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この星が滅ぶまで  作者: 朱井いと
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第四章 結婚

 モモは魔王城に入った。

まさか第十四番ゲートから魔王の部屋直通だったとは。そして、目の前に玉座がある。百メートルくらい先に。

 あまりの潔さにモモは驚きつつも、周囲を警戒していた。一階席はただの広間であるが、二階席があるのだ。それも魔族のみなさんぎっしり詰まっている。気配を全く消していない。モモは二階席から監視されている状態であった。しかし、なぜか襲ってくる気配はなかった。

「(一体どういうこと? この数だとさすがに私の音術でもさばききれないのに。)」

 と、そこに、一人の男がおなかを抱え、片手で壁に手をあてながら、玉座に向かってよろよろ歩いてきた。

「あー、くっそ、もう時間じゃねえか……。いや、しっかし、緊張してきた!」

「!?」

モモは抜剣した。地獄耳のモモには、魔王の独り言も筒抜けであった。そして……、

「も、もしかしてあんたが剣聖?」

と、確認した。

「えぇ、そうよ! 私は第はちじゅ……。」

「ちょ、ちょっとたんま! ちょ、あと三分待って!」

魔王は下痢止め薬を飲んだ。即効性のある薬で、すぐに効力が出るらしい。

 モモは今のうちに斬ろうか悩んだが、なにせ魔王なのかもわからないし、仮に魔王だとしても、気配を消している以上、何をされるかわかったものじゃなかったので、律儀に待った。ていうか、なぜ、今、スーツにネクタイしてんだろうと不思議に思っていた。

 薬が効いてきたらしく、魔王は本調子を取り戻したようだ。スーツはばっちりキマッている!

「おー! お前が例の剣聖か! 待ってたぜぇ!」

「そうよ! 私は第八十八代、神の御剣、無段、剣聖、モモよ!」

「おー! そうか! 俺は第何代か知らない! 正真正銘の魔王だ!」

「さっきまでおなか壊していたのに、本当なの?」

「そうだ! 過敏性腸症候群だ!」

 モモはその回答に反応するように、とっさに後ろに下がった。正直、モモは、今が好機だと思った。が、モモの目には、魔王の残像すら映っていなかった。

「えっ!? ちょ……。」

モモの頭は魔王の胸の中。魔王に思いっきりハグされ、頭をなでなでされたのだ。モモはこんなことを異性にされたことがなく、頭がかーっっとなり、鼓動が速くなるのを感じた。

「(さっきの動きも全く見えなかったし、なんで私に抱き着いてるわけ?!)」

「そうかそうか! モモというのか! ちっちゃくてかわいいねぇ! ずっとぎゅっとしてたい! かわいいねぇ、かわいいねぇ!」

 魔王はモモをずっとなでなでした。

「ちょ、キモいっ!!」

さっきまで赤かった顔が青くなった。さすがに初対面で、これは受け付けなかったようだ。モモは柄頭で思いっきり腹を殴った。

「おっま! さっきからおなかの調子が悪いって言っただろ!」

魔王はいったん玉座まで戻った。

「そんなの知らないわ! 長きに渡るこの戦争を終わらせるため、覚悟しなさぁい!」

「いやー、俺を倒したところで何も変わらんけど。というか、お前と利害関係は一致してるんだが……。」

「問答無用!」

スァっ(斬る音)! ぱすっ(止める音)!

「ゑ?」

魔王は白羽取りをしたのだ。それも右手の人差し指と中指で。

 バキイイィィィィィィン!!

「え、ちょ、ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

白羽取りをされ、そのまま剣を折られたのだ。

「で、伝説の聖剣、エクスカリバーモモカスタムがぁぁぁぁぁぁっ!」

「あ、すまん。つい。直そうか?」

「や、やかましいわっ!」

念のため予備の剣は持っているのではあるが、さっき折られた剣はかなり気に入っていたのだ。なぜなら、

「あぁ、今のはすげえな! 剣撃のみならず、剣に魔力注いで剣自体を強化してるもんな。内側だけでなく外側も。コーティングしてたんだろ? それ、どうやら魔力特性高そうだし。」

