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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第三章 動かぬ探偵と心の崩れ逝く先
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第21話 運命の歯車とホットケーキ②

[秋子の家]


 家から出ると、探偵田村が震え、うつむきながら立っていた。一般人を巻き込んだことに罪悪感を感じているのだ。おそらく彼は探偵だが、性悪な人間では無い。

 男は私が家から出るのを確認した途端私の両肩を掴み―――私の目を見た。


「ばあさんは……さっきのばあさんは大丈夫なのか!?」


「ああ。応急処置はすでに終わった。命に別状はないし、特に後遺症が残る気配もないわ。」


 田村は下を向きホッ、と胸をなでおろす。


「そうか…」


「―――ついてこい。人のいない場所があるわ。」

「―――!」


 人のいる場所で戦いたくはない。林だ。私が倒れていたという、あの林の中で戦おう。


「殺しあうんでしょ?。記憶喪失だったがすべてを今、思い出した……私がお前に殺される理由。探偵と怪盗が戦う理由……」

「ッ……」

「来なさい、探偵!」


 男が苦虫を食いつぶしたような表情をするが、その後きりっとした表情でこの私の後ろに黙ってついてきた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[林]


 私と田村が―――林の中で対峙る。


「記憶喪失か、先にそうと言ってくれたなら、僕も紳士だ。手出しはしなかったのに。」

「言っても信じなかっただろう、怪盗の私の言う事なんて。」

「へッ……痛いところを突くな!」

 今の私に武器は無い、リボルバーも、石で造った武器すらも―――秋子さんに見つからないよう全部別の場所に隠したからな。だが、やるしかない。


「推理させてもらうぞ、怪盗。」

「来い探偵、貴様に私は殺せない。」


 ――――――


「【ネイキッド・ジャッジメント】!!」

「【ストーン・トラベル】!!!」

 田村が右手から『鎖』を飛ばしてくると同時に私の『能力』で田村の目の表面の水分が『石化』する。


「無駄だ……あらゆる攻撃、呪い、すべてこの【カースアーツ】…【ネイキッド・ジャッジメント】の前には無力!」

 そういいながら田村は『鎖』を戻し、自分の頭に巻きつける!【カースアーツ】の『能力』を無力化する鎖…恐らく瞳の『石化』を解除するつもりだな。だが貴様は今無防備になっている…隙だらけだわ。

 …膝蹴りを……顔面に当ててやるわ。


「グバァ!!!やるな怪盗……!!ならこれはどうだ!!」

 探偵は腕だけではなく全身から『鎖』を出現させる!そして私の腕、脚、胴体を縛られた……!!男はそのまま5mほど離れ、私に銃を突きつける。


「油断したな!力を隠していたのだよ!私の鎖は何も腕だけから出る訳ではない!!さぁ―――【ネイキッド・ジャッジメント・イッツ・ショータイム】!!」

 奴がトリガーを引く……だが……この鎖を逆に私の方から引っ張ってやれば、奴は体制を崩す……!!


「なっ……!!引っ張るな…!!引っ張ってるのか!ウオ・アア!!こんのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 奴は銃を撃つが、体勢を崩したためか、一発も私に当たらない。そして一気に鎖を引っ張り、田村を私の方に寄せ付け、銃を奪い投げ捨てる!!


「なんて……パワー、その小柄で!!」

「これが在日アトランティス人の力だ……」

 ロンカロンカのような化物ならともかく、ただの成人男性にこの私がパワーで負けるはずがない!!頭を踏みつけてやる!!


「う………ううう……」

 田村は怯み、あまりの痛みに『鎖』の能力を『解除』する。


「どうしたそこまでか鎖男!その程度では三羅偵には程遠いわ!!」

「まだ……だ……」

「……」


「僕は……ずっと……『シャーロック・ホームズ』のような探偵を目指して……戦士としての最強を極めつづけた……

 あの!!新世紀救世主・百賭様の切り開く新日本の為、探偵を極めつづけた!……この程度でくたばるか……!!」


 田村が両腕の中に無理やり『鎖を注入』し、私の顎を殴った!!

