夕飯を一緒に食べることになったけど…… (※玲奈視点)
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オレンジジュースを飲み干したところへ、ドアをノックする音がした。
そして聞こえてきたのは、良一のお母さんの声だった。
『りょうちゃん、もうすぐ夕飯なんだけど、徳永さんも一緒に食べてもらう?』
「だそうですけど、どうしま……」
「食べる! 一緒に食べる!」
「わ、わかりましたから、そんなに迫ってこないでください!」
そう言われても、夕飯を一緒に食べられるんだから、仕方ない。
またもや拳一個分くらいの距離まで顔を近づけていると、ドアの開く音が後ろから聞こえてきた。
――ガチャ。
「なに、そんなに大声出して……って、ヤダもうお二人さんったら熱々なんだから♪」
軽いノリで言ってくる良一のお母さん。
これ、またキスしてると勘違いしたやつだよね?
「だから誤解だって……」
良一が否定しようとするも、
「私も、高校時代の時は二人みたいに熱々だったなぁ」
良一のお母さんは自分の世界に入り込んでしまったようだった。
すると、体をわなわなと震わせた良一が、
「だから……話を聞けぇぇぇぇ!」
と叫んだのだった。
◇
「なーんだ、お母さんの勘違いだったんだね! ごめんね、りょうちゃん!」
もはや友達感覚のノリで良一に謝る良一のお母さん。
それを見た良一は、ため息をついた。
よっぽど苦労してるんだろうな。
お母さんとの付き合い方。
「あのさぁ、言おう言おうと思ってたけど、僕ももう17歳なわけだからさ。そろそろ、その接し方やめてくれないかな」
「えぇ? ダメなの?」
私の考えを証明するかのように、そんなやり取りが繰り広げられた。
「自分の母親が高校のノリで話し掛けてくるなんて、普通じゃないでしょ。ねぇ、徳永さん?」
「えっ? あ、あぁ、うん。多数派でないことは確かだね」
急に振られて戸惑いつつも答えた。
すると、良一のお母さんは項垂れてから、
「……わかった。りょうちゃんが20歳になったらやめる」
と言った。
ということはつまり、あと3年は接し方を変えないってことだ。
良一の苦労は当分続きそうだった。
◇
リビングへとやってくると、すでに結愛ちゃんが待っていた。
私達が来たことに気づくと、なぜか私を鋭い目つきで睨み付けてきた。
ん? 私、なにかしたっけ?
「結愛、ごめんね。さっきの、お母さんの勘違いだったみたい」
「あ、そうなんだ! よかった!」
そのやり取りを聞いた限りだと、私と良一がキスしたと聞いて、私を睨み付けたようだ。
やっぱり、結愛ちゃんって、良一のこと……。
でも、結愛ちゃんって、実の妹なんだよね?
それってどうなの?
ところが――
「にぃにはこっちに座って! お客様はにぃにの向かいでお願いします!」
私の考えを裏付けるかのように、私を良一の隣に座らせまいとしてくる。
しかも、私のことをお客様って言った。
そっちがその気なら、こっちだって……!
「え〜? なんで良一の隣じゃダメなのぉ? 結愛ちゃ〜ん」
「ダメなものはダメです! にぃには、私の隣が定位置なので!」
勝ち誇ったように言う結愛ちゃん。
ぐぬぬ……まだ、まだ負けたわけじゃない!
「えぇ? ここは私に譲ってほしいなぁ」
少し大袈裟に言ってみる。
すると、結愛ちゃんがしょんぼりした。
「そうですか……向かい合ってた方が喋りやすいかなって思ったんですけど……」
そう言って上目遣いをしてきた。
そ、そんなことで、私が折れるとでも……。
「やっぱり向かい側でいいよ! ありがとう、結愛ちゃん!」
良一の顔が見られるベストポジションなので良し。
「どういたしまして!」
満面の笑みでそう言ってきた。
内心では「勝った!」と思ってるんだろうなぁ。
今回は勝ちを譲るけど、次はそうはいかないからね!




