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番外編2

末の弟の恋路とファウス家についてです。

その日私は母に呼び出されて1ヶ月ぶりに実家を訪れていた。


ちょうど先月、母主催のチャリティのためのお茶会を手伝ったばかりだったので母の用件に思い付くものはなかった。また末っ子の弟の愚痴でも聞かされるのかなと軽く思いながら、私は慣れた足取りで実家の玄関までの道のりを歩いた。


家に入ると庭に面するテラスの席でも、母の私室でもなく、応接室に通された。これは思っていたより大事なのかもしれないと思った私の予測を裏付けるかのように、応接室のドアを開けるとそこには母だけでなく、父と兄の姿もあった。

未成年の末の弟を除く、家族全員が応接室に揃っていた。これは本当に重要な話が始まるのかもしれない。そう思った私は少しばかり緊張しながらソファに腰をかけた。


お茶の用意が終わり使用人が退室すると、用意されたお茶にも手をつけずやや緊張した面持ちの父が話し始めた。


「今日集まってもらったのは他でもない、ルーカスのことについて話があるからだ」


ルーカス、私たち家族の可愛い末っ子。

私と10歳ほど年の離れた末の弟は、生まれたときからそれはもう両親、私や兄、使用人たちから可愛がられてきた。それはあの子が13歳になった今もそれは基本的に変わっていない。

だってルーカスは可愛いのだ。昔のまるで天使みたいだった幼子の頃はもちろん、反抗期を迎えた今も大人ぶっているあの生意気な言い草がまた可愛いと私は思っている。


そんな調子で私たちが猫可愛がりしすぎたせいで、あの子は少しわがままな性格になりつつあった。今までは子供のすることと多少は見逃してもらっていたが、お茶会などの社交が始まる年齢に達してからは少しずつ問題も起きてきていた。


今はまだ大事にはなっていないが、このまま学園に入学する歳を迎えると何かを起こす可能性が高かった。私もそろそろあの子に厳しく当たらねばならないと思っていた矢先の父のあの言葉だった。


まさかルーカスが何か大変なことでも起こしてしまったのかと、私は緊張しながら父の言葉の続きを待った。しかし眉間にシワを寄せ、重い表情で父が言った言葉は全く予想外のものだった。




「ルーカスが最近すごく真面目になったんだ」




「へ?」

思わずと言った言葉が口からこぼれてしまった。そんな混乱する私を置き去りにして、私を除く家族は話を続けた。


「そうなの、先月ぐらいから家庭教師の授業も全くサボらず受けていて、先生から態度も別人のように真面目になりましたって言われたの」


「俺も外国語の勉強をしたいからいい参考書があれば兄上教えてくれませんか?と頼まれたんだ」


「私の元にも剣術の自主練習のために朝から庭を使っていいかと聞きに来た」


両親と兄はそこからルーカスがこの1ヶ月で如何に変わったかということを話し続けた。どの内容もにわかには信じがたいものばかりだったが、皆その表情は真剣で決して嘘を言っているようには見えなかった。


「ルーカスが急に真面目になったことは分かったわ。けど、あの子はほら、ずっとあんな態度だったのに何があったの?」


私が思わずそう聞くと、母が真剣な顔で私にこう言ってきた。


「それが分からないから貴女を呼んだのよ、セリシア」


「私を?一緒に住んでる皆も分からないのに私に分かる訳がないわ」


「さっきも言ったけど、あの子が変わったのは先月からなんだ。それもちょうどうちでお茶会をした直後からなんだ」


「なぁセリシア、お前あの日、お茶会の場であの子が誰かといたり、何かをしてたりしたのを見かけなかったか?」


父にそう問われて私は先月のことを思い返した。確かにあの日、庭を横切るルーカスを見た気がする。けれど遠くに姿を見ただけで、皆がお茶をしていたテーブルに寄ってこなかったはずだ。

そのことを伝えると、何か分かるかもと期待していたのか皆が目に見えてガッカリした表情になった。別によい変化なのだから原因は気にしなくていいのではと私は思っていたが、特に両親はそう思ってはいないようだった。彼らがあまりにも真剣なので、私は二人にこう提案をした。


