第11話 在日アトランティス人
(なんだこいつはァ~~!!一般人を銃弾の盾にする探偵なぞ……だがッ!)
プロメテウスがロンカロンカをビル屋上の端へと追い詰める!
「逃げ場はないぞ!!天才美少女探偵ッッ!!」
「そうですかねぇ?(未来を見てくださいよ。)」
ロンカロンカがビルの屋上から身を投げ出す。
「な、何じゃとォ~~~!!!」
落下死するぞ!!と、怪盗はふと思った。しかし―ーーー
「【女帝の監獄<エンプレス・プリズン>。】」
ロンカロンカが地面追突直前に自分の体を【エンプレス・プリズン】で切り裂き、自らを暗黒の異世界に転送した!!!!
カランカラン!!!そして【エンプレス・プリズン】が地に落ちたとき、ロンカロンカが剣身から身を『出現』させる!!!
プロメテウスが一手出し抜かれたのだ!!
「くそッ……逃げられる……!!だがDDFの為ワシはなんとしても奴を追わねばならん!!!!あの女…何か危険すぎる!!」
プロメテウスもビルの屋上から身を投げ出す。
「【フォーチュン・ナビ】!!!『10秒後の未来』を予知した!!ワシの『10秒後の未来』は落下死では無い!!そこのクッションの上に運よく落ちて少々怪我する程度の『未来』だ!!!!」
プロメテウスクッションの上に落下!!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして!!追う!!追う!!追う追う追う!!プロメテウスがロンカロンカを追う!!
「探偵め、あの身長の低さで、あれほどのスピードを出せるとはッッ………!!!だが………追い詰めたわい!!!!」
プロメテウスがロンカロンカをT字路の真ん中に追い詰める!
(しかし、追い詰めたといっていいのじゃろうか……ワシの武器は今、拳銃とグレネードのみ。そして奴の能力は未知数。剣から人間や鉄柱を『出現させる能力』とは………)
「くすっ……♪冥土の土産に、私の【カース・アーツ】の能力を教えて差し上げましょうか?クソジジイ♪」
「何?」
ロンカロンカがエンプレス・プリズンを右手に具現化させる。
「この黄金の剣が私のカース・アーツ。名は【エンプレス・プリズン】。能力は――――『斬ったものなんでもこの刃に封印する』。」
「何故じゃ……なぜ『能力』をワシに伝える―――――――――まさか!!!」
具現化されたエンプレス・プリズンがカンカンと地面に打たれる。
「実は事前にあなたやシルバーと交流があった可能性のある人間を、『全員この刃に封じ込めておいた』のです。だいたい350人ぐらいですかね。つまり私はいま、『350人を人質に取っている』わけですね。―――――このように。」
エンプレス・プリズンの剣身から、15人ほどの老若男女の頭が『出現』する。
「助けてロンカロンカ様ァ………」「ひえええ………」「あああ………」「ママ―――ッ!!」
「-――――!!!な…な………馬鹿かッッッ!!!」(全員、見覚えがある――――!!近くの幼稚園の先生に、二つ隣の家の主人――――!あいつも!あの娘も!!見覚えがある。)
「やっぱり、全員知っている顔ですよね♪フフフ――――そおれッッッ!!!」
ゴッ!!!!ゴッ!!!!
ロンカロンカがエンプレスプリズンを近くの花壇の角に何度も執拗に叩きつける!!!!!!
「ぎゃあああああああ!!!」
「これで15人も死んじゃった~♪」
プロメテウスが青筋を立て、噴る。彼は怪盗ではあるがカタギを巻き込む性格ではない。故にキレた。
「外道め……なんの…何のつもりじゃあッッ!!」
「この程度で取乱しちゃいけませんよ汚れた枯れ木さん。あと人質330人はいるんですから。それと―――――私が外道?
ハッ!面白い事を言う!キミが怪盗行為をしなければこの罪なき者どもが死ぬことはありませんでした!悪いのはキミです!キミが彼等を殺したのです!」
ロンカロンカが再度【エンプレス・プリズン】の剣身から15人ほどの頭を『取り出す』!今度は全員子供だ!!そして……
「――――その娘は…………」
「プロおじい…ちゃん……?」
その娘は、名を田村ほかりと言った。10歳。隣の家に住む、近くの小学校に通う普通の女子小学生。よく、プロメテウスと遊んでいたようだ。
少女は、ロンカロンカに銃を向けるプロメテウスを見て一瞬で状況を察した。そして…
「あはは、かわいい顔見知りを引きましたね。」
「プロおじいちゃん……ロンカロンカを殺して………!!こいつは悪魔よ………!!!」
「ロンカ…ロンカァァァ……!!!」
「あたし、もう察したの……もう助からないって………!!
