第二章 モモ
「今日もSHINKANSENをご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車はTOKYO行きSHINKANSENです。途中止まります駅は、KOKURA、……、SHINAGAWAです。次はKOKURAです。まもなく発車いたします。」
「えーっと、八号車一番A席……。ふぅ、よかった。グリーン席が空いてて。普通席だとちょっと窮屈なのよね。それに一番なら前に誰もいないから安心して物が置けんもんね。網棚に置いから置き引きに遭うと大変なことになるし。」
Mサイズのキャリーケース、そして剣を自席前方に置き、席に着き、ひと段落。とりあえず左手を窓辺につけて、頬杖をついた。
「まさか魔王の城がTOKYO駅直通だなんて……。みんなわかりそうな場所になんでまた……。」
そうだ! この憂鬱そうに窓をぼーっと見ている、この女の子こそ! ヒト族の最後の希望(と言われてたらしい)! 史上初の女性にして史上最年少。第八十八代、神の御剣、無段(剣道だと八段)、剣聖! その名もモモだ!
神の御剣とは、正当な剣術であり、ヒト族によって定められている。もちろん我流、亜流はあるが、基本的にはどの型も神の剣術の剣技に類似する。カトレア歴五百年頃に正当な剣術として世に広められた。また、神の御剣は初段から十段までが基本的な段位だ。しかし、十段の有段者よりも卓越した技量と品位を兼ね備えた者は、中央審査会による審査のもと、資格がある者と認められた場合、「無段」と昇段する。もしくは、無段の有段者がそれ相応と認めた場合も同様に無段と昇格する。ただ、昇段審査にあたる者は、無段者としてほぼ同等の技量を兼ねるため、無段誉として栄誉称号が与えられる。もちろん無段誉も無段有段者には変わらない。ほら、さっき言ったあれだよ。無の域に達した達人の域。無我の境地。無段誉は名誉教授みないな感じ? そして無段というのは簡単に出るわけではない。平均すると二十五年に一人だ。たまに数年で世代交代もあるんだけどね。
さっき言ったように、ルーツはカトレア歴五百年に遡るから、この頃はまだ戦前であったため、魔族もハーフ(魔族とヒト族の混血)もみな等しく剣術を学んでいた。なので、戦争が勃発しても神の御剣を継承している者もいた。もちろん、ヒト族が勝手に決め込んだと忌み嫌われることもり、魔族では廃れていくケースが多かった。
あとそうだ。「剣聖」という称号は無段の有段者しか与えられない。なので、無段を目指して精進するものもいれば、挫折して十段で諦める者もいた。厄介だったのが、十段止まりの無称号者が自分は勇者と豪語していたことかな。勇者は勇気のある者っていうそのままの意味なので、ぶっちゃけ勇気があれば勇者だ。実際にボクと同じ考えの人は、その残念な勇者を哀れんでいる人もいたくらい。
さて、話をもとに戻そうか。彼女、モモのみてくれだけど、
エメラルドグリーンの瞳。
たれ目。
きれいな金髪。アホ毛はある。くせ毛らしくて横髪、後ろ髪と、毛先がくるくると巻かれている。
ワンピースを使ったレイヤードスタイル。上に白のワンピースを羽織っている。そしてその下は淡い桃色のワンピース。白いパンプスでフラットヒール。
そして何よりも身長が百五十二センチ! ちっちゃくてかわいい!
モモは童顔であるため、歳よりも幼く見える。
実は十六歳だぞ! 弱冠十四歳にして第八十八代、神の御剣、無段、剣聖にのし上がった。あとで話すけどめちゃくちゃ強いんだぞ! ていうか、そうでもないと魔王討伐うんぬんもないけどね。
先代はモモの師匠にあたる人物であるが、彼も四十歳にして無段となっている。いやもう、この時点で異例なんだよ……。そして、モモの師匠が剣聖の称号を得てから五年後、モモは剣聖となったのだ。何度も言うけど、普通、そんなにホイホイ出るもんじゃないんだって!