「何か分かるかどうかは分からないけど、少しあの子に鎌をかけてみるわ。その変わったっていうルーカスの姿も見てみたいしね」



両親にはそう言ったものの、私はまだルーカスが変わったという話を正直半信半疑で聞いていた。もしかして表面上を繕うのが上手くなったのかもとも考えていた。

しかしそんな私の考えはルーカス本人に会うと粉々に砕かれてしまった。


外見は私たちの可愛いルーカスのままだった。まだ少し幼さを残す輪郭も、サラサラの黒髪も私の記憶するルーカスのままだった。けれど家庭教師も帰ったというのに、机の上に辞書と外国語の教本を開いて真剣に目を向けている姿は、私の知らないものだった。


「ねぇ、少しお邪魔してもいいかしら?」

私は内心の動揺を押さえながら、ルーカスににこやかに声をかけた。教本に栞を挟んだルーカスはそれを丁寧に片付け、私にソファを勧めてくれた。


「姉上お久しぶりです。先月ぶりですね」


「ええ、そうね。元気にしてたルーカス?」


「はい、変わりありません」


そんなことないわ貴方驚くほど変わったわよ、とは心の中だけで答えておいた。変わったけど変わらず可愛いルーカスと少し雑談をした後、私は少し困ったような顔をしながらルーカスにこう話を向けた。


「そう、ルーカスに会ったら聞きたいことがあったの。先月のうちで開催したお茶会で、一人のご令嬢が他の方の刺繍道具を間違えて持ち帰ってしまったらしいのよ。恥ずかしいからなるべく内密で持ち主を探して欲しいって頼まれてるのだけど、ルーカス貴方あの日、刺繍道具を置いていたテーブルの辺りでどなたか見かけなかったかしら?あのテーブルの辺りにいた方が持ち主の可能性が高いと思うのよ」


あの日ルーカスは私たちがお茶をしていたテーブルには近寄ってきていない。もしあのお茶会で何かがあったとするならば、それはそこから少し離れた刺繍をしていたテーブルの辺りでだと私は目星をつけていた。そのためルーカスにこう聞いてみたのだった。


表情はにこやかに保ちながらも、私は少し緊張しながらルーカスの反応を待った。些細な反応も見逃さぬよう集中していた私の目の前に示されたのは、明らかに動揺したルーカスの表情だった。


何これ可愛い。最近大人ぶっていたけど年相応の反応が可愛い。まずそう思ってしまったけど、今はそれではない。でも、どうやら私の推測は当たっていたようだった。


「ルーカス、もしかして誰か見かけてた?」

私がすかさずそう聞くと、視線が浮いたままのルーカスがぎこちなくこう答えた。


「人は、確かに見た」


「あら本当?良かったらどなたがいたか教えてくれる?」


「な、名前は、その、多分ゴードナー伯爵家のご令嬢だと思う」


歯切れの悪い返事に初めは名前がはっきり分かっていないのかと思った。けれど、か細くなる語尾とそれに反比例するようにじわりと赤みを帯びていく耳を見ていて、私はある可能性に気付いた。


この反応……もしかしてルーカスはそのご令嬢に恋をしているのではないだろうか?


心の中は大騒ぎだった。やだ、もしかしてこの子の初恋なんじゃない?お茶会で一目惚れでもしたの?今もしかして名前を口にするだけで照れてしまったの?ああもう無理、なんて初な反応なの可愛いにも程があるわ!


