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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第三章 動かぬ探偵と心の崩れ逝く先
24/75

第24話 増呪酒

[ブラック・ヘヴン内 レストラン]


シルバーの横に睦月、そしてその正面に、【伊達男】、ピンク髪の女【ニーズエル】、そして軍服と軍帽を被る身長175㎝程の【金髪男】が座る。


「まず自己紹介をしよう私の名は、『怪盗エクス・クロス』。」

「聞いたことがある。確かオーストラリア出身の…」

「クク、あの伝説に知っていて貰えて光栄だよ。

 さ、そして、私の右手にいるこの軍帽をかぶった男は怪盗エクサタ。そして、左手にいるこのピンク髪の少女が―――」

「はい!怪盗ニーズエルです!本名は『ニーズエル・E・G・アルカンステル』。」


 自分に指を刺した桃髪女ニーズエルが喰い気味に自己紹介をする。


「よろしくです!」


 ニーズエルは、睦月とシルバーのいる方向に手を刺し伸ばし、二人と握手をする。


「『本名』と『怪盗名』が同じなのか。」

「住所を持たずに活動してますからね~。」

「さて、私は怪盗エクスだが、自己紹介はここまでにして、キミが『アトランティス人』であることを知っているその理由を話させていただこう。」


「「――――――!」」


 2秒の沈黙。そして伊達男エクスは口を開く。


「……銀の老獪、アルギュロスから聞いたのだよ。」

「アルギュロス?確か、コミュニティで二番目に腕が立つとかいう……」

「!なんと!君は自分の祖父が、怪盗アルギュロスであることを知らないのか!」


 そう、未来を見る『能力』を持ちながらにしてロンカロンカに敗れた怪盗アルギュロス。

 シルバーは彼が自分の祖父のことだとは知らない。

 だが…ガタッ!睦月が立ち上がる!


「な、なんだと―――!あのじじいが、あの怪盗アルギュロスッ!大先輩にして敬うべき相手じゃないか!!私は、なんて失礼な事を……!」


 かつてアルギュロス(プロメテウス)に対し、カントリーマアムを取りに行かせたり、目の前でわざと乳を揺らして反応を楽しんでいた睦月がうつむいて顔を赤くする(Live Sexの才能がある)。

 だがそんな事はどうでもよかった。


「なるほど、アンタらはジジイの知り合いか。なら私がアトランティスの民だという事を知っていてもおかしくないな。そしてあの情報屋イノックとのパイプも私と同じ『ジジイ経由』かしら。」

「流石はあのお方の子孫だ。汗一つ流しはしない。」

「で?アンタらの目的は【D・D・F】?」

「そうじゃ、アルギュロスに言われたのだ。ワシや孫が死んだら、お前達が闇の宝石を回収し、滅ぼせ…と。」

「…残念だが、私はまだ生きている。つまり【D・D・F】を滅ぼすのはまだ私の役目よ。あの宝石は渡せない。」

「在日アトランティス人の性<SAGA>…か。」


直後、睦月がシルバーの肩に腕を回し、小声で何かを話し始める。


「プレム、彼らを旅の仲間にするというのはどうだ?」

「駄目だ、信用できない。」

「私はそうは思わないがな。横の二人はちょっと気になるが、怪盗エクスさんのあの眼差しとしぐさ―――アルギュロスさんに対する恩義と、【D・D・F】を滅ぼすという信念を強く感じる。そしてあのアルギュロスさんの知り合いだというのなら間違いなくかなりの実力者怪盗だ。きっと、良い戦力になってくれると思うが…」

「ジェーン、相手の心を読むのに自信があるのかは知らないが、それだけじゃ、信用にはならないわよ。」


 そう、シルバーは10年のベテランで、経験則からそう簡単には他人を信用しないようにしている。

 ここでシルバーと怪盗見習いの睦月の先見性の違いがあらわになっていた。


「何を二人でコソコソ話してるのかは知らないけど…」


 ドヒュン!!!二人の小声会話にしびれを切らしたニーズエルが二人の間に手を突きだす。


「DDFを渡さないというのなら、わたし達が貴方たちの旅について行くまでですよ!そもそもの互いの利害は一致してるんだし。いいですよね?」

「……いつ【D・D・F】を盗み出すかわからん奴らをそばに置いておけると思うか?」

「なら、互いに一定の距離を取りながら行動すればいいじゃないですか!」

「なんですって…」


「言っておくけど、私たちはあのアルギュロス様に恩義があります!そして恩義は返すべきものだと思っている!止めようと思うんなら殺してでもないと止まらないよ!」

「……むう…」


 こうして、エクス、エクサタ、ニーズエルの三人がシルバーと睦月の旅に少々距離を取りながらも、同行することとなった。

 この後シルバーが30分ほど席を外し、再度合流。5人は本日の寝泊まり先へ向かう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

[地上・大坂のどこかのホテル]