そしてモモは剣聖となった後、魔王の行方を探る旅へ出ていた。
そこから二年。たまたま寄った近所のランチのお店で、魔王城の場所を知ったのだ。もちろんモモは、
「えええええええええええええっ!」
って叫んでいたよ。当然だね。そして、
「なんで教えてくれなかったのよ!」
と詰め寄った。その場の者たちは、
「TOKUO駅の十四番ゲート直通よ!」
と、魔族のおばちゃんが教えてくれた。
モモの住んでいたところは、二割くらいは魔族がいる町だった。別に珍しいことではない。比率はともかく、種族隔たり無く暮らす村や町はあった。場所によってはハーフのいるところもいた。専ら医者が多かったので、重宝されてたりもした。
最寄り駅がHAKATAだったので、そのままSHINKANSENでTOKYOへと向かったのだ。
ちょっと補足しておくと、ボクたちの世界の文明は、君たちと、部分的に似たり、かなり違ったりもした。
新幹線はあった。ただし、電子制御は専ら魔術だ。むしろ、超電導浮遊式新幹線の方が早く開通した。端的にいえば、氷系の魔術と電気系の魔術を使えばいいだけだろ? ただし、ブレーキが大変なので、新幹線のような各駅停車技術が追い付かなかった。自動型の電子制御があまり発達しなかったので、コンピュータや産業用ロボット関連がかなり遅れていた。
そういう意味でも、飛行機も同様に発達しなかった。基本は浮遊魔術を使ったからだ。
もうひとつ付け加えると、携帯に便利な収縮魔術とか、テレポートとか、以前触れた生命蘇生系のものはない。
先ほど触れた浮遊魔術も万能ではない。術者の魔力が尽きると、当然飛べなくなる。並の者だと、馬の移動距離と変わらないくらいだ。まぁ、ボクみたいに例外はいるけど……。とはいえ、大きな荷物を輸送するのは難しく、浮遊魔術の難題でもあった。
そのため、鉄道が一番発達した。術者(運転手)を変更すればいいのだから、一番コストパフォーマンスが良かった。というわけで開発されたのが、時速三百キロで運転することができる、超高速鉄道、SHINKANSENなのだ。もちろん、これはヒト族だけが開発したのではない。魔族、ハーフも一丸となって開発した。不思議なことに、基本的に技術関連は種族の垣根はないのだ。
途中で戦争が始まったが、合間合間で開発し、開通にこぎつけた。全種族共有資産ということで、駅に入ってから駅を出るまでは、一切の戦闘ならびに略奪行為などを禁止する条約が締結されていた。もちろん、マナー違反は出るんだけど、車掌や乗務員に取り押さえられる。そして、現行犯として、そのままドアから飛び降ろさせられた。車掌や乗務員はかなりの訓練を受けているので、そう簡単に打ち倒せない。だから簡単にドアから突き押したりできるんだな。ちなみに各車両には、前後に一人ずつ乗務員が立っている。たまにハーフもいる。異常行為を発見したらすぐさま取り押さえる。
話を戻すけど、モモも移動手段がSHINKANSENと指定されていたので、片道五時間かけて移動することになった。
今更だけど、君たちの住んでいた地形はほぼ同等と思ってくれていいよ。イメージとしては、東経百八十度に北海道、西経百八十度に沖縄、って考えてもらうといいかな。なので、欧州や米国などはない。ちょっと強引かな?
