第17話 太陽が黒色に輝くとき②
「【エンプレス・プリズン・シュトゥルムヴィント(暴君の風)】!!」
ロンカロンカが時空剣【エンプレス・プリズン】で自分を切り裂き、自身を暗黒の異世界へと転送する。
そしてその黄金の剣心の先にロンカロンカの『頭部』!中央に『両腕』!末端に『両足』が『出現』する!
その姿は―――まさに奇怪!四足歩行の怪物そのものであったッ!!!
「へ、ば……化物らしくて貴様にお似合いだ…」
だが、その姿には奇怪や恐怖を越える威圧感あった。
悪魔とかそんなレベルじゃない。
目の前の女は、魔王である。シルバーはただそう思った。
シルバーが震えながら後ずさる……瞬時!!ロンカロンカがダッシュする!!凄まじいスピードだ!!
「ッ……そうか……あの状態のロンカロンカは胴体を剣の中に入れてるから――――体重が『軽くなって』…スピードが上がっているんだ!」
「ククク…」
(私、ロンカロンカの身長は丁度170cm、体重はおよそ64kg――――いや50kg後半ぐらいだったか…まあいい…
一般的に胴体の体重は全体重の43パーセントほどなので―――つまり今の私の体重は約30kg~20kgになる。
チーターより軽く、早い!今の私が時速100㎞~200kmのスピードを出すぐらいわけはない!!)
ワン!ツー!シルバーがリボルバーのトリガーを押し弾丸を二発射出する!!しかしロンカロンカの目の前に鉄板が『取り出される』!!
「あくびが出ますね……」
「銃弾がダメなら……こいつはどうだッ!!」
シルバーが水を石化させて作り上げたブーメランを投げる!!
「そのブーメランの『石化』を解除して、水を浴びせますか……?」
「『石化』を解除するッ!うっ……読まれた!?」
ブーメランは鉄板に防がれる途中で石化を解除―――水の塊へと変貌する!!しかし―――避けられたッ!!動きは予測されていたのだッ!
「グッ……!!」
シルバーとの距離0.5mまで近づいたロンカロンカは【シュトゥルムヴィント】を『解除』。全身を出現させシルバーの顔面を蹴りあげる。顎の骨にひびが入り、さらに追撃でろっ骨を3本破壊!
「ギエッ…うおおッッ!!!」
「無駄な作戦考案、ご苦労様。」
ロンカロンカが【エンプレス・プリズン】を振り下ろすッ!!
「クソ……この技はまだ使いたくなかったがッ……」
カッ!!シルバーがロンカロンカの目の粘膜を『石化』するッ!!
「…ッ…小賢しい真似を………聴覚で気配を察知できる私にこんなものは無効だと前の戦いで教えてやったはずですよ。」
「いいや、狙いはお前の視界を封じる事じゃあない。目が見えなくなっても戦えることは知っているからな…私の本当の狙いは…視界を失った瞬間の――――『ひるみ』。お前は今、突然、目が見えなくなって『ひるんでいる』ッ!」
シルバーが【エンプレス・プリズン】に触れないよう膝うちをロンカロンカの顔面にブチ当てる!!!!!膝の先には針が仕込まれていたッ!!
「グッ……UGAAAAAAAHッ!!!」
「知ってるか?イノシシが突進してるときに目の前で傘を開いて脅してやると…本能で怯んで逆走するんだよ…それと同じ原理だッ…!しかし私の能力は中距離特化の能力……これ以上近接特化の能力を持つ貴様の近くにいると危険だ。身を隠させて……貰うぞ……」
シルバー厨房に向かう……そして立ち上がるロンカロンカ…
「『視界に見えるあらゆる液体・水分』を石化させる『能力』。カスのような能力かと思っていたが―――なかなか応用の効く能力です。そして確信したぞ…シルバーは『怪盗ロル』を味方につけている。―――クックック…何人来ようと同じことだというのに…」
ロンカロンカが歩き出した。
「この界隈で一番恐ろしい事は『能力を対策される事』!私の能力を知ったものは誰であろうと始末せねばなりません。同じ探偵だろうと、一般人だろうとね。」
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[PM7:10 廃スーパーマーケットレストラン『天上無双一品』]
そこにシルバーは辿りつく……
「恐怖…それは恐るべきものだ……恐れは確実なる勝利をも敗北に変えるからな…そして私は今あの女に恐怖している……マズい――――強気になれ、Coolになれシルバー……」
『大丈夫なのか嬢ちゃん、というか……そろそろ【例の時間】だぞ!!例の時間になったらいったい何をするんだ!?』
「外の音を感づかれないよう―――奴を外におびき出す。それでこの私の勝利が決定する…ここに来たのは、それまでの時間稼ぎ……」
『外の音…!?まさか……――――ンンンッ!?』
「どうした!ロル!!」
『や…奴が今レストランの中に入ったッ…!!距離……15m!!あとシルバー、何やら奴はこちらに向かっている最中に、剣の中から複数の人を出していた!』
「剣から人だと!?何をするつもりかは知らないが……嫌な予感しかしない!」
瞬時シルバーが銃を連発し―――辺りのパイプや水道を破裂させまくる!!
ジャアアアアアア!!!
「奴は今、音を探知して私の位置を確認している。音を出して、位置を気づかれないようにしてやる。」
だが瞬間、ロンカロンカが厨房に侵入し、部屋の右側に向かって【エンプレス・プリズン】を投げるッ!!シルバーが銃を構える直前に!!そして、宙を舞う【エンプレス・プリズン】がタンス、机、トイレなどのガラクタを辺りに散乱させる!!!
