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閑話 とある女の子のお話

本日は閑話なので、1話のみ更新です。


 私は、吉武(よしたけ)結愛(ゆあ)

 10歳の小学5年生。

 私にはお兄ちゃんがいる。

 名前は良一。

 オタク地味男と自称する、変わったお兄ちゃんだ。

 まぁ、実際、オタクで地味なんだけど。

 外見は関係ない。

 元からお兄ちゃんは、お母さんよりも私のことを可愛がってくれる優しいお兄ちゃんだ。

 昔から友達がいなかったお兄ちゃんは、ゲームとかそういうのを私と一緒にしてくれた。

 単に、遊び相手がほしかっただけかもしれないけど、それでもお兄ちゃんが遊びに誘ってくれることが、当時の私には嬉しいことだった。

 そんなお兄ちゃんのことが大好きだ。

 もちろん、お兄ちゃんとして。

 でも、前までは本気で結婚したいと思うほどに好きだった。

 だからこそ、兄妹で結婚ができないと知ってからは、せめてお兄ちゃんに恋人ができないことを日々祈りながら過ごしている。

 そして、もしお兄ちゃんを好きになるような人が現れた時のために、私は、色々とお兄ちゃんに刷り込みを行った。

 今まで以上に、私を甘やかすのはあたりまえ、私と一緒にお風呂に入るのはあたりまえ、といった刷り込みをした。

 彼女になろうとする人にダメージを与えられ、私が得をする一石二鳥の作戦だ。

 作戦を始めて、常日頃からお兄ちゃんを「にぃに」と呼び甘え続けて早5年。

 お兄ちゃんは、このままではダメだと気づきつつもなんやかんやで世話を焼いてくれる、といった感じになった。

 刷り込みは成功と言っていいと思う。



 ――ところが!



 今日、お兄ちゃんが女の人を連れてきた。

 お兄ちゃんはそんな気は毛頭なさそうだったけど、女の人の方は本気っぽかった。

 なんであんな美人なギャルが、お兄ちゃんのことを好きになるんだろう。

 ここは、お兄ちゃんに突撃するしかないよね。


「にぃに!」


 リビングのソファーでぼーっとしているお兄ちゃんにダイブする。


「うわっ、ビックリした! ……なんだ、結愛か。どうした?」

「なんであんな美人な人がうちに来るの? にぃに、なにかしたの?」


 私がそう聞くと、お兄ちゃんは苦笑いしながら事の経緯を話してくれた。


「えっ、じゃあ、ただ罰ゲームの告白を断っただけで、興味持たれちゃったの?」

「そうなんだよ。それで放課後待ち伏せされて気づけばあんなことに……」


 もうよくわからない、と呟くお兄ちゃん。

 ラノベで恋愛を知り尽くしたお兄ちゃんの思考が追いつかないほど、あの女の人の行動は意味不明だったみたいだ。

 そもそも、あんな美人なギャルが男との経験が全くないっていうのが引っかかる。

 なにか理由(わけ)がありそうな気がする。


「しかも、さっきキスされちゃってさ」

「⁉ に、にぃに……? 今、なんて言ったの……?」


 聞き捨てならないことが聞こえた気がした私は、気づけばお兄ちゃんの胸倉を掴んでいた。


「キス……キスって言ったよね、今! なんで⁉ なんでそんなことになったの⁉」

「は、話すから……! 話すから放してくれ! 苦しい……!」


 お兄ちゃんにそう言われてハッと我に返る。


「あっ……! ご、ごめんね、にぃに、大丈夫⁉」

「ゴホッゴホッ。だ、大丈夫……。いや、それがさ……」


 息を整えながらそう前置きをして、お兄ちゃんが詳細を話してくれた。

 それを聞いた私の心に、巨大な隕石が落ちてきたような感覚がした。

 逆転さよなら満塁ホームランされた気持ち、と言ってもいい。

 ま、負けた……。

 まさか、そこまでの勇気があったなんて……。

 さ、作戦を……作戦を考えなきゃ……。

 お兄ちゃんが取られちゃう……。


「ど、どうした、結愛? 顔色が悪いぞ?」

「大丈夫だよ、にぃに。結愛は、必ず勝ってみせるから」

「はい? ……結愛さん? なにを言ってるのかな?」

「部屋に戻るね」

「えっ? あぁ、うん、わかった」


 戸惑っているお兄ちゃんを置いて、私は自分の部屋に戻った。

 あの女の人に勝つ作戦を考えるために。



結構必死な結愛ちゃんでした。

ちなみに、結愛ちゃんは、こんな妹がいたらいいなという作者の願望により作られた、兄大好きっ子です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 現実はこんな妹はいません
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