徳永さんの過去
誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。
今回、キリのいいところで切ったため、少し短めです。ご了承ください。
僕が、徳永さんのことをどう思っているか……だと?
それを直接本人に聞くなんて、徳永さん、意外と精神力が高いんだろうか?
そう思って徳永さんの顔を見る。
――めちゃくちゃ目泳いでる……⁉
気持ち悪くならないのかというくらい、目が結構な速さで右往左往してる……。
そんなになってまで聞きたいのか。
といっても、今のところ、徳永さんに対して、特にこれといった感情は持ち合わせてないんだよね……。
「そうですね……強いて言うなら……」
「う、うん……」
「僕からしたら徳永さんは、高嶺の花……ですかね」
「そ、そう……なの?」
あまり状況が飲み込めていないような様子で訊ねてくる。
「そりゃそうですよ。徳永さんはクラスで一番の美人さんなんですから。僕みたいなヤツがおいそれと関われるような人じゃないと思ってます」
「わ、私って、そんなに遠い人間だったの? ふつうの女の子なんだけど……」
それはわかってる。
わかってるけど、美人な上にギャルだから、僕みたいな人種が容易に話し掛けられる存在ではない。
はずなんだけど……。
なんかこう、未だに現実を受け入れられない感じと言えばいいのか、こうして朝一緒に登校して話をしていること、そして昨日のアレも含めて、徳永さんが本気だということは理解してるけど、それ以外は頭が理解することを拒否してくる。
「そっか。まだ、足りないんだ……」
「……へっ?」
徳永さんの唐突な独り言に、思考が停止する。
「じゃあ、今から私の昔話をするね」
「はい?」
僕の聞き返しをスルーして、徳永さんは自分の過去を語りだした。
話によると、昔はギャルではなかったけど、男が寄ってくる容姿で、しかもその寄ってくる男が漏れなく下心満載な男ばかりだったらしい。
「あぁ! 言われてみれば確かにそうですね!」
「えっ……。良一、今まで私をなんだと思ってたの……?」
「あ、アハハ……」
そして、中学の頃はそれはそれは身体目当ての輩に言い寄られたそうだ。
そこを救ってくれたのが、当時からギャルだった片倉さんと真辺さん。
そんな二人に誘われてギャルになり、一緒につるむようになると、だんだんと寄ってくる輩は減ったらしい。
「二人が睨みを利かせてくれていたんですね」
「そうなんだよね……。二人は、私にとって恩人みたいなものだよ。友達でもあるけどね」
「なるほど……」
これが、徳永さんの過去の話らしい。
「だから、良一は唯一、私の容姿に釣られなかった、唯一ふつうに接してくれる男の子なんだよ?」
唯一、を強調してくる徳永さん。
「話の限りでは、そういうことになりますね」
「私、良一に謝らないといけないことがあるの」
「と、言いますと?」
「良一と喋ったこともないのに、〝オタクだからキモい〟って決めつけてた。でも、きっかけはあんなだったけど、実際に接してみたら、全然そんなことなかった……。だから、ごめんね?」
何を謝るのかと思えば、そんなわかりきったことを。
そもそも、キモいというのは徳永さん以外からも散々言われたり思われたりしてることだから、今更なんとも思ってない。
「勇気を出していただいてありがとうございます。言われなれてることなので、そんなに気負うことはないですよ?」
笑顔で言う。
すると、徳永さんが顔を両手で覆って上を向いた。
「だから、そういうところだってばぁ……」
くぐもった小さな声でそんな言葉が聞こえてきた。
そう言われても、これ以外にどう返せば……?




