2章 新しい風
「あ!祐也!」
「祐也!同じクラスだね!」
掲示されてたクラスに向かうと陽太と美咲がもう教室にいた。
「そうだな。ところで2人とも今日はなんで早かったんだ?」
僕はいつも3人で歩くはずの道を今日は1人で歩いてきた。事前に2人から今日は早く行くと聞いていたがやはり理由が気になった。
「実は...」
美咲が顔を赤らめながら少し下を向く。
「俺たち付き合うことになったんだ。」
陽太が僕の方を真っ直ぐ見て伝える。
「そうか、よかった。」
僕はあまり驚く素振りを見せなかった。
なぜなら2年の時から2人が両想いなのを知っていたからだ。むしろ2人がくっついてくれて安心している。
最初相談された時は今の3人でいる関係が壊れてしまうのではないかと心配になっていたが、話してく内にこの2人を応援したいと思えるようになっていった。
「祐也ごめんな。1回でいいから恋人っぽいことしようと思って。」
陽太が申し訳なさそうに説明した。
別に僕は怒ってなどいなかった。付き合いたかったという事は一緒に登校したり下校したり、手を繋いだりキスをしたり、色んな事をその人としたかったということである。それが出来るようになったのなら誰だってすぐにしたいものだ。それが昨日だった、ただそれだけのことに過ぎない。
「いや別に大丈夫、むしろ2人がそんな関係になったのが嬉しいくらいだよ。」
僕は笑顔で返す。
「えへへ...ありがと。」
美咲が照れながら返す。
チャイムがなり僕達は席に着いた。
2人はああやって変わっていった。それなのに僕は何も変わらないでいる。別に今が嫌いなわけではない。ただ、変わってみたいという気持ちは嘘ではいない。
放課後、亮兄にそのような事を相談してみた。
「なんだそれ」
最初亮兄は僕を馬鹿にするように言っていたが、次第にしっかりと話を聞いてくれた。
すると、
「恋愛してみろ。」
亮兄はドヤ顔で言った。
「は?恋愛?」
僕が理解に困っていると亮兄は僕に向かって言った。
「いいか祐也、恋愛っていうのは人の気持ちを考えるものなんだ。普段物事に無関心なお前が人の気持ちを考えるようになるってのは変わろうとするのと同じなんじゃないか?」
確かにその通りである。しかし、
「でも僕好きな人いないよ?なのに付き合うの?おかしくない?」
元々色んな事に興味がなくてそれが人に対してもだった僕に好きな人などいる訳がない。
「それは誰でもいいんだよ、それにお前案外モテるだろ?相手なんてたくさんいるし。」
最後の方で亮兄のチャラさが垣間見えたような気がしたが亮兄からモテるなんて言われるのは悪い気がしなかった。
「まあ探してみるよ。」
僕は今までアプローチされた女子の中から1番最近の子を選んでメッセージを送り、後日デートすることになった。