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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第三章 動かぬ探偵と心の崩れ逝く先
25/75

第25話 動かぬ探偵

 国内での【探偵協会】の転機は、おそらく『彼女』が来てからだ。


 関東圏内の暴力団及び半グレ組織の9割以上を撲滅。

 国内怪盗250名以上を抹殺および怪盗組織の2つを壊滅。

 320以上の【カース・アーツ】戦をほぼ無傷で完封。


 そんな創作の中から出てきたような女が現われれば…如何なる組織であろうと転機を見ずにはいられない。


 恐らく近年で最も【探偵協会】に貢献した探偵『三羅偵・乱渦院論夏(ロンカロンカ)』。

 彼女の死が今、我々に激震をもたらしている。


 だが『俺』は心底清々している…あの女は、間違いなく悪魔であったのだから…

 功績が功績だから…誰も彼女を悪とは信じないがな。


 死んだロンカロンカのことを思いながら、『俺』はある女の写真を見る…

 黒髪の、俺とよく似た容姿の少女…


「金詩葉<かしは>…」


 『金詩葉』…俺の双子の姉だ。俺は三羅偵・東結金次郎。彼女も元三羅偵・金詩葉。

 俺と彼女は二人で一つ。だが彼女はロンカロンカに殺されてしまった。

 ロンカロンカが俺の姉を殺し、三羅偵の空席へ座ったのだ。


 『ロンカロンカ』…3歳の頃に既にIQ300を超えていた奴は、在ろうことか実妹以外の家族を計画殺人する。それも崖から車を落として、事故死に見せかけるという、3歳児には不可能な筈の芸当で。

 そしてその後、東京に越してきた彼女は何のきっかけか能力もなしに怪盗狩りをはじめ、8歳のころに『探偵協会』に入会した。

 そこから『三羅偵』になるのは一瞬の出来事かな。

 『三羅偵』になったあいつは、全ての罪をもみ消すほどの権力を持っている。


 一方で俺は残酷な手段を用い、数々の功績を秒で積み上げるロンカロンカと違い、俺は堅実に推理を進めるスタイル。怪盗を殺めることもなく、仕事も奴に比べて遅い。

 だから俺の扱いはロンカロンカに比べて非常に軽く、慕う部下も少ない。


 その扱いの軽さは、この『ドア』を開けた先に行けばわかるだろう。

 ドアの先には、一人のハゲ男のクライアントが立っていた。


「貴様ああああああああああああ!!三羅偵なのにその仕事の遅さはなんだああああああああああああ!!ロンカロンカ様ならあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!1日で推理してましたよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 主にロンカロンカへ怪盗捕縛の依頼をしていた常連のクライアント。俺は彼女と比較され、そして罵倒されていた。


「ヘイヘイヘイ!ちゃーん捕縛して連行してやったじゃあねーか…!」

「ロンカロンカ様ならすでにいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!捕縛どころか殺すところまでいってたわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「殺すとかやべえやつだろ…俺たちは人殺しなんかじゃあないぜ…」


 口論が始まるぜ…!!ロンカロンカならともかく…俺の性格レベルじゃあ依頼人とレスバはしょっちゅうだ。

 だが今回は……


「まぁまぁまぁ。落ち着いてください。依頼人・湯村様。ご不満であれば、契約金の50%を返金いたしますので。」

「【虐奈】ちゃあん!❤❤んほお君は生きてたんだねえ❤❤❤❤❤❤」

「女子中学生に鼻の下伸ばしちゃって…かわいい♪」


 【虐奈】と呼ばれる白色の服装をした、黒髪ロングの胸の大きい女が現れる…その目は漆黒に染まっており、ハイライトが無い。【虐奈】はその可愛い容姿に魅了された依頼人・湯村を丁寧に送り返し、俺の方を見た。


「【乱渦院虐奈<ろんかいんぎゃくな>】……!!テメェ…!どうしてここに…!!学校は如何した…!?」

「あは」

挿絵(By みてみん)

