75 恋
はい?
今なんて?
一緒に寝ましょうと聞こえた気がするけれど、気のせいでしょうか?
『え、ええええっと……アレスさん?』
……アレスさんと一緒に?!
そ、そそそそれはど、どどどうなのかしら?!
「おいっっっふざけるナなヨ!こっちは原因が分からなくてイライラしてるんダ。黙って床でも寝てろ」
「フヒヒ……冗談です」
で、出たー!
アレスさんの本気なのかそうでないのかよくわからない冗談!
一瞬でもアレスさんの胸板を想像してしまった自分が恥ずかしい……。
「おや、2人とも顔が真っ赤ですが大丈夫ですか?」
「あんたのせいだよ!」
『アレスさんのせいです!』
綺麗にハマってしまった。
結局2人は入り口の側とその反対側に座るようにして眠ることになった。
夜は宿のご飯を食べて、身体を流し、部屋に戻る。
どこも『マキア』により設備が整っているから驚いた。『マキア』を中心に魔力が隅々まで行き渡っている感じだ。
「本当になんなんダ?最近どうもこいつといると調子が悪イ……」
リエード先生はぶつぶつ言いながら、荷物の整理をしている。
それ横目に入り口にスラリと立っているアレスさんは答える。
「それは……恋、ではないのですか?フヒヒ……」
「おい!!それ以上俺をおちょくるのはヤメロ!」
ギラリと強く睨むリエード。
アレスは特に気にする様子もなく、頬を歪ませて薄く笑う。
そういえば、『誘惑魔法』の効果が曖昧だったわね。ごめんなさい、リエード先生。
ーーー
『誘惑魔法』……相手に強制的に恋愛感情を植え付ける魔法です。強制力は低いものの解除は不可能であり、一定期間効果が持続します。
ーーー
『あれ?』
「どうしました、ライム殿?」
『あー、あーー。アレスさんの推測、当たっているかもしれないです』
「推測?」
こしょこしょとアレスさんだけに聞こえる声で伝える。一瞬アレスさんの顔が強張ったように見えたけど、すぐニヤニヤとした顔に戻った。
「それは……リエード先生なら大丈夫でしょう」
「おい!!なんなんダ大丈夫って?!俺抜きで勝手に話を進めるナ!」
申し訳ないけど、この話はしばらく黙っていた方が良さそうだわ。
====
夜。
アレスさんは夜風にあたりに行ったきり戻ってこない。
リエード先生は入り口で座っていびきをかいているようだ。
私は……眠れない。
怖くて眠れない。
また、あの悪夢が来るかと思うと……。
『少し……様子を見に行ってもいいわよね』
化学魔法の余波でおかしくなってしまったという店主の娘さん。
アレスさんには止められていたけれど、助けられる命を放っておくことはできない。
『感知魔法』でその子の場所を特定。
なるべく気配を消してそっと、部屋に入る。
その子は部屋のベットで寝ていた。
ん……様子が変だ。
手足は縛られ、口は塞がれ、身体の所々に自傷の痕がある。
『ひどい……』
まるであの頃の私のようだ。
すぐに……治してあげるからね、と優しく身体に触れる。
その時ビリビリとした感覚が私の腕に走った!
『なっ……!!』
今の……感覚は……。
『叡智魔法』はこの子のことを……知ってる?
カチリ。
ーーー
化学魔法の影響により魔力が膨張。本来身体を巡るはずの魔力が肥大することによって、身体が耐えられず人格崩壊と精神疾患、魔力暴走を起こしています。
尚、魔力が高いほど、その影響を受けやすいようです。
ーーー
『このビリビリとした感覚は……?』
ーーー
膨張した魔力によるものと思われます。
ーーー
『じゃあ、この魔力を吸いとってあげればいいのね……』
そっと顔に触れてこの子の魔力の巡りを感じる。
そして、私の中にーーー。
その時だった。
その子はむくりと起き上がり、鎖に繋がれたまま目を見開いた!
『イヒッ!!!あははハははハハ!!!見ッけタ!見つケタ!!』
『?!?!』
『神の子見つケタよぉおオおお!!!』




