3章 告白
「お待たせ」
「浅田くん!おはよ!」
僕の声に元気のいい返事をくれたのは今年同じクラスになった女の子の葉山夏美だ。昨日の亮兄への相談の帰りにちょうどメッセージが来ていたのだが、それがちょうどデートの誘いだったので乗っかることにした。
「今日はわざわざありがとね。」
「いや、俺も一緒にどこか行きたいと思ってたから大丈夫だよ。」
「そ、そうなの?えへへ。」
「じゃあ行こっか。」
亮兄に言われるがままデートに行ってみることになったが、それは意外と充実したものであり悪くはなかった。それに葉山夏美は気さくでとても話しやすかった。彼女いわく僕にメッセージを送ったのはダメ元だったらしい。彼女の友人に報告した時はとても驚かれたと言っていた。どうやら僕は学校でデートの誘いに乗らない男として認知されていたらしい。亮兄にはモテると言われたが、それが本当だと知りとても嬉しかった。その日は1日中デートを満喫し、その帰り道に僕は彼女に告白された。
「浅田くん!好きです、付き合ってください!」
僕は少し罪悪感を感じていた。それは彼女の僕に対する好意が本気だと今日1日で分かったからだ。たしかに、彼女といる時間はとても楽しかった。こんな事は久しぶりだった。しかし、その感情は好きというものではないと思ったからだ。僕は人と付き合うことで自分を変えようとしている。僕が求めているのは恋人ではなく自分を変化させてくれる人であり、それは別に好きな人ではなくてもいいという事だ。ここで彼女と付き合うということは彼女の気持ちを踏みにじり利用するという事になる。いくら物事に無関心な僕でもそんな事をするのは気が引ける。なら僕はどうするか。考えて出てきた答えは、彼女に目的を伝える事だけだった。
「葉山さん」
「はい」
「もしも僕が君を利用する為だけに付き合おうとしてたら、君の気持ちは変わる?」
「それってどういうこと?」
「僕が自分の変化の為に好きでもない人と付き合おうとしてる奴だって分かったら、葉山さんはどうする?」
正直、今の僕は葉山さんと付き合う気は無い。それは僕が彼女にとって迷惑をかけるだけの存在になると思ったからだ。こんな事を言ったのも、面倒くさいやつだと思ってこの告白はなかった事になると思ったからだ。しかし、葉山さんの返答は予想と反するものだった。
「振り向いてもらえるように全力でがんばる!」
「浅田くんが私のことでいっぱいになって、私も浅田くんのことでいっぱいになれるようにがんばる!」
彼女の目は真っ直ぐこちらを見つめ、両頬は赤く染まっていた。後ろの夕焼けに照らされるその姿は、僕の目に美しく映った。
「そっか。」
僕は意を決した。
「葉山さん、付き合おう」
「はい」
その日、僕らは恋人同士になった。