心中の大騒ぎは継続したままであったが、そんなのはおくびにも出さず、私はさっきよりも笑みを深めながら「参考になったわ、ありがとうルーカス」と返した。



そこから少しルーカスと雑談をした後、私は駆けるような足取りで母の元に戻った。


「お母様大変よ!私あの子が変わった理由分かったかもしれないわ!」


そう言うと母を始め、まだ応接室に残っていた父と兄も慌ててこちらを振り返った。そんな三人に私はつい先ほど見たことをそのまま伝えた。


「なるほど、恋を知り、自分を変えようとしているということか。何だ素晴らしいことじゃないか」


兄はニコニコしながらそう言った。父も伯爵家ならまぁと満更でもない表情だったが、母だけは少し厳しい顔をしていた。


「ゴードナー伯爵家のご令嬢であの会に来ていたのはソフィア嬢の方ね。でもあの子、少し良くない噂が今立ってるのよ」


私も兄もルーカスの世代の子たちの噂には少し疎かったが、さすがお母様はその辺りもよく把握をされているようだった。


「でもそれは曖昧な内容も多い噂なの。ねぇあなた、一度詳しく彼女のこと調べてくださらない?」


「分かった。少し調べてみることにしよう」


その日はそれ以上の進展はなく、結果が分かったらまた教えてくれるようお願いをして、私は家へと戻っていった。



そこから数週間後、私は再び母から呼び出されて実家に戻っていた。前回と同じく、応接室にはルーカスを除く家族が集結していた。


「今日集まってもらったのは例のご令嬢に関する調査が終わったからだ」


父はそう言って、私たちの前に書類を差し出した。


「詳細は後で各自目を通してもらうとして、結論を言えば恐らくルーカスを変えたのはソフィア嬢だ。そして彼女の噂は彼女に問題があって立ったものではなかった」


一番初めに書類を手に取り、目を通していたお母様も「これなら問題ない範囲ね」とぽつりとおっしゃった。


「今回のルーカスの変化は喜ばしいものである。だから今回の件、我々は密かにあの子を見守るようにする。もちろんあの子から相談されたり、頼られれば力を貸してやってくれ。でもそれ以外は手出しは無用とする」


私たちはお父様のご指示通り、そこからルーカスの初恋を密かに見守ることとなった。



そこから数年、学園に入学するまでルーカスとソフィア嬢との間に接点が生まれることはなかった。一緒のお茶会に参加することもあったようだが、ルーカスは彼女の姿を密かに目で追ってはいても、声をかけようとはしていなかった。私はシャイすぎないかと心配をしていたけど、兄は『あの努力を続ける姿を見るに、まだ自分が彼女に相応しくなってないと思っているんだろうさ』と言っていた。そういうものなのかと少し歯痒く思いながらも、私はルーカスの恋を見守っていた。


その状態は学園に入学してからもしばらく続いた。ルーカスは黙々と努力を続けるだけで、彼女と進展があったような素振りは全く見せなかった。

ルーカスは昔とは別人のように変わり、身内の贔屓目を除いても今では優秀な青年となっていた。もう十分、彼女に声をかけられる男性となっているんじゃないかともどかしく感じていたある日、事態は急展開を迎えた。



「チョコレートのオススメのお店を教えて欲しい?」


その日、聞きたいことがあると学園の帰りに私を訪ねてきたルーカスが私にそう言ったのだ。ルーカスは甘いものが好きではないから私に怪しまれないようにするためか、友人に聞かれたんだとか、色々言い訳を並べていた。しかし、普段は見せないような落ち着きのない素振りから私はピンと来てしまった。


間違いない、これはソフィア嬢に関する案件だ!


私は終始笑顔で、饒舌にルーカスに最近流行りのお店をいくつか教えた。数年かかってやっとルーカスが動き出したのだ。嬉しくて堪らなかった。もう嬉しすぎて奮発して買っていたアルテミアのクッキーを手土産に持たせてしまったぐらいだった。



その日のことはお母様にもすぐ伝えたので、その後のルーカスの動向はお母様から教えてもらうことができた。どうやら、ルーカスは教えたお店のうちの一つでちゃんとチョコレートを買ったようだ。ちゃんとプレゼントできたのだろうかとソワソワしていた私の元に、またもや相談があるとルーカスがやって来た。


「先日はありがとうございました、姉上」


「いいのよ。『お友達』は喜んでくれたかしら?」


「はい、とても喜んでくれておりました」

ルーカスがはにかんでそんな答えをするものだから、私は口元がにやけるのを抑えるのに必死になっていた。


「それで今日はどうしたの?」


「姉上にまたお店を紹介してほしいのです。俺の手伝いをしてくれる友人にお菓子をお礼として渡したいのですが、俺はそういうの詳しくないので」


詳細は分からないけどチョコレートの件からどうやら二人の仲は少しずつ進展をしているようだ。


「いいわよ。その『ご友人』に好き嫌いはあるかしら?」


「チョコレートが一番で、甘いものは何でも好きだと聞いています」


あらあらあら、いつの間にかそんなことまで聞ける仲になっているのねと思わず興奮をしかけた私にルーカスは驚くような言葉を続けた。



「姉上からいただいたアルテミアのクッキーも美味しいと言ってくれていました」



ん?んん?