と言われたためだ。

図星だ。完全に手の内がばれてる。「なにこいつ」と、とっさに退いた。

「もういっこ言うとだな、俺を斬りに来るはいいが、ほこりが舞うからどこを走っているのかわかりやすいかったぞ。いや、すまんな。ちゃんと掃除が行き届いていなかったっぽい。どうやらお前はまっすぐ来るのが好きと見た。いいぜぇ、そのまま抱きしめてやる!」

 これはまずった(まずいしくじった)。言われてみれば、さっき抱き着かれたときに観察すればよかったのだ。殺気や気配ばかり気を取られていたモモの不覚である。

 じゃあこちらの番で、と言わんばかりに、魔王は剣を取り出した。俗にいう魔剣であろう。なんかこう、禍々しいデザインだ。実際、モモは凄まじい魔力を感じていた。モモのエクスカリバーが聖属性とすると、魔王の魔剣が闇属性といったところか。いや、なんか、そういう属性的なものが感じられなかった。これはのちに出てくる「無属性」を指す。

「(さっきの動き、速すぎた。今度は受け止めれるかしら……。ていうか、何? あの剣……?)」

「いくぞぉ!」

ちゃんと声かけてくれるんだ。と、ちょっと安心したら、

「ゑ……?」

魔王は剣を投げ捨てたのだ! せっかく出した剣になんてことを……。

 そして、片手を壁にぶつけ、モモの顔に迫った。

 壁ドンである。

「え? ……、ちょ、顔、近い……。」

モモはこんな経験は初めてだった。もとより、異性にこんなに顔を近づけられたのは、おっさん以外にいなかったのだ。魔王はニコっしたと思ったら、急に眼光が鋭くなった。

「お前、つけられているな? 数は五、いや六だな?」

「え、……うん。たぶん。でもどうして?」

「どうやってここを抜けたてきたか知らんが、お前、ここままだと異端者扱いされて死ぬぞ?」

「え……?」

 実際、まともに剣を交えず、魔王と何か話している様子を見られているのだ。この時点で、モモが魔王と何かしらを結託し、モモが首謀者として、なんらかの扱いを受ける可能性が十分にあった。

「ちょっとおしゃべりが長いな……。今度はお前が俺に斬りかかってこい。すまんがこの茶番に付き合ってくれ!」

「えと、えっと…………、はい。」

 一体何なのだこいつは。何がしたいのかわからない。明らかに戦闘をやる気がない。とはいえ圧倒的に強い。モモはすでに敗北を悟ったのだ。これまでの一連のやりとりで。ただ、何をそんな必死に迫るのかが気になっていた。

 この魔王の言葉を無視しようか? モモの残された手は予備の剣と魔術と、気持ち程度の体術。剣や体術だと接近戦じゃないと不利。モモの魔術はかなり高度なものであることは以前述べたが、いくら無詠唱といえど、剣術よりも魔術の発動速度が遅い。コンマ数秒の世界ではあるが、どうもこの魔王に魔術をかます暇がなさそうだ。SHINKANSENで考えた音術も使うには時間がかかる。なにせ、思いの他、部屋の構造が複雑であったためだ。では、あえて超難度か高難度に魔術ランクを下げ、目くらましをしたのちに斬りかかるか? どのみち無駄そうだとモモは判断した。

モモは予備の剣を抜き、右手に剣を、左手に鞘を持ち、構えた。二刀流だ。

「おー、KAATANAじゃねえか!」

「え……? なぜ知ってるの?!」

「先代の剣聖が使っててかっこよかったから俺も欲しくなって作った!」

「やっぱり、師匠はあなたに……。」

モモの逆鱗に触れた一言だった。さっきの茶番から打って変わった。

「よせよせ待てって! ちゃんと人の話h……。」

モモは魔王めがけて思いっきり突き出した。が、身体ごとひっくり返されて床に仰向けになった。

「き、切先返し……!」

 説明しよう。切先返しとは、切先を利用した防御術である。攻め手の剣の切先に、受けて側の剣の切先を当て、衝撃力と遠心力を利用し、相手の切先のベクトルを変更させ、攻撃を封じるのだ。器用なやつは魔王みたいに相手を回転させることも可能だ。まぁ、合気道的な。