「ギっ……こいつ……」


 注入する…そう、いま田村の皮膚には【ネイキッド・ジャッジメント】の鎖が浮かび上がっている。


「グオオオッ……そうとう痛いが、これで今の僕の腕力に【ネイキッド・ジャッジメント】のパワーが『プラス』された。今の僕には、貴様と殴りあうだけのパワーがある!行くぞ怪盗!」

「来いわ!!」

 パンチが交差し、クロスの形で私と田村が顔面を殴る!!パワーは同格かッ…!いや、腕が長い分、奴の方が有利ッ!


「のけぞったか!!くらえっ!!今の僕は石をも殴り潰せる!!!」

「フン!!」

「チッ……受け止めたな……!!ヌッ……この蹴りは……早……ぐおああああああああ!!!」

 田村の腹を蹴り上げ、3mほどジャンプさせる!!


「お前は今強化しているのは腕だけだッ!!蹴りのスピードは私の方がまだまだ上のようだな!!」

「なら脚にも『鎖』を注入してやるッ……うおおおおおおお!!!!」

 田村が直ぐに立ち上がり!!この私に飛び蹴りをかます!!そして怯んだその隙に私の急所に確実なるダメージを与えていく!


「怪盗に殴り合いで勝ったああああああああああああ!!これで僕はシャーロック・ホームズになれるぞおおおおおお!!!!」


 血が流れている。涙も出そうなほどの痛みだ。だがそれが何だ?人間なら血も涙も流すのだろう―――だが私は石の銃剣だ。大いなる使命と言う名の銃剣。石は涙を流さない―――私の血は石。私の涙は石。


「トドメだ!死ね怪盗!」


 奴が――――私の顔面を思い切り殴る―――だが……


「な、何故だ……なぜ怯まない………!!」

「【石の旅<ストーン・トラベル>】―――首の中の水分を一瞬『石化』させた。そして―――――」

 私は奴の腕と脚に入っている鎖を無理やり引っこ抜いた。痛みでもだえ苦しめ!!


「おあああああああああああああああああああああああああああ!!!!この怪盗がああああああああああああああああああ!!!!!!」


「まだ来るか……だが無駄だ。『人間』ではこの私には勝てない――――終わりだ!!」

「ヨアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 人間の急所――――は7か所ある。デコ、眉間、鼻、顎、喉、みぞおち、そして―――股間。そのすべてに強烈な一撃を加えてやった……


 田村が倒れ、私は歩いてそのそばに近づく。

「助けて―――くれ……いやだ……僕はまだ死にたくない―――!!!」

「お前の先ほどの目には、夢を目指す一人の漢としての勇ましい炎が宿っていた。だが―――崩れ去ったな。とどめを刺してやろう、お前の持ってきた、この銃で。」

「ひいいいいいいいいいいいいッ……お父さんッ…お母さんッ……助けて……」

「――――!!クソッ…!」


 田村を回し蹴りで気絶させる。


「ハァ……ハァ……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その後私は、隠れていた睦月を発見し、家に帰る道を一緒に歩いていた。


「で、どうするのこれから。」

「どうするも何も――――この村は出る事にするわ。【D・D・F】を葬らないといけないからね。」

 睦月が右手に持っていた焼き鳥の串を屠る。


「………使命なんか発哺り出して、この町で静かに生きるってのもいいかもしれないぞ」


「それは―――無理だ。私にはもうどこにも逃げ場所なんてないわ。逃げたとしてもその場所が探偵に燃やされるだけだわよ。今回の秋子さんのように―――」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 秋子さんは寝室のベッドの上で目を覚ましていた。生きている私の姿を見るや、痛みを忘れて私の事を抱きしめてくれた。

