!!」


 でニーズエルの攻撃は尻尾による凪払い!!だがシルバーは間一髪にかわし、更に距離を取る。

 そして、銃を、リボルバーを構え……ワン・ツー!!『二発』撃つ!!


 一発はあられもない方向に飛んで行ったが、もう一発は、ニーズエルの顔面に命中する!!!!いや…


「―――!!あ、あぶなッ…まさか味方同士の戦いで銃を撃つなんて!!頭に弾が当たるとこだった…」


 ニーズエルはその超人じみた反応速度で銃の弾丸を『つまんで』防御していた……しかし―――――


「グ―――アアアッ!!」


 ニーズエルの背後から弾丸が一発炸裂する!!背中が鱗に覆われていたため、大した傷にはならなかったが、驚いて怯んでしまったッ!


「な、なんだ―――!?」

「『跳弾』、背後の壁で弾を反射させたわ、そして……」

「―――!!」


 ニーズエルが再び正面を向くと、そこには、シルバーの膝があった。


「このまま、膝蹴りを、させてもらうぞ……」

「おぶっ!!!!!」


 ニーズエルが顔面に一撃を受ける。しかし、怯まない。


「あははッ…なるほど、確かに強いです…!!今の『跳弾』、アルギュロス様と戦った時を思い出しましたよ。」

「顔面に蹴り食らっても怯まないって…【自己強化特化型】はホントに厄介ね…」


 身体能力を単純に底上げする事、それは死の確率を極端に下げるという事であり、それをシルバーは厄介と呼んでいた。

 だがノーダメージとはいえど、『顔面』に一発いれるという試験の条件はクリアできた。シルバーとニーズエルの戦いが終わり、エクス・クロスが拍手をする。


「素晴らしいぞシルバー。あの【呪増瓶】の副作用を3日で克服するとは。」

「……ああ、3日待ったかいがあったわ。三羅偵とも戦えるかもしれない…」

「睦月君はまだ、克服できていないようだな。その様子を見ると、あと『二日』か。」

「も……申し訳ありません…」

「謝る必要はないね、睦月。じゃ、今日はもう部屋に帰って休むぞ。エクス・クロス…睦月のことも頼むぞ」

「ああ…」


 タッ…部屋に戻ろうとするが、腕を広げたニーズエルとエクサタが二人の前に立ちはだかる。


「ま、待って、二人共…待って欲しいの…」

「どうしたんだニーズエル。」

「あの…その……」


 ニーズエルが汗を流しながら下を向く。


「へへっ……!!私が、人の肉を食べてるって知って、どう…思った!?」

「―――!」

「くくく……きひひひ…」

「……さぁね、10年の怪盗生活の中でそういう奴は結構見てきたわ………ついてくる分になら、好きにすればいい。」

「……ククク……エクサタ君!」


 合図とともに二人の会話を見ていた3人のうちの一人、軍服の男怪盗『エクサタ』が背中から無言でのこぎりを取り出す。


「…何のつもり?」

「……」


エクサタが右腕の袖をまくり左手に持ったのこぎりで右腕を切刻む……!!


「な―――――」

「な、何やってんだコイツ……何時も無口で何考えてるかわからない奴だったが…更に訳が分からなくなってきた…」


 背後からエクスが語りかける。

「睦月君、シルバー切刻んだ腕を、彼がよく見てみなさい。」


「あっ…」

「さ、再生している……?」

「そうだ、『エクサタ』…彼は再生能力という特殊な体質を持っている。腕が千切れようと…一時間たてば再生するほどの強力な『能力』だ。そして彼女、ニーズエルはエクサタの肉しか食べない。彼女にはまだわずかな理性が残っていて、無関係の人間を襲って食べるという行為はほとんど行わない」

「そういう事~~!!もしかして、一般人を襲って食べてるヤバいやつだと思ってました~~!?キャハハハハ~!!」


 唖然とするシルバーと睦月。


「いや、仲間を食べるのも自分から食べさせるのも、そうとう『ヤバイ』のでは…」

「ああ、ヤバいな………」

「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!」


 食人怪盗・ニーズエル。

 能力―――――――――【ドラゴニック・エンゲージ】(ドラゴンに変身する事)。

 主食は不死身の体を持つ怪盗『エクサタ』の腕。


―――――――――――――――――――――――――――――――――つづく。

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