ではでは本編に戻りまして。
KOKURAを出発してまもなく、テーブルに袋を置き、袋から弁当箱を取り出した。
「わーい、久しぶりの駅弁! かしわ飯!」
モモも久しぶりの旅行、もとい、魔王城への旅で本業を忘れてルンルン気分でいた。かしわ飯はモモのおうちでも普通に食卓に並ばれるご飯であるが、地元だからか逆に食べない。うまそうに弁当を食べ終えたら、こくっ、こくっ、っとHIROSHIMAあたりでそのまま眠ってしまった。おいおい、まだ正午にもなってないぞ! まぁ、長時間の移動拘束がかかるので、体力を温存したいのは無理はないが……。さっき言った通り、車内は基本的に安心できるので、乗務員さんに命を預けたのだろう。
モモのプランはこうだ。
一〇三〇 HAKATA出発
一〇四〇 KOKURA付近からかなり早目の昼食しそのまま睡眠
一三三〇 KYOTO付近で起床し作戦の確認
一五三〇 TOKYO着
一六〇〇 魔王との決戦
一九〇〇 最終のSHINKANSENでHAKATAへ帰還する
始発で現地入りしてなんとか納品終わらせて、終電で帰ったその足でオフィスへ向か、うブラックじみたSEかよ! せめてホテルくらい予約しとけよ! という謎にタイトなスケジュールを組んでいたのだ。モモとしては、結構勢力のある魔族(神話に出てくる古代の邪神とか)でも、十分程度の戦闘だったので、三時間もあればまぁ余裕でしょ、という感覚だったのだ。この感覚は、神の御剣、十段から無段になる過渡期においてつかんだらしい。剣聖となってからは、相手を見ただけで戦闘時間がわかるようになった。
モモはぼーっと窓の景色を眺めていた。魔王のことを考えていた。
なにせ、魔王の情報が一切ないのだ。魔王の素性、ビジュアル、魔力、身体能力、とにかく強さが全くわからなかった。もちろんみんな魔王の存在は知っている。ただし、「存在」以外は全く誰も話さないのだ。口封じにあった様子もなかった。というか、みなも本当に知らない感じだった。魔族とヒト族の紛争は嫌なほどあった。「魔王」という名の大義名分を使った争いもあった。が、いつも魔王は戦場に姿を現すことはなかった。モモも二年間各地を転々として情報収集していたが、収穫はゼロだった。そのため、ただの引きこもりニートじゃないかと思ったりもしていた。
気掛かりなことはあった。
先代の剣聖、つまりモモの師匠(以下、おっさんと呼ぶ)が魔王討伐に出陣したまま、消息を絶っていることである。遺物も全くなかった。それに、シノビは全員帰ってこなかった。おっさんもモモ同様、単騎で魔王に挑んだのだ。どうしてこの剣聖たちは単独行動するかね……。まぁ、正確には、その強さに誰もついていくことができなかったんだけど……。むしろ邪魔だった……。
唐突にいつものおばちゃんが魔王城のありかを言い出したこと、とかも。ヒト族のシノビ以外、魔族にはつけられている気配はないし、不思議に思っていた。なので、観光気分でもあった。
なぜ移動手段をSHINKANSENと指定したのか、とか。今後、この話が出てこないから言っておくと、魔王の準備時間が欲しかったらしい。心の準備とか。
ちょっとモモのことに触れるけど、ほぼすべての魔術は使える。
魔術学院で、その才能は開花した。
この世界の魔術学院というのは、君たちでいうなら、無許可校だね。〇〇スクールとか、××アカデミーとか。
もちろん、こちらにも自治体・法人が運営する教育機関は存在する。国公立・私立はある。偏差値もある。ただし、こちらでは飛び級はあるが、義務教育というものはない。一定の水準を満たせば、いきなり高等学校に編入することも可能だ。そして、大学という概念がない。高等学校を卒業して進学するなら、大学院修士課程となる。さらに上なら博士課程だ。あれだよ。君たち、大学ではちゃんと学業やってたかい? 開戦前に、学生のあまりの低堕落さに飽きれられ、大学校制度は廃止されたのだ。なので、いきなりハードルが上がるので、ほとんどは高等学校止まりだ。
