上目遣いって反則だよね? (※良一視点)
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オレンジジュースを飲んだところで、ドアがノックされた。
『りょうちゃん、もうすぐ夕飯なんだけど、徳永さんも一緒に食べてもらう?』
「だそうですけど、どうしま……」
「食べる! 一緒に食べる!」
「わ、わかりましたから、そんなに迫ってこないでください!」
またもや拳一個分くらいまで顔を近づけてくる徳永さん。
あっ、この流れはもしや……!
――ガチャ。
「なに、そんなに大声出して……って、ヤダもうお二人さんったら熱々なんだから♪」
うわやっぱり!
「だから誤解だって……」
「私も、高校時代の時は二人みたいに熱々だったなぁ」
勝手に過去を想起する母さんに腹が立ってきた僕は、
「だから……話を聞けぇぇぇぇ!」
と叫んだのだった。
◆
「なーんだ、お母さんの勘違いだったんだね! ごめんね、りょうちゃん!」
高校のノリで謝ってくる母さんにため息を漏らす。
「あのさぁ、言おう言おうと思ってたけど、僕ももう17歳なわけだからさ。そろそろ、その接し方やめてくれないかな」
「えぇ? ダメなの?」
「自分の母親が高校のノリで話し掛けてくるなんて、普通じゃないでしょ。ねぇ、徳永さん?」
「えっ? あ、あぁ、うん。多数派でないことは確かだね」
徳永さんが肯定したことで、母さんが項垂れた。
「……わかった。りょうちゃんが20歳になったらやめる」
――それって、あと3年はこのままってことだよね?
まぁ、でも、やめてくれるのならそれでいいか。
話が一段落ついたところで、リビングへと向かった。
◆
リビングへ行くと、すでに結愛がいた。
僕達がやってきたことに気づくと、結愛はなぜか徳永さんを鋭い目つきで睨み付けた。
「結愛、ごめんね。さっきの、お母さんの勘違いだったみたい」
「あ、そうなんだ! よかった!」
手を合わせて片目を閉じながらかる〜く謝る母さんと、それを聞いてころっと機嫌が良くなる結愛。
ということは……結愛に話したんだな?
だから……って、なにが〝だから〟なのかわからないけど、徳永さんを睨み付けていたのはそういうことか。
……いや、待てよ?
僕と徳永さんがキスしたと聞いて、なんでそんなに不機嫌になるんだ……?
あ、そうか!
オタク地味男な僕に先を越されるのが嫌だったのか!
それしかない。
だから勘違いだと知ったとき、ものすごく嬉しそうにしてたんだろう。
「にぃにはこっちに座って! お客様はにぃにの向かいでお願いします!」
自分の隣の席をぽんぽんして僕に座れと言い、徳永さんをその向かい側の席に座るよう言った。
その判断は有り難い。
徳永さんの隣とか、絶対に落ち着かないポジションだから。
「え〜? なんで良一の隣じゃダメなのぉ? 結愛ちゃ〜ん」
からかうような言い方で訊ねる徳永さん。
「ダメなものはダメです! にぃには、私の隣が定位置なので!」
やけに定位置を強調して言った。
そんなに僕が取られたくないのか……。
召使いとしての僕を。
「えぇ? ここは私に譲ってほしいなぁ」
「そうですか……向かい合ってた方が喋りやすいかなって思ったんですけど……」
しょんぼりした後、上目遣いで言う結愛。
それを見た徳永さんが折れた。
「やっぱり向かい側でいいよ! ありがとう、結愛ちゃん!」
「どういたしまして!」
徳永さんが折れたのを見てころっと表情を明るくする結愛。
徳永さん、やっぱりチョロイン属性だな。
結愛の策略にハマっちゃってる。
というか、可愛い子の上目遣いは破壊力が半端ない。
片倉さんや真辺さんとつるんでる徳永さんですら、結愛の上目遣いに敵わなかったのだから。
ここから導き出せる結論は――
――上目遣いって反則だよね?