 よもや剣術、しかも相当な剣術使いでないと使えない技を出されるとは……。二刀流の意味が全くなかった。

「これでいいか? 魔法も、一応やる?」

「いえ、もう、あたしの負けだわ……。私をこれからどうする気?」

「よしよし。やっと話を聞く気になったか。」

 魔王はヤンキー座りをし、上から話している。

「そこにいる魔族と一緒に私に何をする気?」

「まぁちょっと待て。これで全部だな? 密偵。」

「う、うん……。いつの間に……。」

密偵の姿は、血まみれ死体として、きれいに六つあった。

「やっとまともに話すことができるな。ということで、本題に入ろうか。」

「あ、あたしに何をする気? そこにいる魔族に、全員に何かされるの?!」

「あ? 何もせんぞ。ただのオーディエンスだ。こいつらには証人になってもらわねえと。私はエロ同人みたいに卑劣で卑猥なことをしませんでした。正当な決闘をしました、っていう。最も、ヒト族は信じねぇと思うが……。」

「え、えろ…?」

「それに安心しろ。あのおっさん(先代の剣聖)は生きてる。」

「え……?」

「実は俺に挑んできたはいいけど、俺様の完全勝利だった。で、おっさんにいろいろ事情を話した。そしたら了承してくれて、『ワシは第二の人生を歩む』とか言って、俺がある場所へ案内した。ちなみに、そのときも密偵がいたから殺しといた。だから、誰もあのおっさんの行方は知らん。俺と側近以外は。」

「そうなんだ……。師匠、生きてて……。」

てっきり魔族に虐殺にでもされていたと思っていたモモだったので、とても安堵した。

「というわけで、お前ももうこの世に存在しない、ということになった。」

「一体何をしたいの?」

「うん、この五百年に渡る長き戦を一緒に終わらせたい。」

「うん、…………うん?」

「いや、だから、終戦させたいと言ってるんだが……。」

「当分の間は、俺が小さい紛争地域から鎮圧していって、じわじわでかい勢力を削いでいく、かな? まぁ、十五年以上はかかるんじゃねえかな。」

「あ、あたしは?」

「うむ。専業主婦でいいぞ。あとは、俺と結婚して子供を産んでほしい! 三人はほしいな!」

「………………は? はい?!」

 モモはまた顔が真っ赤になった。そもそも、殿方にこんなに熱烈に言い寄られたことがないのだ。モモはその容姿ゆえ、みなにかわいがられる「かわいい妹」みたいな扱いを受けていたのだ。いや、正確には、魔術学院時代に何件もあった。ただ、モモの言語の理解力のなさで、全部振っていた状態だったのだ。それ以上に、モモの才能を妬む奴の方が多かった。

「すまん、話の順序間違えた。」

魔王はモモの前に膝をつき、モモの左手を取り、薬指にリングをはめて、改めてこう言った。

「モモさん、どうか私と結婚していただけませんか?」

ここ(魔王城)に来てから状況がコロコロ変わり、モモはかなり戸惑っていた。急にプロポーズなんて……。

「こ、これ、呪いの指輪じゃないよね?!」

「ちげえよ。」

スポッ。

「あ、抜けた。」

ついでに指輪も観察した。そっちの方でも一般的な感じだろう。形状はウェーブ状で色はピンクゴールド。直径約三ミリのダイヤモンドが埋め込まれている。かなりシンプルだが洗練されている。魔王ならもっと宝石をでかでかと飾ってきそうなのに。意外だった。

 何を隠そう、彼は先に語った通り、モモの趣味・趣向を熟知していたのだ(シノビの情報だけど)。

「不服か?」

「いえ……、かわいいし、とってもきれい……。」

「よしじゃあ……。」

「ちょっと待って! 考えさせて!」

 モモは後ろを向いた。にやけが止まらないのである! いや、確かに出会って間もないのに、いきなり戦争根絶だとか、プロポーズだとか、正直頭がぐるぐる回っている。だが、それ以上に、夢に見ていたような素敵なプロポーズを受けたのが嬉しかったのだ。それが魔王であっても。まぁ、実は魔王がヒト族寄りのイケメンで、ちょっと「かっこいい」とか、こそっと思っていた。モモは自分より強い、白馬の王子様みたいなのからプロポーズされるのが夢だったのだが、スーツ姿であんなこと(戦闘やプロポーズ)をできる者は誰