モモに話を戻すと、モモはこの魔術学院以外は学校というものに通っていなかった。というか、その道を選ばなかった。モモは幼少、六歳のときに両親を亡くしている。その後、近所のおっさんに引き取られ、養子として育てられた。両親は教育資金を残していたが、魔術学院以外は残すことを選んだ。理由は、魔術と剣術以外に興味がなかったからである。なので、歴史はおろか、文系科目を学んでいない、というかやりたがらなった。おっさんの趣味でレコードに触れる機会があったのと、あるとき、おっさんが間違えて村の図書館で借りてしまった難解な図書に関心を示したからだ。のちにモモの必殺技になる音術(後述する)はここで生まれた。
おっさんが間違えたのは、音響解析の本だった。まぁ、コンサートホールの設計とかに使われるシミュレーション手法みたいなのかな。それを解読したくなり、年齢不相応の読み書き算術ができるようになった。おっさんは、モモが瞬算(瞬時に演算)できることに気づいた。単なる四則演算ではなく、三次元の微分・積分ですらだ。
しかし、その稀なる才能と引き換えに、コミュニケーション障害を有していた。モモは基本的に、視覚優位であったため、固有名詞や、それに対する説明の理解に苦しんだ。また、言葉の意味の解釈を間違えることも多々あった。「A」と言っているのに「A’」だと思ったり。なので、おっさんとモモとはよく会話が合わないことがあった。なので、おっさんは、モモが興味を持つことだけに集中させた。こういう教育や、先天的な特徴が、モモの能力が発揮されることとなる。これについては後述する。
そして、モモが八歳のときに魔術学院に入学させた。理由は、おっさんが神の御剣、無段の昇段審査に徹するためだ。昼間はお互い、魔術・剣術を鍛えた。晩御飯自、モモはとにかく楽しそうに学院のことを話していた。ちなみに、魔術学院は、十五歳あたりが多いのと、頑張っても、高難度魔術止まりなのだが、モモは一年目を終えるくらいには、あと少しで極級魔術を使えそうになっていた。ちなみにこちらの世界では、魔術はこのようになっている。
・初級魔術:早ければ三歳でも使える。
・中級魔術:本編では使われないので割愛。
・上級魔術:本編では使われないので割愛。
・高難度魔術:一般的な術者が使えるのかこのあたりまで。
・超高難度魔術:災害級の魔術で、術者は十人程度とされている。
・極級魔術:星を滅ぼしかねない魔術。術者は三人未満とされているくらい。
先に触れたけど、モモは瞬算ができていたので、ほぼ無詠唱で超高難度魔術まで使えた。強いて言えば、魔力が足りたら極級を使えたくらい。なぜ瞬算が無詠唱につながるかというと、魔術を使用する際、魔術展開術式展開(要は魔法陣)が必要なためだ。君たち勘違いしているかもしれないけど、派手だったりかっこいい魔法陣をデザインするのは勝手だけど、それを使うには、それなりの演算が必要なんだよ? 複雑になると特に。大した威力もないのに、無駄にデザインだけ凝ったものをやるほど、戦闘時には時間が必要になる。その線上に魔力を注入し、さにどれくらいの強さで、どの方向に発するか、とか。こっちは専ら、円関数とかベクトル、行列がそれに該当するけど……。超高難度以上になると、Eulerの公式は当たり前に使いだす。だから、現実でないのと、難解なものになるから、途中で挫折する者が多い。
これを瞬算によって無詠唱でできるのがモモの強みであった。そのルーツがさっきいった、音響工学の本だったのだ。この頃は二次元の音響解析くらいなら瞬算できるようになっていた。念のため補足しておくと、流体力学でも音響解析でも磁場解析でも共通してるけど、すごいこれむずいよ。
それで、おっさんはちょうどその頃に神の御剣、無段、剣聖となっていた。せっかく剣聖になったので、こういうことで、何度か稽古をつけた。
そして、モモが魔術学院を卒業した際、モモに通帳を渡し、話をした。