今は頭だけでてるけど腕と脚はロンカロンカに引きちぎられちゃった…パパとママも同じ……ペットのデイジーは、尻尾も斬られちゃった…もうあたしたちは人間じゃない………
あたしに構わずロンカロンカを殺してぇ――――!!!」
「――――――――――!!!この未来は――――――!!!」
プロメテウスは、10秒後の『未来』を見た。そこには、左手に銃を持ったロンカロンカに顔面を何度も撃ち抜かれる、田村ほかりの姿が。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ドン!!
プロメテウスが拳銃をロンカロンカに向けて発射する!しかしロンカロンカの目の前に田村ほかりの全身が出現する!!【エンプレス・プリズン】で暗黒の異世界から取り出したのだ!!!!当然弾は田村ほかりに命中する。
「ギャア!!!」
眉間を撃ち抜かれた田村ほかりは血を辺りに吹き出し死んだ。しかし拳銃から放たれた銃弾はそう簡単には止まらない。人一人撃ち抜いたとしても貫通しその先を抜ける。
弾は田村ほかりの頭を貫通してもなお、ロンカロンカに迫った。しかし、再度【エンプレス・プリズン】から子供が出現し、ロンカロンカはそれを盾にした。
「マッッ……」
二人の手足の無い子供の死体がロンカロンカの側に転がり落ちる。
「おっと危ない、ダブルビンゴ。」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
アルギュロスが青筋を立て、ロンカロンカに迫る!
「あはは……くすす……!!とんでもないジジイですねぇ!!自分を慕ってくれるかわいいガキを撃ち殺してしまうなんて!!」
「70年以上怪盗をやっていたが、貴様以上の外道はいなかったぞ!!ロンカロンカぁ!!」
プロメテウスが再度銃をロンカロンカに向け連射する!!
「ギャアアアアアアア!!」「うあああ!!」「きゃああああああ!!!」
しかしすべての弾丸は【エンプレス・プリズン】よりいでし肉壁によって防がれる。跳弾も、ガラスを吹き飛ばしての攻撃も、すべて防がれた。
そしてその中で余裕そうにしているロンカロンカが誰かと通話を始める。
「各位。プロメテウスを始末するため、プランAを実行します。ええ、例のスイッチを押して、私のいるT字路に来てください。来なければ殺します。君たちの家族友人隣人親戚一同を皆殺しにしますからね。」
バンバン!!!次にプロメテウスは、電線を銃で撃ちぬく!!!電線は千切れ、ロンカロンカに向かって垂れ下がる!!!しかしそれも―――――防がれる。【エンプレス・プリズン】から出現した、ゴム製のシートによって。
「無駄な事を。未来見えてみるんでしょう?あらゆる攻撃が私に防がれるという未来が
…そしてキミはもう終わりですね。」
「なにを……」
「私が罪なき人を虐殺し、キミをわざと怒らせて攻撃させたのは作戦ゆえの行動ですよ。だからキミがよそ見しないように注意を引きつける必要があった。キミの能力はどうやら自分の視界内の未来しか予知出来ないようですからね。」
「ワシの能力はすでに見破っておったか…ならワシを倒す事は不可能なのも理解しているはず。この世に未来予知が出来る人間を倒す事が出来る者はおらん―――」
「辺りを良く見まわしてください。」
T字路の中心に向かって、腰に何かを垂れ下げた全裸の13人の男女が必死の表情でこちらに走って来ていた。
「ぬ――――なんじゃアイツらは!!!」
「くすっ…♪【エンプレス・プリズン】内で、あらゆる調教を行った私の『奴隷』。このロンカロンカのあらゆる命令に従って動きます。」
「――――この未来は……!!!」
プロメテウスの見た未来は、13人の男女が自爆して自分を殺すという未来。腰に垂れ下げた何かは――――『時限式の爆弾』であった……!!!彼等は『人間爆弾』だ!!
「どれほど人の命を弄べば………!今まで貴様以上の化け物には……!!」
「『未来予知』をする敵を倒すなんて簡単ですよ。一切の希望を残さない、絶望的な状況を作り出せばいい………!!!どうあがいても負ける未来しか見えなくすればいい……!!」
「貴様も死ぬぞ!」
「【エンプレス・プリズン】で自分を切り裂けば、異空間に退避する事が可能です。
爆発なんて通用しません。貴方のカス能力とは一味違う。」
「駄目じゃ、この10秒後は………!!!!!!!!この10秒後も……この10秒後も……!!そうだ………ビルの中に身を隠せば―――――!!!!」
しかし予知には、ビルの中から出てくるロンカロンカの『全裸爆弾奴隷』が見える。
「………………!!!プレム………すまない。ワシでは、駄目じゃった……」
カッ
怪盗アルギュロス
(プロメテウス・グラン)―――――――――――――死亡。
【エンプレス・プリズン】の剣身から、ロンカロンカが現れる。
「フッ………」
「アハハハッッ………♪」
「アー―――――――――――ハッハッハッハ!!!!!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[同時刻 グラン家シルバーの部屋]
気絶していたシルバーが、自分の部屋で目を覚ます。
『起きてください!!起きてくださいプレム!!』
「……――――ハッ!!!!ハァッ……ハァッ……!!
