おかしいですよね？ (※良一視点)
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※2020年7月1日
あらすじの注意書きを少し変更しました。ご確認ください。
また、ジャンル別日間ランキングの９位にランクインしていました。読んでくださっている皆様のおかげです。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
母さんの年齢か……。
まぁ、息子の僕から見ても若く見えるから、徳永さんからしたら相当若く見えるだろう。
「ねぇ、その前に良一の好きな人のタイプ……」
「母は、現在、ギリ三十代前半です」
話を戻されそうになったため、徳永さんの言葉に被せた。
すると、案の定、徳永さんは母の年齢に食いついた。
「うそっ、三十代前半⁉ ……えっ、じゃあ、良一って、義理の息子なの?」
よし、これで好きな人のタイプについて聞かれることはないだろう。
「いいえ? 僕も結愛も、ちゃんと母さんが産んだ子どもですよ?」
「じ、じゃあ、良一を１０代で産んだってこと⁉」
「そういうことになりますね」
高校の時に父さんと致してしまったようで、できちゃった婚をしたようだ。
その時に身籠ってた子が僕なわけだけど、母方のじいちゃんやばあちゃんは、僕のことを超弩級に甘やかしてくる。
二人は当時どう思ったのかを聞いたところ、
『最初は〝うちの娘になにしてくれとんのじゃぁ!〟と言ったもんだが、未希子本人が同意のもとでしたと真剣な顔で言うのでな。こっちが折れることにしたんだ』
『私も最初は驚いたんだけれど、あまりにも真剣な顔で訴えてくるもんだから、ぽっきり折れたわ』
そう返ってきた。
そして、幼心に自分のことはどう思ってるのかと訊ねると、
『そんなもの、可愛いに決まっておるだろう! ハッハッハッ』
そう言って僕の頭をワシャワシャと乱暴に撫でるじいちゃん。
『りょうちゃんは初孫だもの。可愛くないわけないでしょう?』
そう言って微笑むばあちゃん。
そんな二人を見て僕も自然と笑ったのを、今でも覚えている。
「っと、こんな感じです」
「う、うぅ、優しいおじいちゃんとおばあちゃんだねぇ……ぐすん」
昔話を終えると、いつの間にか徳永さんが泣いていた。
「な、なんで泣いてるんですか? 昔話をしただけですよ?」
「だって、私と良一の間に女の子ができたとして……」
「は〜い、ストップで〜す」
徳永さんに手のひらを向けて制止する。
「えっ? なんかおかしかった?」
「おかしいところしかなかったですよ? 例え話とはいえ、なんで僕と徳永さんに子どもができるんですか」
「えぇ? おかしいかな? 良一となら子どもできてもいいよ?」
――おかしいですよね?
「さてはうちの両親を手本にしてますね? やめてください。徳永さんには徳永さんの将来があるんですから、ちゃんと夢を叶えてから、そういうのは考えるべきです」
そう言うと、徳永さんが顔を俯かせた。
さすがに言い過ぎたかな……。
でも、人生設計は大事だって父さんが妙な説得力で言ってたし。
「で、結局、なにが言いたかったんですか?」
「えっ? あ、えっと、女の子ができたとして、その子が見知らぬ男と致してて赤ちゃんができたら、私だったらその男土深くに埋めるから、良一のおじいちゃんとおばあちゃんは優しいなって思って……」
「ということはつまり、それを僕にさせようとしてるってことですか?」
「? ……あっ! ち、違うよ⁉ 良一が言ったように例え話、例え話だから! 本気にしないで!」
顔を真っ赤にして必死に取り繕う徳永さん。
もう取り繕えないと思うけど……。
ガッツリ聞いちゃったし。
はぁ……。
「あっ、良一! 今、ため息ついたでしょ!」
「いいえ、してませんよ? それよりも、喉乾きましたね、母が持ってきてくれた飲み物でも飲みましょう」
立ち上がってドアの傍に置かれた飲み物を取りにいく。
飲み物が乗った盆を持ち上げて徳永さんのところへ持っていく。
「粗茶ですが」
そう言いながら徳永さんにオレンジジュースを渡す。
「いやこれ……オレンジジュースだよね?」
「そうですよ? ただ僕が言ってみたかっただけです」
そう言うと、徳永さんは苦笑いをした。
「じゃあ、いただきます」
「どうぞ」
徳永さんが飲んだので、僕もオレンジジュースを一口飲んだ。