本人を直接見た機会がそうある訳ではないけど、聞いている情報も含めてソフィア嬢は控え目な性格のはずだ。最近親しくなり始めた異性からいきなりアルテミアのクッキーを渡されて、喜ぶような子だとは思えなかった。むしろあんな高いものを急に渡されたら恐縮して、この先のルーカスからのお礼を断る可能性の方が高いだろう。

目の前のルーカスはそんなことは微塵も気にしてはいなさそうだった。お父様には余計な手出しは不要と言われていたが、これぐらいのアシストは許されるだろう。そう思いながら私はルーカスをもう少し手軽なお菓子をお礼に選ぶよう、さりげなく誘導をした。



そこから二ヶ月ほどいいお店を見つけてはちょくちょくルーカスに伝えていたある日、いつもより少し緊張した面持ちのルーカスが私にこう尋ねてきた。


「市街の中心にオススメのカフェはありますか?」


貴族に生まれ、いつも悠然と微笑んでいなさいと教えられて育ってきたが、その瞬間は思わず素の表情が表に出てしまった。


デートだ……!間違いなくこれはデートだ!


気持ちははしゃぎ出したいぐらいであったが、ルーカスに悟られる前にすぐに表情を戻した。そしてにこやかに微笑みながら、記憶の中からカフェの情報をかき集めた。ソフィア嬢はあまり華美なものは得意ではないだろうから、明らかな高級店は避けるべきだ。そして甘いものがそう好きでないルーカスも楽しめるところ、それでいてルーカスの株が上がるようなセンスのよい店がいい。短い時間で様々な検討をした結果、私は新しくできたシフォンケーキを出すカフェをルーカスに勧めた。

あの店は落ち着いた雰囲気だし、シフォンケーキもプレーンのケーキ自体は甘さが控え目でルーカスでも食べやすいはずだ。クリームやフルーツのトッピングが豊富だから、甘いものが好きだと言うソフィア嬢にも気に入ってもらえると思う。


お店を教える際に「お店に行くなら私にもケーキを買ってきてね」とデートの話を聞くチャンスも忘れずに作っておいた。これぐらいは情報料として許されるだろう。



お母様からデートに行くであろうルーカスが外出する日の予定は聞いていたため、その週末私はそわそわしながら午後の時間を過ごしていた。しかし当日も、その翌日もルーカスがお土産を持って現れることはなかった。


結局ルーカスが私を訪れてきたのは、デートから一週間経った週末のことだった。


「姉上、お約束していたのに遅くなってすみません」


そう言いながら新しく買い直してきた手土産をルーカスは渡してくれた。


「わざわざ買い直して来てくれたの?」


「はい、先週買ったものは持ってくる時間が取れずダメにしてしまったので」


「そうなの。何か急な予定でも入ったのかしら?」


私は緊張しながらルーカスにそう尋ねた。デート直後の急用、一体この数日に何があったのかと私はとても心配していた。お店のチョイスも外れていないと思うし、ルーカスだってどこに出しても恥ずかしくない立派な青年だ。でも恋愛では何が起こるかは分からない。私はドキドキしながらルーカスの返答を待った。



「実は一緒にカフェに行った方との間で少し思い違いが発生していて、そのことを解消したりしていて時間が取れなかったのです」


「思い違い?」


「はい。でももう完全に解決しました。あ、思い違いが起きたのは俺の問題で、紹介してもらったカフェは相手もとても気に入ってくれていました」


「そう、ならよかったわ」


とりあえず悪いことは起こっていないことが分かりホッとしていた私に、ルーカスは少し迷うような素振りを見せた後、こう言ってきた。


「実は、黙っていたのですが姉上に紹介してもらったお菓子を渡したり、カフェに行ったりした相手は、その、女性でして、その方と、お付き合いをすることになったんです。

まだ両親にも言ってないのですが、姉上にはこうしてお世話になったので、きちんと直接報告をしたいと思いまして……」


目の前で気恥ずかしそうに、でも幸せそうにそう告げてくれたルーカスの顔を見て、私は自分の視界がじわりと滲んでいくのを感じていた。三年前のあの日からひた向きに努力を続けていたこの子の想いが、やっとソフィア嬢まで届いたのだ。ずっとこんな日が来ることを願っていたので、本当に嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。


