表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/135

61 邂逅





 赤い閃光が一瞬。

 ほとばしったかと思ったら、急に地面がまるで割れたように大きく揺れた。


「ひゃっ!」


 バランスを崩しかけたところをシオンの手が引っ張ってその腕でライムを支える。


 揺れは収まらず、更には辺りに黒い瘴気がまとわりつき始める。


「な、なんだよこれ……!!くそっ!」


 異変があった直後、


 ーーバキバキバキッ


 廊下に陳列していた魔獣の石像は音を立てて、なんと動き始めたのだ。

 魔獣の石化は解け始め、獰猛な身体が露わになる。


「学園で何かあったんだ……!!」

「ジュエルも早く!!外へ逃げるぞ!!崩壊する可能性がある」


 シオンはライムを抱えながら、一歩離れたジュエルに叫ぶ。


「うわ、わ、シオン、私は自分でなんとかできるから……」




 ーーヤット見ツケターー




「?」


 声が、聞こえた。




 ーー守られていたのに、自ら外へ出ようとするなんて、馬鹿な人ーー




「……?」




 ーートードリッヒもルドルフも報われないわねーー




「誰っ?!」


「ライム……?ぼうっとしてどうした? 走らないなら、担いで行っちまうぞ!」

「ふ、2人ともー!急いでよ!!魔法使っちゃうよ?!移動速度強化』っ!」


 ジュエルが3人にブースト魔法をかける。もたもたしている私に焦っているようだ。


 壁は崩壊し、地面の揺れはさらに大きくなっていく。

 まるで誰かが足踏みをしているかのように、ドスンドスンとーー。


「2人ともごめん……あの……本当にごめん、、、やり残したことがあるみたい……」


 何故唐突にそんなことを思ったのか、自分でもわからない。

 ただ、行かなきゃいけない気がした。


 確実にーーいる。

 会わなきゃいけない人がいる。


「はぁ!?そんなの終わってからにしろよ。お前を置いていくわけないだろ!!」

「そうだよ……!ライムさんも一緒に……」


 時間がなかった。

 いつだったかと同じようにシオンの腕から離れようとするが、もちろん離してくれないのはわかってる。


 だから私はあることを閃いて、シオンの腕の中から自分の手を引っ張り出すと、


「確かめたいことが……あるの!!ごめんね、2人とも。また、あとで……『魔力操作』」


「おいっ!!」


 側にあった今にも動き出しそうな魔獣の石像に自分の魔力を流し込み、もともとあった誰かの魔力を上書きする。


 シオンは目を見開き、急いで私を抱えたままエントランスホールから外へ出ようとする。


 けど、もう遅い。


 ライムは魔力を込めながら思う。

 なんで気づかなかったんだろう。


 この埋め込まれた魔力は、トードリッヒさんのものだ。

 確かこの石像は有事の際に学園を守る番人だったわね。

 それが動き始めたってことは……。


 色々な疑問が脳裏を掠めたけれど、それどころではない。すぐに魔獣に『命令』をする。


 この2人を安全な場所まで……!!

 そして学園のみんなを守ってね!!


 壊れるギリギリまでの目一杯の魔力を込めて、魔獣を送り出す。


 魔獣ーー石化が解けたガルガラのその身体は、圧縮されたものが解き放たれたように大きく膨らみ、巨大な牙が口から覗かせた。


 ガルガラは鋭利な脚にぐっと力を込めると、勢いよく跳び体当たりでシオンとライムの間を引き裂くと、そのまま2人に向かってその大きな口を開けた。


 シオンとジュエルは……ガルガラの口に運ばれた。食べられたわけではない。

 捕まっているのだ。


 そのままその一匹は身体を犠牲にして学園の窓を突き破り、外へと駆けていった。


 一瞬の出来事になす術もなく、連れ去られたシオンとジュエル。


「ライムーー!!!!」


 小さくなっていく悲鳴は、恐怖だったか絶望だったかーーそれとも、もう会えないかもしれない友への叫びだったか……。


「シオン……ジュエル……どうか安全な場所に……」


 2人を見送ったライムは、すぐに『身体強化魔法』と『防御魔法』を自身にかけて、旧魔法化学室に向かった。


 急がなきゃ……。

 学園に何が起こっているかはわからないけれど、崩壊が始まってるーー。


『空間強化魔法』


『現状回復魔法』


 走りながら崩壊を食い止める。


 そして、心当たりがある例の部屋の前に立ち止まった。

 以前と同じように古くかび臭い扉。

 ライムはドアノブに手をかける。


 この前はアレスさんがいたけれど、今日は1人だ。

 アレスさんは今どこにいるのだろう。

 ピアノのところに、いるのだろうか。

 ……無事、だろうか。


 呼吸を整え、目を見開きながら扉をゆっくりと開けると、





 部屋には誰もいなかった。




 ただ、中央に本が浮かんでいた。




 古くて分厚い本はライムが近づくと、ドロっと溶けて形を変えていった。手、足、胴体、頭ーー。


 次第に形が出来上がってくる。


 黒に包まれた人……。

 女の人だ。

 灰色の長い髪、深い青の瞳。

 その人はフードを脱いだ。


 目が合う。彼女はじっとりと笑った。


 どこかで見覚えがある。

 この髪と瞳の色は忘れる筈がない……。





「……あなたは!!!!」





「待っていたわよ、ライムちゃん。初めまして。……アリーゼル・ライラ。私の名前。ご存知かしら?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