表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/135

8 イメージ化魔法




「なにがあった?!」


「私の……魔法陣が……」


 ピアノが自分からの身体を触って確かめている。

 薄紫色の目を見開き、怯えた表情をしていた。


 叫びを聞いてピアノの腕や太ももをよく見てみると、はっきりとした濃い紫色で描かれていたはず魔法陣は既に消えかかっていた。

 もしかして……黒い雨のせい?


「弱体化魔法か何かだろうね」


 あのヒリヒリする感じは、やっぱり魔法がかかっていたんだ。

 シオンの『牢獄監禁』はどうやら機能しているので、魔法陣に対して効いているのかな……。

 となると……?

 一瞬頭をよぎった考えにライムはぶるっと身体を震わせる。


 これは……試験どころではないんじゃないかな……。

 寒気がする。


 ジュエルは身体を拭くための布切れを鞄から出してピアノに渡していた。


「ありがと……ジュエル」


「ピノさん。ライムさんの言う通りさっきの黒い雨が原因、だね。濡れたところだけ魔法陣が消えてる」


「そう……ね。これはほんとに予想外……。ああ!!もう!! これがないと……!!」


 ピアノはとてもショックだったようだ。

 感情を抑えきれない様子で、手で顔を覆っている。

 余程大事な魔法陣だったのだろう。


「この黒い液体……視てみる。『魔法鑑定(マジックアプライザル)』」


 ジュエルは手を添えて魔力を込め、魔法を唱えると黒い液体が薄っすらと光った。


「これ、魔法陣を打ち消す魔法がかかってる……」


「やっぱり!! いったいどうして突然? あんな魔法初めて見たわ」


「僕にもわからない。今は情報が足りないし……。にしても、これは完全に僕の魔法の上位互換だよ。あんなに広範囲に魔法が展開してあるなんて」


「シオンもジュエルもいてくれて助かったわ。魔法陣は残念だったけど」


「魔法陣は……特に素肌に直接描くのは、難易度が高いとされているからね。」


 ジュエルが顔一つ変えることなく、淡々と話している。

 ピアノの方は諦めきれないような顔をして、「うん。そうなの……」と自分の腕を見つめていた。


 そんなピアノを見て、ライムは思ったことがあった。

 身体に描くのは難しいことなのだろうか?

 戻すくらいなら、できるんじゃないだろうか、と。


「あのね、ピノ。消えた分くらいは治せるかもしれない……。やってみてもいい?」


 魔法を使わないという選択肢は頭からなくなっていた。

 たぶん、今は一大事だ。

 みんなを守ることを考えよう。


「えっ、ライムちゃん? 本当に?! どうやって?!」


「……できるの?」


 ピアノとジュエルは驚いた顔で、ライムを見ている。

 ライムはそっと手をとって自分の右手を、ピアノの腕に添えた。


 魔法陣の修復はやったことないけど、なんとなくできるような気がする。

 ……根拠はないけどね。


 ライムは、ピアノの腕に自分の魔力を流し込み、魔法陣が描いてあったところに意識を集中させる。


「治すために必要なんだけど、答え難かったらごめんね。ピノの身体にあった魔法陣はどんな魔法が描いてあったかな?」


 ライムはグループ試験の前の作戦会議の時に、ピアノがあまり自分のことを話したがらないのを思い出して、控えめにピアノに聞いた。

 イメージする時には必要な情報である。


 誰にでも秘密はあるよね。

 私もそうだし。

 絶対話せないけど……。


「治すため、だもんね。んと、じゃあ……」


 ピアノは自分で納得させたように呟くと、そっと私の耳元まで顔を寄せた。


 わっ……近っ。


「………………」


「……うん、うん。あぁこれは……みんなに話せないわね」


 ライムもこそっと小さい声でピアノに返事をする。

 シオンとジュエルには女子トークが聞こえていないので、不思議そうに2人を見ているが、介入する気はないようだ。


「じゃあ、いくよ、ピノ。『イメージ化(ファンタサイズ)魔法(マジック)』」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