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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第二章 天才美少女探偵は勝利を信じてる
18/75

第18話 太陽が黒色に輝くとき③

[PM7:12]

 VOOOOOOOOOO


 廃スーパーマーケットの崩れた瓦礫を黄金の剣が飲み込んでいく。そして、周りの瓦礫をあらかた消した後、黄金の剣身から一人の女性が出現する。


「終わった……」


 ロンカロンカだ――――――――――――


「終わった…怪盗シルバー、君はこのロンカロンカと【エンプレス・プリズン】の力に完全敗北したのです。フフフ―――――フハハハハハハハ!!!!知的!天才!絶対知性!!フフフフフッ―――――やはりこの私こそがこの世界を支配するにふさわしい絶対なる女帝なのだ!!


 この世界の人間は二つに分別できるが―――それは善と悪、勝利者と敗北者などという曖昧な境で分けられるのではない。この『私』と『それ以外のカス』だ―――!!私こそが唯一の女帝!!それ以外は全てカス!!愚かなる人間どもよ!明日からも日常的に殺し続けてくれます!!


 他の三羅偵や百賭さえもいつかこの手で殺してくれますッ!そしていずれ世界をわが手に掴みましょうッ!!アハハハハハハハハーーーー!!!」


 VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!勝者、ロンカロンカ………


「フッフッフ――――!!!」


「フ―――フッフッフッフッ!!!笑いが止まりません……笑いが止まりませんよォ――――――!!」


┏┓    ┏┳┓┏━┓┏┓┏━━┓┏┳┓┏━┓┏┓

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┗┛        ┗━━┛  ┗━━┛    ┗━━┛ 


「――――!?雷ッ!?」


 そしてその瞬時―――――ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!

 雨が降る!!『大雨』だ!!!


「……大雨!?たしか天気予報では今日は台風接近…傘を差さないと――――」


 カッ!!!右手に持ったエンプレスプリズンを掲げると同時にロンカロンカの動きが『硬直』する!!!


「!?―――な、なんだ……体が、う…動かない!!いや――――『石化』している!!馬鹿なッ……シルバーが生きているというのか!!そ、そんなはずは……!!いや……待て、奴には一つだけ方法があった……爆弾を回避する一つの方法が!!」


 ロンカロンカが目の前の瓦礫の上を見る!!

 そして――――――――――――そこに立っていたのは―――――――――――


「ハァ……ハァ……そうだ!さすがに頭がキレるじゃないの……天才少女探偵と言われてるだけの事はある……」


 銀髪ショート、銀の瞳、褐色の肌という背は決して高くないが神聖さのあるその外見、黒色のコートを身にまとい体中が血で濡れまくっている―――

 そう、夢ではない、正真正銘本物の怪盗シーフ・シルバーだ!!!


「ゲホッ……『人間爆弾』たちの使う『爆弾』の原理は理解していた、お前に一度殺された後、爆弾の破片を見つけて調べたからな。彼らが腰に付けていた爆弾は自作爆弾。自分で爆破範囲を細かく設定できるよう、爆薬には『ガソリン』を選んでいる。」

「チッ――――!」

「『ガソリン』、安易に手に入るにしては、あまりにも危険な爆薬だ。5リットルで、8m×8mほどの室内にいる人間を全員皆殺しにし、18リットルで、田舎の小さな学び舎を柱一本残さず消し飛ばす威力の爆発を起こしたという記録がある。

 まぁ取りあえず、こいつ<人間爆弾>の持つガソリンを『石化』させたことによって、私は爆発から逃れられたわけだ。

 そして、【7:12分】―――この時間に嵐が来ることを……私は風を呼んで事前に予測していた。」

「ぐ……シルバー……!!」


 エンプレス・プリズンから開かれた傘が取り出される!!だがその傘はシルバーの放つ弾丸によって一瞬にしてブチ折られる!!

「お……おおおおお!!」

「お前はエンプレス・プリズンを出すとき、毎度毎度必ず『右手』の方に出していた。どんな状況でもな―――予測通りだ、右手を『石化』すると、キサマは何もできない…形勢逆転だ…!」

 シルバーの視界全てが灰色に染まっていく!!草木、ビル、見える物体全てが『石化』する!!!

 雨は全て水分!!雨天はシルバーが世界を支配する時間だ!!!


「なるほど…だが……(くっ……この世すべての物質は…3つの種に分けられる!すなわち個体!液体!気体!あの怪盗シルバーのストーン・トラベルは……

 そのうちの一つを、すべて『石化』させる能力……!!!全物質の三分の一を味方につけることができる能力だという事……侮っていたが……考えれば考えるほど恐ろしい能力だ………

 だが勝機はある。普通のインスタントどもならともかく―――私は生まれ付きの超天才児!この状況から貴様を倒す戦法はすでに編み出している!!)」


「ハァ……ッ!!ハァ……!!終わりだ!!ロンカロンカ!!」

 シルバー銃を構える!!!!しかし!!!

「爆発音だ!!」「ロンカロンカ様の声がしたぞ!!」「何ごとだ!!」

 警官隊!!――――――12名ほどの警官がこの崩れた廃マーケットと言う戦場に足を踏み入れた!!


「邪魔だッ!!」


 しかしシルバーが彼らの方を向いた瞬間―――全ての警官は全身を『石化』ささせられてしまう!!!!


「呼吸口は残してある……窒息死はしないだろう……これで邪魔者は消えたわ。」


 しかし―――シルバーがロンカロンカの方を向くと、そこには驚くべき光景が広がっていた!!

 何たることか!!燃え上がっている!!!ロンカロンカの体が炎上している!!!