「エクスさん!アタシとエクサタは先に部屋に戻ってるからね!」


 エクサタとニーズエルがホテルの部屋に戻り、ホテルのロビーに3人が残される。

 睦月は既にエクスと打ち解けているようだが…睦月には疑問があった。


「私とプレムで1部屋、ニーズエルとエクサタで1部屋、そして、エクスさんが一人で一部屋。……しかし、ホテルは一室4人までいけた筈だけど…なんでエクスさんはあの二人と一緒の部屋じゃないんですか?」

「ニーズエルとエクサタ…あの二人には『とある事情』があって―――な。」

「『とある事情』?」

「そのうちわかるさ。そのうち…ね。」


 3人がホテルロビーのソファーに座る。


「……で、エクス。この私に聞きたい事って?」

「アルギュロスの最期の事だ。私はあの人の一番弟子だった、あの人が何故ロンカロンカに殺されてしまったのかを、知りたい。知らねばならん。」

「……。ロンカロンカ。」

「シ、シルバー……」


 シルバーがうつむく。


「あの老獪アルギュロスは正直言って私の知る怪盗の中で最高と言っても良いほどの実力者。その彼が、戦って死ぬなど…考えにくいのだ。」

「聞いても怒んないでよ。」

「ああ……」


 シルバーが前を見る。


「――――嘘を付くのはなんだからハッキリ現実を教えてやるわ。あのジジイは……アルギュロスは、恐らく、あのロンカロンカに全く手も足も出ないまま、一度のダメージを与える事も無く、殺されてしまった。」

「なっ―――!」


 エクス拳を握りしめ立ち上がる。


「馬鹿な!さっきも言ったが、あの人は……」

「――――――私も、詳しい事は知らないわよ。あの日は、ジジイに気絶させられて、目が覚めたら、ロンカロンカに襲われていた。奴はジジイを地獄に送ったと言っていて、それでいて無傷だったわ。」

「馬鹿な―――どうやって倒したんだ……あの人は、『10秒後の未来を予知する無敵の能力』を持っていた。正直言ってあの能力を敗れる策は私でも思いつかない…彼のあの能力を見て生きている者は私以外にはいない……ならばロンカロンカは、初見の対峙であの能力を破ったという事になる…しかも無傷―――あ、ありえない……な、ならばお前さんは、そんな化物のような敵に、どうやって勝ったというのか!」


 勝った……その言葉を聞き…

 ドンゴン!シルバーが机を叩いた!!


「勝った―――?ふざけるな、私はアイツに勝ってなどいない……ただ、殺せただけだ…!二度目の戦いで、幸運と言う幸運が何重にも積み重なり、仲間、それもあのロルを味方に付けるという、私が考えうる中で最も私に優位だった状況で、それでようやくギリギリで殺せたんだ……!」


 そして何より、奴は誰よりも黒く光り輝く太陽だった…!誰よりも悪を突き進んでいるくせにだれよりも前向きに生きていたヤツの姿は…正義の道を歩むことが正しい道だと信じてきたこのシルバーの心をズタボロにしていった……


「お、落ち着いてプレム!」


「―――!……『三羅偵』の水準は、そこまで高かったのか……」


「怖気づいたのなら、今からでも国に帰った方がいいわ…。今後の旅で、残りの『三羅偵』二体や百賭との激突は絶対に避けられない。奴らもなぜか本気で【D・D・F】を狙っているらしいからね―――」

「………」


 エクスうつむいて考え込む……


「じっくり考えるがイイさ。私はもう部屋に戻ってるよ。」

「――――いや、駄目だ。『三羅偵』がそこまで強いというのならアンタら二人だけじゃ無謀。絶対に駄目だ。やはり私達も、お前さんたちについていく事にするよ。二人より、五人で立ち向かった方が勝てる可能性は高い。」

「――――。忠告はした、事実も伝えた。それでもなおついてくるんなら、私は何も言わないさ。」


 シルバーが立ち上がる。


「しかしそれでも、それでもなお、三羅偵がそこまで強いというのなら、5人で立ち向かっても勝機は少ないだろなぁ。ミス・プレム、少し待っていただけるだろうか。」


「……次は何だ。」

「これを見たまえ。」


 そういうとエクスは服のボタンを開け上着を脱ぎ始める。


「わっ……!!」


 その行為をファックと勘違いした睦月が頬を染め顔を手で覆う。

 エクスは上着の内ポケットから灰色の液体が入った瓶を取り出し始める。禍々しい瘴気を感じる瓶だ。


「【呪増酒<バフボトル>】―――!」

「そうだ、北欧の【悪派錬金術師<ダーク・アルケミスト>】が、対異能ハンター用に造り出した呪力強化の技術。『探偵協会』と戦う為、地下街で10本ほど買ってきた。」

「プレム、あれを飲むと、どうなるんだ……?」

「【カース・アーツ】の持つ呪いのエネルギーが増強され、単純に身体能力が上昇する。だが、アレには面倒な副作用があって……」

「面倒な副作用?」

「【カース・アーツ使い】がアレを飲むと、20日ほど【カース・アーツ】の増強された狂気に魂が支配され、思考能力が低下する。最悪死ぬ。とてもじゃないが、"今"使えるものでは無い…今は時間が無い。そう、20日も経ってしまえば、岐阜の【D・D・F】は誰かに奪われてしまうから…。」


「――――。20日の副作用か……だが私なら、副作用を5日で抑える事が出来る。」


エクスは瓶を開け、中に入っている灰色の液体を一気飲みする!!!


