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プロローグ

■この物語はフィクションです。当たり前ですよね。


 プロローグ


 気づけばまたこの場所に居た。一体何度目だろうか。数えるも諦めている。

 シンプルな…例えば教科書に出てくる宇宙の説明写真のような、暗いのだけど、キラキラと小さな光が周りを照らし出す。そんな空間。


 その中心に私は居た。


 周りを取り囲むように、様々な写真が立ち並ぶ。自分の部屋だったり、近所の公園、学校の校門前等々。さながらスクリーンショットを保存しているフォルダのサムネイルを見ているかの様に。



 そして、また――慣れたかの如く、いや実際慣れているのだけども――その写真の一枚を”選択”する。


 在るべき場所へと戻る為に。次の一手をぼんやりと考えながら――。



■ ■ ■


 新暦に変わり三百十年、長く続くと思われた人類の歴史が変わったのは遺伝子変異により特殊な力を使える者が現れたことだった。政府はその者達を能力者<タレンティア>と呼び、隔離、臨床実験の材料と見ていたが、勿論そう巧く進むはずもなく、能力者における反乱が始まった。これが事の発端とされる”第一次能力者革命”と繋がる。


 混乱に時間に要した政府は、能力者を定義付け、受け入れる姿勢を表明。能力者として先陣を切った要人――彼は後に英雄と称される――が善人だったのか幸いか、新たな法案も足早に進み、犠牲は最小限に収まったと言える結果となった。今現在、人口の四割が能力者を占め、日々の暮らしも安定、収束を迎えたともされる。

 しかしながら、多様な犯罪などはやはり人間であるが故の性なのか、それともこれが日常なのか。世界は大きく変わるほどには至らず、時間は無常にも日々を重ねていく。


 この物語はそんな世界で、がむしゃらにネタを追いかける。そんなお話の一頁。


■ ■ ■


 新大阪市。第一次能力者革命において再編された、西日本の有力な能力者が集まる都市。又、能力者と診断された世帯を集め、育成や保障、施設等が充実した地域となっている。

 その中、市立能力者育成学校――幼小中高大を一貫とした学校、通称、大能校――はそんな世帯の人気を集め、高い倍率をくぐり抜けた能力者の中核とも言える場所になっている。

 敷地面積はどこぞの野球ドームより広く、総生徒数は約五千名近く。関係者含めるとさらに多人数となる。FランクからSランクという成績制度で、大学課程まで修了すると一割程がエリート街道を進む。レベル制でないのはお察し下さい。色んな方面から怒られそうです。


 そこに今作の多分きっと主人公である大能高校二年生の姉妹が通っている。

「いや、そこは断言してよ」

「姉さん、いきなり独り言なメタ発言は痛い子だと思うからやめて…」

 ツッコミを入れたのは姉の(ひいらぎ)セラ、そんな姉に呆れるのが妹の柊ルナ。双子ではなく、セラが四月生まれ、ルナが年を挟んで三月生まれという年子の姉妹だ。なんか居たなそんな兄妹。

 姉、セラは一見小学生と思える幼い容姿。低い身長にまな板という所謂ロリである。本人はかなり劣等感抱いているけども。銀髪のロングをサイドアップで纏めている。赤い瞳が少し勝気な性格を表しているのだろうか。中々に強気な性格だ。

 一方、妹のルナは銀髪のボブカット、瞳は青く性格は穏やかだかがキレると怖い典型的なものである。姉を慕い、割と重度に近いシスコンではあるがそれは後々語る上で明らかにしていく予定…だったらいいな。

「まだ成長期だから!殴るよっ!!」

「姉さん…もう成長期は…」

 呆れている妹は標準的な高校生よりは良いモデルのような体型、と真逆の姉妹である。

「まったく、ルナはこういう設定でいいよねぇ」

「ぼやきながら胸とか触らないでくださいっ」

 はたから見れば仲良し姉妹だが非常に百合っぽい。書いててどうしようと思うくらいに。

 そんなやりとりをしながら二人は大能校に辿り着き、生徒用IDパスカードをかざして校門をくぐり抜けていく。早くも遅くもないこの時間帯、周りも同様の生徒で溢れかえっている。それぞれが各々のクラスへと足を運ぶ。高校の棟に近づくにつれ見知った顔がちらほら出てくる。姉妹に気付いた一人が手を振って近づく。

「おはよー。宿題やった?」

 近づいてきたのは幼稚園からの腐れ縁、(くすのき)カレンだった。金髪ロングに高身長、お姉さん気質の世話焼きだが少しばかり裏目に出るのが玉に瑕。成績優秀、文武両道。エリートコースの一角と期待されている。

「あー、あたしは属性的に無理だわ。今回の点数はパス。他で挽回する」

とセラ。その一方でOKサインを指で作って見せるルナ。

「四属性なら私は楽勝ですわー」

はにかみながら答えるルナ。勿論、言葉通りである。


 ここでこの世界観の補足を一つ、能力者の能力には属性が割り振られている。火・水・風・地となる基本四属性。そして上位属性である光・闇の二属性、そしてどれにも該当しない無属性である。この中で無だけは特殊で固有魔法、他には真似できない希少な部類を持っていることがほとんどだが、特性を理解し有用に使えるのは指折りの一部の能力者に絞られている。