 そう……乱渦院。この女は…ロンカロンカの血族。奴の二人の妹のうちの一人で、血は繋がっていない。

 ロンカロンカは両親を殺した後、『いとこ』の家に引き取られることになり、その時義妹となったのがこの虐奈なのだ。ロンカロンカより3つ年下<14歳>で、まだ中学生だが、彼女もロンカロンカの影響で探偵をしている。


「学校は如何した…!?学校サボってんじゃあねえぞ……!!」

「海の日だよ?東結さん。」

「そうだった…」


 祝日出勤、それは探偵協会でもよくあることであった。


「東結さん、今日は百賭さまから貴方へ伝言を伝えに来たんです。」

「依頼だと?例の【D・D・F】か?悪いけど俺はアレにはまともに関わらないぜ。そもそもロンカロンカを倒すようなやつに格下の俺が敵うわけが……」

「【三羅偵・黒霧四揮】を使うようです――――――――――」

「―――――――――ッッっっ!?」


 『三羅偵・黒霧四揮』。俺が探偵協会に来る前からずっと三羅偵の席を埋めている女。

 だが………あの女は……


「ふざけんなァ!!!あの女を……あの女を封印から解き放てば、どれだけの【死人】が出ると思ってるんだァ!!!!」

「しかし、百賭様は今回の事態を重く見ています」

「俺に動けって言いたいんだろう!?探偵王様は!!動かぬ探偵に動けと!」


 息を大きく吸い……そして吐く。すると、俺の前に『氷の床』が出来上がった。

 これが俺の【カース・アーツ】の能力…


「『俺の体温は-273.15度<アイアム・アブソリュート・ゼロ>』ッ!!!」


 俺は滑る!!氷の上をすべるように走る!!まるで急ぐように!!

 一方でおいて行かれた虐奈は俺の背を見ながら、あざ笑うように言葉を発する。


「論夏姉は…きっと消えてはいないとおもうよ?論夏姉は…論夏姉のあるべき場所へ到達したの…そう、死者の魂が還る地は……くくく……あっはははははははは!!!!!」


 不吉なことを口走る虐奈をよそに、俺は走り続ける…!!間に合わなければならない…シルバーの目指す岐阜に!!


 ふと外を見ると無数の『戦闘ヘリコプター』が岐阜へ向かって飛んでいた。

 『探偵協会』という企業は一企業にして超能力や改造人間という法外かつ未知の技術を使って民衆の人心を掌握、日本企業の頂点に立っている。今や総理大臣より発言権のある女となった探偵王・百賭であれば、自国の軍の『最新兵器』を持ちだすことなどたやすいこと。

 だが…これほどの戦力を集め…


「戦争でも始めるつもりか…」


 気づけば俺は…支度をするために、俺の家の部屋にいた。

 支度はすぐに済んだが俺はポケットの中に入れていた「姉・金詩葉」の写真を机に置いた。

 そして引き出しからケースを取り出し、ケースの中のものを取り出す。


「口紅、たばこ、化粧水、ジャケット、ウォークマン。」


 すべて、姉が使っていた備品。ロンカロンカに殺された双子の姉・金詩葉の…

 俺は涙を流す。


「姉貴…この世界にはクズが多すぎるぜ…」


 この世界をこれ以上狂わせるわけにはいかない…

 ロンカロンカのような悲劇をさらに生むわけにはいかない…


 シルバーを倒し、俺は『黒霧四揮』の発動を止めるぜ!


―――――――――――――――――――――――――――――――――

[一方…探偵協会本部]


「フン…これで金次郎は動く…あの男は正義の男だからな。」


 百賭が足を組みながらフフフと笑う。

 それを見て側近・グレトジャンニは頭をかしげる。


「しかし…百賭様、今回の【D・D・F】回収の依頼…妙に入れ込んでますなぁ。それほどあの『依頼人』の男を思っていて?」


 依頼人の男とは…『新潟博物館館長』を殺した黒マントの男。


「冗談はよせ。あいつが何考えているのか俺には読めん。読めん男を好きになる女はいない。」

「あの依頼人…アトランティス人の関係者かと思われますが…一体何者なのか…奴は既に【D・D・F】を『二つ所持』している。」


 百賭が立ち上がり。瓶に入れてあった安物のグミを取り出し…食べる。


「【D・D・F】…か。」


―――――――――――――――――――――つづく。

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