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78 受け止めてくれるかな?




 魔法の詳細は誰にも打ち明けたことがない。

『創生の魔術書』は口外禁止とされているからだ。


 誰かに話そうものなら、その魔法によって深淵を見るだろうと一冊目を読んだ時に理解した。


 しかし、今後ミザリで黒い雨の原因を突き止め、問題を解決する上で2人にはある程度話しておかなければならないだろうと思った。


 全てを見通す力をお持ちのルドルフ陛下にはすでに周知されているだろうけれど。


 そして、それを話すと言うことは伝えた本人にも同じ絶望を与えてしまうかもしれないと言う懸念もある。


 もしかしたら、情報欲しさにミザリの化学者が狙ってくるかもしれない。

 もしかしたら、その人の人生を混沌に導いてしまうかもしれない。


 じっくりと言葉を選んで話すことを頭で思い浮かべる。しかし口から出たのは思いもよらない言葉だった。


『アレスさん、リエード先生。あの、私ってどう思いますか?』

(そう、ちゃんと私の魔法を話して……ってあ、あれ?)


 どこから話していいのかと久しぶりに挙動不審になってしまったライムは、オドオドと小さく足踏みをする。

 なんとも変な質問が口から出てきたものだ。

(わぁわぁわぁーー!)


「どう、ですか。フヒヒ、何を今更。もちろんライム殿の護衛ですからとてもお慕いしていますよ?」

『?!?!?!!!』

「おい、いじめるのも大概にしろ。コイツが聞いているのはそうじゃねぇダロ。客観的に見ての評価と俺たちからどう映ってるかってことをだナ……」


 ライムは顔を真っ赤にすると2人に背中を向けて、ぱたぱたと手で熱さを冷やそうとする。


「ほら!せっかく話してくれようとしたのにヨオ!」


 対してアレスは優雅な仕草で、丁寧に返答していたリエードを挑発する。


「おや、リエード先生はライム殿と歩む道は同じだと仰っていましたが」

「おまっ、聞いていたのカ……!」

「フヒヒヒヒ!まぁ、リエード先生がライム殿をどう想っていらっしゃるかはわかりませんが……?ライム殿、安心して話してくださって大丈夫ですよ」


 リエードの焦りを置いてけぼりすると、アレスはすっと目を光らせた。普段は見せないようなニヤニヤと笑っていない真面目な顔だ。

 金色の瞳が薄い輝きを見せる。


 私はそっとリエード先生に近づくと耳元でこそこそと質問する。


「あの、リエード先生?アレスさんに何かしたんですか?」

「あ、あぁ……。アレス先生は黒魔法対策本部も一任されていたんだガ、俺が召集を無視していてな……。余程根に持っていたカ?」

「あー、なるほどです」


 そういえばそんなこと前に言ってたっけなと回想が頭をよぎり、アレスさんからリエード先生へ鋭い目がいくのを見てライムはコホンとわざとらしく咳払いをする。


『えと、あまり驚かないで欲しいのですが……』


 2人は無言でライムの姿を見守る。

 ピリッと空気感が変わった気がした。

 私は息を静かに吸ってから、両手の手袋をするりと外すと目の前にかざす。

 もう黒く灰になりかけた両手だったモノ。

 感覚はあるが、見た目がなんともおぞましい。


 驚いてもよさそうだが、さすが教員である2人は目を細めるだけで口を閉ざしている。


『私は黒魔法を使えます。この両手はその証です』


 一呼吸置いてから、話を続ける。


『創生の魔術書も3冊読み終えています。『世界の創造』『黒き魔法』『創造主』の特殊アビリティにも目覚めたみたいです』


 ここでは敢えて絶望付与については触れない。

 ……いや、触れられなかった。

 話すことも念頭に入れておいたのだが、魔術書の効力なのか話すことができなかった。

(絶望については他言できないということね)


『魔法陣で寿命が危ぶまれるピアノは私が作り上げた別の世界で眠っています。ミザリは特別な黒魔法を介して私のことを狙っているみたいでーー』


「おっ、おいおい!ちょっ、ちょっと待ってくれ!世界の創生?創造主?どういうことダ?!」


 はっと我に帰ったように慌てて話を静止するリエード。

 その表情は驚きに満ちている。


「可笑しいとは思っていたが、も、もし本当だとしたら、いや、疑いようはねぇガ……俺の次元を超えている。いや、むしろ世界のーー」

「リエード先生」


 アレスはリエードの言いかけた言葉を遮り、


「まずは、話を聞きましょう」

「…………あぁ、悪かった。続けてくれ」




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