1話 最初の印象
入学説明会の時に配られた紙を見て俺は自分のクラスに入り、黒板に貼られている座席表を見て自分の名前が書いてあった席に座る。
「あれが噂の暴力を奮ったっていう日暮匠か?」
「おいおいマジかよ!俺の近くじゃねえかよ!」
(暴力を奮った?そんなこと─)
そんなことは無いと思ったのだが、一つ思い当たる節があった。
俺、日暮匠は今日の朝少しばかり事件を起こしてしまった。とは言っても自己防衛に過ぎないことだ。
「じゃあ、お兄ちゃん起きるの遅かったから私先に行ってくるね!」
「行ってらっしゃい。俺も急いで行くから。」
「いいよ。別に急がなくても。時間もまだあるし。」
「まあ、そうだけどさ。気をつけろよ。」
普通は妹と一緒に登校しようとするシスコンな兄はいないだろう。だが、ここら辺は治安が悪かった。ナンパをしている奴らをよく見かける。友達をナンパから助けたこともある。
しかも、妹はスタイルも良く、超絶美少女だった。兄である俺も認めるほどの。さらに言えば妹はそれを自覚していない。兄である俺を無意識のうちに誘惑しているほどだ。風呂上がりはいつも下着姿で部屋をうろちょろしている。そんな妹が心配でいつも登下校をしていた。
しかし、今日は油断をしていた。妹と登校してる時にナンパしそうなやつはいなかったし、今日くらいは大丈夫だろうと思ってしまった、俺の詰めが甘かった。
俺は準備を整え自分の目を髪で隠し、メガネをかけ妹を追った。
10分ほど早歩きをしていると俺の視界にナンパをしている3人組が映った。ナンパをされてる奴は奇しくも俺の妹だった。それに気づいた俺は一直線にそいつらに向かって走った。
「そこのかわい子ちゃん。俺と一緒に遊ばねぇか?」
「嫌です!やめてください!」
「そう言わずによぉ!」
ガシッとその男は妹の腕を掴んだ。
「穢れた手で俺の妹に触れるんじゃねぇええええ!」
「な、なんだ!」
その男は気づいたが時すでに遅し。思い切り俺はその掴んでる腕を殴った。
「いってぇ!」
その叫びと同時に妹の腕を離したので俺は妹を抱いて逃げた。
たったこれだけの話である。別に3人組を一人残らず倒した訳でもない。妹の腕を掴んだ奴の腕を殴っただけだ。正当防衛である。
何故ここまで俺が悪者扱いされているのか。
考えられる理由は一つ。その3人組が俺と同じ高校であった。そして、高校で噂を流した。しかもかなり誇張して。それしか考えられない。
その噂が流れているためか、誰一人として話そうとするやつはいない。
これはこれは。どうやら俺はボッチ街道を歩むことになりそうだった。
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