 今回の宿題は<火の矢/ファイアアロー>を的に当てていくと単純な部類だが、無属性しか習得できてないセラには苦痛だった。

 一般的に能力者の素質さえあれば初級程度は全属性習得可能ではあるが――セラは特殊だった。幼い頃から無属性特化なのだ――そのせいで成績は常にFランクではあるがぎりぎり進級できている。

 一方のルナは無属性がない代わりに四属性を上級まで習得済、成績はAランク。まず大学まで困ることはないだろうと先生達のお墨付きだ。


「そっかー、やっぱりそうなるよねー」

と、カレンが続ける。特に他意は無いのだろうが、やはりセラには少し心に響く。

「んー、初級少しでも出来ればなぁ…」

「いや、姉さんは無属性が強烈だから」

 軽く悩んで見せるセラにすぐさまルナがフォローを入れる。

「強烈と言っても限定的過ぎて成績上がんないのよね」

「いつか評価きますよ。きっと多分、どこかで。遠い未来に」

「不確定だし遠いのかよ!」

 いつもの慣れ親しんだ姉妹コントである。気づけば既に教室前に辿り着いていた。

 多少、今日の授業に憂鬱感を覚えつつも席に向かう。ちなみに三人は同クラス、二年三組だ。一部濃いメンツが揃っているクラス…とも言えなくはない。そのうちの一人、御影(みかげ)アオイが席に着いたばかりのルナへと近づく。

 アオイは黒髪ロングの茶色の瞳、日本人の典型的子孫というべきか。個人の能力は四属性の中級Cランク。同じタイプのルナにはよく相談を持ち掛けている。恐らく今日の宿題の件についてだろう。

「ルナちゃんー、宿題のコツ教えてよー」

「仕方ないですね…火は維持さえ気を付ければ距離とれますから、後は的に当てるコントロールですね」

 すがるアオイに的確に答えるルナ。頼られれば答えてしまう。ルナの人気の一端でもある。カレンもそういう気質ではあるが、大雑把すぎて人を選んでしまう。彼女は天才肌にありがちな適当になんとかなってしまうタイプなのだ。

 人それぞれに会話が飛び交う教室の朝を断ち切る様に、ホームルームのチャイムが鳴る。学生には憂鬱な授業の始まりもである。

 程なくクラス担当の金久(かなひさ)キョウジが教室へと姿を現す。体育会系の体格の良い、それでいて爽やかな短髪の若い教師。真面目を絵にかいた性格から頑固に思われがちだが、いざという時には頼られている、今時珍しいタイプとも言える。

「おし、出欠とるぞー。席つけよー」

 言われるが早いか生徒達は席へと向かっていく。いつもながらの光景で返事も淡々と進んでいく。

「連絡事項は特に無い…が、実習の宿題は今日判定だからな。各自適当に乗り越えてくれよ」

 さらっと言葉を茶化すキョウジ。彼にはこのクラスの問題児――つまりはセラ――を気にしている。彼なりの心配りというところだ。


 授業は予定調和と言うべきか、平常運転というべきか。出来る生徒はクリアし、出来ない生徒は他能力で結果を補う、だった。一部の生徒は申告して他属性にて対応、勿論満点はとれないが、無いよりはマシだ。という風潮は消えない。

 大能校では特にこれが出来ないと落第ということは基本的にはない。

千差万別、十人十色、得手不得手の中で能力者を最大限良い状態に育てるのが方針であり、各々が活躍できる就職をモットーにしている。

Fランクだろうが落第にまでなった生徒が今までに存在しないのが現状をよく顕している。

 実技の宿題も終わり席に突っ伏しているセラ。いかにも面倒くさそうにぐったりしている。

「姉さん、やっぱり…?」

 真っ先に声をかけたのはルナだった。宿題や実技の度にこういうことはしょっちゅうだ。

「あー、いや、無属性で無理やり矢を作ったもんだから慣れてなくて精神力が減っちゃったわ」

「最低点はとれたのですね?」

「まぁね。疲れたけど」

 溜息まじりに答えるセラ。聞いて少し安心するルナ。流石に成績がゼロというのは避けたいのが現実。下手をすれば大能校初の落第者となりかねない崖っぷちであることはかなりのプレッシャーでもある。


 今回、無理やり作った、という点において世界観の追加をさらに補足。能力の発動には能力陣と言われる、所謂、能力の設計図を組み立て、そこへ自分の精神力を注ぎ込む。という手法が組まれている。

 陣の組み立てに失敗すれば無駄に精神力を消費し、効果は発動しないという悲惨な状況もある。又、能力の範疇を超えての陣も効果を成さない。何が能力で出来て、出来ないかは個人で勉強して試行錯誤を繰り返していくしかない。

 また、高位のランクになるほどその能力は秘蔵とされ、表向きに公開されることはない。世界を壊しかねないような能力の使用は法律で禁じられている。”第一次能力者革命”の悲劇を繰り返さぬよう、先人達の知恵と経験が今に引き継がれている、ということでもある。


 いつもの平凡な学生生活を終えて柊姉妹とカレン、アオイは帰路へ。

特にこれといったこともない暇な時間を持て余し、駅近くの商店街をぶらつく。アイスの買い食い、ウインドウショッピング。

至って普通の生活――が続くと思われたが、そこはよくあるパターン。色々巻き込まれてしまうのは次のお話でということで。

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