 ―――その後私は、記憶が戻った事と別れの挨拶を彼女に伝えた。

 お互いの安否が確認できた途端に残酷な報告だったかもしれないが―――それでも彼女は、一瞬悲しげな顔をした後に、微笑んで……「いってらっしゃい」、と私に向かって言ってくれた。


「ああそうだプレムちゃん、アンタ、昼はまだでしょ。台所に、昼ご飯をラップで包んでおいてるから、温めて食べなさい。」

「うん、ありがとう、秋子さん。」

「ジェーンちゃんは―――。」

「私なら大丈夫です、さっきコンビニでおにぎりと焼き鳥食べたんで。」

「フフ、そうかい。プレムちゃんをよろしくね。」


 私と睦月は寝室を抜け、台所に向かう、そこにあったのは――――

 焦げ目がついて、円になってない、ふにゃふにゃのホットケーキ。近くには、ホットケーキの作り方に関する本が置いてある。

 そうか、私が好物だってことを伝えたから、頑張って作ろうとしてくれたんだ。


 レンジでホットケーキを30秒温め、皿にのせる。そして、ナイフとフォークを使て、それをゆっくりと口の中に入れる。

 ハッキリ言って、ホットケーキとしては並の味だった。素人の作ったホットケーキと言った感じ。


「………プレム、君は……」


 この頬を伝う水はなんだろう。この心臓の高鳴りは何だろう―――――――なぜこんなものが流れるのだろう。


 ホットケーキの味が、走馬灯のように私の過去をフラッシュバックさせる。

-------------------------------------------------------------------------------


「プレム―――今日はホットケーキを作ってみたのよ!」

「オイオイ、これ、焦げ目も付いてるし、しわくちゃじゃないか。」

「初めて作ったんだからしかたないでしょ!」


父さんと母さんの声だ――――――


「ママ、私、これ大好き!!」

「ほら、プレムも喜んでるわ。ふふっ……私って意外とホットケーキの才能あるのかしら。」

「こんなもんはホットケーキと言えないね、よしパパが手本を見せてやる」


―――――――――


『日本の天才少女探偵・夜調牙百賭が二人の怪盗を粛清したようです。』


―――――――――


「―――そうだ、ホットケーキが食べたいな。久々にママの作ったホットケーキを。でも、ママはもういない……」


-------------------------------------------------------------------------------


「…………………」


 わたしにまつわる…運命の歯車と、ホットケーキ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 食事を終えた私は、秋子さんのいる寝室に再び向かう。彼女は、私が再び現れるとは思ってもいなかったようで、目を丸くしている。


「―――!プレム、どうしたんだい。」


 私は彼女に―――そおっと抱きつく……最後の別れを告げる為―――


「秋子さん、いろいろ助かったわ……本当にありがとう……」


「その顔―――泣いたね?」


 秋子さんが涙を流す。


「馬鹿…こんなに抱きしめられちゃ、別れがつらくなるよ。」



[岩美町の道路]


「これ、睦月の車?」


「ああそうさ。」

 

 箱みたいな黒い車が置いてあった。


「次に向かう先は―――『岐阜』よ!岐阜の宝石博物館!家が焼けて、パスポは作れなくなったからね。」


「そうか…パスポートが無ければ火山に【D・D・F】を封印することはできない…しかし岐阜の『宝石博物館』。確かあそこは……」


「秋子さんの家で暮らしている間に【D・D・F】が二つ発見され、あの博物館に保管されたというニュースを見たわ。私は―――誰よりも早く、その石を回収しないといけないの。それが使命だから。」


