表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/135

94 未来




ライムはぼんやりと、次第にはっきりと次に降り立つ場所をイメージする。


アレスさんと決闘した場所。

巨大な神殿のような建築物の内部にある、煌びやかな玉座。

その席にはラベンダー色の瞳に、金髪の威厳ある人物がいるはずだ。


そう、次に『瞬間移動』するのはピアノの父である国王ルドルフの元である。




「久しいな。ライムよ」


国王は涼しい顔をして、背の高い玉座に膝をついていた。

国の至る所で黒い雨が降り、ピアノの安否が不明だというのにこの余裕。

さらに私が突然現れたというのに、全く動じないものだから驚いた。


『お久しぶりです。国王様。驚かれないのですね』


片膝をついて重々しく挨拶をする。

ライムを見下す彼から以前のようはフランクさは消えていた。


「君がくると、わかっていた」

『…………?わかっていた、とは?』


ずいぶんと、不自然な発言だ。

無礼だと思ったが気にしていられない。

引っ掛かりを覚えたライムが顔を傾けると、国王はゆっくりと目を細めた。


「それは君がこれから知るだろうさ』

『…………よく、わかりませんが、国王様。街が……みんなが大変なんです!黒き雨が広範囲に渡り、今にも崩壊が始まっていますっ』


国王の意図が読めないと感じたライムは、そんなことよりまず現状と真実を伝えなければならないと思い、早口で説明しようとする。


が、それもかざした国王の右手によって遮られる。

そして、国王の口からは信じられない言葉が聞こえた。



「知っていたさ」



『え?』



(今、確かに知っていたと……?)


疑問が頭の中に過った時、再びカチリという合図がある。


ーーーー

国王ルドルフは『未来予知』のアビリティを取得しています。

ただし、『未来予知』の条件、『何人たりとも知ってはいけない』を満たせないため無効化されています。

ーーーー



「どうだい?視えたかい?」


国王の余裕は、現に全てを知っていたからだったのだ!

目を丸くしたライムは思わず顔を上がる。


『…………な、未来予知……?話したら、無効化……?!』


「ああ、でも、以前から見ていたからね。その内容は事実が変わらない限り覚えているよ」


全てを知りうる『全知王色』に加えて、未来を読む『未来予知』。

ということはーー、


『全てを……黒い雨が降ることも、神が不在であることも知っていたというのですか?』


「ああ、そういうことになる。だが、わかるのは目の前人物の情報と、ぼんやりとした未来だけだ。全てを知っていたら、ピアノも助けられただろうさ」


彼は悲しそうに首を振る。

その姿は父が娘を思う姿そのものだった。


『ピアノは私が、必ず助けます。ーーたとえ未来が歪んでいても』


「君なら、そう言うと思っていたよ」



一呼吸おいてからルドルフは柔らかく微笑むと、


「ピアノは元気かい?」


と尋ねた。

あまりに力のない声だった。


『別の世界の中で、確かに生きています』


「それは、良かった……」


目元を片手で覆い、何かを考え込むように沈黙が訪れる。

以前の国王は未来に何を見たのだろう。

私が起こした行動が、少しでも良い未来に繋がっていれば良いのだけれど。


『今はまだ眠っていますが、現在の状況下ではこのままの方がいいかと』


「そうか。私が引き取ろうとかとも思ったが、、その方が安心だな」


なんとなく、彼がピアノに会いたがっているのだとわかったがそれは辞めておいた。

彼もきっと、一度人質に取られたピアノを今解放するつもりもないだろう。





「それで、君がここへ来たのは奴が動いたからなのだろう?」


顔を上げ、伏せていた瞳を戻し本題に入る。

未来を見ているのなら、話は早い。


『ラクリマが子どもたちを礎に魔力を集め、さらに創生の魔術書を揃えて新たな神になろうとしています』


「ああ、私も多くの民が黒き雨に呑まれる未来を見たさ……。あまりにも無惨だ。悔しいが私は国を守ることしかできない」


『…………』


ミザリでの惨状は目に焼き付いている。

他の地でこんな悲劇が繰り返されないように私は命を賭すつもりだーー。


「君の助けになるなら、私の出来うる限りをしよう」


そう言って立ち上がると、奥の分厚い扉に手をかけた。

装飾品だと思っていた壁は扉の一部だったようだ。

彼によって、ゆっくりと扉が開かれるーー。




ピアノは幼少期、国王が『未来予知』を得るために寿命を対価として胸に魔法陣を埋め込みましたが、それは老人の嘘でした。


『未来予知』はすでに国王のアビリティであり、それをピアノは知りません。


知ることで『未来予知』のアビリティが無効化になってしまうことも理由ですが、悲惨な未来を彼女に知られたくなかった思いが大きかったのでしょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