新しい日々の始まり
誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。
本日より、あらすじに書いた注意書き通り、良一視点のみとなります。ご了承ください。
「あっ、良一! おはよ!」
「お、おはようございます、徳永さん……」
翌日の朝、学校に行こうといつもの時間に家を出ると、待ってましたと言わんばかりのタイミングで徳永さんが玄関から出てきて声を掛けてきた。
「珍しいですね、徳永さんがこの時間に家を出るなんて」
「せっかく友達になったから、一緒に学校に行こうと思って!」
なるほど、それでタイミングピッタリだったのか。
それにしても、朝から元気だなぁ。
それが、徳永さんのテンションを見た素直な感想だった。
「ねぇ、良一」
「? なんですか?」
「良一って、なんでこんなに早く出てるの? 学校着いてから暇じゃない?」
何かと思えば、そんなことか。
そんなもの、決まっている。
「全く暇じゃないですよ? 僕にはラノベという〝暇潰しの供〟がいるので」
「あぁ! そういえばそうだね。忘れてた」
そう言って乾いた笑いをする徳永さん。
そんなやり取りをしながら通学路を歩いた。
◆
学校に着き、靴を下駄箱に入れ上履きに替える。
そして、徳永さんと一緒にクラスの前までやってきた。
開きっぱなしな教室の入口から徳永さんと一緒に教室に入る。
幸い、このクラスでは誰も居ない時間なため、クラスの誰かに見られるということはない。
僕は、自分の席である窓際の一番後ろの席に鞄を下ろして座る。
徳永さんは、僕の列の隣の席から前に数えて三番目の席のところで立ち止まった。
へぇ、意外と近かったんだなぁ……。
「あっ、良一、いま意外と近かったんだって思ったでしょ」
自分の席に鞄を置きながら僕を見た徳永さんが思考を読んだかのような言葉を掛けてきた。
「い、いいえ? そんなことは断じて思ってませんよ?」
えっ、僕ってそんなにわかりやすいの?
「わかりやすいよ。1つ忠告しとくと、ラノベ読んでる時、顔が一人百面相してるから、気をつけてね」
また思考を言い当てられた。
というか、僕、そんなに顔に出るタイプだったのか……。
自分ではポーカーフェイスしてるつもりだったのに。
まぁ、いいや。
ラノベでも読もう。
そう思って鞄の中から今日読む予定のラノベを取り出す。
すると、徳永さんが大声を出した。
「ちょちょちょっ、なんで読み始めちゃうの⁉」
「えっ、僕の日課ですし……」
「そうかもしれないけど、私がいるんだから私と話そうよ!」
そう言われた僕は、持っているラノベに視線を落とす。
読みたい、読みたいけど……徳永さんが話したいと言っているのだから、今日は我慢するしかない。
そう決心し、ラノベを震える手で鞄に戻した。
鞄の中に入れる際、ラノベから「読んでくれないの?」という声が聞こえた気がした。(※幻聴です)
「それで……なにを話すんですか?」
「……あ、うん。えっとね、まず、連絡先交換しない?」
「……えっ? す、すみません、聞き間違いかもしれないので、もう一度お願いします」
聞き間違いじゃなければ連絡先を交換したいと聞こえた気がするんだけど……。
「連絡先、交換しない?」
聞き間違いじゃなかった……。
家が向かい合わせなのに、そこまで必要なのだろうか。
なんとか断る……?
いや、昨日、僕にアレをしたということは、本気で交換したいと思ってるはず。
まぁ、交換したからどうということもないだろうし、交換するか。
「わかりました。交換しましょう」
「! ほんと⁉ やった! ありがとう、良一!」
そしてこの嬉しそうな笑顔である。
つくづく本気なんだなぁ。
嬉しそうにスマホを取り出すので、僕もスマホを取り出す。
そして、LINKを開き、連絡先を交換する。
「これで、帰ってからも話せるね!」
「そうですね」
家、向かい合わせなんだけどなぁ。
「それでさ、良一。本題なんだけど……」
「は、はい……」
結構真剣な表情で言ってくるので、こちらも背筋を伸ばして気を引き締める。
「良一って、私のこと、どう思ってる?」
「……はい?」




