報告 (※玲奈視点)
誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。
やっぱりもう1話更新しておきます。
超特急で家の中に入った私は、自分の部屋に直行した。
階段を駆け上がる最中、後ろから
「姉貴! 夕飯は⁉」
という弟――拓哉――の声が聞こえてきたので、
「食べてきたからいらない!」
と言いながら自分の部屋に向かった。
部屋に入った私は、ベッドに直行してダイブした。
そして、枕に顔を押し付けて叫んだ。
恥ずかしさを紛らわすためだ。
けど、結愛ちゃんには勝てたと思う。
さすがに兄妹でキスはできないはずだから。
あっ、そうだ。
今日のこと、一美達にお礼も兼ねて報告しなきゃ。
思い立った私は、スマホを取り出してチャットアプリの〝LINK〟を開き、グループLINKを開いてグループ通話をかけた。
すると、ものの数秒で応答してくれた。
「一美、今日はありがとう」
『いやいや、気にしないで。随分長かったけど、オタクくんとどこに行ってたの?』
『それは私も気になる』
「じ、実は……」
そう前置きして、私は二人に事の詳細と経緯を話した。
『そっか……あの玲奈が、そこまでオタクくんのこと好きになっちゃったか……』
『キスまでするなんて……思い切ったことしたね』
「だ、だって、ほんとに良一のこと好きになっちゃったんだもん! 良一はね、気遣いと優しさがあって、今まで言い寄ってきた男と全然違うんだよ! それになにより、良一には私を意識してもらいたかったからしたの! 後悔はしてない!」
『まぁ、確かに、罰ゲームの告白をあんな断り方するくらいだもんね……。よしっ、こうなったらあたしが一肌脱ごうじゃないか! 玲奈とオタクくんがくっつくようサポートしてあげる』
「ほんと⁉ ありがと、一美!」
私が一美にお礼を言うと、乃梨子がボソッとこんなことを呟いた。
『男に抵抗がある玲奈がキスするくらいだもんね。オタクくん、意外と優良物件なのかも』
と。
「むっ、乃梨子、もしかして良一のこと狙ってる?」
『いやいや、玲奈の初恋を邪魔するつもりは毛頭ないよ⁉ 何年の付き合いだと思ってるの⁉』
でも、乃梨子は(一美もだけど)、二桁の男をとっかえひっかえしてる強者だから、良一を自分に惚れさせるなんてわけない。
全く恋愛経験のない私では太刀打ちできない猛者なのだ。
良一はあまりなびかなそうな性格してるけど、万が一ということもあり得る。
念には念を入れとかないと。
「ほんとに? ほんっとうに、良一のこと狙わない? 狙わないって誓える?」
『そもそも、オタクくんって顔も雰囲気も地味だから、どこがいいのかってレベルじゃん。むしろ苦手なタイプ……』
それを聞いてカチンと来た私の声は、自然とトーンが下がった。
「……苦手な、タイプ? 喋ってもないのに? 喋ってもないのに、苦手なタイプだって決めつけるの?」
『いや、玲奈も告白する前〝あんなの〟って言ってたよね?』
「うぐっ……そ、それは……」
『はいはい。その話はお終いお終い。玲奈に好きな人ができた、それで充分でしょ?』
一美の仲裁が入ったため、この話は終了した。
『それよりさ、玲奈』
「……なに?」
『明日、朝一緒に登校したら?』
「ブッ……⁉ ゴホッゴホッゴホッ!!」
『だ、大丈夫?』
昼に買っておいたジュースを飲んでいるところにそう言われたため、吹き出すのを我慢して飲み込んだ代償に気管に入り、おもいっきりむせた。
「だ、大丈夫……。ジュースでむせただけだから……」
『そ、そう? それで、明日の朝、オタクくんと登校する?』
「する! するに決まってる!」
『オタクくんって、わたし達が行くともういるけど、何時に学校来てるんだろ……』
「あぁあ⁉」
『⁉ な、なに? どうしたの?』
「良一が何時に家出るのか知らない……。それに、連絡先も交換してない……」
『な、なんだ、そんなこと……』
「そんなことじゃない! 私にとっては一大事なの!」
これじゃあ、明日、良一と一緒に登校できない!
『落ち着いて、玲奈。明日は早起きして、オタクくんが家から出てくるのを待てばいいのよ』
「そ、そっか! さすが一美、天才!」
『褒めたって何もでないよ。明日、頑張ってね。応援してるから』
『わたしも、ちゃんと応援する』
「二人とも、ありがとう。おやすみ」
『『おやすみ』』
挨拶を済ませ、通話を切る。
よしっ、明日早起きするために、今日は早く寝よう。
そう意気込んで、私は明日の準備に取り掛かった。
今回は、感想でご指摘を受けていたこともあり、玲奈がなぜチョロインと化してしまったのかをほのめかせてみました。
今後、詳しく書く予定ですので、今はほのめかす程度でご了承ください。