「ふーん。でも、私を連れて行ってくれるってのは意外だったな、てっきり、断られるもんだと。」


「足が必要だし、何よりも……一人でいる方が睦月はかえって危険かもしれないしな。」


「奴ら、何故かは知らないけど、本気でその石狙ってるらしいからね。まさか『三羅偵』を使うなんて…いずれ私の元にも暗殺探偵が贈られるのは明白か…」


「睦月、あなたは必ず私が護る。お前は私の最後の友人だからね。私は貴方のことが『好き』なの。」


「えっ……」


「そう、『好き』…愛の告白じゃないわよ―――」


「くく、愛の告白かと思ったぞ。レズビアンじゃないけど、じゃ、車を走らせるぞ!」


「ああ、向かおう―――次の【D・D・F】を回収するため―――」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

[マッレウス・マレフィカルム日本支部・地下]


 グレトジャンニと百賭が怪盗緑目のあいどらを連行する…


「『三羅偵・東結金次郎』は今鳥取にいる。そして、あの博物館には"罠"がある。いずれ最後のDDFは我らマレフィカルムの手中へと収まるでしょう。」

「……『三羅偵』【黒霧四揮】の召喚準備をしておけ。いざとなれば彼女をぶつける。」

「黒霧様ですか………!!あ、あれを使うのは流石に……!!」

「いざとなれば―――だ。」


 ドンゴン!!!!!!

 怪盗アイドラが牢屋の中にぶち込まれる。


「ふざけるな貴様ら―――なにが探偵だ!!何が絶対正義・百賭だ!!許せん!!!てめえらのやってる事は――怪盗と何にも変わらん!!!」


「絶対正義の定義、それは全ての人間から正義と称えられる存在。10人中9人から正義と思われていても、残りの一人がそう思っていなかったら、そいつは絶対正義ではない。

 だが、その残りの一人を殺せば、そいつは絶対正義だ………我が正義の為に死ね………アイドラ。そして【四揮】の餌になれ……」


「四揮だと……?」


 アイドラの背後に身長205㎝程の巨大な女性の影が現れる。

 髪は紺色のロングストレートで顔はとてもニコニコしている。地面に接触するほど長い漆黒のコート、漆黒のスカート。その姿はまさに普通の気の優しそうな人妻OLと言ったところだ。


 だが―――一つだけ、普通では無い所があった。

 それは――――右手に【レンガ】を持っている事。

 それは――――左手に【レンガ】を持っている事。

 血に濡れた―――真紅<スカーレット>の【レンガ】を………


「レンガはいかが?」

「あ………あああああああああああ!!!!!!!!!!」

「レンガをどうぞ。」

 四崎が両手の【レンガ】をアイドラの頭に振り下ろす。


「ごば!!」


 ドンゴン!!!アイドラの頭が爆発する。


 怪盗・緑目のアイドラ―――――――――――――死亡。



――――――――――――――――――――つづく。


◆探偵名鑑◆ #4

乱渦院論夏ロンカロンカ


民族―――日本人

年齢―――17

身長―――171cm

体重―――65.4kg

家系―――平凡な家系に生まれ、3歳の時に両親を計画的に抹殺。その後妹と共に親戚の家に引き取られる。(関係は良好)

好きな色―――紫(だが髪の色まで紫にするのはダサいと考えている)


探偵協会マッレウス・マレフィカルム日本支部の頂点に君臨する

三人の探偵『三羅偵』の一人。

表向きは学業と兼ねて探偵活動を行う明るい天才美少女であり、

アイドル的存在(匿名画像掲示板ではR-18のアイコラも作られている)だが…

その本性はIQ503もの天才知能故に自分を絶対なる女帝と信じ、それ以外の全てを生きる価値のないクズと考えている人の形をした邪悪。

(「IQ30の壁」というIQが30離れている者同士では会話は成立しないという俗説がある。503ものIQをもつ彼女にとってIQ100前後の人間達は一体どのように見えていたのだろうか。)



邪悪さで人を魅了できる、闇のカリスマの持ち主であったが、

その底の無い悪の素質を隠しながら狡猾に生きてきた為、その闇に魅了された人間は数少ない。

しかしその闇に魅了された人間はただでは済まない。


――――怪盗シルバーは彼女の闇にあらがえるだろうか?

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