表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/135

60 告白




「ライムさん!!探してたんだ」


 ジュエルがタタタッと近寄ってきて、ライムに声をかける。


 教務室の前の本棚があるフリースペースで談話していた2人は、どうやら私を探していたらしい。


「悪いが……私は戻ル」


 後ろにいたリエード先生は頭をかきながら言うと、ライムは「ありがとうございましたっ!」とお礼を言った。


 そのまま2人に向かい合って、


「ジュエルとシオンじゃない、どうしたの?教務室なんかまで来て」

「ライムこそ、どうしたんだ?」


 シオンが去っていったリエード先生を気にしながらこっそり近づいて来て、耳元でこそこそと話す。


「リエード先生となんかあったのか?」

「うん、授業の内容を聞いて……いえ、ちょっと先生の力が必要なことがあって」


 リエード先生の後ろ姿をちらりと見てから、シオンには嘘が通じないことを思い出して慌てて言い直す。


「そうか……。必要なことがあったら俺らも頼れよ。現にピアノ様からもご命令があったんだからな」

「ご命令?」

「なんでも、この学園の不思議を紐解いて欲しいんだってさ」


 ジュエルが私より少し上から真面目な様子で答えた。ピアノからってなんだろう……?


「あれ、これって言っていいんだっけ?」


 ジュエルが一歩後ろのシオンの方を見て慌てて確認している。


「あーー、まぁライムにはどうせバレそうな気がするし、言うなとは仰ってないからな」

「なになに?2人ともして」


 腰に両手を当ててじーっと2人の方を見つめるライム。


「えとね、この前ピノさんとライムさんで学園探索に行ったでしょ?その後から、ライムの様子がおかしいんだってピノさんが心配してたんだ」

「うそっ」

「ほんと」


 うわ、申し訳ないな……。

 この前は悪夢でだいぶうなされていたらしい。それで心配かけちゃったのかなぁ……。


「それで、ライムさんがそうなった原因は学園にあるとかって、3人で探してたんだけど……」

「ピアノ様は途中から用があるっていうんで抜けて……」

「そうだったんだ……、心配かけてごめんなさい」


 ……これからはもっと心配をかけることになるだろう。

 自主的に強制退学して、ミザリであれこれするんだもの。


 一瞬だけ、私のことなんて覚えてもらわないほうがいいのかなって思って、『消去魔法』をイメージしてみたけど漠然としたイメージ過ぎて使えなさそうだった……。


 うーん。それにしても忘れていることがあるような?大事なことだったような?



「で、ライムは何に悩んでんだ?」


 さらにこちらを真っ直ぐに見て、シオンは問いかける。


 私は……すぐに答えられない……。


「…………」


「シオンさん……!それはちょっといきなり過ぎじゃあ……」


 ジュエルはライムの方に詰め寄ろうとするシオンの胸元を両手で抑える。

 それを払い除けるシオン。


「いや……。最近魔獣の像の目が赤く光ったとか、旧魔法科学室が立ち入り禁止になったとか、学園外部への出入りが制限されたとか色々な情報は得たが、なんでライムが苦しんでるのかがわからねぇ。だったら聞いた方が早い」


「ライム……。オレらにできることはないか……?」


 私が苦しんでいるように見える……?


「ここ最近のおまえは……こう、なんだか、何か大きな決断をしたように見える。しかも、良いことじゃない。痛みを伴いそうなやつだ」


 シオンは拳を握りしめると、


「もうあの時みたいに、急におまえがいなくなるのは嫌なんだ。おまえは大事な友達……いや……違うな。




 ……好きだから、だな」




「「えっ……!!!!」」



 ジュエルと私の声がシンクロした。

 私は驚いて開いた口が塞がらない……。

 今なんて言いました?!?!



「いっいいい、いつから?!」


 ジュエルが流行に乗る女の子みたいに前のめりになって尋ねる。


「ん?あー、ライムが行方不明になってそれから帰還した後からだな……」

「なんで、そんな急に……?!」

「相手のことを知りたいなら、まずは自分から。オレの気持ちや秘密も曝け出せば、ライムももしかしたら、教えてくれるんじゃないかって……。んーあーでも、、告白は、するつもりじゃなかったけどな……。でも嫌だったら全然いいんだぜ。無理強いはしたくない」

「シオン……」


 シオンは珍しく照れ臭そうに私から目線を外す。それが本心なのだと証明するのには十分な仕草だった。


 驚いた……。

 とっても、かなり、すごく……。

 私のことを、好き?

 シオンが?

 この目の前の超がつくほどのイケメンが……?


 ライムは溺れかけの魚のように口をパクパクさせて、同時に顔は真っ赤になっていった。



 その時……廊下に置かれた何体もの魔獣像の目が淡く赤く光った。


「………?」


 次第に光は強くなっていく。


「また……?いや、目の光、こんなに強かったか?」


 そう呟いたシオンの横顔が眩しくて見られないほどに、魔獣の目は赤く辺りを照らした。

 シオンの身長くらいはあるであろう魔獣の像。

 ガルガラを模してあって、有事の際に学園を守ってくれると言われている像。


 それが今、辺り一面を赤で覆う程に発光していた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