そのガラクタがシルバーの体に常人なら複雑骨折不可避の打撃的ダメージを与える!!
「ううっ……!!」
ロンカロンカが能力を解除すると、壁にぶつかった剣が消滅する。能力を再発動すると、剣は『右手に出現』する!
ワン!!シルバーがリボルバーから弾丸を一発放つ!!しかし――――それは鉄の盾によってさえぎられてしまう!
次にロンカロンカは部屋の左側に向かって【エンプレス・プリズン】を投げるッ!!ガラクタを辺りに散乱させる!!シルバーがガラクタの谷に挟まれる!!
「フフ………逃げ場はありませんよ――――そおれっ!!」
ロンカロンカが【エンプレス・プリズン】をシルバーに向かって投げる!!
しかしシルバーは【エンプレス・プリズン】の柄の部分をキャッチし、受け止める!!
「―――!」
「ハァッ…ハァ……どうやら触れるとマズいのは刃の部分だけのようだな。」
「ほほ…」
次の瞬間、ザッシュアアアアッ!!!
【エンプレス・プリズン】の刃の部分から24本の日本刀が召喚され、シルバーの体のいたるところに突き刺さる!!
「うぅぐぐうううううううううう……!!!!」
致命傷に至る前にシルバーが【エンプレス・プリズン】を蹴り上げ、ガラクタを駆けあがり厨房を出る!
しかしその眼前にはロンカロンカがいた!探偵用オートマチックピストル『M1911カスタム』を構えている!
「――――!」
「【シュトゥルムヴィント】――――先回りする事は実に容易い事でした。
あとこの部屋の水源ですが―――全て蛇口ごとすべて封印させていただきましたよ。【ストーン・トラベル】は何をするか読めない能力ですからね…さぁどうするんです!もうどこにも水源はありませんよ!そして、この距離で銃は避けられません!」
「く……くそおッ……!!(あれを…やりたくなかったが…あれを試すしかない!!!)」
バン!!ロンカロンカが、シルバーの脳天に向かって弾丸を放つ―――シルバーは自分の頭部を両腕でガードするッ……
しかしシルバーが脳天から血をふきだす……
「終わったな……」
ドンゴン!!
「えっ……」
ロンカロンカの脇腹から血が噴き出している……
「な……なんですこれは……い…痛いッ………」
痛みを抑えられず。ロンカロンカが膝をつく。
「ハァッ……ハァッ………くそ…【7時12分】がきてしまった…外に出なければッ……」
シルバーは生きていたッ!シルバーがガラクタの山を下り、ロンカロンカをよそにレストランから脱出するッ!
「………!!なんだ今のは……銃弾が当たったと思ったら―――奴はダメージを受けてなくて…気が付いたら私の脇腹がえぐられていた……奴の今の攻撃を暴かないとッ……!!」
ロンカロンカが銃を撃つ!!3発だッ!!そして全弾がシルバーに命中するッ!
しかし……ガキンッ!!シルバーの体が銃弾を跳ね返すッ!!
「跳ね返したッ!?」
銃弾の命中箇所には割れた石のような傷跡が残っている……!
「まさかあのクズ、『自分の体内の水分さえも石に変えられる』な……そうとしか思えない……」
「ハァッ……ハァッ……」
(【ストーントラベル】は『視界に入った水分を石に変える』だけの【カース・アーツ】ではない、
『自分で触れている液体すら、石に変える事が出来る』のだッ!
そう、体内の水分を『石化』させ銃弾をはじく芸当すら可能だ……
だがこの技で銃弾をガードすると傷口が割れたように破裂するので、急所への攻撃はガードできないし……普通にダメージを受けた方がマシな事の方が多い……)
体の痛みを抑えながら、逃げるシルバー……
タッ…タッ……足音がシルバーに向かってくる。
「あ、足音……それも複数、誰かいるのか!?」
『恐らく、さっきおれがレストランの中で言ったアレだ、奴が剣の中から取り出した複数の人間……』
「そんな事言ってたな……」
シルバーが足音の方を凝視すると、そこにはゾッとする光景が広がっていた!!
足音の主―――ロンカロンカが剣から取り出した人間たちは、全裸かつ……腰に、何かいびつなものをぶら下げていた。
(まさか『人間爆弾』―――――ッ!!!
私の家を襲った―――――あの『人間爆弾』ッッ!!!)
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ザアアアアアアアアッ!!水の音がうるさいレストランの中で、ロンカロンカが誰かと通話している。
「ええ、みなさんは例のスイッチを押して、持ち場で20秒待機してください。あと、銀髪の少女がいたら、追いかけて抱きつきに行くように。命令を違反すれば殺します。君たちの家族友人隣人親戚一同を皆殺しにしますからね。」
ピ!
「まぁもう、全員殺しちゃってるんですけどね。フフ……怪盗シルバー…もう一切の逃げ場はありませんよ。祖父と同じ末路を辿るがいいです。アハハハッッ………あと10秒!!」
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「おおおおおおおおおおッッ!!ロル!!どこか逃げ道はないのかァァー―――――――――ッッ!!」
『駄目だッ!!あいつ――――『人間爆弾』をこの廃マーケット全体に均等な位置に配置してやがる!!殺意ある配置だッ!!どこにいっても人間爆弾がいるッ!!』
「く…くそ………」
「お、おおおおおおおおおおお!!!!」
ドォォ―――――――――――――――――――――――ンッッ!!
寂れたスーパーマーケットが爆発の衝撃に耐えきれず崩れていく!!瓦礫は落ち!!炎は炎上し!!荒れた音を立てる!!!
崩れていく!!全て崩れていく!!!