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名前で呼ぶことにしたけど…… (※玲奈視点)

誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。


 本屋に来たオタクと私。

 中に入って向かった先は、ライトノベルが置かれている売り場だった。

 ふむふむ、こういう本を読んでるのか。

 恋愛系のものもあれば噂の異世界系のものまである。

 色々あるなぁ、と思いながら本を眺める。

 そして、ふとオタクを見る。

 本を見てるのか見てないのかわからない視線で立ち尽くしていた。


「ねぇ、ボーッとしてどうしたの?」

「───ッ⁉ す、すみません……少し考え事をしてました……」


 私がオタクの顔を覗き込みながら訊ねると、オタクは驚きながらも謝ってきた。


「ふーん、ならいいけど。で? どの本を買うの?」

「あの、その前に、聞きたいことがあるんですけど、いいでしょうか?」


 質問に質問を返してきたけど、何を聞きたいのか気になった私はオタクに先を促した。


「いいよ。なに?」

「なんで僕と一緒にいるんでしょうか? あ、いや、僕はべつに構わないんですけど、片倉さんや真辺さんと一緒にいなくていいのかなと思って……」


 優しい……!

 そんなとこまで配慮してくれるなんて……。

 ますますオタクのこと知りたくなってきた!


「大丈夫、あの二人はこのこと知ってるから。それに、言ったでしょ? オタクのことが知りたいって」

「そ、それは、オタクがどういう人種か知りたいってことでしょうか?」

「違う、そうじゃない!」


 まぁ、言葉通りに受け取ったらそういう意味にならなくもないけどさ。

 私はあなたのことを知りたいの。

 そう思った矢先、オタクがこう訊ねてきた。


「ま、まさか、僕のこと……なわけないですよね?」


 お願いだから違ってくれ! とでも思ってそうな顔で訊ねてくるので、スパッと答えた。


「そうだけど?」

「……えっ?」


 まさか肯定するとは思わなかったと思ってそうな顔で呆けるオタクに内心ほくそ笑む。

 良いタイミングなので、畳み掛ける。


「信じられないって顔してるね。でもほんと。オタクの……うーん、紛らわしいから、これからは良一って呼ぶね。あ、なんか、良一って呼ぶの、しっくり来ていいかも」


 いや、ほんとに。

 ふしぎなくらいしっくり来る。

 それに、気になってる人をいつまでもオタク呼ばわりはしたくなかったから、ほんとに良いタイミングだった。

 オタク呼びしてたのは他でもない私自身なんだけどね。


「良一さ。告白を、私が傷つかないように断ってくれたでしょ? それが、私的にはキュンと来ちゃってさ。まずは良一のこと知ろうと思って」


 うん、間違いなく私は良一に恋してる。

 今言ったことに違和感がなかったから間違いない。

 良一はというと、未だにというかさらに信じられないという顔をしていた。

 そして、恐る恐るといった感じでこう訊ねてきた。


「そ、それは、観察対象的な意味合いでしょうか?」

「えっ? ふつうに恋愛対象的な意味合いだけど?」


 間髪いれず即答する。

 すると、良一はますます信じられないという顔をした。

 そして、何かに気づいた顔をしたと思ったら、とんでもないことを言い出した。


「ハハハ……僕、死んだんだ……。17年という短い間だったけど悪くない人生だった。お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください……」

「えっ、急にどうしたの⁉ 死なれたら困るよ⁉」


 私の初恋をそんなあっさりと終わらせないで!

 私、ギャルだけど恋愛なんて一度もしたことないし、況してや体の関係を持ったことも一度もない(自分で言うのもなんだけど)純情ギャルなんだよ⁉


「これは、神様が与えてくださった人生最期の甘い夢なんだ……。僕はもう死んでいて、女の子から恋愛対象として見られたことのない僕に見せてくださっているんだ、No.1美少女の徳永さんに恋愛対象として見られる夢を……」

「なんか悟り開いちゃってる⁉ 美少女って言ってくれるのは嬉しいけど、夢じゃないし、そもそも死んでもないよ⁉ 戻ってきて!」


 遠い目をして呟く良一の肩を揺らして正気に戻そうと試みる。

 それでもしばらくの間、良一は悟ったまま正気に戻ることはなかった。



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