「ワシはこれから魔王討伐へと赴く。もしワシが戻らなかった場合、この金で好きにしなさい。贅沢をしなければ十年は暮らせる。」
おっさんは、モモの両親の財産に、さらに自身の分を上乗せしていたのである。この世界にも銀行に似たようなものは存在する。
そして、翌朝、旅だった。
「戻ってきてください……。」
おっさんは笑顔で出立した。
モモは待った。早ければその日に帰ってくる。遅くても一か月以内には帰ってくる。しかし、二か月、三か月経ってもおっさんは戻ってこなかった。
ある日、モモは、おっさんが亡くなったと聞いた。いや、正確には、亡くなったのでは? という会話だったのだが、それを勘違いしてしまったのだ。
モモは何か、すごく複雑な心境になり、一時期は塞ぎ込んでいた。
別にそこに魔族もいるし、争う気配もない。というか、魔族のおばちゃんがやっている店のランチたまに食べる。毒を盛られたこともない。しかし、おっさんは帰ってこない。一体何が悪いのか。なぜ、この争いは五百年も続いているのか。魔王に会えばわかるのか。魔王を倒せば解決するのか? きっとそうだ! モモ固有の障がいが悪い方に働いた。
それからというのも、モモは、魔王を倒すべく、剣術の稽古に励んだ。そして、おっさんが第八十七代、神の御剣、無段、剣聖となってから五年後、モモが第八十八代剣聖となった。
無段有段者がいないため、実技審査となったが、審査員たちは目を疑った。おっさんの剣技とほぼ同じであったためだ。それは、おっさんが出陣前に稽古をつけた剣技だった。モモは同時十四歳であり、モモ単体の力自体は、成人男性に劣る。そのため、力負けしないように、うまく相手の剣を流すよう、自己流にアレンジしていたのだ。審査員認めざるを得なかったのだ。
この完コピ能力もモモが持つ先天的なものなのだが、渋るようで悪いが、のちに話す。
えー、非常に長くなって申し訳なかったが、本編に話を戻そう。
モモはHUJIYAMAを堪能したのち、紙と鉛筆を取り出し、何やら書きだした。立体音場のシミュレーションである、例えば、ボックス状の部屋で、魔王が後方にいるなら、これくらいの声量がいるとか、形状によって、どう音術を使うかを考えだした。ある程度できた頃には、SHINYOKOHAMAを出発していた。
「いつの間に?! 早く準備しなきゃ。」
筆記用具をしまい、しばらくし、ついにこのときが来た。
「まもなく終点、TOKYOです。お出口右側です。お忘れ物のなきよう、網棚や座席回りなど、もう一度お確かめください。また、お降りの時は足元にご注意ください。今日もSHINKANSENをご利用くださいまして、ありがとうございました。まもなく終点TOKYOです。」
ピンポーン、ピンポーン。プシュウゥゥゥゥ!
ドアが開いた。同時に、モモは軽い足取りでホームに降り立った。
「トイレどこ?」
ホームから階段を降り、トイレマークを探し出した。
「あったあった。さすがに女子トイレなら大丈夫でしょ。」
と、トイレに入ってドアを閉めて鍵をかけた。戦闘服に着替えるためだ。そして、キャリーバックを開き、いそいそと着替えだした。
まるでウエディングドレスみたいなドレスでトイレから出てきた。大きめの宝石が埋まっている胸当てがある。ドレスはきめ細かな布地、胸当てとともに、魔力を増幅できるようになっている。魔力は使うため、というよりも、防御用だ。物理攻撃の効果を減少させるような感じ。武器は剣が二本。
ピンポーン!
モモはさっそく引っかかった。駅員がやってきて、切符を見て場所を教えてくれた。
「十四番ゲートは突き当りを右手だよ。」
「ありがとうございます!」
東京駅は計十二の改札口のはずなのに、十三番ゲートをすっ飛ばして十四番ゲートなのだ。モモは改札口の数なぞ知らなかったので、何も考えずに向かった。え、なぜ十四かって? それはモモの年齢だからだよ。魔王の良くない趣味さ。
「覚悟しなさぁい!」