「そうなの、おめでとうルーカス。貴方の力になれていたなら嬉しいわ」


私はハンカチでそっと目頭を押さえながらそう答えた。まさか私が泣き出すとは思っていなかったのか、ルーカスは驚いた顔をしていた。でも貴方の幸せが本当に嬉しいのだ。感動の涙ぐらいは流させて欲しかった。


「ようやく貴方の想いが届いたのね。よかったわ」

涙を拭い、私はルーカスに向かって笑顔でそう伝えた。そんな私にルーカスは幸せそうな笑顔を返して





くれると思っていたのに、目の前のルーカスの表情はピシリと固まっていた。


訝しげにする私に、ルーカスは先ほどとは全く違う地を這うような声でこう言った。



「……姉上、『ようやく』とはどういう意味なのでしようか?」




しまった、と思ったときにはもう遅かった。私としたことが浮かれすぎてうっかり口を滑らせてしまった。何とか誤魔化せないかと思ったが、目の前のルーカスは目が全く笑っていなかった。皮肉にも優秀になってしまった弟に小手先の誤魔化しは利きそうになかった。


結局、私はルーカスの変化に気付いたあの頃の話から洗いざらい全てを吐かされてしまった。



「つまり、父上も母上も、そして兄上も俺のことをご存知なのですね」

羞恥で項垂れながらルーカスが呟いた。


「結果として貴方の気持ちに気付いてしまったけれど、私たちは決して茶化すような気持ちで貴方のことを調べた訳じゃないのよ。そのことだけは分かって頂戴。お父様は私たちに貴方の気持ちを尊重するようおっしゃったわ」


「皆が俺のことに気付きながらも、手出しせず見守ってくれていたことは分かります。ただ、やっぱり気持ちを知られていたと思うと恥ずかしさが……」


「そこは本当にごめんなさい。でもほら、悪いことばかりじゃないわよ。知ってたからこそ、ソフィア嬢の性格とかも考えながらアドバイスができた訳だし」


「それは……ありがとうございます」


「それにこれからだって、二人の出会いまでのことを知っていた方が、的確なアドバイスができると思うわ」


「これから、とは?」


「あら、将来のことも考えているでしょう?私はお嫁に行った身だから婿を迎えるソフィア嬢とは立場が少し違うけど、それでもやっぱり女性のことは女性にしか分からないこともあるから」


「ちょっと待ってください!そんな話はまだ……」


「まだ?と言うことはこれから考えるってことでしょう?」


さっきまで私を問い詰めていた勢いはどこに行ってしまったのか、ルーカスは真っ赤になってたじたじになっていた。やっぱり成長したと言ってもルーカスはいつまでも私たちの可愛いルーカスのままのところもあるようだ。


そんな反応に満足した私は、未だ顔の赤みが引かないルーカスを横目に、手土産としてもらったケーキを手に取った。

箱の中にはプレーンのシフォンケーキが鎮座していた。甘いものが好きな私にこんなシンプルなケーキを買ってくるだなんて、レディへの配慮がまだ足りてない。やっぱりルーカスにはまだまだ私のアドバイスが必要なようだ。


でも今日はこの甘さが控えめのケーキで許してあげようと思った。なぜなら、これからルーカスからたっぷり甘酸っぱい話を聞かせてもらうつもりだからだ。


可愛い我が家の末っ子と未来の義妹との話に期待に胸を膨らませながら、私は使用人を呼びお茶の準備をお願いした。

予定していたものはここで完結です。長らくお付き合いくださり、ありがとうございました。


感想を含め、何かございましたらお手数ですが下に設置しているWeb拍手か、マイページのメッセージよりお願いいたします。

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