家に上げてもらったんだけど…… (※玲奈視点)
誤字・脱字等の報告は、誤字報告からお願いいたします。
良一のお母さんに促されて家に上がった矢先、私を板挟みにしながら、良一と良一のお母さんによるとんでもない会話が行われた。
「とりあえず、一番片付いてるりょうちゃんの部屋でいいよね?」
「あぁ、うん、そうだね」
と。
私は思わず「えっ?」と声を漏らしながら良一の方へ振り向いた。
あれだけ私を家に連れてくることを避けようとしてたのに、なんで自分の部屋に連れていくのは避けようとしないのかと不思議に思ったから。
もしかして、良一、私のこと……。
「? どうかしましたか?」
と、思ったけど、良一の顔を見て違うと確信した。
なにせ、なにを驚いてるんだろう? 的な顔をしているから。
「やっぱり、なんでもない」
「そうですか?」
不思議に思っている良一をスルーした私は、良一のお母さんに付いていった。
私って、女の子って思われてないのかな?
◇
やってきてしまった、良一の部屋。
中に入ると、めちゃくちゃキレイで、汚れとか無駄なものが一切ない。
あ、でも、本棚にラノベの本が大量に並べられてるのは気になる。
ちょっとした本屋のように感じるくらい。
というか、私もこのくらいキレイな部屋に住んでみたい。
えっ? 私の部屋?
フヒューフヒュフヒュー(←カスカスの口笛)
べ、べつに汚くはないし?
ただ、片付けようとしてないだけで、本気出せばキレイになるし?
「ごゆっくり。今、飲み物を持ってくるからね」
「あっ、お構いなく!」
「いいのよ、飲み物だから」
遠慮したらよくわからない理由付けをされた。
良一のお母さんがいなくなると、良一が座布団を押入れから出して床において、私に座るよう促してきた。
その優しさにまたキュンとする。
なんでそういうことをさらっとできるの?
誰も家に招いたことないんだよね?
そう思っているうちに、良一が正面に腰を下ろした。
そして私の顔を見た途端、良一の顔から血の気が引いた。
今頃になって、私と二人っきりになったことに危機感を覚えたみたいだ。
「すみません、徳永さん。母が言った通り、一番片付いてるのが僕の部屋だったからこの部屋なだけであって、それ以外の意味は全くないので……」
「わ、わかってるよ⁉ だいたい、私、弟の部屋に入ったことあるから、男の子の部屋に抵抗とかないし?」
真剣な顔で全くないって言われると、それはそれで、私のことをどうとも思ってないと言われてるみたいで気持ちが落ち着かない。
「それよりも、私は良一のことが知りたいな!」
気持ちを落ち着かせるためにも、良一のことを色々と教えてもらおう。
当初の目的とはだいぶズレたけど、本人と二人っきりのこの状況なら答えないという選択肢はないはずだから。
そう思って聞いたんだけど、全く返事が返ってこない。
またか。そう思った私は、拳一個分くらいの距離まで顔を近づけて話し掛ける。
「ねぇ、良一。聞いてる? また考え事?」
「───ッ⁉ す、すみません……また考え事をしてました……」
案の定、良一は考え事をしていた。
はぁ、もう、しょうがないなぁ。そう思った矢先、後ろで部屋のドアが開いた音がした。
「あれ? あれれれれれれ? 見ーちゃった、見ーちゃった♪ りょうちゃんもすみに置けないね〜。飲み物、ここに置いとくね。ごゆっくり〜」
「ちょっ、母さん、これは誤解……」
――バタン。
有無を言わさない感じで良一のお母さんがドアを閉めた。
今のって、もしかして……。
「良一? お母さんもしかして、私と良一がキスしたと思った?」
そう訊ねると、良一が首肯した。
やっぱり……。
でも、私はべつに――
「……りょ、良一がしたいなら、き、キス、本当にしてもいいけど……?」
そのくらいの覚悟はできる。
「あ、あの、聞き間違いかもしれないので、もう一度言ってもらってもいいですか?」
「えっ? うっ、まぁ、いいけど……」
もう一度言うのは恥ずかしいけど、こんどははっきりと告げた。
「良一がしたいなら、キス、本当にしてもいいけど?」
すると、良一は頭を抱え始めた。
えっ、なにかいけないことでも?




