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家に行きたいって言ったんだけど…… (※玲奈視点)

誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。


 しばらく悟りを開いたままだった良一は、正気に戻るとすぐさま謝ってきた。

 ものすごく、やってしまった感を醸し出しながら。


「お見苦しいところをお見せしました……」

「いいよ、気にしないで。良一の気持ちよくわかるし」


 私が良一の立場だったら同じことになってたと思うし。


「お気遣いありがとうございます。本当にすみませんでした」


 私がお世辞で言ったと思ったのか、そう言って謝ってきた。

 私は本気でそう思ったんだけど……。

 それにしても、良一のことをもっと知れる方法ってないかな?

 私は良一に聞かれたらなんでも答えちゃうけど、良一はそうもいかないよね……。

 第三者から聞くのが手っ取り早そう。

 例えば……そうっ、家族とか!

 そうだよ、良一の家族に聞けばいいんだよ!


「そうだ。良一の家、行っていい?」

「……えっ、家? 家って、あのHouseの家ですか?」


 急なネイティブ発音で草。

 良一って英語の発音上手いんだ。


「……うん、その家であってる。行ってもいい?」


 発音があまりにも上手すぎて、笑いそうになるのを必死に抑えてから訊ねる。

 良一はというと、〝マジで言ってんの、この人?〟的な顔をして唖然としている。

 ほんとに表情がわかりやすいなぁ、良一は。

 そして、出てきた言葉が――


「この時間だと妹がいるんですけど……」


 だった。

 えっ、それめっちゃ好都合なんだけど。


「えっ、良一、妹いるんだ。ますます行きたくなってきた。あっ、ちなみに私は弟がいるよ」


 さらっと私の事もアピールする。


「そ、そうなんですね……」


 愛想笑いを浮かべているけど、それ絶対〝マズい……!〟って思ってるでしょ。

 必死に私を家に連れていかなくてもいい理由を探してるんだろうけど、どんな言葉が来ようと私は切り抜けて良一の家に行くから。

 覚悟してね?

 そして、良一がやっと口を開いた。


「えっと……そうっ、遅い時間まで外出してるとご両親が心配なさるんじゃないですか?」


 なんだ、それか。

 結構長いこと思案してたからもっと私が行きたくなくなるようなことを言うのかと思ってたけど、拍子抜けだ。

 なぜなら――


「あっ、それなら大丈夫。うち、お父さんもお母さんも、いつも帰ってくるの日付が変わる直前だから。場合によっては帰ってこないこともあるかな」

「日付が変わる直前? なんのお仕事をされてるんですか?」

「お父さんが医者で、お母さんが看護師なの。それで、『面倒見れない代わりに門限なしにするから、好きなだけ友達と遊びなさい』って言われてるから、気にしなくていいよ」


 こういう理由があるからだ。

 すると良一は、もう断りようがないのか、困ったような顔をする。

 これは、あともう一押しかな?


「ねぇ、そんなに私が家に行くのが嫌なの?」


 そう言うと、良一は言葉を詰まらせた。

 これは、行ける!

 よし、ここは一美が言ってた方法を試してみよう。


「やっぱり、そう思ってるんだ……」


 まず、そう言いながら自分の髪の毛をいじる。

 すると、良一が慌て出した。


「お、思ってないですよ⁉ ただ、その、まだなんの関係もないのに僕が徳永さんを家に招き入れるのは遠慮したいかなって……」


 フォローしきれてない言葉に、内心で笑う。


「いやそれ、思ってるってことじゃん。まぁ、でも、言いたいことはわかるよ。つまり、良一と私に何かしらの関係性があればいいわけでしょ?」

「ま、まぁ、そういうことに、なりますかね……?」


 良一の言質を取った私は、何がいいかと考える。

 さすがに最初から恋人っていうのはあれだし、ここは無難に友達にしよう。

 ()()


「じゃあ、私と良一は今日から友達ってことで」

「はい?」


 なに言ってるんだ、この人? って顔をする良一。

 さて、今こそ一美が言っていた方法を使うとき……!


「……ダメ、かな?」


 そう上目遣いで言う。

 これで受け入れない男の子はいないって、一美が言ってた。

 良一は、なにかに抗いながら


「……ダメじゃ、ないです……」


 と観念したように呟いた。

 そこにすかさず、


「そう、よかった!」


 と満面の笑顔をプレゼントする。

 私の笑顔は男をダメにするって、一美が言ってた。

 ナイス、一美! こんど何か奢る!

 こうして、私は良一の家に行く権利を勝ち取った。

 今から行くのが楽しみすぎてヤバい!



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