どゆこと? (※良一視点)
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おかしい。
絶対おかしい。
なにがおかしいって、隣に徳永さんがいることが。
現在、僕は本屋にいる。
もちろん、欲しかったラノベを買いに。
ところが、放課後、学校の正門で徳永さんに声をかけられ、用事があるからと断ったはずが、一緒に行くと言われて現在に至る。
しかも、聞き捨てならないことを言っていた。
付いていくと言われ、
『えっ? ま、まぁ、いいですけど……付いてきてもつまらないと思いますよ?』
と僕が返した後のことだった。
『私は、オタクのことを知りたいだけだから』
そう言われた。
――どゆこと?
としか思えなかった。
おたくってオタクだよね?
お宅ではないよね?
「お宅のことを知りたいのですが~」
なんて徳永さんが言うわけない。
そもそも、僕のことを知ってどうするのって話。
でも、僕を呼ぶ時ってオタクなんだよなぁ……。
うん、ここは言葉通りにオタクについて知りたいと思ってるんだと思おう。
僕に興味を持つなんて100%ではないにしろ、限りなく100%に近いくらいあり得ないわけだし。
「ねぇ、ボーッとしてどうしたの?」
「───ッ⁉ す、すみません……少し考え事をしてました……」
あぁ、驚いた。
気づいたら目の前に徳永さんの綺麗な顔があるんだもんなぁ。
「ふーん、ならいいけど。で? どの本を買うの?」
「あの、その前に、聞きたいことがあるんですけど、いいでしょうか?」
「いいよ。なに?」
「なんで僕と一緒にいるんでしょうか? あ、いや、僕はべつに構わないんですけど、片倉さんや真辺さんと一緒にいなくていいのかなと思って……」
「大丈夫、あの二人はこのこと知ってるから。それに、言ったでしょ? オタクのことが知りたいって」
うん、間違いなく、オタクについて知りたいって言ったな。
確認した僕は、裏をとるために徳永さんに訊ねた。
「そ、それは、オタクがどういう人種か知りたいってことでしょうか?」
「違う、そうじゃない!」
食いぎみに否定された。
えっ、じゃあ、まさか本当に僕のことについて知りたいってこと?
そんな馬鹿な。
コンマ以下の確率を引き当ててしまうなんて……運が良いのか悪いのか……。
いや、まだ決まったわけじゃない。
「ま、まさか、僕のこと……なわけないですよね?」
頼む! 違ってくれ! なにかの間違いであってくれ! 僕の勘違いであってくれぇ……!
「そうだけど?」
「……えっ?」
そうだけど? が頭のなかでリフレインされ、僕の希望の光が一瞬にして崩れ去った。
なんでた⁉ どうしてだ⁉ 僕がしたことと言えば、罰ゲームの告白を断った、この一点のみなんだぞ⁉ どこに興味を引く要素があったっていうんだ⁉
「信じられないって顔してるね。でもほんと。オタクの……うーん、紛らわしいから、これからは良一って呼ぶね。あ、なんか、良一って呼ぶの、しっくり来ていいかも」
僕ごときの名前を口にして笑顔を溢す徳永さん。
もう、なにがなんだかワケワカメ。
「良一さ。告白を、私が傷つかないように断ってくれたでしょ? それが、私的にはキュンと来ちゃってさ。まずは良一のこと知ろうと思って」
さらにワケワカメになってきた……。
断ったことが逆効果で僕に興味を抱くようになってしまった? ……なにそれ、どんな魔法?
使った僕ですらよくわからないんだけど?
いや、落ち着け。
キュンと来たと言えど、僕に恋心を抱いたわけではないはずだ。
そこに賭けよう……!
「そ、それは、観察対象的な意味合いでしょうか?」
「えっ? ふつうに恋愛対象的な意味合いだけど?」
わかってましたけどぉ!!?
僕が賭けたら負けることくらいわかってたけども……!
こ、こんな、恥じらいもなく素直に言われるとは思わんかったぜよ……! (←混乱中)
ハッ、そうか!
「ハハハ……僕、死んだんだ……。17年という短い間だったけど悪くない人生だった。お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください……」
「えっ、急にどうしたの⁉ 死なれたら困るよ⁉」
「これは、神様が与えてくださった人生最期の甘い夢なんだ……。僕はもう死んでいて、女の子から恋愛対象として見られたことのない僕に見せてくださっているんだ、No.1美少女の徳永さんに恋愛対象として見られる夢を……」
「なんか悟り開いちゃってる⁉ 美少女って言ってくれるのは嬉しいけど、夢じゃないし、そもそも死んでもないよ⁉ 戻ってきて!」
徳永さんに揺さぶられる。
あぁ、なんてリアルな夢を見ているんだろう……。
神様、ありがとうございます、ありがとうございます。
これでなんの心残りもなく逝くことができます。




