マジっすか? (※良一視点)
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「お見苦しいところをお見せしました……」
「いいよ、気にしないで。良一の気持ちよくわかるし」
「お気遣いありがとうございます。本当にすみませんでした」
やってしまった……!
あまりに衝撃的なことだったから、現実逃避してしまった……!
だって、オタクで地味な男ランキング一位に輝く自信がある僕に、あの徳永さんが恋心を抱いているなんて、信じられるわけないじゃないか!
いっそ夢だと言われた方が僕的には万々歳なんだけど、そうは問屋が卸さない。
これは現実で、本当に徳永さんは僕に恋心を抱いている。
「そうだ。良一の家、行っていい?」
「……えっ、家? 家って、あのHouseの家ですか?」
「……うん、その家であってる。行ってもいい?」
――マジっすか?
そんなことしたら、家族になんて思われるかわかったもんじゃない。
それに、正式に付き合ってるわけでもないのに家に女の子を連れていくなんて、できるわけがない。
友達だとしても、ギリアウトのラインだし。
どうにかして断れないだろうか。
「この時間だと妹がいるんですけど……」
「えっ、良一、妹いるんだ。ますます行きたくなってきた。あっ、ちなみに私は弟がいるよ」
「そ、そうなんですね……」
つ、通じない……。
というか、こんな美人な姉がいるとか、うらやまけしからんぞ、弟くん。
いや、こんな美人な姉がいたら、それはそれで、女の子に言い寄られても何も感じなくなりそうだから微妙なラインだな。
うちの妹も身内という贔屓目を抜きにしても美少女と言って差し支えない見た目をしているけど、僕に免疫はない。全くと言っていいほどない。
なぜなら全く慕われてないからだ。
クラスの人達と同様オタク地味男と認識されていることもそうだけど、召し使いか奴隷か何かと思われてるんじゃないかというくらい、こき使ってくる。
いや、今はそれよりも、どうにかして断らなければ。
「えっと……そうっ、遅い時間まで外出してるとご両親が心配なさるんじゃないですか?」
「あっ、それなら大丈夫。うち、お父さんもお母さんも、いつも帰ってくるの日付が変わる直前だから。場合によっては帰ってこないこともあるかな」
「日付が変わる直前? なんのお仕事をされてるんですか?」
「お父さんが医者で、お母さんが看護師なの。それで、『面倒見れない代わりに門限なしにするから、好きなだけ友達と遊びなさい』って言われてるから、気にしなくていいよ」
えっ、門限なしって……そんなに徳永さんのことを信頼してるのか、それとも放置してるのか、話を聞いただけでは判断つかないな……。
けど、赤の他人の僕が立ち入るべきことじゃないか。考えるのやめよう。
しかし困った……。
そうなると、もう断りようがないぞ?
そう思った矢先、徳永さんに話し掛けられた。
「ねぇ、そんなに私が家に行くのが嫌なの?」
まるで思考を読んだかのような言葉に言葉が詰まる。
「やっぱり、そう思ってるんだ……」
そう言ってばつの悪そうな顔で髪の毛をいじる。
「お、思ってないですよ⁉ ただ、その、まだなんの関係もないのに僕が徳永さんを家に招き入れるのは遠慮したいかなって……」
「いやそれ、思ってるってことじゃん。まぁ、でも、言いたいことはわかる。つまり、良一と私に何かしらの関係性があればいいわけでしょ?」
「ま、まぁ、そういうことに、なりますかね……?」
「じゃあ、私と良一は今日から友達ってことで」
「はい?」
なに言ってるんだ、この人?
「まずは友達からってこと。よろしくね? 良一」
――マジっすか?
本日2度目だよ、これ。
というか〝まずは〟って……。
付き合う気満々じゃないですかヤダー。
全く僕の意見が介在してなくて草なんですけど。
「……ダメ、かな?」
そしてこの上目遣いである。
それ、絶対狙ってやってるでしょ⁉
全く……。
僕はね、こう見えてラノベで恋愛系のやつも読んでて上目遣いで頼まれてさらっとオーケーしてる主人公を数々見てきたんですよ。
そんな僕が上目遣いで折れることなんて……
「……ダメじゃ、ないです……」
あるに決まってるだろ、いい加減にしろ!
なんだよ、可愛すぎかよ!
こんなに破壊力があるとは思わなかったよ!
正真正銘の美少女である徳永さんがやるから、挿し絵で描かれるキャラの美少女がするより一層破壊力が増してる。
「そう、よかった!」
加えてこの嬉しそうな顔。
そんなコンボを喰らったら、もう家に連れてくしかないじゃないか。
妹になにか言われることは必至だけど、僕のメンタルは常人のそれではないので、容易く受け流せるだろう。
……たぶん。
というか、結局論破されてしまった……まぁ、あんなコンボを喰らったんだから、仕方ない。
うん、仕方ない。