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41 肝試しだよ!




 トントンとドアを叩く音がして、不安を覚えながら目線を向ける。

 こんな夜中に誰だろう……。


 ドアノブに手をかけカチャリと捻る。

 開いたドアの隙間を見るが、誰もいない。


 全開してもそこには何者もいなかった。

 気配はするのにおかしい。まさかいじめじゃないよね?

 やれやれとドアを閉めようかと思った時、


「はーい! こんばんはライム!」


 とすぐ側から聞き慣れた声がした。


「えっ!? ピ、ピノ? もしかして目の前にいるの?」

「すごーい! なんでわかるの?」


 ピアノのうきうきした声。

 声はするのに存在が見えない。なんでだろう?

 そう言えばさっき何か準備するって言ってたっけ?


「びっくりしたぁ……なんで消えてるのかわかんないけど……とりあえず『存在具現(コンセントレイト)!』」

「うわっ! ちょっ!!」


 手をかざすと花柄パジャマ姿の可愛らしいピアノの姿が現れた。

 いきなり姿を現されて驚いた様子だ。


「補助魔法以外は使わないんじゃなかったの?!」

「そう誓ったわ。でも思いついたの……。『隠蔽魔法』を一緒に使えばバレないってことを……!」


 私はいじめっ子から学んだのだ。

 『隠蔽魔法』っ便利だわ。

 使おうと思った魔法にさりげなく重ねがけするだけで、他人から魔法をかけてるところが見えなくなる。

 『存在希釈』みたいに魔力の存在そのものは消せないから、下位互換ね。

 ちなみに悪用はダメ絶対。


「ライムも私と考えることは一緒ね!」


 どうやら、ピアノも護衛の人にライムに会いに行きたいという理由をつけて自身に『隠蔽魔法』をかけてもらったらしい。一定時間は自分の姿が見えなくなるらしい。ちなみに気配や魔力は消せないので、実力のある人だったらすぐにバレる。


 アレスさんにも許可を得ているそうで、こうして私に会いにきてくれたらしい。

 パジャマを着てるのは……隠れれば見えないからオッケーってことかしら?


 私はピアノらしいなとクスッと笑って、


「でも、理由はそれだけじゃないんでしょ?」


 と尋ねた。ピアノのことだ。何か企んでいるに違いないわ。


「えっへへー! 学園と言ったら……」

「学園と言ったら?」

「肝試し!!……そして、学園の秘密を暴きに行くわよ!」


 おお……!

 私ね、その考えだけで十分肝が座っていると思うわ。

 ピアノの好奇心には勝てないわね、とライムは思ったのだった。



 自分とあとピアノにもう一度『隠蔽魔法』をかけて、私たちは寮の裏側の建物である第一棟に来た。来てはいけないルールはないけど、第ニ練と比べて錆びた廊下や古ぼけた窓、年季を感じる建物からあまり立ち入る人はいない。

 第一練はほとんど倉庫と化していた。


 第二棟と第一練は渡り廊下で繋がっていて、誰でも出入りできる。


 灯りはまるっきりなかったから『魔法微光』でほんのり辺りを照らす。


「ライムってなんでも魔法が使えるから便利ねぇ」

「ピノ……。心の声がダダ漏れよ」

「ごめんごめん、尊敬してるのよ」

「ピノ怖い?」

「へっ? そ、そそそそんな訳ないじゃない?! 私から誘っておいて怖いなんて! そんなこと……あるまじきよ!あるまじき!!」


 恐怖で言葉が変な風になっているのに気付いていないピアノは、ライムの後ろにくっつきガタガタと体を震わせている。その表情は今にも叫びが口から出てきそうだ。


「大丈夫? なんで怖いのに肝試しなんて……」

「だって……学園って秘密が多いって聞くじゃない? なんでも歴代の卒業生がこの第一練に面白いものを残したって聞いたのよ!」

「それは……誰から聞いたの?」

「アレスが言っていたわ……」


 それ……オバケが怖いピアノのことからかっているわ!

 アレスさんが好奇心には勝てないだろうってピアノに教えたのが目に浮かぶ。アレスさん意地悪だなぁ。


 面白いもの……か。

 本当にあるのかわからないけど、私もちょっと興味あるかも。


 先が見えない真っ暗な廊下を小さな明かりだけで進む。埃をかぶった銅像、よくわからない抽象画、煤けた部屋の扉を横目にただ前に足を進める。


 目標は旧魔法科学室。


 そこに秘密があるらしい。

 前へ進むたびにカンカンと古びた廊下の響く音がする。



 ザッァ



「ひぃっ!!!」

「……っ」

「なんか今音がしたぁああ ……ライムぅうう」


 ピアノに後ろから抱きしめられてしまった。

こんな可愛い女の子にハグされたら緊張するじゃない。なんだか私までドキドキしてきたわ……。て、こんなこと考えている場合じゃない!


 魔力反応はないし……。

 影もない。

 気のせい?





 ザザザーッァアアアァァ




 まるで砂嵐だ。

 少し進んでいくと砂嵐のような音がどんどん明確に聞こえてきた。

 自然では出ないような機械的な音のような。

 どうやらこの先の旧魔法科学室からだ。


「?」


 ……違和感。

 集中して聞くと魔力を感じる。


 ……魔法だ。

 何かしらの魔法がかかってる。

 意識を音に集中させる。


 これは……妨害魔法?





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