策士(?)な結愛
誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。
今回、?の後ろに空白を付けてないところがありますが、わざとですので、悪しからず。
朝にそんなやり取りがあり、授業を経て、昼休みになった。
僕はいつも通り、一人で弁当を……
「良一、一緒に食べよ」
とはいかなかった。
周りから色々な反応が聞こえてくるけど、無視だ無視。
「……どうぞ」
「あ、嫌だった?」
上目遣い。
「いえ、少し驚いただけです」
「そう? よかった!」
からの笑顔。
なんなの? 僕と接するときはそのコンボを必ずしないといけない、っていうルールでもあるの?
そんな心の叫びが届くはずもなく、徳永さんは嬉しそうに僕の前の席の人と交渉し始めた。
「ねぇ、ちょっと席貸してくれない?」
「は、はい! どうぞ……!」
僕に対してとは全く違う態度で前の席の男子にお願いをする徳永さんに対し、前の席の男子は、ものすごく頬を赤らめ、恥じらいながら席を譲った。
交渉ではなく鶴の一声だった。
なるほど、ふつうの男子はあんな風に接するのか。
下心見え見えの視線だった。
僕の接し方に安心感を持つのも頷ける。
まぁ、僕は身体を隠しもしない結愛と毎日お風呂に入ってるから、耐性は付いてる方だろう。
というか、結愛にはちゃんと恥じらいというものを覚えてもらわないと、女の子として危ない。
「さ、良一、食べよ」
「えっ? あ、そうですね。食べましょう」
徳永さんの言葉で我に返った僕は、弁当を広げる。
すると、手紙が入っていた。
なんだこれ?
「? どうしたの? なにその手紙?」
「わからないですけど、とにかく開けてみます」
徳永さんが見守る中、手紙を開く。
そこには、こう書かれていた。
【はいけい、にぃにへ
きょうは、にぃにへの日ごろのかんしゃをこめて、結愛が、べん当をつくりました。
おかあさんのべん当じゃなくて、結愛の〝愛妹べん当〟だよ?いまどんなきもち?ねぇねぇどんなきもち?
にぃにがおいしくたべてくれることをねがっています。結愛より】
お、おう……。
朝すごく眠そうにしてたのは、そういうことか。
というか、この煽り文句、僕に対して言ってない気がする。
この煽り文句を抜いても、文章に違和感がない。
それに、感謝の気持ちを込めた弁当なのに、手紙で煽る必要はない。
だとするとこれは……
「へ、へぇ、結愛ちゃん、料理できるんだ……」
こっちに向けたものなんだろうなぁ。
手紙を覗き込んでいた徳永さんは、現在、端から見てわかるくらいに頬がピクピクしている。
これを予想してのことだったら、結愛は相当な策士だ。
「そ、そうですね。結愛、母に仕込まれてるので、料理できますね」
「……良一は、料理できる彼女とできない彼女、どっちがいい?」
頬をピクピクさせたまま訊ねてくる。
えっ、いきなり彼女の話⁉
「え、えっと……その人ができなければ僕が料理できるので、代わりにします。できる人であれば、交代でします」
「えっ、良一、料理できるの?」
「母が土曜出勤の時にしてます。結愛と交代交代で、ですけど」
僕の返事を聞いた徳永さんの顔から、見てわかるほどにサァーッと血の気が引いていった。
えっ、そんなマズイこと言ったかな?
そんなことを思いつつ、弁当箱の蓋を開ける。
そこには、白米というキャンバスに海苔や色々な具材で描かれた僕の推しキャラがいた。
いわゆるキャラ弁だ。
さすが結愛。こっちが感謝したいくらいの出来だ。
すると、描かれたキャラを見た徳永さんが突然、僕の肩を鷲掴んだ。
「わ、私だって、やろうと思えばできるから!」
「はい?」
「弟がやってくれるからやってないだけで、やろうと思えばできるから!」
「あの、それはできないって言ってるようなものかと……」
「あっ……」
そしてしばらく、僕と徳永さんの間に沈黙が流れる。
そして、先に口を開いたのは僕だった。
「……食べましょうか」
「うん、そうだね……」