「グ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!アボオオオオオオオオオオオオ!!!ヴチュッ……ヴッチュッ………!!どわあああああああああああ!!!ハァ……ッハァッ……!!」


 何という!あまりの呪いのエナジー故、エクスが痙攣したりイカれたりする!!!!!!!!


「な、何ィィー―――――――!!!!だ、だがあの副作用を抑えている…!!」


「副作用を抑える、方法は、ある……私が身を持って証明した…あのアルギュロスさんが編み出した方法だ―――ヘヘ、ケッコー苦しいけど…この方法を使えば、アトランティス人の君なら、きっと、3日で抑える事が…可能だろう……『探偵協会』の兵力は強大だ。今の我々ではどれだけ努力したところで、太刀打ちなどできんだろう。ならば我々に残された最期の法は、人間の限界を超えた努力をする……ただ、それだけだ。」


「………ジジイが、編み出した、方法か………」

「エクスさん、その瓶、私にも一本下さい。」

「!」


睦月が立ち上がり、鋭い視線でエクスを見る。


(間違いない…いま彼の行動を見て分かった。彼は本気だ。そして、副作用を抑えるという言葉も絶対に真実だ!)


「ジェ、ジェーン!!!」

「面白い娘だ、まだ新人とは聞いていたが……ほらよ、受け取るがいい。怪盗界で…最高酒だ……」


 エクスが呪増酒を睦月に投げ渡す。そして、睦月は瓶のふたに手を付け……


「待て睦月!!まだ飲むな!!」

「プレム、何を……」

「私も一緒に飲んでやる。エクス、私にも瓶を渡せ!」

「プ、プレム……」

「―――!Gooood!」


 そして二人は同時に瓶を蓋をあけ、同時にその中身の気色悪く気味の悪い灰色の物体を一気飲みする……


「ウオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――!!!!(シルバー)」

「えっぐ………あひゃ~~~~~~~~~~~~~!!!(睦月)」


 ><←睦月こんな顔になっている


「誓おう、5日、いや4日でお前たちの副作用を抑えると………

 我が師、アルギュロスに誓おう……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 夢………私…プレイマー・グランは夢が好きだった――――


 しかしプレイマー・グランにとって最近の夢は地獄そのものであった……


 なぜなら…そう、あの女と出会ってしまうから……


 ……ロンカロンカと出会ってしまうから……。


「くすすっ……………アハハハハハ!!!!」


 乗り越えてやる……ロンカロンカ、DDFを守り抜き…いつか心の中のお前を撃ち滅ぼしてみせる……


 なんてことはない!乗り越えて成長してやる…!


―――――――――――――――――――――――――――――――――

[ホテル・ROOM403「エクサタとニーズエルの部屋」]


「ふーん、怪盗シルバーと睦月、ちゃんとあの瓶飲んだんだ……もぐもぐ……」


 エクサタのいる部屋でニーズエルが何かを食べている。


「【D・D・F】を盗む事か…そうだね、確かに可能だと思う。でも、今盗み出しても何も意味は無い。【D・D・F】は5つ揃って初めて効果を発揮するからね……其れに敵はすごく強い。五つ揃えるまでは、あの二人は味方にしておいた方がいい………もぐもぐ」


 肉……ニーズエルが肉を食ってやがる……いや、この音、骨すらも……

 しかも独り言である。エクサタは何もしゃべっていない。


「もぐもぐ……今日もありがとね、エクサタくん?」


 この形、この指……ニーズエルが食べているのは、人間の腕だ……

 ニーズエル・E・G・アルカンステルは、アントロポファジー・カニバリズム。人間を食べる『人喰い怪盗』であった。


「在日アトランティス人の血肉って、どんな味するんだろ?気になるなぁ。」


 狂った怪盗の牙が、今……シルバーに矛先を向ける!


◆探偵名鑑◆ #6

怪盗大裁判

民族―――日本人

年齢―――不明

身長―――181cm

ID探偵No.152。ロンカロンカがDDF捜索の為に鳥取に呼び寄せた3人の探偵のうちの1人。

二重人格を持つデュアルで、二つの【カース・アーツ】と契約している。

怪盗に対し常識以上の殺意を剥き出しにし、狙った怪盗は完全に死ぬまで追い続ける凶暴な探偵。

『能力』は自分が発した音を浴びた物体の長さを操作する【不協和音<ディスソンアンス>】

そして眼球から直線状かつ絶対貫通のビームを発射する【バジリスク】

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