あっ、【D・D・F】は!?ジジイは!?」
『……もうすでに、姿は見えません。車でどこかへ移動したようです。』
「クソッ………!!!!」
シルバーが拳を握りしめ床を殴る。
「ど、どうすれば、どうすればいい……!!ジジイの正体は知らないがアイツは自分の事をプロの怪盗だと言っていた。一切の痕跡は残していないだろう………」
ピ――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!
「!?」
シルバーの部屋の金庫から、音が聞こえる
「なんだこの音は……!!」
シルバー金庫の中からスピーカーを見つける……
「なんでこんなものが入ってんだよ……」
『シルバー………ア…………ア……キコエルカ、シルバー………』
「ジジイの声……」
『シルバー…これをお前が聞いているという事は、ワシの身に大きな危険があったか、死んだかのどちらかという事になる。』
「何だって……」
『覚悟して聞いてくれ――――
今から話す事は、我が一族と【D・D・F】との関係、そして…お前の今後にまつわる話じゃ。』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
いいか、とっくに気づいていると思うが…ワシらは『在日ロシア人』ではない。
ワシらの祖先は、かつて存在していたという伝説の大陸『アトランティス』そこに住んでいた『アトランティス人』―――――その最後の生き残りじゃ。
ワシらは……『在日アトランティス人』だったんじゃ。
………
アトランティス大陸の末路はお主も伝説で知っているじゃろう。3500年前、【D・D・F】で世界最強の力を手に入れた、最強の魔術師『クロイツェン・ママゴンネード』に沈められたのじゃ…。
だが、一人だけそのクロイツェンの攻撃をまのがれたアトランティス人がいた…
そいつの名は『オルゴーラ・グラン』。
一人生き残り、復習に燃えた彼は最強のカース・アーツを用いて、長き戦いの末に『クロイツェン・ママゴンネード』を討つ―――――。
そしてそのまま、元凶である【D・D・F】をも破壊しようと試みたが、全世界に散らばった【D・D・F】を探し出す寿命が無い事を悟り、諦める。
しかし彼は、自分の子孫に【D・D・F】を探し出す使命を与える為、とある呪いを自分の子供たちにかけた………
それこそが――――ワシら一族の側にいる『使命を与える神』なんじゃ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【D・D・F】は鳥取ネオ八番街の『A-R地下倉庫』に安置してある。
位置は-----------------------だ。
パスワードはわしの誕生日。
ではお前に………すべてを託す。
必ず【D・D・F】を闇の者の手から守ってくれ。
by――――プロメテウス・グラン
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「ジジイ………そんなバカな……ジジイの身に何があったの!?」
『プレム!!!そんな事を心配している暇など有りませんよ!!!!』
「何をッ……!!」
『いいですか……彼の事を思うなら!!貴方はまず鳥取ネオ八番街のA-R地下倉庫に向かい、【D・D・F】を回収しなければならない!!』
「…………!!!!」
シルバー手を握り締める……
「ああ、わかった……わよ。」
―――――ピピピピピピ!!シルバーの腕時計が音を発する!!
『どうしたのです、今度は何の音です!!』
「爆発物探知機が反応している………15m以ねn………」
『馬鹿な、近くに『爆弾』があるというのですかッッ!』
「私は起きてからずっとこの場所にいた、つまり、『爆弾』の方が移動しているという事になるわ。」
シルバー部屋の窓から外を見る。すると、一人の眼鏡をかけた男性が、家の中に入ってくるのが見える。腰には、何かいびつなものをぶら下げている。
「何だアイツは……まさか……まさかアイツが『爆弾』……『人間爆弾』ッ!?
何かヤバい……ここにいるのは―――――マズイわ!!!!」
ドオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
男性が爆発する!!!
「ウッ……この火力………!!!!!!!家が、崩れる……!!!!オドアアアアアアアアアア!!!!!!」
――――――――――――――――――――――つづく。
◆怪盗名鑑◆ #3
銀の老獪アルギュロス(本名プロメテウス・グラン)
プレムの祖父にして在日アトランティス人。
プレムと同じく、神の使命―――DDFを滅ぼすというのもとに生きている。
【運命の航海術<フォーチュン・ナビ>】と呼ばれる、視界内の10秒先の未来を見通すという無敵のカースアーツを持っており、ウィザーズの中では2番目の実力者であった。