えっ、僕? (※良一視点)
普通に恋愛ものです。
作者自身、年齢=彼女いない歴なので至らない点や「こんな恋愛あるか!」と思うところが多々あるかと思いますが、童貞の妄想だと思って生温かい目でお読みいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
ある日の放課後、僕こと吉武良一は、忘れ物を取りに教室に戻った。
すると、こんな話し声が聞こえてきた。
「えぇ? あんなのに告白すんの? 私が?」
「いーじゃん、いーじゃん。罰ゲームなんだからさ」
「それでオーケーされたらどうすんの? 付き合わないといけないの?」
「うーん、そうだなぁ……取り敢えず、一週間付き合ってみなよ」
「それで嫌だったら別れればいいんだしさ」
「う、うん、わかった」
声から察するに、うちのクラスの三大美人ギャルの徳永玲奈さん、片倉一美さん、真辺乃梨子さんだろう。
そして、話の流れから察するに、徳永さんがなにかの罰ゲームで誰かに告白をしなければならないらしい。
こんななかに取りに行くのもなんだし、しばらくどこかで時間でも潰そう。
それにしても、罰ゲームとはいえ誰かに告白しないといけないなんて、御愁傷様としか言えない。
まぁ、される側はラッキーとしか言えないけど。
告白を受けたら、最低でも一週間は美人な徳永さんと付き合うことができるんだから。
◆
翌日、教室にやってきて席に着いたところへ、寄ってくる人影が目に入ってきた。
そちらへ顔を向けると、そこには、なぜか徳永さんがいた。
ま、まさか……。
「ねぇ、オタク。ちょっと面、貸してくんない?」
「わ、わかりました」
呼び出したってことは、つまり、そういうこと……だよなぁ。
ということは、徳永さんがあのとき言ってたあんなのって、僕のことか。
まぁ、自他共に認めるオタクだから当然の反応なんだけど。
されるがままに徳永さんに付いていく。
そして、屋上へとやってきた。
向かい合う僕と徳永さん。
徳永さんは、深呼吸までしてからこう言った。
「私と付き合って」
と。
たった一言のために、深呼吸までしたのか。
僕が相手なんだから、もっと気軽でいいのに。
昨日は徳永さんと付き合える人はラッキーとか思ってたけど、さすがに僕なんかと一週間付き合うのは徳永さんが可哀想だ。
ここは、こちらが汚名を被ってでも丁寧にお断りしないとな。
「僕なんかに告白していただいて、ありがとうございました。でも、罰ゲームなんですよね?」
「えっ、なんでそれを……」
「昨日、放課後に教室で話してるのを聞いてたので。ですから、何事もなかったことにして、もう教室に戻りましょう。僕なんかに恋人なんかできるわけがないんです。知っての通りオタクで地味な男ですし、一生独り身なのは覚悟してます。なので、告白の疑似体験をさせていただいてありがとうございました。では、僕はもう戻りますね」
「えっ、ちょっ……!」
一礼して僕は屋上を後にした。
◆
教室に戻り席に着くと、唯一僕と話が合う春谷吉之が話し掛けてきた。
「良一、大丈夫だったか?」
「大丈夫、大丈夫。ただパシりを頼まれただけだから」
周りの人達に聞こえるよう、少し大きめの声で言う。
「……それは大丈夫って言うのか?」
「暴力振るわれるよりは確実にマシだよ」
「まぁ、それもそうか」
そう言って春谷は自分の席に戻っていった。
僕は読もうと思っていたラノベを取り出して読み始める。
まぁ、罰ゲームとはいえ、僕なんかに告白したなんて噂が広まったら、徳永さん学校に来づらくなっちゃうからなぁ。
僕? 僕はすでに〝地味なオタク〟として認識されているし、からかわれることなんてざらだから、メンタルの強さだけは自信がある。
なので、僕はどんな噂を流されようと平気だ。
けど、徳永さんにとっては耐え難いはずだ。
それはなんとしても避けなければと思って、パシりを頼まれたということにした。
パシりなら「あぁ、なんだ、そうなのか」と納得してくれるはずだから。
そうこうしているうちに、教室に徳永さんが戻ってきた。
その顔はなぜか浮かない顔をしている。
が、もう僕には関係のないことなのですぐに読書を再開した。