もいないと思った。

「その、本当に戦争根絶とか考えているの?」

「これは先代魔王からのご意向だ。」

「専業主婦なの?」

「悪いな。お前の顔が外部に知られるのはまずい。ただ……、」

「ただ?」

「俺はお前を待たせてばかりになるぞ。『おつとめ』と言って、俺も顔を隠して、戦闘領域に介入することにした。晩飯までには帰る。」

「うん。」

「不自由になるかもしれん。」

「うん。」

「だが、お前を幸せにするつもりだ。」

「うん。……、でも……。」

「でも?」

「あたし、先天的な精神障がいをいくつも持ってる……。そう言われた……。」

「知ってる。」

「だから、迷惑をかけるかも……。」

「安心しろ。そのための俺だろ? 今回は俺に見せることはなかったが、お前は他の者にない、すげぇ能力も知ってる。一目見ただけで技の完コピなぞできん。ましてや、そこからのアレンジなぞ。」

「あたし、うまくものをしゃべれないから……。」

「先代の剣聖はうまくお前を育てたんだろ? なら俺にもできる!」

 なんという自信家だ。

「安心しろ。クソ数の多い魔族を束ねてるんだぞ。だから、大丈夫だ。」

「あたし、そんなに言われたの、初めて……。」

 モモはポロっと涙をこぼした。

「え、俺、なんか変なこと言った?」

「ううん、あたし、魔術学院行ってたときは、小ばかにされていたから。あたしの魔術が上になると嫉妬ばかり受けてたから……。」

「安心しろ。俺が夫になる以上、そういうのがいたら、ぶっ殺してやる。」

「殺しちゃだめ……。」

「ははっ、そうだな。……、じゃあ、改めて……。」

 魔王は跪き、モモの掌に軽くキスをし、

「モモさん。どうか私と、結婚していただけませんか?」

「…………はい。」

とプロポーズをした。

 城、というか、この戦闘が行われた間は静まり返った。「おお」という声がひらほら聞こえる。

「おい、聞いたかお前ら!! 俺はこのヒト族のモモちゃんと結婚する!!」

おおーっ! と歓声がわいた。モモは恥ずかしさのあまり、下を向いた。

「これ以上に仕事しろよお前らーっ!! だが、残業するんじゃねえぞ! 定時退社だこらぁーっ!!」

 一応、こっちの世界にも、労務管理はある。なので、有給も育児休暇も制度としてある。魔族は先代あたりから、徐々にホワイトになりだしていた。ハーフはあまりこういう概念はないが、ヒト族はだいたいブラックであった。

 そして、この日はプロポーズ記念日ということで、盛大にお祝いがなされた。

「今日は俺のおごりだ! 死ぬほど食えよーっ!!」

この世界はなにかしらのお祝い事などがあるときは、必ず焼肉なのだ。家畜の。

モモの周辺にはたくさんの魔族が集まってきてきた。かつて戦闘をした者、近くで見てみたい者と様々だ。モモも戦闘では、なるべく相手を傷つけないで戦意喪失させるスタンスだった。正直、誰かを殺すのが苦手だったのもある。

