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打ち上げ

作者: リトルムギ

 中学生の時、僕は打ち上げが好きだった。でも高校生になって、嫌いというより楽しくないことがほとんどになった。理由はいたってシンプルで、高校の打ち上げには先輩がいて気を使わなくてはいけないからだ。だから僕は、誰にでも同じように話すことのできる人になりたい一心であった。

 ある打ち上げで焼き肉に行ったことがあった。この打ち上げは17人いて先輩が2人。そこの焼肉屋さんは宴会場がなく3つの席に分かれて食べる。先輩は1つのテーブルで食べるので僕にとって3分の2で楽しいのだ。だから楽しみだった。

 焼肉屋さんに行くまでの道のりは同じ席になりたい人の近くを歩いた。そのままの列で入ってそのままの流れで座れると思ったからだ。用意周到すぎるかもしれないけれど、僕にとっての打ち上げの席はそれくらい重要だった。しかし問題が起きた。お腹が痛い。トイレに行きすぐ席を取ろうと思った。焦っていたからか席を取ってから行こうとはならなかった。帰ってきた時にはもう僕の席は決まっていた。先輩2人、後輩の女の子1人、同い年1人。終わった。100%今日の打ち上げは楽しくないと思った。でも僕はかすかな希望を見つけた。後輩の女の子となら話すことができるし、この打ち上げ終わりにでもご飯に行く約束をしようなんて考えた。

 そうこうしているうちに打ち上げが始まりお肉を焼き始めた。僕が話すことは特になかった。このお肉は大きいから先輩かな、先輩のところにお肉を置くのは良い後輩なのかな、焦げたお肉はどうしようかな、とかそんなことをずっと考えていた。ふと時計を見るともう30分もたっていた。

 さすがの僕も少ししゃべろうと思った。それに今日の打ち上げは苦手克服のチャンスな気がしていた。とりあえず話を聞くことにした。一人の先輩が恋愛相談をしていた。京都から福岡の遠い相手と連絡を取り合っていて、結構うまくいっていて冬休みには会おうと約束している。でも最近になってラインの返信が雑になり、電話も断られるようになってしまった、これはどういう心境なのか、という質問だった。この話は特定の個人に向けてではなく5人全員に向けてのものだったので話に入れると思った。しかも答えも純粋に飽きられただけと分かっている。だから(もう無理でしょ。諦めるしかないです。)と言おうとしたけど流石に先輩だしなと思って

「次会う約束の日にちを決めようって言って、それでぼかされたらもう諦めたらいいじゃないですか。」

とまだわからない感じで言った。女の子の後輩も

「会うのを断られたら無理ですね。けどアタックは大事ですよ」

と応戦してくれた。先輩が踏み込んだ話をしてくれたので、みんなが話しやすくなり終わり際15分ほどは楽しかった。

 打ち上げが終わり駅までの帰り道、僕は女の子の後輩をどうやってご飯に誘うか考えていた。僕なら誘われてどう思うだろうと考えた時、やらかしていることに気がついた。僕がもしその子の立場でこのタイミングで誘われたら、確かにアタックは大事って言ったけどほんまにすぐ誘ってきた、狙われてる、となる。しかもさっきの恋愛相談で断られたら終わりという結論に至っていた。怖くて誘うどころではなくなった。自分の発言を後悔した。もうこれからは、お肉を最高に焼きあげて先輩のお皿に乗せる、お肉マスターになろうと思った。

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