「なッ…なッ……!!!こいつ、私が目を離した隙に何かを出して自分の体を炎上させた!!!」


 そして、【エンプレス・プリズン】から、ガソリンが垂れ…エンプレス・プリズンを持っていた右手に着火、爆発した!右手が半壊し、エンプレスプリズンが宙に舞う!!

「グゥゥ!!!」

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 シルバーが銃を構えると同時に、ロンカロンカが【エンプレス・プリズン】で自分を切り裂き、『石化部分』を残して異世界に『転移』――――

 そして瞬時に全身を『取りだし』シルバーと対峙する!!【エンプレス・プリズン】は左手に持っている!

 シルバーは銃を撃つが―――それは剣から取り出された人間の盾によって防がれる!!


「ば……馬鹿な……か、勝ったと思ったのに……」

「この程度でこのロンカロンカを倒せると思ったのですか?くすすすすっ……!!この炎なら、濡れる前に水分を蒸発させることが出来る……さぁ!!第二ラウンドです!!行くぞ!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


 絶望的な状況になっても折れない心を持って歯向かってくるロンカロンカのその光り輝く姿に、シルバーは最高の絶望と恐怖を見た!!!


(こいつは確かに……悪だ――――!!クズで邪悪で悪趣味で、一切の善性を持たない…心に一点の光すら降り注いでいない絶対悪だッ…――――

 でもそれでも――――こいつは…こいつは最強なんだ!!絶対に折れない……誰にも負けないという強い意志があるッ!!

 こいつはクズだが、私が今まで出会った誰よりも強い精神力を持っている!!絶対悪…【全てを黒く染めるドス黒い太陽】だッ!!)


 シルバーが滝状に水が流れている場所まで逃げ込む!!


「フッ……そこに突っ込めば私の体が『石化』しますねぇ!!ですがッ!!」

 ロンカロンカが滝の隙間に半壊した手を突っ込み、シルバーの目に向かって血を撒き散らす!!!目潰しだ!!!

「生物は視界を封じられると本能的に一瞬怯む―――それは君が言っていたことですッ…!目に血を飛ばされて一瞬のまばたきもせずにいられますか!?斬り裂け!【エンプレス・プリズン】!!」

 しかしシルバーはひるまなかった……一瞬の瞬きさえしなかった…


「だからッ……だからッ……コイツに勝つには『敬意』が必要だッ!こいつはクズだがッ…その強さに『敬意』が無いと勝てないッ!復讐とか苦しめてやるとか考えてやる暇などない……勝つ事だけを考えなくては…!精神的に勝てない『本当の強敵』に復讐は完遂できないんだ………!そして……この……目を瞑らない事……それが貴様の強さに対する『敬意』だあああああああッ!!!」


 流れる水に触れたロンカロンカの半身が『石化』する!!右腕以外はほぼ『石化』した!!

 そしてシルバーはリボルバーに6発の弾を装填するッ!!

「おおおおおおおおおおおおおおお!!6発の弾丸だッ!この6発の弾丸それぞれに我が思いを込めッ!貴様を撃ち滅ぼす!!!!!」


 ワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!


 五発の弾丸が発射される!!!


 一つ目の弾丸には――――

  右堂院を失った悲しみを乗り越える思いが……

 二つ目の弾丸には――――

  プロメテウスを失った悲しみを乗り越える思いが……

 三つ目の弾丸には――――

  【D・D・F】を絶対に守り抜くという思いが……

 四つ目の弾丸には――――

  自分がこの街にいたが故に犠牲となった者たちへの懺悔の思いが……

 五つ目の弾丸には――――

  このロンカロンカを絶対に倒すという思いが込められていた。


 全弾ロンカロンカの体に命中!!!


 だがロンカロンカはまだ死なない!!わずかに可動した右腕を動かし、爆発でボロボロになった右手の骨の鋭い槍で――シルバーの胸を串刺しにする!!!

 大腸及び小腸破裂!!腎臓・及び右肺爆裂!!ここまで0.3秒!!心臓到達まで0.1秒!!


「トドメだシルバー!」

「ぐぁあああ!!!……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッーーーーーー!!!!!!!」


 後0.1㎜でロンカロンカの腕の骨はシルバーの心臓に到達する!!!

 しかしその前にシルバーが、ロンカロンカの脳天めがけ――――


「シックスッ…!(六発目だ)」


 最後の弾丸を発射する。

 最期の弾丸には――――いつかこいつを越えるほどの強い精神力を持つ人間になってやる………


 そういう思いが、込められていた。


 頭を撃ち抜かれ仰向けに倒れたロンカロンカが痙攣している。水流を浴びてなお身体につけた炎は完全には消火されていなかったようで、部分部分が燃えている。


「ま……まだ……負けていない……

 フフ……この状況から……勝つ……方法……今…思いつい――――」

 シルバーがクルっと回り、ロンカロンカに背を向ける。そしてその瞬間―――ロンカロンカの近くにあった『石化済みの人間爆弾のガソリン』が……灰色からオレンジ色に変わる。


ドォォ―――――――――――――――――――――――ンッッ!!!



 マッレウス・マレフィカルム日本支部『三羅偵』

 天才少女探偵ロンカロンカ(乱渦院 論夏)―――――――――――――死亡。




 サ―――――――ッ


 雨は、止まない。


 雨が、血まみれのシルバーの体を打ちつける。


 生き残ってもなお、ロンカロンカへの敗北感と恐怖に包まれた――――――彼女の背を。



 ―――――――――――――ネオ鳥取市における【D・D・F】争奪戦。

  死亡者…右堂院義明、プロメテウス・グラン、怪盗大裁判、ロンカロンカ、

    その他600名ほどの一般市民。

  損害…計り知れず。

  勝者…なし。


――――――――――――――――――――――――――――つづく。

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