「どうしたら魔王様やモモ様みたいになれますかね?」

「あのときは申し訳ありませんでした。」

「モモさん、本当にかわいいですね。」

 町にいた魔族のイメージに近かったので、それほど違和感は覚えなかった。ちょっと気になったので、魔王に聞いた。

「魔族って、こんなのばっかりなの?」

「基本的にはフレンドリーだぞ。ヒト族に大事な者を殺されたりすると、殺意、ヒト族殲滅派になりやすいが……。そっちだって同じだろ?」

「うん……、なんというかヒト族は自分の欲を満たす感じの生き物に思えるの……。だから、魔族みたいな感じでありたいなっていう……。」

「そうだな。……、そのために、これから奔走するって感じだな……。」

「あたしの思う魔王と全然違って、驚いてる。あたしよりも、がんばってる……。」

「まぁ、そりゃ、四百も生きてりゃな……。」

「え? 四百年も生きてるの?!」

「あぁ、そうだが。俺にも師匠みたいなのがいて、いろいろ教えてもらったが……何か?」

道理でモモがあっさり負けるわけだ……。たかが十五歳くらいでは勝てるはずがない。モモは魔王の強さに納得した。

など、いろいろ。こうして夜はふけていった。

 翌朝。

「ちょっとーーっ!!」

の、モモの一言で起きた。

「どうして、あたし、こんな格好で魔王と一緒に寝てるの?!」

「いや、途中からお前、寝だしたじゃねえか。仕方ないから俺のベッドに寝かせたのは良かったが、お前、寝相悪いんだな。」

ベッドは、魔王二割、モモ八割の比率になっていた。また、モモはバスタオルが巻かれていた。

「な、何か変なことしたの……?」

「何もしてねえよ。むしろ、これからの生活でいっぱいやるだろ?」

「バ、バカっ!!」

着替えをすまし、朝食となった。食卓には、魔王とモモとゴルベジアとイクセレスの四人だ。普通、異様に対面が長いはずのイメージなのだが、違った。普通の長机だったのだ。 一応、給仕の者はいる。このアットホーム感にモモは驚いた。

「えっと、距離、近くないですか?」

「あ? いつもこうだぞ。交代制で毎日飯食うメンツが違うだけで。」

「は……、はぁ……。」

なるほど。魔族のアットホーム感はこんなところからも生まれていたのか。

 朝食を終え、魔王は次期魔王に言った。

「じゃ、今日からお前らが魔王だから、スピーチ考えとけよ。」

「え、もうですか?!」

「いきなり……。」

魔王の無茶ぶりは知っていたが、さすがにこれは重かった。が、確かにそれらしい式典の準備が進められていたのは、彼らも知っていた。

 そして、一通りのことをすませ、魔王世代交代の儀に移った。

まずは魔王からの挨拶。

「昨日の通り、俺はモモと新生活を始める。子供は三人くらいほしい! いいか、お前ら! 世代交代しただけで、やり方は変わらん。むしろ、俺が前線に出る以上、覚悟しとけよ!」

モモは恥ずかしくて下を向いた。これからは前線に魔王がやってくるのだ。みなは、ある意味恐怖した。

そして、世代交代した魔王の挨拶。

「えー、先ほど、先代の仰せの通り、この儀より、現魔王として世代交代する。こととなった。」

「しかしながら、我々もまた、先代と同じく、表に出ないこととなった。理由は先代と同じである。むしろ、存在を明かしてはならん。」

長々と話しだすので、魔王はマイクを奪った。

「俺とモモがやりあった末、ともじにした。だから、これ以上やりあうのは無意味です。という筋書きだ。いいか! デマでいい。この噂を広めろ。そして、無意味な戦闘はやめろ。やるとしたら牽制程度だ。これから定時に帰れるだろ?」

歓声が上がった。無駄に傷つかなくていい。原則的に野営なぞせず、定時で帰れるのだ。

「(あ、だから、魔王はあたしにあんなに必死になって……。)」

「というわけで、俺はこれから新居へ引っ越す! 何かあれば連絡していいが、変なのよこすんじゃねえぞ!」

「いいですともー!!」

会場は大歓声だ。そして、魔王はモモをお姫様抱っこした。

「え? ……、ちょ?!」

「家はもうあるんだ。行くぞ?」

「ちょっとぉー!」

魔王は新居へ飛び去った。

「ゴルベジア! イクセレス! 今日からお前らが魔王だ! 俺は魔王を引退する!」

「えぇ……。」

「あの、後任の儀は……?」

「いらん! 口頭発注だ!!」

なんとまぁ雑な……。口頭発注はあかんて……。下請法に引っかかるぞ。というわけで、魔王の後任はゴルベジアとイクセレスとなった。もともと強さは知られていたのと、魔王の圧があるので、誰も反論をしなかった。

 それにしても、さすがの魔力量、魔王はずっと飛行してるいのに、一向に疲れを見せない。

「お、あれだ! あの家がうちだ!」

 なんか、近くに別の家がある。誰かいた。何かをしていた。

「あれは?」

「あれか?」

近所の家にモモを降ろした。その影は、おっさんの素振りだった。

「し、師匠!! 生きていらっしゃったのですね!?」

「うむ。」

魔王はおっさんにグーサインした。

この世界には婚姻に年齢制限はない、習わしとして、十五歳以上から結婚というのが多い。モモも十五歳になり、そのまま、魔王と結婚した。結婚と言っても、近くの教会を借り、おっさんのもとで、指輪交換、および、キスをした。一応、現魔王は出席して少なからず、お祝いをした。

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