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二話

「侯爵令息のルーカス様を落としてきて!!」



ルーカス様を落とす?


一瞬脳内で落とし穴に転がり落ちる見知らぬ男性を想像してしまったが、きっとレイチェルが言いたいのはそういうことではないだろう。

多分色恋的な意味なのだろうけど、それはそれで意味が分からなかった。


「レイチェル、あの、そもそもだけどルーカス様ってどなたなの?」


「ええ!?お姉様最近の私の話を聞いてなかったの?ずーっと素敵な方がいるのよって話してたじゃない!その方がルーカス様なの!」


そう言われてやっと思い出したけど、ここ最近、レイチェルは1人の男性のことをカッコいい!素敵!とずっと言っていた気がする。レイチェルは惚れっぽいところがあるから、何度もこういう話を聞いていたので全然記憶に残っていなかった。


でも「覚えてない」と言うと話が面倒になるので、「ああ、あのルーカス様ね」と話を合わせた。


「それがどうして私がその方を落とす?ということになるのかしら?」


「それよ!聞いてよお姉様!ルーカス様は私が告白したら頭の悪いワガママ女は嫌いなんだって鼻で笑って断ったのよ!!ひどいでしょ?

だからあの男をギャフンって言わせるためにお姉様、あの男を落として振ってやって!!」


お姉様は成績がいいから頭が悪いとは言われないはず!とキャンキャン続けるレイチェルを見ながら私は気が遠くなりそうになっていた。


え?何?頭が悪い女は嫌いって言われたから、成績のいい私なら好きになるだろうってそういう話なの?

そりゃそのルーカス様って人に頭が悪いって言われるわよと思いながら、私はこの話をどう断るかを必死に考えていた。


今までのワガママは私が我慢すれば済むだけの話だったけど、他人を巻き込むとなると話は変わる。どう言えば伝わるかと考えていると、黙り込んだ私をレイチェルがじとりと睨んできた。


「お姉様、まさか私のお願いを聞いてくれないの?」


既に目に涙をうっすら浮かべたレイチェルが脅すようにそう言ってきた。この顔はまずい。レイチェルは何がなんでもこのワガママを通す気だ。


こうなると非常に厄介だ。過去にこうして断ろうとして大変な目にあったことが脳内でガンガンと警告を鳴らすように再生された。


断らないといけない、けど断ると大変な目にあう。

葛藤はしばらく続いたが、最後に天秤は我が身可愛さの方に傾いてしまった。

侯爵令息と言っていたし、レイチェルが熱を上げるような美男子ならきっと訳ありと呼ばれる私なんか相手にされないはずだ。サクッと私も振られてしまおう。一応、応える姿勢さえ見せれば、レイチェルもそれなりに満足するはずだ。そうすれば万事解決だと自分に言い訳が立ってしまった。


こうして私はレイチェルに「分かったわ」と答え、ルーカス様とやらを落とすために狙うことになったのだった。



私の答えに満足したレイチェルは、「ありがとうお姉様!じゃあ放課後、図書館前に集合ね!」とニコニコ笑顔で足取り軽く去っていった。一方、私は断ることを選択しなかった罪悪感を抱えながら重い足取りで教室へと戻った。

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